旅行先でプロ級の映え写真!内製カメラマン×インフルエンサーで観光革命
- akiyo K
- 12 分前
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関西スタートアップレポートでご紹介している注目の起業家たち。今回は、訪日韓国人向けの観光写真特化型OTA「Cheiz」を展開する株式会社LIFESHOT 梁東珍(ヤン・ドンジン)代表取締役にお話を伺いました。
取材・レポート:大洞 静枝(生態会事務局)
長谷川 明代(生態会ライター)

梁 東珍(ヤン・ドンジン)代表取締役 略歴
1992年生まれ韓国出身。日本文化に興味を持ち鳥取大学地域学部に入学。コロナ禍で卒業式が中止となり、クラスメートが次々とSNSで写真をシェアするのを見て「写真」の価値を感じる。新卒で横浜の商社に入社するも、変化する旅行業界にビジネスチャンスを感じ入社6ヶ月で退社。日本でのビジネス展開に向けたステップとして、まずは韓国に戻り法人を設立。2022年、仁川市スタートアッププログラムに採択され、仁川デモデイでは直接投資企業として選定される。それらの実績をもって再度日本に渡り、2023年、韓国人で初めてKOBE START UP VISAに採択される。株式会社LIFESHOTを設立。
「映え写真」ニーズの可能性に着目
生態会事務局 大洞(以下、大洞):本日はお時間いただき、ありがとうございます。まずは、株式会社LIFESHOTの事業内容について教えてください。
梁代表(以下、梁):私たちの「Cheiz」は、簡単に言うと写真撮影に特化した次世代のOTA(オンライン旅行予約サービス)です。従来のOTAといえば、飛行機やホテルを予約するだけだったと思うのですが、私たちはそこに「現地でのプロによる写真撮影体験」を組み合わせて、旅先での思い出を形に残すところまでをサポートしています。
大洞:確かに、旅行中って「いい写真を撮りたいな」と思うことは多いですけど、なかなか思い通りに撮れないですよね…。
梁:そうなんです。特に東アジアから日本に来る観光客の方は、「日本で素敵な写真を撮りたい!」と強く思っているんですけど、実際にはセルフィーやスマホだけじゃ限界がある。そこで、私たちはカメラマンの撮影+AIまたはインフルエンサーによる写真加工をセットにしたサービスを提供しています。
SNSが観光業を変えている、求められる「撮影体験」
梁:今、観光業界は大きく変化していて、SNS発信が旅の目的になる時代です。「映える」スポットに行きたい、それを撮りたい。だから、みんなが写真を撮りに行くことで、観光地自体が生まれるんです。
大洞:確かに、映える写真のために旅をする人も増えましたよね。
梁:そうですね。一方で、写真体験を主軸にした旅行サービスって、世界的にも少ないんです。Cheizでは、旅行の予約から撮影・加工・ダウンロードまでをワンストップで提供しています。たとえば今、韓国では「写真付きのバスツアー」がすごく人気なんですよ。ただの観光バスではなく、ガイドさんが写真も撮ってくれる。でも、これって実は課題も多くて…。ガイドさんがカメラを兼任すると、安全管理がおろそかになったり、写真の仕分けが大変だったりするんですよね。Cheizでは、撮影→加工→共有まで、すべてアプリで完結するようにしています。撮影後の写真は、カメラマンやインフルエンサーに依頼してレタッチしてもらうこともできます。
大洞:現状の旅行写真に対するニーズや課題を、仕組みでカバーするのが、Cheizの強みということですね。
梁:はい、まさに。仕組みの部分でいうと、今年は日本に来る韓国人のインバウンドを対象にしているので、このビジネスにはまず韓国語のできるカメラマンが必要なんですよね。韓国出身という強みを生かし、カメラマンの確保、さらに韓国人インフルエンサーによる映え写真のノウハウにより、独自のビジネスモデルを構築しています。来年からは日本から韓国、または中国や英語圏へ観光に行く方々も対象にする予定です。

