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テクノロジーの力で、教育と移動にイノベーションを!:COMARS

更新日:2022年9月5日

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家。今回は、滋賀県で地方創生につながる社会課題解決に取り組む株式会社COMARSの代表取締役、上田隼也さんです。



立命館大学在学中、EDGE+Rや公共機関主催の起業家プログラムに参加。イノベーションを起こす起業家の重要性を体感し、現在はアントレプレナーシップ教育者として教壇に立つ傍ら、MaaS(サービスとしての移動)の事業家としても活動。教育者×事業家という2つの顔を持つ上田さんに、現在取り組んでいること、今後めざしたいことを伺いました。


取材・レポート:池田奈帆美(中小企業診断士・生態会事務局)

 

池田:私と同じく熊本県出身の上田さん。私たち2人とも震災時は関西にいて、家族や身近な人の被災に胸を痛めたという過去を持ちますが、その時の経験が上田さんの起業のきっかけなんですよね。

株式会社COMARS代表取締役上田氏(以下、上田):もともと教育者になりたいと思ってはいましたが、被災した家族や知人を目の当たりにし、学校教育という枠組みから飛び出して、もっと自分にできることはないかと真剣に考えるようになりました。

池田:それで、起業家育成プログラムリーンローンチパッドに参加されたんですね。

上田:自分で事業を考えて、顧客を開発して、PMF(プロダクトマーケットフィット)を短期間で創るというのは、とても刺激的体験でした。完璧じゃなくてもやってみて、市場に答えを問い、すばやく軌道修正する、というシリコンバレー発のメソッドを学び、その有効性を体感できたのは、とても大きな財産です。

池田:そうした経験を活かして、大学卒業後すぐに起業されたんですね。

上田:在籍中から大学と連携して、新しい教育の形を模索していました。オンライン授業やアントレプレナーシップ教育は絶対に重要だと思って大学にプレゼンし、実現してきましたが、コロナ禍で一気にオンライン授業が普及して、「ほらね、いち早く取り組んでて良かったでしょ」と思ってます(笑)。


池田:「教育者にして事業家」というのが上田さんのユニークなところですが、株式会社COMARSの主力事業を教えて下さい。


上田:会社としては、MaaS(バス、電車、タクシーからライドシェア、シェアサイクルといったあらゆる公共交通機関を、ITを用いてシームレスに結びつけ、人々が効率よく、かつ便利に使えるようにするシステム)のソフトウエア開発がメインです。立命館の草津キャンパスは駅から徒歩30分と遠いのですが、バスの発車時刻が電車の到着時刻と連動していないなど、移動面で様々な問題があります。職員もあわせると、2万人くらいの人が最寄り駅からキャンパスまで通うので、雨の日はバス待ちの列もすごくて。こうした問題を解決するために、バスの発車時刻の最適化や、今はまだないタクシーの相乗りサービスを始めるための構造設計などを、滋賀県からAPIを提供してもらいながら開発しています。



上田:あと、僕自身が学生だったころ、駐輪場で自分の自転車が見つからないという問題があったので、その不を解決するために自転車の位置を特定できるアプリも作っています。データ解析が得意なので、その強みを活かして、地方の教育現場が抱えるアナログな問題を解決しています。


池田:それは滋賀県だけではなく、他府県の大学にも波及できそうなスキームですね。


上田:地方創生の重要性はみんな分かっていても、実際、テクノロジーに長けたベンチャーはまだまだ地方には少ないので、可能性は大きいと思っています。僕自身はCOMARSの経営者としてだけではなく、立命館大学のスタッフとしての立場を活かして行政とパイプも作ってきたので、地方創生に関わる行政との交渉方法も、進め方の手順も、何となく理解しています。そうした経験を活かして、会社としては、「アナログな教育現場や、テクノロジーが行き届かない地方にイノベーションをもたらす会社」というポジショニングを確立していきたいと思っています。


池田:データ解析ができて、大学や行政との交渉方法が分かっていて、何より学生に近い若さというのは、上田さんならではの強みですね。


上田:地方活性化や非常事に活用できるスキームを整えて、行政とのタイアップをさらに強化していく予定です。あと、欲張りですが、やっぱり教育にはもっともっと力を入れていきたい。単なる耳学ではなく、学生と一緒にプロジェクトを立ち上げるなど、成功も失敗も体験できるような起業家教育を提供していきたいです。「増殖型イノベーションエコシステム」という言葉が大好きなのですが、イノベーションの素晴らしさや、自分が世の中に影響を与える生きがいを一度でも経験できたら、その人はもうイノベーションの伝道師となる。そういう人が増えることで、より良い社会が自然とできていくと思うんです。


池田:私も一人ひとりが世の中を変えていく力を持つ起業家教育はめちゃくちゃ重要だと思っています。ぜひ頑張って下さい!


 

取材を終えて池田より

2016年に初めて出会った時、「震災した家族や友人を見て、将来は政治家になると決めました」と言っていた上田さん。以来、彼がどんな人生を歩むのか、遠くから見守ってきましたが、リーダーに必要なスキルと経験を積み重ね、確実に成長されている姿にとても胸が熱くなりました。問題を発見する力、それを解決するソリューションを生み出す力、行政や大きな機関と交渉し、新しい価値を広めていく力。起業家が持つ力はまさにこれからの日本の政治にも必要不可欠なものだと思います。



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