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執筆者の写真Yoko Yagi

PBL教育で高校生が社会と繋がる!進路指導特化型通信制サポート校:青楓館

更新日:11月22日

関西スタートアップレポートでご紹介している注目の起業家たち。今回は、キャリア教育に特化した通信制サポート校である⻘楓館⾼等学院を運営する株式会社青楓館 岡内 大晟(おかうち たいせい)代表取締役にお話を伺いました。


取材・レポート:西山裕子(生態会事務局長)

八木曜子(生態会ライター)

 

岡内 大晟(おかうち たいせい)代表取締役 略歴

1995年2月5日大阪府八尾市出身。関西大学人間健康学部卒業。教育実習で「社会のことを何も知らない⾃分が何を教えられるんだ」と違和感を抱き、就職の道を選択。PR会社に就職後、400⼈以上の経営者にインタビューを⾏う。そこで学校教育の真逆、右を向けと言われても、左を向くような自我や個性が強い⼈材が経済を回し、世の中を作っていることを痛感。「個性教育」の価値に気づく。その後、AO⼊試の専⾨塾に転職し、合格率100%の校舎を達成。これらの経験を活かし、⻘楓館⾼等学院を藤原照恭学院長と共に創業。

 

■通信制高校生のキャリア形成を重要視


ライター八木(以下、八木):本日はお時間いただきありがとうございます。まず株式会社青楓館の事業内容について教えてください。


岡内代表(以下、岡内)青楓館高等学院という通信制サポート校で通信制高校に通う高校生に対して進路指導とキャリア形成を重視した教育事業を行っています。不登校や通信制高校に通う生徒たちに対し、新しい学びの場を提供することで、彼らが社会で活躍する基盤を築くことを目指しています。


 現在、日本では不登校者は34万人、通信制高校在籍者は30万人と年々増加しています。通信制高校は、生徒の多様なニーズに応える柔軟性がある一方で、進路指導やキャリア形成の面で課題を抱えています。たとえば、多くの生徒が高校卒業後の進路が明確でないまま在籍しているケースが多く見受けられます。進学や就職の選択肢が提示される機会が少なく、自分の未来像を具体的に描けない生徒が多いのです。


 また、生徒の自己管理能力が求められる環境であるため、モチベーションの低下や学業未達成に陥る生徒も少なくありません。さらに、教員一人ひとりが多くの生徒を抱える中で、個別対応が十分に行き届かないことが、結果的に生徒の進路選択を困難にしています。


 私たちは、こうした課題に対して、オンライン・オフライン両方を活用した個性尊重型の教育を提供しています。開校2年目となる2024年度の新入生は54名、在校生や転入生など合わせて総生徒数は120名で、運営メンバーは90名、客員講師は35名、パートナー企業は12社です。登校は月曜から金曜まで可能です。オンライン学習も導入していて、生徒それぞれのライフスタイルに合わせた柔軟な学びを提供しています。


コワーキングスペースのような雰囲気の学校内

■経営者との交流から個性教育の重要性に気づく


八木:では、岡内さんご自身の経歴や、青楓館学院を設立するに至った背景について教えていただけますか?


岡内:私は、もともと教育一家で育ちました。母が教師で、教育に自然と触れ合ってきました。しかし大学時代、教育実習で高校に赴いた際、自分が社会のことを何も知らないことに気づきました。それがきっかけでPR会社に就職し、社会を学ぶ道を選びました。そこで400人以上の経営者にインタビューを行い、学校教育とは異なる価値観を持つ人々に触れました。


生態会事務局長 西山(以下、西山):どのような価値観でしょうか?


岡内:たとえば、右を向けと言われても左を向くような、自分の意思や個性が強い人材が経済を動かしていることに気づきました。この経験から、教育現場でもっと個性を尊重した学びが必要だと感じたんです。


八木:その後、教育分野に戻られたのですね。


岡内:はい。次にAO入試専門の塾に転職しました。そこで、生徒一人ひとりの個性を引き出す指導に注力し、合格率100%を達成しました。この経験を通じて、教育の現場における生徒個別対応の重要性を再確認しました。そして、その延長線上で青楓館高等学院を設立することに至りました。


西山:20代という若さで、学校を設立されたのは驚きですね。きっかけがあったのですか?


