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  • 執筆者の写真森令子

ヨーロッパ最大のテックイベント「VIVATECH」レポート&日本とフランスを繋ぐSINEORA社 今井公子社長インタビュー

生態会では、関西のスタートアップ・エコシステムに加え、日本国内や海外のスタートアップ事情についても、様々な形で情報収集しています。2023年6月には、事務局長の西山裕子と、生態会会員で「関西スタートアップレポート」ライターの森令子がヨーロッパ最大のテック&スタートアップ見本市「Viva Technology 2023」(2023年6月14〜17日開催)を視察し、報告イベントなどで生態会やその関係者にフランスの様子を共有しました。この記事では、Viva Technology会場の熱気、そして、VivaTechで日本企業向けガイドツアーを実施しているSINEORA社長のインタビューなどを森がレポートします。

取材・レポート:西山裕子(生態会事務局)、森令子(ライター)


Vivatechサイン前での集合写真
写真左から:森(生態会)、吉原氏(株式会社大広)、西山(生態会)、今井氏(SINEORA社)

 

Viva Technology の最大の特徴は、大企業とスタートアップのオープンイノベーション

Viva Technology(以下、VivaTech)は、フランス・パリで毎年開催されているオープンイノベーションとテクノロジーの見本市です。フランスの新聞社と広告代理店の共催で2016年にスタートし、今年は過去最大規模の174カ国15万人の入場者を集め、”ヨーロッパ最大”のテックイベントにふさわしく、大いに盛り上がっていました。


最大の特徴は「大企業とスタートアップの協業を見せる場」であることです。大企業の構える大きなブースに協業スタートアップが出展しており、業界の課題と解決策を、企業側とスタートアップ側、両方のソリューションで見ることができます。VivaTechの創設以来のパートナー企業のLA POSTE(フランス郵政公社)、orange(フランス大手通信会社)、BNPパリバ(フランス発グローバル金融機関)、モエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)などが会場で目立っていました。


私は生態会初期に事務局リーダーを務めたご縁もあり、「関西スタートアップレポート」取材ライターとして、関西の注目スタートアップを多数取材してきました。本業では、マーケティングスペシャリスト・中小企業診断士として顧客をサポートしていますが、生態会との活動では、スタートアップやそのエコシステムに接することで、いつも大いに刺激を受けています。今回のVivaTech視察では、海外の最先端スタートアップの動き、そして、大企業とスタートアップの関わり方をぜひ体感したいと思い、会場を回りました。アクセラレーションやビジネスコンテストの域にとどまらず、実際に採択されたスタートアップと企業の協業が進んでいることが、各社の展示から伝わってきました。

写真左:出展社は約2,800社!色々なスタートアップに話を聞きました 写真中:豪華な顔ぶれのステージセッションも多数開催 写真右:イーロン・マスク氏のセッションは満員で入れず、中継画面で視聴。マスク氏への関心は非常に高く、建物外まで人があふれるほど!

フランス郵政公社LA POSTEのブース。物流センターで稼働するロボットについて西山がスタートアップに取材

写真左:オレンジ〜青〜ピンクと優雅に変化するLVMHのブース「The Dream Box」 写真右:廃材ウールで緩衝材(プチプチ代替品)を開発したエストニアのスタートアップ「Woola」、LVMHアワードファイナリストです


国際色豊か!韓国K-Startupの勢いがすごい

ヨーロッパ各国はもちろん、アフリカテックも大きなスペースで展開、中東・アジアからも多数出展していました。なかでも今年の主賓国、韓国は50社以上のK-Startup企業が参加し、とても目立っていました。

韓国の大きなブース

日本からは、スタートアップ数社が単独で出展しているほか、東京都も参加していました。しかしながら、国や大企業など大規模な出展はなく、国としての存在感は残念ながら小さかったです。国としての出展はもちろん、大企業がJ-Startupを牽引するなどして、もっと世界にアピールしていけるといいなと感じました。


そんななか、生態会が「関西スタートアップレポート」で取材した株式会社toraruが、大阪から出展しており、嬉しい再会でした!

