【特別レポート】欧州最大のスタートアップ祭典 VIVA TECH 2025 - 18万人が来場。AIが話題の中心に
- 西山裕子
- 8月15日
- 読了時間: 5分
更新日:8月25日
2025年6月11日~14日にパリで開催された、VIVA TECHNOLOGY 2025をレポートします。生態会の視察は、2023年から連続して3度目。今年も、生態会が取材した関西スタートアップの出展が見られました!(取材:生態会事務局長 西山裕子)
<生態会の取材これまで>
にぎわう展示会場。フランスらしい洗練された色使いで、全体がデザインされている。規模感と多様性は、世界トップレベル。
過去最大の18万人が来場。171か国から集まった、多様な人と技術の数々
VIVA TECHNOLOGY(以下VIVATECH)は、フランスの新聞社と広告代理店が共催する欧州最大規模のテックイベントです。9回目となる今年は、171か国から18万人以上が来場!1万4千以上のスタートアップ、3,600以上の投資家が参加して大賑わい。大阪・関西万博を思い起こす、盛り上がりでした。
2013年からフランスでは「フレンチテック」として、官民による施策でスタートアップを育成しています。ユニコーン(評価額10億ドル以上の非上場企業)も、34社以上が生まれるなど成果も出ています。今年は会場も拡大され、AI関連の出展が全体で約4割増加したそうです。フランスのマクロン大統領も初日に参加するなど、国としても重要視しています。
ルイ・ヴィトングループは自社の展示とともに、スタートアップへの賞も提供。次々と繰り広げられる、スタートアップのピッチ。AI技術を利用したサービスには注目が集まる。
キーノートはNVIDIA(エヌビディア)のジェンスン・ファンCEO。「AIの未来」は?

初日の基調講演では、NVIDIAの創業者でCEOでもあるファン氏が登壇。NVIDIAはアメリカの半導体メーカーで、AI分野において欠かせないGPU(グラフィックス処理ユニット)を開発・販売しています。
2025年7月27日現在、時価総額は世界一(2位はマイクロソフト、3位はアップル)。展示場所とは別の大ホールは、観客でほぼ埋まりました。

ファン氏は、NVIDIAの最新技術や今後の展開を説明し、AIが社会や産業に大きな変化をもたらすこと、ヨーロッパ中でAIのインフラを広げることなどを説明しました。
また「AIのデータセンターはコストがかかる場ではなく、ChatGPTのようなトークンを生産するAI工場である。収益を生み出し各国の重要なインフラになる」と強調。自社の新製品の紹介をするとともに、AI業界のさらなる成長を語りました。ほぼ単独で、1時間以上話し続けるファン氏(AIではなくご自身で)。強力なエネルギーを、感じました。
今年の特別招待国はカナダ。米国と関係が緊迫する中、AI大臣が各国との連携を語る
会期中には、様々なセッションがありました。私は初日、フランスのAI・デジタル担当大臣クララ・シャパズ氏と、カナダのAI・デジタルイノベーション担当大臣エヴァン・ソロモン氏のセッションに参加しました。冒頭でシャパズ氏は、AI技術の地政学的側面と、責任あるAI開発のためにカナダとフランスが連携することを説明しました。
今年5月に、カナダで初のAI・デジタルイノベーション担当大臣に就任したソロモン氏は、最初と最後にフランス語で挨拶をしていました。印象的だったのは、「半年前なら話は違ったが、今はフランスをはじめ他国との連携が必要(トランプ大統領がカナダへ圧力をかけていることを示唆)」との言葉です。そして「カナダには、AI専門の優秀な人材、安定した投資環境、持続可能なクリーンエネルギー、豊富なネットワークがある」と、自国をアピールし、国際的に活躍するカナダのAI企業と共に、その力を強調していました。
実際カナダ政府は、AI分野に25億ドル、AI安全研究所に20億ドルを投資するそうです。もともとカナダはAI国家戦略を世界で初めて作った国で、AI研究も世界をリードしています。VIVA TECHにも600人、100社以上のAI関連企業を派遣しています。エヴァン氏自身もビジネスマンであったことから、「自分で事業をするのは勇気がいる。毎日が戦いで、アップダウンの連続だ」と、スタートアップへの敬意を語っていたのが良かったです。
生態会が取材した、関西スタートアップも出展!
関西スタートアップレポートで取材した3社が、出展していました。株式会社オーシャンアイズ(京大発)、株式会社テラアクソン(神戸大発)、株式会社エルシオ(大阪大学発)です。3社とも連携先企業や自治体から招待され、海外進出の道を探っていました。

JETROと4自治体とで、Japan Villageを展開

昨年は日本がCountry of the Yearであり、今年はそのフォローアップとしてJETROが20社のスタートアップ(AI・ロボティクス・SDGsなど)を選定し、Japanパビリオンを設置し、日本のスタートアップ企業の出展をサポートしました。また、東京都・愛知県・京都市・仙台市の自治体が、出展し、JETROと共にJapan Villageとして日本のスタートアップをアピールしていましたた。
東京都は2023年からSusHi Tech Tokyoを開催するなど、近年スタートアップ支援に力を入れています。2025年度スタートアップ支援の予算は、525億円(前年度455億円)と拡充しています。関西も負けていられないですね。

JETROパリの、井上尚貴氏にお話を伺いました。
「フレンチテックが始まって、10年以上経ちます。フランスは継続してイノベーション創出に力を入れています。日本でも少しずつ知名度が上がり、スタートアップが海外進出を考えるとき、ヨーロッパも選択肢の一つになってきたようです。
JETROではグローバル・アクセラレーション・ハブとして、フランスだけでなくイギリス、スペイン、ドイツなどでも現地のアクセラレーターと契約して、現地情報やメンタリング、ビジネスマッチング支援の無料提供などをしています。世界進出を目指す関西スタートアップにも、ぜひ活用してほしいですね。」
【所感】
VIVA TECHには2023年にも参加しましたが、2025年は規模も大きく、より盛況でした。現地で会ったアクセラレーターによると「今、世界的にスタートアップのイノベーション創出に、人や金が集まりやすくなっている」とのこと。日本でも、関西でもスタートアップへの期待を感じますが、世界的な潮流であることを実感しました。
分野として注目されているのは、やはりAIです。フランスやカナダには、AI担当大臣がいることは驚きでした(デジタル庁ではなく、AI)。日本もそして関西も、AI関連のスタートアップは数多く生まれています。今後、グローバルに成功する企業が生まれることを期待します。(西山)
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