• 森令子

人材不足、地方格差、空き鏡など美容業界の課題をITで解決:プラスルーム

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は、美容専門学校の学生向け就職支援サービス「AirJobTour」や、美容室の空き鏡とフリーランス美容師をつなぐアプリ「b-pocket」など美容業界の課題にITで取り組む株式会社プラスルーム

の吉田拓真(よしだたくま)さんにお話を伺いました。


取材・レポート:森令子(生態会スタッフ)


 

代表取締役 吉田 拓真 略歴

1993年生まれ、大阪府出身。阪南大学経済学部を卒業後、村田克敏氏(現 取締役)創業のオンラインネイル学習サービスのベンチャー企業運営に4年携わる。2019年に村田氏と合同会社プラスルームを設立し、副代表に就任。2021年6月、株式会社化とともに代表就任。


 

■3年で80%が離職する美容業界、新卒採用を変えたい

生態会 森(以下、森):本日はよろしくお願いします。まずは、事業概要を教えてください。


株式会社プラスルーム 吉田社長(以下、吉田):主に、2つの事業を展開しています。1つは、創業時から展開している「Air Job Tour(エアジョブツアー)」です。美容専門学校の学生と、新卒採用したい美容室をオンラインで繋ぐ就職支援サービスで、現在、全国の約100校が利用しています。全国に美容専門学校は約230校ほどと言われており、業界に浸透してきたと感じています。


美容業界の新卒採用には、大きな課題があります。例えば、奈良県で7店舗を経営する美容室オーナーは、学生を採用したいと、四国の美容学校7校に毎年2回、説明にまわるなど、熱心に活動しています。素晴らしいサロンで、働く環境も整っており、オーナーの人柄もいいのに、学生たちに人気なのは大阪や東京など大都市の美容室ばかり、奈良までサロン見学に来ることもめったにありません。美容学校側でも、例えば、沖縄の学生は半数が県外就職ですが、就職したい美容室があっても交通費などの問題もあり実際に見にいくのは大変で、よく知らないまま就職先を選ぶことも多いのです。


美容室も学生も十分な採用活動・就職活動ができないため、働き始めた後でミスマッチが判明するなどしており、業界全体では3年で80%が離職するという現状です。


そこで、地方の学生でもオンラインでサロン見学できる「Air Job Tour」を立ち上げました。これまで、紙で提出していた求人票がオンライン化するだけでも、学生がスマホで手軽に見られるようになりますし、オンラインで会社説明会、サロン見学ができるというのは、新しいコトが好きな美容室の皆様に、非常に歓迎されました。サービス開始当初は、とにかく全国の美容専門学校に営業に回り、新規開拓からスタートしました。



■コロナで急成長した「Air Job Tour」:美容室は月額使用料のみ、学校・学生は無料の使いやすさ


森:学生、学校、美容室の3者が関わるサービスということですが、サービス使用料などは、どのように設定してるのですか?


吉田:売上は、美容室からのサービス使用料(月額定額)のみで、設立3年目の現在で、年間約6,000万円を売り上げています。6カ月の最低契約期間はありますが、成果報酬はなく、他の採用メディアと比べて安価ですので、長く使っていただけていると思います。学校や学生からは費用はもらっていません。学校に送られてくる、大量の紙の求人票をデータ化し、「Air Job Tour」内に、学校ごとの専用ページをつくってあげています。学校にとっては費用がかからずに学生に便利なサービスが提供できるので、成約率は高いと思います。


森:学校やサロンの規模に関わらず、導入しやすいサービスなんですね。そもそも、なぜ美容業界に注目したのですか?


吉田:プラスルーム創業者である村田は、「Air Job Tour」の前にネイリスト向けオンライン研修サービスのベンチャー企業も創業しました。私も、その会社に4年ほど関わっていたのですが、様々な美容室・サロンとご一緒するうち、求人・採用が美容業界の非常に大きな課題であることがわかってきました。オンラインサービスのノウハウは蓄積されており、新規事業として、オンラインでの採用サポート事業を始めることにしました。


2019年にプラスルームを立ち上げ、専門学校や美容室の新規開拓で全国を飛び回っていた頃、コロナ禍が始まりました。そこで、学校・美容室双方で「Air Job Tour」導入先が一気に増加したのです。従来、学生と美容室がつながる機会としては、対面の合同就職イベントなどがありましたが、そのようなリアルイベントを手がけていた企業は、オンラインの経験に乏しく、オンライン説明会などをスムーズに運営できなかったようです。私たちは、元々、オンラインに強い会社ですので、採用活動に困っていた専門学校や美容院をすばやくサポートすることができました。みなさん、一度利用すれば、オンラインの利便性に気づいてくれますので。


■フリーランス美容師サポートアプリ「b-pocket」で”空き鏡”と美容師をマッチング


森:もう1つの事業は、どのようなものですか?