岡内:若さゆえの勢いと、挑戦心です(笑)。ある人に相談したら、学校が作れるとわかったことがきっかけですね。いつか学校を作りたいという思いはありましたが、20代後半でそのタイミングが来るとは思っていませんでした。


 開校までに多くの課題がありました。たとえば、資金調達や運営スキルの習得、人材確保など、すべてが未知の領域でした。特に教育という分野は、世間の期待や責任が非常に大きく、プレッシャーがありました。それでも、通信制高校が抱える課題を目の当たりにする中で、『自分が動かなければ何も変わらない』という思いが原動力になりました。周囲の支援者や、同じ志を持つ仲間からの後押しもあり、学校設立ができました。


■実践型プロジェクトと個別対応で社会とつながる


八木:強い情熱を感じます...。では青楓館学院の特徴や、他の学校との違いを教えてください。


岡内:はい。青楓館は、‘マインド・自分を知る・社会を知る・社会とつながる’を軸にしたカリキュラムを開発しており、これを通じて個性が才能に変わるよう、生徒一人ひとりが自分の可能性を最大限に引き出せるようサポートしています。


ロジカルなステップで生徒をサポート

 通常の学校がクラス単位の一斉授業を中心としているのに対し、私たちは生徒がそれぞれのペースで学びを深められるよう、個別指導を重要視しています。高校を卒業するのに必要な学習はスタディサプリ等を使いながら効率的に学び、プロジェクトベースのマイプロジェクトという学習スタイルを取り入れています。ほかにも、担任制を取らず、全教員が生徒一人ひとりを支える仕組みを採用しています。クラスを作らないことでいじめのリスクを減少させ、大学のように自分の興味に沿って学ぶことを可能にします。


 特に毎週の1on1指導は、他校にはなかなか見られない特徴的な取り組みです。一人ひとりの生徒と向き合い、彼らの目標や悩みを丁寧に聞き取ることで、個別の支援計画を立てています。この指導を通じて、生徒が自分の目標を明確にし、それに向かって進むための具体的なステップを一緒に考える場を提供しています。たとえば、進路選択の際に適切なアドバイスをするだけでなく、日々の学び方や課題の解決方法についても個別にサポートしています。


八木:1on1指導には、どのような効果が期待できるのでしょうか?


岡内:生徒が安心して、自分の悩みや希望を話せる環境を作れる点が大きいです。また、一人で悩むことなく、適切なサポートを受けることで自信を持ちやすくなり、自分の成長を実感しやすくなります。生徒が主体的に、学びに取り組む姿勢が育まれると感じています。


八木:なるほど、1on1によって動き出せるんですね。では特徴の2つ目、マイプロジェクトについておしえてください。


岡内:はい。マイプロジェクトは『PBL(プロジェクト・ベース・ラーニング)』という手法を用いています。これは、実際の企業や地域との連携を通じて、社会で求められるスキルを身につける学びの方法です。


 事例はたくさんありますが、例えばチュチュアンナさんとの商品開発のプロジェクトでは、新しい商品アイデアを考案しました。他にも熊本県大津町の公園で生徒が一からインクルーシブイベントを企画し、実施計画案を大津町の町長にプレゼンし、開催してきました。また、8月には神戸の唐櫃台で行われる夏祭りに出店し運営しました。


 他には、学校の制服デザインを、生徒主体で刷新するプロジェクトも行いました。生徒たちはアンケートをもとにデザイン案を作成し、デザイナーさんと協力して新しい制服を作りました。生徒自身がプロセスを主導したことで、ものづくりの現場を体験するだけでなく、自分たちの意見が形になる喜びを味わいました。


生徒が作った制服


 現在進行中のプロジェクトでは、北野異人館を使った国際交流イベントを企画しているほか、地元企業である淡路島のパソナさんと協力して、カフェを作るプロジェクトも進めています。日常的に実社会と密接に関わりながら学んでいます。



八木:PBLという手法で、実際の社会と接点を持ちながら学ぶのは、大きな特徴ですね。生徒たちの反応はどうですか?


