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  • 執筆者の写真Seitaikai

料理を通じて心を育む「こどもだけの料理教室ゆめつぼ」を運営:株式会社ルーアンライト

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は、料理を通して、こどもの自主性や自己肯定感を高める、子ども向け料理教室「ゆめつぼ」を運営する株式会社ルーアンライトの代表取締役 大坪さやか(おおつぼさやか)さんにお話を伺いました。


        取材・レポート:垣端たくみ(生態会事務局)、近藤絵理香(ライター)

 

大坪 さやか(おおつぼ さやか)氏 略歴


和歌山市出身。同志社女子大学卒業後、和歌山市保健所、健診機関、少年院、小学校で献立作成、食事相談、料理教室等の管理栄養士業務に10年以上携わる。

中学生の頃から始めたダイエットの失敗歴10年。管理栄養士となりダイエットは卒業。

その経験をもとに、保健所、健診機関での個別食事相談や集団食事相談を3,500名以上に行う。また医療少年院で、1日3食×365日×5年間の献立を考える。


2015年に「こどもだけの料理教室ゆめつぼ」を開始。現在は日本一の規模を誇る。

7名のスタッフとともに「こどもが料理を作るのが当たり前の社会」を目指す。

食育講演会やLED関西ファイナリストにも選出され、NHK等のメディアにも多数取り上げられる。家庭では2男児の母。

 

■子ども料理教室を始めたきっかけは少年院での原体験


生態会 垣端(以下 垣端):本日は、どうぞよろしくお願いします!まずは事業内容について教えていただけますか。


大坪 さやか氏(以下 大坪):事業内容は、リアルの子ども料理教室の運営、料理教室のフランチャイズ運営、動画レシピ配信の3つです。特に2022年7月から新規事業として始めた、会員制の子ども向け動画レシピ配信に注力をしています。


垣端:事業を始めたきっかけや原体験について、教えていただけますか。


大坪:子ども料理教室を始めたきっかけは、少年院で管理栄養士として働いていた時に、子どもたちの食生活が乱れていて、自己肯定感が低いと感じていたことです。料理をすることで、それらが改善出来るのではないか、と思いました。


ライター近藤(以下 近藤):大坪さんのブログ記事、少年院で恵方巻をされた話を読んでとても感動しました。ただ献立を作るのではなく、もっと良くしようという想いがあると感じるのですが、その原動力はどこから来るのでしょうか?


大坪:すごくマイナーな記事を見つけましたね。(笑)私が恵方巻が好きで、みんなにも食べてもらいたいと思いました。50名分位だから作れるやん!と思い提案したら、周囲に大反対されて、落ち込みました。諦めずになんとか出来る方法を考えて、実施させてもらったところ、子どもたちから大好評でした。その後も2年目はみんなに手伝ってもらい、3年目は自分たちで全部してもらい、子どもたちも喜んでくれました。


献立を作る担当をしていましたが、ただ食事を食べてもらうのではなく、何か少しでも知識を持って帰ってもらいたいという想いがありました。家庭環境に恵まれない子どもたちが多かったので、食育通信を配布をしたりもしました。


代表取締役の大坪 さやか氏

■料理で心を育む「ゆめつぼメソッド」


垣端:子ども向けの料理教室は多いのでしょうかか?


大坪:リアルの子ども向け料理教室は、全国に多数ありますが、小規模なところが多く、会員数が多いところは少ないです。講師がレシピ教材から作る必要があり、料理教室の時間だけでなく、レシピを作る時間も必要なんです。そこから集客をする段階で心が折れてしまうことも多い。


近藤:なぜ大坪さんは、それが出来たのですか?


大坪:それはやっぱり想いがあったからですね。

大変だから出来ないではなくて、出来る方法を考えようとなりました。


垣端:想いがあるからこそできる事業ですよね!子どもたちの自己肯定感を育むなど、教育的な要素が結構入っているなと思うのですが、どこが強みですか?



大坪:一般的な料理教室だと、事前に講師が準備しておいて、全ての作業を子ども達にはさせずに楽しさを重視しているところが多いのですが、それではお家に帰ってから自分で作れないんですよね。そうではなくて、最初からゴールはお家で作れるようになること。教室は練習する場所で、動画とレシピを見て自分で動けるようになってもらうことで、お家でも料理をする子が増えました。家族からも喜んでもらえるので、自己肯定感も高くなっていると感じています。


垣端:私も自分のレパートリーが増えたら今でも嬉しいです。(笑)試行錯誤も成功体験になりそうですね。


近藤:想像力も付きそうですよね。自分でやっていったらアレンジも考えられるようになりそうです。動画の中でも「どんなアレンジがしたい?」と聞いている場面があり、すごく良いなと思いました。


大坪:レシピに囚われすぎて、そのまま作る子が増えてきてしまったので、アレンジ方法を教えたり、半年に一回はレシピのない料理教室もやって、自分たちで考えてもらうこともしています。そうしないと料理が上手にならないかなと思ってやっています。


近藤:習い事と言えば、水泳や英会話が人気ですが、料理教室が一番になっても良いくらいですね!


