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毛髪からオーダーメイドヘルスケアを実現: イヴケア

関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家たち。今回は、毛髪に蓄積されたストレス関連ホルモンを定量的に測定・分析し、中長期的なストレスを評価する技術サービスを展開する、株式会社イヴケアの代表取締役、五十棲計(いそずみ けい)さんに、お話を伺いました。


取材:西山裕子(生態会事務局長)

レポート:ミズノユキ(社会人インターン)

オフィス兼大学研究室で

五十棲計(いそずみ けい)代表取締役 略歴

京都市出身。2020年滋賀大学大学院教育学研究科を修了、教育学修士。


同大学の大平雅子准教授と連携し、2018年7月には滋賀テックプラングランプリのファイナリストとして選出され、パナソニックアプライアンス社賞を受賞。


バイオテックグランプリでもファイナリストに選出され、日本ユニシス賞と竹中工務店賞を受賞。


2019年1月11日に滋賀大学からの大学発ベンチャー第1号となる株式会社イヴケアを設立。



生態会事務局長 西山裕子(以下、西山):本日は、お時間いただきありがとうございます。最初に、事業立ち上げの経緯についてお聞かせください。


株式会社イヴケア代表取締役 五十棲計(以下、五十棲): 2018年3月、私が大学4年生の時、大学の技術スタートアップ支援をしている株式会社リバネスの方が大平雅子先生に起業のお声掛けされました。先生が迷っておられると、「では、横にいる学生さんが起業する形でどうですか」という話になって。


生態会 社会人インターン ミズノユキ(以下、ミズノ):まさに人生の転機、ですね!


五十棲:私は五十棲:私は保健体育の先生を養成する研究室に所属しており、心理学に興味を持っていました。その時ゲーム会社へ就職が決まっており、ゲームを通じて「楽しみながら健康になる」など行動変容を促す仕事をしたいと考えていました。しかし、就職、大学院進学、起業のどれが、「一番世の中の役立てるか」と考えた時、起業が一番具体的にイメージでき、また面白そうだったので、この道を選びました。


ミズノ:→イヴケアの事業内容について、教えてください。


五十棲:私たちが持つ一番の技術は、毛髪に含まれる物質からストレスを客観的に評価できることです。毛髪には、外部から刺激(ストレス)を受けたときに分泌される「ストレス関連ホルモン」が蓄積されることがわかっています。毛髪の根元から分析することで、中長期的なストレスを測定することが可能です。


毛髪分析からWell-being社会を目指すイヴケア

この技術を使って、3つの事業を計画しています。1つ目は「メンタルヘルスサポート事業 」で、今年4月に「イヴケアパック」をリリースします。ストレスを、毛髪分析とアンケートの客観・主観の両面から評価し、そのフィードバックをお返しするものです。これまでは質問表など主観的な評価だけでしたが、私たちの技術を使うことで客観的評価が可能になります。また、ストレスレクチャー(教育講演)などのケアも、一体化しているのが特徴です。


2つ目の「ケアソリューション開発支援事業」は、商品開発などにおいてのエビデンスとして技術を活用するものです。例えば、「この香りはストレス軽減に効果あり」という商品の場合、これまでは主観的な評価しかありませんでした。しかし、私たちの技術で、客観的なストレス軽減効果を示すことが可能です。


3つ目の「新規マーカー探索事業」は、髪内に含まれる物質と生活習慣病等との関連検証も可能だと考えており、この分野の共同研究も進めていきたいと考えています。



ミズノ:「ストレス関連ホルモン」とは、具体的にどのようなものでしょうか?