岡内:非常にポジティブです。社会と関わりながら学んでいるという実感が、生徒たちのモチベーションを高めています。保護者からも『子どもが生き生きと活動している』といったフィードバックをいただいており、学びへの意欲が高まっているのを感じています。教室で学ぶだけでは得られない社会との関わりが、視野を広げ、彼らが自分のやりたいことや進むべき道を見つけるきっかけになると考えています。


西山:進路の明確化には、大変有効ですね。他に特徴はありますか?


岡内:他には毎月多彩なゲストを招いた講演会を実施しています。これまでに著名な起業家、地域で活躍するクリエイター、さらには海外で活躍するエンジニアや文化人を招き、生徒たちに幅広いキャリア選択の視野を提供してきました。


 また、NFTバッジ制度を導入して生徒の成長を可視化しています。このバッジ取得に必要な条件は生徒に公開しているので、生徒自身の習熟度の確認も可能となります。さらに、青楓館は通信制サポート校として全国初の海外大学指定校制度を獲得しており、生徒の進路選択の幅を広げています。現在、大学進学や専門学校進学、就職、起業支援、ワーキングホリデーなど、多岐にわたる進路をサポートしています。


 教員と生徒の比率は1:25で、他の学校と比べてきめ細やかな指導が可能です。教員が生徒と向き合う時間を最大化するために、さまざまな効率化を図っています。たとえば、オンライン教材を活用することで、教員が授業準備にかける時間を短縮し、その分1on1指導や個別対応に時間を割けるようにしています。


 更に教員向けの指導マニュアルを整備し、教育方針や指導方法を統一することで、全教員が高い質の指導を提供できるようにしています。これにより、生徒への個別サポートの質をさらに向上させることを目指しています。


青楓館の教育モデルを全国に


八木:では青楓館学院が現在抱える課題や、今後の展望について教えてください。


岡内:直面している課題の一つは、新しい教育スタイルに対する社会的地位の低さです。多くの保護者や教育関係者は、通信制サポート校が提供する柔軟な学びの価値を十分に理解していないケースが多く見受けられます。


 また、生徒一人ひとりの多様な進路希望に応じる中で、進学や就職先の企業・大学との連携を深めることも重要な課題です。たとえば、海外大学指定校制度のさらなる充実や、国内外の企業とのインターンシップ機会の拡大が必要だと考えています。


 さらに、教員の給与増加と負担軽減も解決すべき問題です。教員不足解消のため、新卒の初任給30万円を打ち出しています。また個別対応や1on1指導を実現するためには教育のDX化や業務の効率化をさらに進める必要があります。たとえば、AIを活用した学習管理システムの導入や、より柔軟なオンライン学習ツールの展開を検討しています。


八木:今後、どのような展開を目指していらっしゃいますか?

岡内:青楓館の教育モデルを全国に広げることを目指しています。また、地元企業や自治体との連携を深め、生徒が地域社会に貢献する場を増やしたいと考えています。さらに、NFTやオンライン学習ツールを活用したデジタル技術の導入、そして海外大学指定校制度を活用した国際化の推進にも取り組んでいきます。


八木:大きな可能性を感じて大変応援したいと思いました。本日はお時間いただきありがとうございました。


左:生態会 西山、右:青楓館学院 岡内氏

 

取材を終えて

青楓館の由来は、「楓」の花言葉が「美しく変化する」なので、入学前の生徒はまだまだ青い状態かもしれないが、どんな色に変化していくのか?というロマンチックな想いを込めているとのこと。岡内代表と藤原学院長が働いていた元AO入試塾で培われたノウハウが教育に反映され、指導の質を高めていルノに加え、毎月の親との集まりなど手厚いサポートが整い、家庭と学校の連携も重要視されています。新しい教育スタイルに感動するとともに、20代で学校を作った岡内代表の熱量に圧倒された取材でした。(ライター八木)

 

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