神大起業部発!アトピーの当事者が開発、かゆみをケアする緑茶染め衣料:SkinNotes(スキンノーツ)
- AI SATO
- 1 日前
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関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は、神戸大学起業部発、当部2社目となるスタートアップ企業 SkinNotes(スキンノーツ)CEO竹内悠人氏にお話を伺いました。アトピー当事者の発想から誕生した患者の辛さを抑える抗菌衣料です。
取材・レポート:西山裕子(生態会事務局)、佐藤 愛(ライター)

竹内悠人(たけうちゆうと)氏 略歴
2002年和歌山県和歌山市生まれ。アトピー歴20年。2021年神戸大学農学部入学、2023年起業部2期生として入部し、1期生2名と3人のチームで「アトピー性皮膚炎小学生対象インナーシャツ(肌着)」を開発。数々のビジコン受賞とともに、大阪・関西万博にも出展。2025年神戸大学を卒業。現在企業のイノベーション創出を支援する「アンカー神戸」サブマネージャーとして勤務しながら、SkinNotes事業に注力。
自分のアトピー原体験から考えた起業のアイデア
生態会 西山(以下、西山):神戸大学起業部は神戸大学アントレシップセンター長の熊野先生のもと、クラブ活動として発足したそうですが、いま盛り上がっていますか?
SkinNotes竹内悠人氏(以下、竹内氏):神戸大学起業部は2022年にできたので、 もう4年経ちました。定員が 50人ですが、入部希望者がそれを上回って、面接までするぐらい。僕ら以外も2社法人化していて、あともう 1社も法人化を予定しているぐらいのレベルまで上がってきています。
西山:竹内さんはどんな活動を?
竹内氏:僕たちの事業は、アトピー患者、主に小学生向けに、衣料でかゆみを抑制するということを目指し、インナーシャツを開発しています。
西山:スキンノーツは起業部に属するチームみたいな位置づけですか。

竹内氏:今はまだそうです。当初3人で立ち上げて、 3人ともアトピー患者だったこともあり、アトピーのいろんな課題を話したところ、一番深刻な課題が「かゆみを我慢できずにかいてしまうこと」という結論に至りました。特に小学生の頃がより辛かったということを思い出しました。大人の患者に比べて、子どもは治療薬や保湿剤を塗りたくないという気持ちが強いのです。また親御さんがいくらケアしても親の目が離れると子ども自身はそんなに気にしないことがあります。そこで、小学生を対象にするのが一番いいかなと思いました。
緑茶のカテキンがかゆみを抑える、
着替えるだけのインナーシャツ
西山:そもそもの緑茶で染めるというアイデアは、どこから生まれたのですか?
竹内氏:僕自身がもともとお茶好きで、お茶に含まれるカテキンの効果を調べてみたら、「脂肪燃焼」「抗菌」だったり、いろいろあるんですね。「花粉症に効く」という話も聞いたことがあり、そこからアトピーにも効くんじゃないかと考えました。マウス実験で皮膚の炎症が抑えられるというデータを見つけました。しかし詳細な裏付けデータはネットには出ていませんから、モニターの方と実証実験を行いながら開発をしています。
アトピーはかゆみが起こらなければ、その他の課題が起こらないと思い、根本のかゆみを解決したいと思いました。現在、塗り薬が主流ですが、面倒くさくなったり、ベタついて嫌だとやらなくなります。最近は注射も出てきていますが、値段が高いです。もっと日常生活に溶け込むような形でケアできたらと、「肌着」にしようと考えました。抗菌効果がある緑茶染めを考えていたので、ちょうど「肌着」に合うんじゃないか、という流れになりました。
佐藤(ライター、以下佐藤):竹内さんは、起業部には 2期目で入部してらっしゃいますが、すぐにチームとして着地したんですか。
竹内氏:起業部では、1人で事業アイデアを 3案考えるんです。その時に「原体験から考えろ」と言われ、自分の中での原体験としてアトピーだと思い、同じアトピー患者だった3人でチームを組みました。原体験について話していたところ、小学校時代にアトピーでいじめられたという話も出てきまして。これだと結びつきました。
「緑茶染めインナーシャツ」でかゆみの悪化の原因の一つである「黄色ブドウ球菌」を減らすことができないかと考えました。シャツはオーガニックコットン 100%、染色する茶葉は普段は廃棄されている茶葉を活用し、肌にも環境にもやさしいというコンセプトにしています。
「黄色ブドウ球菌」が減るとかゆみが減って、快眠につながると考えています。普段着ているものを置き換えるだけなので、手軽で面倒くさがりの子であっても着用できます。脱ぐことがない限り効果は発揮してくれるので、親御さんにとっても安心だと考えています。

