top of page
  • 執筆者の写真西山裕子

”行けないを解決する”遠隔作業代行サービス:toraru

関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家たち。今回は、遠隔作業代行サービス「GENCHI」の開発運営している株式会社 toraruの代表取締役社長 西口 潤(にしぐち じゅん)さんにお話をお聞きしました。富士通アクセラレーター第9期採択や、厳格な審査で知られる世界最大のテクノロジー見本市CES2021出展など、注目のサービスです。


取材・レポート:西山裕子(生態会事務局長)、八木曜子(ライター)

 


西口 潤(にしぐち じゅん)代表取締役 略歴


ソフトウェア開発会社や2回の転職経て金融系システム会社にて銀行内部の監査関連の部署で幅広いシステムの知識を得たのち独立。


実体験の「行けない」問題を解決するため、2018年株式会社toraruを設立。









生態会事務局長 西山裕子(以下、西山):本日は、お時間いただきありがとうございます。まずは、事業概要とサービスの詳細を教えて下さい。


toraru 西口(以下、西口):GENCHIという、遠隔作業代行サービスを開発運営しています。私自身が家庭の事情で遠方にいけないという、移動の制限を体験したことから”行けない不自由”を解決したくて始めました。


GENCHIは、依頼者が現地にいる登録ワーカーに、希望のミッションと達成時の報酬額を送って希望を募ります。受託者は依頼者の体の代わりとなって働き、共同でミッションを達成する、ボディシェアリングのプラットフォームです。遠隔作業をするためのハード開発にも挑戦したことがありますが、今は用事を済ませたい人と現地のワーカーさんをマッチングする、ネットワークサービスが主です。


そもそも移動すること自体には価値がなく、用事を果たすための経費です。自分が行かなくても、スマホと動いてくれる体があれば、テレポーテーションしているように作業が可能です。現地人材のスマートフォンアプリを通じて、リアルタイムに体験を共有し、GENCHI内で遠隔QRコード決済も可能です。簡単な翻訳も、サービスの中で使えるように開発していて、VR、ドローンやロボットシステムとも連携を始めています。全体的な仕組みの部分、QRコード決済、言語を翻訳して指示や感情が伝えられる仕組み、電波状況に関する特許も持っています。




ライター八木(以下、八木):課題解決の意識から、このサービスが始まっているんですね。実際のニーズは、どういったものがありますか?

西口:工場見学や展示会、マンション用地探しのようなBtoCに加え、CtoCでは住民票をとりにいく、アニメ好きの外国人の聖地巡礼のようなニーズも産まれています。どうやって認知を広めるかが、今の課題ですね。たとえば福島原発の周りで、新しい街を作ろうとしています。いちごの栽培施設やインキュベーション施設ができたりと、再生し始めているのですが、そのような情報は実際に行かないとわかりません。強いコンテンツと組む形で、僕らの手段が広められないかと模索しています。いまだと展示会に足を運ぶことが難しい方に対して、展示会主催者とも提携して、ワーカーさんに働いたりしてもらっています



GENCHI プラットフォームのしくみ

以前からオンラインの二次元で、ポイント to ポイントとして顔と顔が「会う」ことは可能でしたが、コロナ禍で普及しました。これからは、ポイント to ムーブになると考えています。偶然の出会いも生まれる「行く」事自体を、オンラインで体験させたいと考えています。競合は飛行機や車のような、「移動」そのものですね。Zoomは解像度が高くないので画像が荒いですが、GENCHIではきれいなテレビ画質で見ていただくことが可能です。


八木:たしかに、コロナ禍でオンライン会議が定着しましたね。競合が「移動手段そのもの」という考え方に基づく、新しいサービスということがよくわかりました。もともと起業意欲が高かったのですか?


西口:大学の頃から、起業を考えていました。就職氷河期世代ですが、多数内定をもらったことから、自分自身に営業力があることに気づきました。大学生の頃はホリエモンなどが活躍していたこともあり、違うことをやった方がおもしろいと考え、文系出身だったんですが、IT系のソフトウェア会社に就職しました。長時間労働のハードな職場でしたが、大規模プロジェクトなどを通じて、実力を養成できたと感じています。その後スタートアップなどで、転職を2回しました。最後は、銀行系の会社です。内部統制業務を通じて、いろいろなシステムとの連携などスキルを養い、退職してtoraruを立ち上げました。

西山:メンバーやワーカーは、どのような方がいるのですか?


西口:経営陣には、ツクリエの大西さんが参加されています。エンジニアは2名で外注しながら作っています。似たサービスを立ち上げていた、山形の会社とも協働しています。ワーカーは、1500名ほど参加しています。



利用風景

流れとしては、GENCHIに登録されているワーカーに直接依頼が届き、1時間1500円くらいで案件を受けていただいてます。よい副業になるのでは。わざわざ遠方に足を運ぶ必要もなく、双方向にメリットのある働き方改革にもつながってると考えています。toraruは東京支社もあって、東京のスタートアップ情報などもキャッチアップしています。大阪のスタートアップは、支社を東京に作ることをおすすめしますね。東京は億レベルの施策などもあるので、うまく行けば逆転の可能性もあります。


八木:なるほど。壮大なサービスですが、現状どういった課題をお持ちですか?


西口:ワーカーも増えてきたので、保険を検討しています。そろそろルールや指示を作るフェーズですので、こちらも進めています。案件自体も増やしたいですね。コロナ禍に伴うオンライン化で、ボディシェアリングの仕組みも理解されるようになったので、需要も増えていくと考えています。

西山:これからの展望は、どのようにお考えですか?

西口:みなさんに入れてもらえるアプリになり、世界中でBtoB、BtoCかかわらず、誰もが小さな仕事を受けれるようになってほしいです。また働き方の文脈で、分担可能な社会になってほしいですし、用事を済ませるために「行く」ことを選べる時代への一助となれば嬉しいです。採用に関しては、マーケティングや営業といった人材も参加していただきたいですね。


西山:ありがとうございました。これからの展開を楽しみにしています!




各種システムとの連携

 

多くのスタートアップ関連イベントに参加し、海外展開も見据えて活動されている様子は、高いポテンシャルを感じました。コロナ禍で遠方に行くことが難しくなったいま、このサービスは副業やギグワークが推奨される時流にもマッチしていて、新たな解決手段になりそうです。


「競合は飛行機や車です」と言い切る、西口さんの言葉が大変印象的でした。

(ライター 八木)






bottom of page