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フランスのスタートアップ政策、フレンチテックとは?

なぜ、VivaTechが欧州最大のイベントになったのか。そこには開催国フランスのスタートアップ振興策フレンチテック(French Tech)が関わっています。

製造業の衰退、人材流出など経済の閉塞感を背景に、フランスは経済政策の柱として2013年からフレンチテックを推進、数十億ユーロ規模の公的投資や、研究開発への税制優遇措置、グローバルな情報発信など様々な形でスタートアップの育成に注力してきました。主にデジタル分野のスタートアップで大きな成果がでており、当初目標の”2025年までにユニコーン(時価総額10億ドル以上の非上場企業)25社創出”を前倒しで実現、2022年にはユニコーン28社を達成しました。現在は、”2030年までに100社”を目指しています。


たとえば、「フレンチテック・ネクスト40/120」(有望なスタートアップを選出するプログラム)では、2023年の120社の合計売上高113億ユーロ(前年95億ユーロ)、雇用者数4万7,800人(前年比5.8%増)、資金調達総額135億ユーロ(前年比16%増)と成長の様子がわかります。出典:JETRO

 

エコシステム形成策としては、フランス国内に13のフレンチ テック都市圏を指定し、地域の既存産業を活かしたスタートアップを育成しています。また、世界約100都市に拠点を設置、自国のスタートアップの海外展開はもちろん、海外スタートアップのフランス進出や優秀な人材の流入を図る、オープンでグローバルなネットワークとなっています。


VivaTech自体は民間のイベントですが、国を挙げてのスタートアップ振興策が背景にあるため、盛り上がっているわけです。マクロン大統領も毎年、VivaTechを訪問しており、今年の来場時には70億ユーロのスタートアップ支援やAIへの投資などを会場で発表し、話題となっていました。

会場全景

世界最大の見本市CESと比べると、“プロダクト展示が多いCES、ソリューションやサービス展示が多いVivaTech”という違いがあるそう。説明を受けたい参加者のために、VivaTech会場を巡るガイドツアーが多数実施されていました

ノルマンディー地域圏のブース

ノルマンディー地域圏ブース。関西スタートアップを応援する生態会なので、各地域のエコシステムに大変興味がありました。が、広大な会場のため地域圏ブースまでは細かく回れず、、、次回の視察では、ぜひ注目したい!


今年の注目テーマは生成AI、サステナビリティ、スポーツ

ステージセッションでは生成AIが話題の中心でしたが、展示では、環境負荷軽減、脱炭素などサステナビリティ分野のスタートアップが目立っていました。2024年のパリオリンピックに向け「スポーツ」の展示エリアも今年初登場していました。それぞれのテーマで、注目スタートアップなどを少しご紹介します。


生成AI

jumbo mana :ゴッホの肖像画と会話

生成AIで“キャラクターに命を吹き込む”フランスのスタートアップ。ヴァン・ゴッホの肖像画が表情豊かに動き、自然な対話ができます。あらゆる資料を学習し、話し方、声、仕草などゴッホの個性を復活させる試みだそうです。ゲームやブランドのキャラクター、美術館などでの没入感あふれる展示体験など様々な可能性があります。


CEOは「倫理的なAIを開発すること、本人へのリスペクトは最優先に開発している」と強調していました。それにしても、ゴッホがイケメンすぎるのでは・・・と気になりました。

jumbo mana社の代表が説明

サステナビリティ

Impact+:コンサルティング会社

ロレアル(グローバル化粧品企業)のブースに出展していたスタートアップ。デジタル広告の温室効果ガス排出量を測定する世界初のソリューションを開発し、広告活動による二酸化炭素排出を削減できるよう、広告主へコンサルティングしています。日本では、デジタル広告と二酸化炭素排出量を紐づけた議論はこれまで見たことがなく、驚きました。同社HPが、いまどきあまり見かけないテキスト中心のシンプルな構成なのは、動画やアニメーションなどは二酸化炭素排出量を増やす余分な演出だから、だそうです。