吉田:2022年8月に、アプリを正式リリースした新規事業「b-pocket(ビーポケット)」です。美容室では、人不足で設備を使いきれず、”空き鏡(あきかがみ)”と言われるデットスペースが大きな負担になっています。この”空き鏡”と、急増しているフリーランス美容師をマッチングするアプリが「b-pocket」です。


全国には約25万軒の美容室があり、年8千件の廃業と1万軒の開店により年数千軒ペースで増加しています。いまや、コンビニの3倍以上の美容室があるのです。一方、少子化で学生は減り、地方では廃校する美容学校も目立ってきました。美容師を育成する美容学校は減るのに美容室は増えています。さらに、美容師のフリーランス化も進み、50万人の美容師のうち、10万人弱がフリーランスとなり、競争が激化しています。私たちも、採用に関わる中で、多くの美容室が人不足で困っていること、フリーランス美容師がよりよい働き方を求めていることを実感してきました。


増えている”空き鏡”というデッドスペースの課題と、フリーランス美容師のサポート、この二つを解決できるサービスとして「b-pocket」をリリースしました。



今は、個々の美容師とお客さんがSNSでつながる時代です。シェアサロンといって、フリーランス美容師がサロンを共用する仕組みも流行っています。しかし、「b-pocket」なら、新たに設備を整える必要はなく、今ある”空き鏡”を使うため、コストが少なく、美容師にとっても高歩合率が実現できます。


私たちは「Air Job Tour」で、すでに数千軒の美容室とお付き合いがあります。マッチングする”空き鏡”の数は確保できると考えています。


一方、フリーランス美容師に知ってもらい、使ってもらうには、BtoCに近いコミュニケーションが必要です。美容師の8割が利用しているInstagramへの投稿を中心に、SNS広告や美容師向けのブログ運営などで、丁寧に接点を増やしています。


森:「b-pocket」のこれからが楽しみです。現在、創業者の村田さんが取締役になり、2021年から吉田さんが社長を務められていますね。御社のメンバーはどのような方々なのでしょうか?


吉田:「Air Job Tour」を成長させてきたメンバーには、大手求人媒体など人材業界の出身者や、メーカーや卸など美容業界への営業経験が豊富な社員、ネイリストや美容師など業界に詳しい社員など、バランスのよいチームです。このメンバーのまま「b-pocket」を立ち上げていきますが、今後、美容師やサロンの登録が増えてきたら、カスタマーサポートの役割を強化していきたいと考えています。


■吉田社長の情熱と行動力がきっかけで資金調達が実現!


森:2022年3月の資金調達についても教えていただけますか?


吉田:ビューティガレージのCVCファンドであるBGベンチャーファンドと、JSSA1号ファンド(日本スタートアップ支援1号投資事業有限責任組合)に出資いただきました。日本スタートアップ支援協会(JSSA)に2021年秋に入会し、「スタートアップ社長として実力をつけたい」と、毎週のセミナーなどに積極的に参加しています。JSSA入会から1〜2ヶ月後に、ずっと尊敬していたビューティガレッジの野村社長が登壇されるセミナーがあり、「これはチャンス!」とFacebookで直接ご連絡したのが、出資いただくきっかけです。ビューティガレッジは、美容商材のECなどを展開し、美容業界を変革し続けている企業です。「美容業界を変えたい」という野村社長の理念にとても共感しており、日頃からブログも愛読していました。野村社長とのご縁を逃さないよう、とにかく行動したのですが、想いが伝わり本当によかったです。


森:今後の事業展開はどのように考えていますか?


吉田:しばらくは、「b-pocket」の成長にリソースを集中する予定です。美容師のフリーランス化は業界全体の大きな流れであり、「b-pocket」は成長市場でのビジネスです。2024年黒字化、29年売上100億円の成長を目指しており、そのためにも、とにかくスピード感をもって、いち早く業界に浸透していくことが重要だと思っています。


「Air Job Tour」は、新規開拓というより、サービス充実のフェーズですね。アプリ開発により利便性を向上するなどし、第二新卒や卒業生など学校外の就職志望者の利用増加、解約率の低下を目指していきます。


ITを使えば、美容業界はもっと働きやすくなります。美容業界の深刻な人材不足を解消するサービスを提供していきたいと思っています。​

 

取材を終えて:

美容業界をよく知り、体感した課題を起点にサービスを構築することで、使いやすさが実現しているようです。2022年3月の資金調達も、吉田氏がSNSでメッセージを送って、出資元に情熱を伝えたことがきっかけとのことで、行動力ある若き社長と、美容業界、人材業界、連続起業家など多様なキャリアを持つ自律したメンバーにより、新規事業も成長が期待できそうです!(スタッフ 森 令子)