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子ども大人も夢中に! 未来をひらく金融教育をプロデュース:株式会社マネイク

  • heartheart62
  • 1 時間前
  • 読了時間: 8分

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は株式会社マネイクの代表取締役を務める西岡奈美さんにお話を伺いました。マネイクは「お金のことをかんたんに! おもしろく。投資をもっと身近に」を理念に、子どもから大人までを対象に金融教育を届ける会社です。学校や行政、金融機関、企業と連携しながら、講演や授業、イベント、個人相談へと活動を広げています。今後、西岡さんは金融教育を通じてどんな未来を描こうとしているのか、その原点から現在、これからの展望に迫ります。


         取材・レポート:垣端たくみ(生態会事務局)、小林希実子(ライター)


株式会社マネイク 西岡奈美氏 略歴

1980年、尼崎市出身。証券会社にて営業職を経験後、出産・子育て期を経て金融教育分野へ。2012年より金融教育をボランティア的に開始。2017年には「キャサリンとナンシーの金融教育」として事業化し、公立学校での授業実践は800回以上にのぼる。元・伊丹市教育委員。2022年、株式会社マネイクを設立。2026年春より武庫川女子大学大学院に進学し、金融教育に関する研究に取り組んでいる。


学校の先生になりたかった思いが

子どもたちへの金融教育につながった。


生態会事務局 小林(以下、小林):本日はありがとうございます。まず、現在どのような事業を展開されているのか、教えていただけますか。

マネイク 西岡(以下、西岡):私たちは、「お金の話を簡単に面白く、投資をもっと身近に」を理念に、子どもや若い世代に向けた金融教育に取り組んでいます。とはいえ、金融や投資という言葉には、どこか難しそう、堅そうという印象があります。だからこそ、子どもたちにも親しみを持ってもらえるよう、西岡である私を「ナンシー」、パートナーを「キャサリン」と名乗り、「キャサリンとナンシーの金融教育」として活動しています。そして授業やイベントで白衣を着るのも、ファイナンシャルプランナーをお金のお医者さんに見立て、難しく感じられがちな金融の話を少しでも身近に伝えるための工夫です。 もともとは講演や授業から始まった活動ですが、実践を重ねる中で、今ではイベントの企画・運営・プロデュースへと広がってきました。さらに、受講生の方から個人相談の要望も増えてきたことから、現在は個人相談業務にも取り組んでいます。






小林:この仕事を始めようと思った原点は何だったのでしょうか。

西岡:本音を言えば、私はずっと学校の先生になりたかったんです。小さい頃からそう思っていて、教員採用試験も受けました。ただ、当時は「まずは非常勤講師から」という流れが強くて、私はお金に少し苦労した経験もあったので、非正規ではなく正社員で働きたいという気持ちが強く、それで就職活動をして証券会社に入りました。

そこで、経済の基礎や株式会社の仕組みを学びました。世の中の多くの人が株式会社で働いているのに、株式という仕組みを意外と知らないまま大人になっているんじゃないか、と感じたんです。知ったうえで投資するのか、しないのかを選べるようになる方がいい。そう思ったことが、今の仕事の出発点のひとつでした。




「ありがとう」と言えなかった後悔が お金の見方を変えた。


生態会 垣端(以下、垣端):お金の教育に向かう背景には、ご家族との経験もあったそうですね。

西岡:はい。私は祖母のお金を使い倒して大人になったんです。学費も、生活費も、欲しいものがあればお願いして買ってもらうような生活でした。でも、祖母が亡くなった時に、私は本気で「ありがとう」と言えないまま別れてしまったことに気づき…

しかも私は祖母をお金持ちだと思っていました。でも実際は、食堂を経営したり、空港の清掃員をしたりしながら、一生懸命働いて私たちのためにお金を用意してくれていた。私はそれを知らずに、もらって当たり前だと思っていました。

もちろん、使わせてもらったこと自体を後悔しているわけではありません。祖母にとって、それが生きがいだったのだと思います。ただ、その意味をちゃんと受け取れていなかったことの後悔は、自分の中にずっと残っています。だからこそ、子どもたちにはお金を単なる数字ではなく、人の思いや働いた時間とつながったものとして伝えたいんです。



子どもには、金融の本質がよりまっすぐ届く

小林:最初から子ども向けの金融教育を軸にされていたのでしょうか。それとも、大人向も含めて活動する中で、今の形が見えてきたのでしょうか。 西岡:いえ、最初は大人向けにやったこともあります。でも、大人はすでにお金に対する価値観ができあがっています。資産形成や投資にしても、自分なりの先入観がある。もちろん入る人もいますけど、全体で見ると子どもの方がはるかに素直です。