ビジネスモデルと今後の展開
生態会ライター 長谷川(以下、長谷川):ビジネスモデルについてもう少し教えてください。高額となるカメラマンの費用はどのように支払われているのですか?
梁:プロカメラマンを手配するとビジネスが成り立たない…なければ作ればいい!と考え、我々でカメラマンを育成しています。ニーズのある写真を作り出すためのマニュアルを作成し、観光客の母国語ができる方を探し、撮影を依頼しています。それらの写真を、スキルを持つ写真インフルエンサーがレタッチし、映え写真が生み出されます。インフルエンサーは流行に敏感で感性も優れているので、まさにみんなが求めているようなプロ級の映え写真になります。
大洞:カメラマンに高い技術を求めるのではなく、レタッチに重点を置くことで「映え写真」を作る。発想の転換ですね。
梁:はい、求められる写真を作るレタッチ技術を持つインフルエンサーのネットワークも我々の強みです。基本の撮影データは1セット1,200円からスタートしていて、レタッチはプラス250円、体の補正などを含むフルレタッチは750円で提供しています。高いと思われがちなんですけど、実際はほとんどの女性ユーザーがフルレタッチを選ぶんです。原本で満足する人もいるけど、極端に「全部加工する」か「一切しない」かに分かれるのが興味深いなと思ってます。

撮影の価値に気づいた原点は「卒業式のスナップ写真」
大洞:このサービスを始めようと思ったきっかけを教えていただけますか?
梁:大学を卒業したとき、ちょうどコロナの影響で卒業式が中止になってしまい…。そのとき、クラスメートが次々とSNSで卒業記念のスナップ写真をシェアしていて、やっぱり写真っていいなと感じたんですよね。そのあと横浜で働いていたのですが、山下公園を歩いていたら特定のスポットで「写真を撮ってください」とよく頼まれるようになって。インスタにあるようなこういう写真が欲しいと言われる中で、「これって観光客にニーズがあるんじゃないか?」とビジネスの可能性を感じました。
大洞:なるほど、実体験から得た気づきだったんですね。起業を決められた後、1度、韓国に戻られたんですよね。
梁:はい。日本で法人を設立するために、韓国に戻りました。韓国の写真インフルエンサーとコネクションを作り、仁川アクセラレーションプログラムで採択され、日本で法人を設立する基盤を作った後、日本に戻りました。
大洞:日本での起業ありきで戦略的に進められて、すごい行動力ですね!
梁:今考えるとハードルが高いことをしていたなと感じます(笑)
韓国インバウンドから東アジアへ
大洞:最後に今後のビジョンを教えてください!
梁:現在は6人チームで動いていて、そのうち5人が韓国人。開発メンバーには日本在住のインフルエンサーもいて、撮影やSNS戦略にも強いと考えます。まずは韓国インバウンド、今後は日本、中国、台湾といった東アジアに展開予定です。私たちが目指しているのは、旅の「写真体験」を、より身近で価値あるものにすること。そして、集まってくる撮影データを活用して、AIレタッチの精度をさらに高めていく予定です。旅の全体験を一つのアプリで完結させられるよう、これからも開発を進めていきます。
長谷川:ありがとうございました。「撮影」という価値にフォーカスすることで、旅の体験そのものが変わる。とても興味深かったです。今後のご活躍、期待しています!

取材を終えて
観光名所を訪問すると、アジア圏観光客の方々が自撮り棒を使って撮影し、かつ何度も撮り直されている姿を目にします。「Cheiz」は旅行者の「写真」に対する課題を解決し、「プロのような映え写真」という新たな価値を提供するサービスと感じます。梁代表が指摘する「各国で好まれる写真やSNS映えの違い」についても納得感があり、それらを捉えたアジア圏への展開戦略にサービス拡大の可能性を感じます。実際見せていただいたCheizで提供される写真は、ドラマの一場面のような美しさで驚きました!(ライター:長谷川明代)
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