Agua de Sol :水蒸気から真水をつくる、電源不要のパネル

フランスのスタートアップ。湿度が高い夜間に水蒸気を吸収、日中の太陽光で蒸発した水滴を集めるパネルを開発。パネル1枚で1日2リットルの真水が生産でき、電源不要で水不足を解決します。「水を簡単に大量に作れるこのパネル、設置もメンテナンスも簡単です!」と語るCEOのLuc Metivier氏のにこやかな笑顔が印象的でした。

スポーツ

スポーツに関わるイノベーションも多数集結。オープニングセッションには、パリ市のスポーツ担当副市長ピエール・ラバダン氏が登壇し、スポーツが社会に及ぼす影響、オリンピックのレガシーをどう活かすかなど、オリンピック開催前年らしい希望あふれるスピーチを聴くことができました。


日本とフランスをオープンイノベーションで繋ぐ!SINEORA社今井氏インタビュー

今回の視察では、渡航前のプランニングから現地ガイドツアーまで、SINEORA社(以下、シンノラ)に多くのサポートをいただきました。シンノラは、グローバルレベルでの事業展開・オープンイノベーションのための企業間のリレーション構築を専門としており、ヨーロッパとアジアをつなぐBtoBパートナーシップに強みがある企業です。


シンノラを創業したのは、日本人の今井公子(Kimiko Imai)社長です。VivaTechにも深く関わっており、今井氏とシンノラの皆さんのおかげで、私たちもVivaTechの広大な会場で、多くのユニークなスタートアップに効率的に話を聞くことができました。VivaTech会場で、今井氏にシンノラの事業やミッションについてインタビューしました。

今井公子氏インタビューの様子

日本と欧州、大企業とスタートアップの最新テクノロジーを知る専門家として起業


生態会 森令子(以下、森):シンノラを設立した経緯を教えてください。


シンノラ 今井公子氏(以下、今井氏):私は日本の大学院を卒業し、フランスのIT大手ダッソー・システムズで、ノキアなどグローバル製造業のDX、新規事業、投資など多くの経験をしました。ダッソーでの約20年で特に印象的だったのは、テスラを顧客としたことです。スタートアップだったテスラが数年でトヨタのような巨大企業になるのを間近で見ていましたが、本当に驚くような体験でした。


日本とヨーロッパ、大企業とスタートアップの両方を理解し、最新テクノロジーにも強い自分の経験を活かして、社会にもっと貢献したいと考えるようになり、フレンチテックが急成長し始めた2019年に、スタートアップとして起業することを決めました。


森:ご自身の強みが活かせるビジネスで起業されたのですね!


今井氏:そうですね。シンノラではマッチングだけではなく、顧客のビジネスを成長させる”触媒”を目指しています。例えば、AIを軸にビジネスを展開しようとしても、課題、環境、先行事例、業界の動向など、様々な要素がありますよね。私たちはフランスに6名、日本に2名のメンバーがおり、広く深い経験を持つチームとして顧客企業を支援しています。


日本企業にはオープンイノベーションが必要。次のトヨタを生み出したい


森:今年のVivaTechの印象はいかがでしたか?


今井氏:西山さん、森さんにシンノラのツアーで見ていただいたように、難しい課題に果敢に取り組むユニークなスタートアップが多く、非常に見応えがありました。生成AIとサステナビリティ、そしてディープテックなど、これからが楽しみなスタートアップと数多く出会うことができました。韓国もVRなどの最新テクノロジーを多く展示していましたね。これらは以前は日本が強い分野だったはず、出遅れてしまったのではと感じました。