■お家で子どもたちが料理が作れるように


垣端:コロナの影響は追い風、向かい風どちらでしたか?


大坪:追い風でした一時はリアルの会員数が減りましたが、コロナの影響で家庭科で実習をやっていないからということで、逆に需要が増えたんです。


元々は料理教室で全国展開を目指したのですが、コロナの影響や固定費の面で、一気に広めるのが困難でした。オンラインの料理教室などもやってみましたが、それよりも子どもが動画を見るだけで料理が出来るようになるようになったら良いのではと思い、子ども向けの動画レシピ配信にたどり着きました。


垣端:大人向けのレシピ動画とはどう違うのですか?


大坪:大人向けの動画は速度が速すぎるのと、基本の作業を飛ばしてしまっています。子どもたちには皮の剥き方、野菜の洗い方など、ひとつひとつの作業をゆっくり詳しくナレーションも入れて説明する必要があります。


垣端:なるほど、動画自体が早いのと、

大人が当たり前に出来ることが子どもたちには難しいのですね。


大坪:そうなんです。そういった動画自体は4年以上前から作っていて、教室だけで使っていたのですが、それを全国の子どもたちも使ってもらえたら良いなと思いました。


垣端:こども料理教室に通われる方は、どういった目的でいらっしゃるのですか?


大坪:忙しくて教えるのが難しい、気持ちや時間の余裕がない、どうやって教えたら良いのか分からないから丸投げしたい、という方が多いですね。

(写真左)大坪氏、(写真右)ライター近藤

近藤:めっちゃ分かります!私も4歳の娘と一緒に料理をしたいけど、包丁は危ないものだし、一緒に持って切ることは出来てもその先を、いつのタイミングでどうやって教えたら良いのか分からないです。


大坪:そうですよね。包丁やコンロなどを使わせてあげたいけど、どこまでやらせて良いのか、どうやって教えたら良いか分からない。そのまま小学校を卒業して、中学生になっても料理をしないまま過ぎていくことがあります。ぜひ興味がある幼児の間に、やらせてあげて欲しいなと思います。


もう一つの需要として、お家で教えたいけど、教室には遠くて通えないという親御さんもいらっしゃいます。そういった方にも届けたいという想いでオンラインでの動画配信を始めました。今までは小学生向けのレシピ動画だったんですけど、3-6歳向けの動画を作成しているところです。初めの一歩、野菜を洗おう、皮を剥こう、そういったところからの内容です。


垣端:確かに私も子どもの頃に料理をしたのは、小学校の家庭科の時間が初めてだった気がします。


大坪:そうですよね。でも家庭科の時間って全然ないですよね。なので、全然上達しないんです。しかも最近は、コロナの影響もあり、更に減ってきています。

だから今、動画を作ってみんなに届けなければ!と思っています。



■文字が読めない幼児さんたちへ動画を届けたい


垣端:動画の配信を進めるにあたり、課題はありますか?


大坪:小学生向けでお家で料理が出来るようになる、というリアルなコンセプトを持ち込んだけども、保護者の方からハードルが高いと言われてしまいました。良く考えると小学生向けには本もある、

ニーズが本当にあるのは、3-6歳の

まだ文字が読めない幼児さん向けだと感じています。


現場で活躍している保育士さんや、大学の教育専門の方にも関わってもらい、

幼児向けのコンテンツを作成しているところです。まずはオンラインから入って、ゆくゆくは保育園などにも展開出来たらと考えています。偏食の悩みを解決したり、料理で繋がれるようなコミュニティを作れたらいいなと思っています。料理に興味を持つ子は意外と少数派なので、こんなアレンジしたよ、などと繋がれる場所を作れたらなと考えています。


垣端:今後の展開についても教えてください。


大坪:この先1-2年は動画の配信を注力していく予定です。長い目で考えてスピード感もって成長するためには、直営とフランチャイズを抑えてオンラインに注力していこうとしています。将来的には全国展開、そして海外に住んでいる日本人の方向けにも届けていきたいです。


垣端:ぜひ広めていって欲しいです!本日はありがとうございました!


 

取材を終えて


料理を通じて、子どもたちの自己肯定感を高めて欲しい、という大坪さんの優しい想いがとても伝わってきました。現状に満足されずに、もっと子どもたちのために、親御さんのために良くしたい!という想いに胸が熱くなる取材でした。食べることは私たちにとって必要不可欠で、それを子どもの時から楽しく出来るようになり、自己肯定感も高めることが出来るゆめつぼさんの活動が関西から全国へ、そして世界へと広がって欲しいなと感じました。

(ライター近藤)




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