子どもは「知らない」状態から入るので、投資の本質や資産形成の考え方がストレートに届きやすい。私はもともと教育に関わりたかったこともあり、子どもの方が成果が見えやすいと感じて、そこから「子どもでいこう」となりました。

もう一つ現実的な理由もありました。金融教育を大人向けにしている人はすでにたくさんいます。その中に、専業主婦から始めた二人が入ってもなかなか勝てない。でも子ども向けなら、まだやっている人が少なくて、私たちにも戦える余地がある。教育的な意味でも、事業としても、ここに可能性があると思ったんです。

著書:親子で学べるお金のドリル(アルク)。3.4年生向けと5.6年生向けがある。
著書:親子で学べるお金のドリル(アルク)。3.4年生向けと5.6年生向けがある。


自主開催で人が来ない時期を越えて、学校と企業へ。


垣端:ここまで順調に見えますが、最初はやはり大変でしたか。

西岡:大変でした。最初は自主開催だったので、そもそも人が来ないんです。何の講座かも伝わりづらいし、告知の仕方もわからない。会場代だけ出ていく状態で、「これ、仕事としてやっているのに身銭を切っていてどういうことなんやろう」と思っていました。

そこでキャサリンと、「営業に行こう」と決めました。二人とも証券営業の経験があったので、公的機関にチラシを持っていって、「一度見に来てください」と地道に説明して回りました。最初は怪しまれることもありましたけど、実際に見てもらうと「ああ、そういうことを伝えたかったんですね」と理解してもらえて、そこから夏休み講座や学校案件につながっていきました。白衣姿も、そうした現場で少しずつ定着していったもののひとつです。難しい話をする人ではなく、「お金のことを相談できる人」として子どもや保護者に覚えてもらううえで、視覚的なわかりやすさが大きな役割を果たしてきました。

その後、金融庁から親子向けイベントの仕事をいただいたことも大きな転機でした。ちょうどNISAを広げたい時期で、親向けだけでは届かないから親子向けで、という流れがありました。その実績が信頼につながって、銀行や信用金庫、金融に入っていきたい企業からも声がかかるようになってきました。





金融教育の効果を可視化し、もっと広げるために。


小林:これから先、どんな展開を考えていますか。


西岡:今は大学院で学んでいますが、金融教育の効果をきちんと数字で示せるようになりたいと思っています。金融教育って、手応えはすごくあるんです。でも「効果は何ですか」と聞かれた時に、エビデンスとして示しきれない難しさがある。そこを研究して、子どもにも大人にも意味のある教育だと、もっと説得力を持って伝えられるようにしたいと思っています。

そのうえで、行政ともっと手を組みたいと思っています。学校だけでなく、自治体全体で「全世代に金融教育を届けます」と言えるような取り組みができたら面白いですよね。若い世代にも、高齢者にも、お金のリテラシーがあることで、暮らしの安心感や選択肢は広がります。

企業とももっと組みたいです。今は金融教育の会社として見られがちですが、私は本質的には「難しい話を簡単に面白く伝える」ことが得意なんじゃないかと思っています。だから、新入社員研修のように、難しい業務や制度をわかりやすく伝える仕事にも広げていきたい。

さらに、金融教育実務家®のネットワークも育てていきたいと考えています。AIで効率化できる部分は増えましたが、対面でしかわからない表情や間、言葉にならない感情を受け取る力は、やっぱり人にしか持てません。そこを大事にしながら、伝え手を増やしていけたらと思っています。

お金は人生を縛るものではなく、選択肢を広げるための道具。マネイクが届けようとしているのは、単なる家計の知識ではなく、「知ることで、自分の人生を選びやすくする力」です。先生になりたかった思い、証券会社で学んだ経済の視点、祖母との記憶、子育てを通して見えてきた現実。そのすべてがつながって、今の金融教育の形ができています。子どもも大人も、お金をもっと自然に学べる社会へ。マネイクの挑戦は、その入り口をひらく試みとして、これからさらに広がっていきそうです。

取材を終えて

西岡さんのお話を伺って強く感じたのは、金融教育を単に「お金の知識を教えること」で終わらせていない点でした。お金の有無だけで人生の選択肢が決まるのではなく、知識や考え方を身につけることで、選べる道は広がっていく。その思いの背景には、西岡さんご自身の経験やご家族との記憶があり、だからこそ言葉に実感と説得力があるのだと思いました。子どもに向けた金融教育は、投資や家計を学ぶだけでなく、自分の人生をどう選ぶかを考える土台にもなる。難しいことをわかりやすく伝え続ける西岡さんの姿勢に、深い敬意を抱きました。(ライター 小林希実子)



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