今井公子氏が会場でツアーについて説明

ヨーロッパから今の日本を見ると、アニメ、グルメなどポップカルチャーのイメージしかありません。日本が大好きで「日本に行きたい!」と言うヨーロッパ人は大勢いますが、イノベーションやテクノロジーといったキーワードはイメージされません。フランスも10年前はワインやチーズ、観光、高級ブランドといった従来のイメージでした。それが、フレンチテックにより“スタートアップの国”というイメージが浸透してきています。CESなどでもフレンチテックは非常に目立った存在です。


現在、イノベーティブなイメージの日本企業はトヨタくらいです。様々なランキングにも現れていますよね。私はノキアの凋落を間近で見ていましたが、ノキア1社だけだったフィンランドは、スマートフォンによるゲームチェンジを越えられませんでした。日本も、早く”次のトヨタ”を生み出さなければ間に合いません。頭で考えるより、行動しないと乗り遅れ、忘れられるだけです。かつての日本企業の強さを取り戻せるよう、シンノラでもサポートしていきたいと考えています。

スタートアップの説明を聞く今井氏

ディープテック分野に強いこともシンノラの強み。今井氏(写真右)の紹介で、Spark Cleantech(メタンからの水素抽出を研究開発するフランスのスタートアップ)にも話を聞きました


森:シンノラでは、日本の拠点を2023年に大阪に開設したそうですね。関西のオープンイノベーションやスタートアップについてどう思いますか?


今井氏:シンノラの最初の顧客も関西企業で、大阪とはご縁を感じています。


日本とフランスは、東京とパリへの一極集中という共通の課題がありますが、フレンチテックはフランスの地方に活気を生み出しています。ストラスブールはバイオサイエンス、グルノーブルはディープテック、トゥールーズは宇宙、ボルドーは航空など、地域圏ごとに既存産業をベースに特色あるスタートアップ・エコシステムが成長しているのです。例えば、ボルドーにはダッソー・グループの航空機産業があったため、同分野のスタートアップが集積しています。ヒト・モノ・カネ全てが集まらないと持続可能なエコシステムにはなりません。“一晩で産業はできない”ということです。


関西には、決断力あるオーナーが牽引するグローバル企業が数多くありますよね。関西のスタートアップは、そのような既存企業とのオープンイノベーションも含め、最初からグローバルを狙い、世界で勝てるビジネスモデルをつくるべきです。そこをシンノラでご一緒したいと思っています。関西経済を活性化するような成功事例、ロールモデルを創り出したいですね。


シンノラの日本企業向けVivaTechガイドツアーとは?

シンノラでは、VivaTech開催のたびに日本企業向けのガイドツアーを開催してきました。出展スタートアップを開催前から独自に調査し、開催初日に会場全体を取材、注目スタートアップを厳選し、ツアー参加者の興味関心に沿ったツアーを実施しています。私たちも、今年のVivaTechでは、今井氏の英語・フランス語・日本語を駆使したインタビュー&通訳により、スタートアップ責任者から直接、ビジネスを説明してもらったり、質問したりでき、効率的に情報収集ができました。VivaTechを隅々まで知っている今井氏やシンノラメンバーによるツアーは非常にありがたかったです。

写真左:今井氏(左)が注目スタートアップを紹介する日本企業向けツアー

写真右:VivaTech女性起業家アワード協賛企業にシンノラのロゴも。ワーキングマザーでもある今井氏は、女性起業家支援にも取り組んでいるそうです


やはり、スタートアップの成長には行動あるのみ!

今回のVivaTech視察により、スタートアップの成長は、地域や国の経済活性化に大きく貢献することを改めて実感しました。フレンチテックの仕組みや、韓国のアグレッシブな勢いなどを見ると、国や地域や企業など、あらゆる関係者がオープンなネットワークで協業していくことが、必要不可欠なようです。


個人的には、今年のVivaTech視察後、フランス語の学習を本格的に再開してみたりと、再度の訪問に向けて情報収集に励んでいます。次回のVivaTechでは、もっと日本企業や日本のスタートアップ、特に関西のスタートアップの勢いを実感できると嬉しいです。私も、生態会を通してその一助を担えれば!と思っています。

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