西山:開発の苦労は、どんなことがありましたか。
竹内氏:最初は自分たちで作りましたが、うまくいかず、試行錯誤を重ねました。染めなどの協力者を得て製品化し、2025年7月にECサイトで販売を開始しました。購入者の調査では、みなさんかゆみが軽減したと言っていただいています。病院やクリニックにも協力をいただき、より強固なエビデンスを取得して論文にもまとめたいと思っています。
医大、メーカー、協力企業と連携し、次なる展開へ
西山:クラウンドファンディングもされていましたね。どのような方から、支持を得たのですか? 連携している団体や企業はありますか?
竹内氏:はい。クラウドファンディングでは63万円が集まりました。応援してくれた方の中には、アトピー患者だった経営者もいました。ビジコンも積極的に参加し、これまでにトータルで150万円くらいの賞金を得ました。また、奈良県立医科大学の先生と共同研究に向けて話を進めています。企業や大学の先生、染めていただく工房さんなどとも一緒にやっています。
佐藤:インナーシャツを使った方からは、どのような反応がありましたか?。
竹内氏:最新のモニター調査では「29人中25人がかゆみが軽減した」と回答しています。86.2%です。ただ、薬に比べると、効果は劣るかなという実感はあります。ただ、手軽さ、快適さがすごく重要だなと感じています。こういった解決策というかケアの方法っていうのは、すごく必要とされているなと思っています。


西山:今後の事業展開については?
竹内氏:今後、法人化も検討しています。また、アトピーには精神的に辛い部分もあるので、「ものづくり」と並行して「コミュニティづくり」を広げていきたいと思っています。たとえばオンラインで「コミュニティサロン」を設けたり、オフラインでもイベントしたりとか。みなさんの意見を吸いあげつつ、患者さん、親御さん同士で意見交換してもらって、知恵を共有できるような場を作れたらと思っています。

佐藤:現在、他にどのような課題がありますか。
竹内氏:第一弾として、繊維製品を作りましたが、協力工房に手染めしてもらっているので、どうしてもコストがかかってきます。そこで自分のお気に入りの服に「アトピーのかゆみを抑える効果(柔軟剤?)」をつけるような製品を開発できたらすごくいいなと思っています。
そのために、いま大手飲料メーカー、繊維メーカーさんなどとも連携し研究を進めています。アトピー関連の市場規模は、世界で14兆円という試算もあります。一般医療機器まで行けたらいいなという思いもあります。「アトピー性皮膚炎患者さんが明るく前向きに生きられる社会へ!」という理念のもと、今後も事業を展開していきます。
西山、佐藤:アトピー患者さんのために、新たな開発を楽しみにしています。本日はありがとうございました。

取材を終えて
アトピー歴20年という大学生によって開発された「緑茶染めインナー」。症状のつらさがわかる当事者ならではの企画力と誰にでもわかりやすいコンセプトが強みの製品です。しかし手染めによる少量生産で、コスト高なため販売価格も高いのが課題です。また薬機法の壁もあり、効果をうたうことが難しいとか。ビジコンでは快進撃を続けても、実際のビジネスでは課題は山積みだそう。それでも「患者さんが明るく生きられる社会のために!」と明るく笑う竹内さん。約14兆円にのぼるアトピー世界市場の開拓に、ぜひブレークスルーして欲しいです。(ライター佐藤愛)




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