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  • 執筆者の写真松井 知敬

環境負荷の少ないエシカルなハウスクリーニングで業界に一石を投じる:エシカルノーマル

更新日:2023年4月25日

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は、環境負荷の少ないエシカルなハウスクリーニング事業を展開する株式会社エシカルノーマルのCEO、本川 誠(ほんかわ まこと)さんにお話を伺いました。


取材・レポート:垣端 たくみ(生態会事務局)、松井 知敬(ライター)



 

本川 誠(ほんかわ まこと)氏 略歴


1976年、大阪府堺市生まれ。高校卒業後、23社のアルバイトを経て、31歳で新聞販売店を開業。2014年頃から、地域課題を解決するさまざまな事業を手掛けるようになる。その中のひとつがハウスクリーニング業で、環境負荷の高い劇薬が当たり前のように使われている状況に疑問を持つ。そんなハウスクリーニング業界に一石を投じるべく、2021年にエシカルノーマル設立。

 

■劇薬洗剤を使うのは、車の窓からゴミを捨てるのと同じ


生態会 垣端(以下 垣端):本日は、どうぞよろしくお願いします。まずはじめに、事業内容を教えてもらえますか?


エシカルノーマル 本川氏(以下 本川):「いかに早く安くできるか」という視点しかなかったハウスクリーニング業界に、健康面や環境面という新たな軸を持ち込んで事業展開している会社です。人や環境に無害な洗剤や手法でハウスクリーニングをおこなっています。


垣端:従来のハウスクリーニングは、どれくらい環境に負荷を与えているのですか?


本川:一般的なハウスクリーニング業者が使っている洗剤は、いわゆる劇薬です。某洗剤300mlを水生生物に影響がない濃度にするためには、2300万リットルの水が必要という調査結果が出ています。「桁を間違えていませんか?」とよく聞かれるんですけど、調査会社に依頼して出してもらった数字がこれなんです。


垣端:びっくりする数字ですね。


本川:わたし、もともと別会社でハウスクリーニングをおこなっていたんですが、劇薬を使っている自覚はずっとありました。肌がただれるとか、目に不調が出るとか。ガスマスクをつけて作業しますし。すごいことしているよなー、って。ただ、ほとんどの事業者がそうしていますし、「そういうもの」と思って続けていたんですよね。


垣端:それをやめようと思ったきっかけは、なんだったんですか?


本川:ある日、車の窓からゴミを投げ捨てる人を見かけたんです。そのとき感じたんですよね。わたしたちのしていることって、この人と一緒だなと。お客様のおうちの中はきれいになりますが、外の世界に関しては無関心。劇薬を外に垂れ流し、環境を汚している。それで、急に恥ずかしくなったというか。


垣端:それで行動に移したと。


本川:はい。誰かが変えないといけない、と思いました。わたし自身、大きなソーシャルビジネスを仕掛けたいと前々から思っていたので、仲間を集めて会社をつくることにしました。






■エシカルな文化を拡げていきたい


垣端:その後の経緯を教えてください。


本川:1年半かけて、人や環境に優しいハウスクリーニングの技法を確立しました。バイオ洗剤を用いる他、熱分解や超音波分解など、洗剤のみに頼らない清掃をおこないます。


垣端:バイオ洗剤とはどのようなものですか?


本川:微生物の力を応用した洗剤です。酵素の力で汚れを取ります。家の中には常在菌がいて、その中には汚れを分解してくれるような良い菌もいるんですが、ケミカルな洗剤って、全部、流しちゃうんですよね。つまり、きれいにしたその瞬間から汚れ出す。悪循環ですよね。バイオ洗剤は、良い菌を残しながら綺麗にしていくので、きれいが長持ちするんです。


垣端:御社のようなエシカルなハウスクリーニング業者って、他にもあるんですか?


本川:ナチュラルクリーニングという分野があって、やりたいこととしては一緒です。ただ、彼らは重曹やクエン酸を使うので、なかなか汚れが取れないし、時間もかかるんですよね。当然、人件費もかかります。


垣端:環境に良いだけではなく、短時間で汚れを落とせるような洗剤が必要だと。


本川:そうですね。それと、定期清掃。長い間に蓄積した汚れを1回で落とそうとすると、どうしても劇薬を使わざるを得なくなります。常にきれいな状態を保ち続けることがエシカルに繋がる、そういう文化を拡げていきたいと思っていて、清掃の頻度が高いほど、1回あたりの費用が安くなる仕組みにしています。


垣端:文化を拡げる、って良いですね。


本川:清掃方法に限らず、全方位エシカルなハウスクリーニングチェーンをつくっていきたいと思っています。よく「3R(Reduce / Reuse / Recycle)」と言いますけど、うちは「10R」というルールを定めていて、すべての活動をその中ですることにしています。お客さんの家に行くときも、電気自動車しか使いませんし、ユニフォームや道具類も、サスティナブルなメーカーのものをリユース品で揃えています。もっと言うと、CO2を出さずに自然を感じるような余暇の過ごし方を推奨したりとか。もう「生き方」ですね。


垣端:「エシカルな生き方」ですね。


本川:そう、「エシカル(=倫理的)をノーマル(=当たり前)にしたい」と思って、社名もエシカルノーマルとしました。







■この状況はビジネスチャンスでもある


垣端:ハウスクリーニングの市場は、成長しているんですか?


本川:ここ10年で、5〜10倍になったと言われています。今って、ハウスクリーニングのポータルサイトがあって、個人事業者が参入できるんですよ。競争も激化していて、「早く、安く」という流れは、そういうところからも来ています。磨いたりこすったりせずに劇薬で落とそうぜ、さっさと洗ってササッとすすいで次の家に行こうぜ、という。


垣端:なるほど。そういう背景が。


本川:だから、誰かが変えないといけないんですよね。ただ、この状況はビジネスチャンスでもあって、小さいお子さん、高齢者、ペットのいらっしゃるご家庭など、強力な洗剤を使うのが心配だった方々が、うちを利用してくださいます。アトピーや喘息といったアレルギー体質の方や、化学物質過敏症の方も。世直しといった視点ではなく、あくまでビジネスとして進めていくスタンスです。


垣端:今後の展望をお聞かせください。


本川:10年で上場を目指しているんですが、まず3年で直営10店舗、フランチャイズ50店舗、年商5億円が目標です。直営は関西圏、フランチャイズは都市部を中心に考えています。


垣端:目標に向けて、生態会も尽力させていただきますね。本日はありがとうございました。


 

取材を終えて


新しい価値を創造して世界を変えることがスタートアップの社会的意義だとするなら、エシカルノーマルはまさにそれを体現できる会社さんだと思います。「家はきれいにするけどそれ以外は知らないというのは、車の窓からゴミをポイ捨てするようなもので恥ずかしい」と、本川さんは言います。エシカルノーマルがビジネス的に成功し、「エシカルである」という文化が広がり、消費者や事業者の価値観が塗り替えられる。そんな未来を見てみたいと思いました。(ライター 松井)




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