五十棲:コルチゾールをはじめとする副腎皮質から分泌される、ステロイドホルモンです。これらから「ストレス反応」と「抗ストレス反応」、そしてそのバランスも評価します。ストレスは「悪いもの」と考える方も多いですが、そうではなく、抗ストレス物質が適切に分泌されていることが大切です。毛髪分析によるストレス評価は、大平が10年以上前から研究しているもので、欧米では疫学研究にも使われています。


私たちの強みは、効率的な分析試薬を使っていることと、日本人の検体数を多く持っていることです。検体数の多い欧米では基準が出つつあるのですが、日本にはまだ無いので私たちが作っているところです。




西山:資金面や、今後の事業についてお聞かせください。


五十棲:自己資金100万円で起業し、昨年、100万円増資しました。私自身も昨年10月に大学院の博士課程を退学し、会社にフルコミットしました。5年後までに売り上げ規模10億年を目指しています。


西山:大きな目標ですね!計画を、お聞かせください。


五十棲:今年は「イヴケアパック」などを企業にテスト導入してもらい、データをとり、エビデンスやサービスを確立する予定です。アプリも現在開発中で、直接ユーザーと繋がる仕組み作りを構築中です。来年は、実証実験を全国で展開。その後、B-to-Cにも事業を広げて、5年後には、3ヶ月10,000円プランで10万人のユーザーシェアをとる。5年後の目標は実現可能だと考えています。


ミズノ:御社のサービスを通じて、社会全体のストレスが軽減されていくというイメージでしょうか。



滋賀大学教育学部

五十棲:イヴケアは単に「ストレス軽減」を目指しているのではありません。客観的データ(評価)と自分の認知をすり合わせて、ストレスのセルフマネイジメント力の向上を促したいと考えています。さらに言えば、私は小学生の頃から、義務教育課程の一つとして、子どものうちから日常的に自分に合ったセルフケアを学ぶことが当たり前になって欲しいと考えています。


ミズノ:すばらしいですね!


五十棲:実は、これは私の悩みから出てきたものです(笑)。起業して一年半くらいは、自分と先生たちとのパフォーマンスの違いに悩みました。先生たちはストレスに対して本当にとても強い。それは毛髪からのデータにも明確に出ていました。でも、そうならば、同じ方法でストレスに対応しても意味がないと気づき、「自分らしいやり方でやろう」と考えられるようになりました。


ミズノ:社員の皆さんも毛髪でのストレス評価をされているのですね(笑)。社員は五十棲さんとお二人の先生ですが、どのような運営をされているのですか。


五十棲:役員会を週1回行っています。進捗報告、事業計画やビジョンの構築などを話し合っており、先生お二人(大平雅子、芦谷道子)もかなり事業にコミットしています。主に、技術面は大平、芦谷が、事業面は自分が担っている感じです。


滋賀大学初ベンチャーとして、校内実験設備使用などで大学も事業をサポート

西山:滋賀大学初のベンチャーとのことですが、具体的にどのようなサポートを受けてい

るのですか。


五十棲:会社の住所を大学内に置かせていただき、研究室も利用させてもらっています。

資金面などの支援はありませんが、自由に自分たちが考えた事業をさせてもらえているの

が何よりありがたいです。


西山:外部から、ビジネス面の支援などは受けておられますか?


五十棲:リバネス役員の方とも月1回、ミーティングをしています。創業2年目になり、ベンチャーキャピタルの方など多くの方との繋がりができました。現在、関西電力、地方銀行などとご一緒させていただいています。今後は生命保険会社、食品や医薬品メーカーなどと提携したいです。また、事務全般を担ってくださる方と、研究計画を自ら作れる研究員を採用したいと考えています。


ミズノ:滋賀など地方都市からのスタートアップ企業はまだ少ない印象ですが、今後、大阪や東京などへの進出はお考えですか。


五十棲:私は「1地方に1つのメガベンチャー」が、将来の日本にとっても良いことだと思うので、地方を拠点にやっていきたいです。自分自身、起業を通じて社会の仕組みやビジネスの面白さを学ぶことができています。この事業を滋賀初のメガベンチャーに育て、もう一つ次元の高いストレスケアができる社会にしていきたいです。


ミズノ:今日は、貴重なお話をありがとうございました。


五十棲さんのお話を伺い、様々な専門家と繋がりながら誠実に実績を積み重ねるお姿は、初々しさの中にもすでに安定感を感じました。日本は「ストレス社会」と言われますが、まるで体温を測るように日常的に客観的なストレス評価が得られるとメンタルケアがもっと身近になるのではと期待が膨らみました。(社会人インターン・ミズノ)。





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