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AI時代にフィットした学習塾「ミライ式」を展開!教育インフラを再構築する​:株式会社TricoLogic

  • 執筆者の写真: 松井 知敬
    松井 知敬
  • 12 分前
  • 読了時間: 9分

関西スタートアップレポートでご紹介している注目の起業家たち。今回は、学習塾「ミライ式」を運営する株式会社TricoLogic(トリコロジック)の 西尾 彰将(にしお あきまさ)​さんにお話を伺いました。


取材・レポート:垣端 たくみ(生態会事務局)、松井 知敬(ライター)



西尾 彰将(にしお あきまさ)氏 略歴


奈良県出身。2019年、在学中に起業。2023年、子どもたちの考える力が低下していることに危機感を覚え、「ミライ式」を開始。また、AIを活用して子どもたちを地域のお店やコミュニティと繋げる活動もしている。著書に、「現役東大生が教える 絶対に成績が上がるハイブリッド勉強法」がある。


■「問題を解く」という学習スタイルとはまったく違うもの


左上:垣端 / 右上:西尾 / 下:松井
左上:垣端 / 右上:西尾 / 下:松井

生態会 松井(以下、松井):本日は、どうぞよろしくお願いします。まずはじめに、御社の事業内容を簡単にご説明いただけますか?


TricoLogic 西尾(以下、西尾):「ミライ式」という学習塾を運営しています。AI時代に必要な「考える力」を伸ばす学習塾です。

松井:一般的な塾との違いは、どういったところでしょう?


西尾「自分の意見を持つ」ことに主眼を置いているのが、大きな特徴かなと思います。こちら、実際に使っている国語の教材プリントなんですが、おもて面に文章読解があります。アインシュタインの相対性理論に関する文章を読んで問いに答える、一般的な塾であればここまでですね。うちでは、さらにうら面があって、「未来か過去に行けるとすればどちらに行きたいですか? そこで何をしたいですか?」という問いがあります。これは、「問題を解く」という学習スタイルとはまったく違うものです。


松井:なるほど、答えを出すだけではなく、自分の意見を述べる、と。国語以外はどんな感じなんでしょう?


西尾:社会だと、おもて面で沖縄のことを勉強した後に、うら面で「沖縄の家ってどっちだと思う?なんでそう思った?」という問いがあったり。理科だと、星の自転公転を勉強した後に、氷でできた星、巨人が住んでいる星などを想像して書いてもらったり。いずれも「自分の意見を持つ」ことを重視した形になっています。


松井:めちゃくちゃ面白そうなんですけど、子どもたちの反応ってどんな感じなんですか? 中には、ちょっと戸惑う子もいるのかなと思ったんですけど。


西尾「とにかく楽しい」って言われることは多いですね。ただ、おっしゃったように戸惑う子もいます。受験勉強を頑張っている子のほうが、その傾向は強いかもしれません。先程の「過去か未来か」の問いに、答えられなかった子もいます。賢いがゆえに、「正解はどっちだろう?」って考えちゃうんですよね。だけど、当然、正解なんかないのでフリーズしちゃってて。


松井:そういう子たちも、毎回、答えていくうちに変わっていくんですかね?


西尾:はい、だんだん変わっていきます。日本の教育って、「自分の意見を言う」ということをあまりしないので、マインドセットから変えていく必要がありますね


生態会 垣端(以下、垣端):この授業をどれぐらいの頻度でされているんですか?


西尾週に1回から3回まで選んでいただけます。週に1回通っていただくと、1年間で1学年分が終わります。なので、週に2回通っていただくと半年で、週に3回通っていただけると4ヶ月で1学年分が終わることになります。学習内容は、学習指導要領に載っている全科目全範囲となっていて、それらの先取り学習ができます


垣端:先取り学習がこれだけ短期で終わるのは、何か秘密があるんですか?


西尾:義務教育って、いろんな子を一人も取り残さないという制約があるので、そもそもがすごくゆっくりなペースなんですね。「ミライ式」では、1週間に1回であったとしても、1年間できちんと1学年分が終わるよう、カリキュラムを組んでいます。速くてついていけいない、みたいなことはありません。


垣端:webサイトには、中学受験や高校受験のコースも載っていましたが、そういったニーズにも対応しているんですか?

西尾:はい。今のところ、受験する子としない子の割合は半々といったところです。現在、受験ニーズの高い地域に教室を出しているのでこの割合ですが、今後、いろんな地域に教室が増えていけば、受験しない子の割合が増えていくと思います。「受験はしないけど学習習慣をつけさせたい」というニーズには、学研さんと公文さんで市場を二分している現状ですが、「ミライ式」はそのリプレイスになれればと思っています




■社会に出た瞬間に「AI活用しましょう」と切り替わる、これはまずいんじゃないか


松井:なぜ、「ミライ式」を始めようと思ったんですか?


西尾:僕、東京大学の松尾研でAIの研究をしていたんですけど、先生にこう言われたんです。「西尾君、これから15年もすればAIは意味理解ができるようになるよ」と。それから5年後にChatGPTが登場し、AIに相談して問題解決していくことが当たり前になりつつあります。そんな中で、「今の教育って合っているのかな?」というのが、疑問だったんですね。今って、問題を解きまくって、いわばAIが強い分野をひたすらやっています。そして、生成AIは課題やテストに使わないようにしましょう、という風になっています。小学校、中学校、高校、大学とそれで来て、社会に出た瞬間に「AI活用しましょう」と切り替わる、これはまずいんじゃないかと


松井:なるほど、AI研究をしていたからこそ今の教育に疑問を持った、と。


西尾:そうです。AI時代に人がするべきことは、まず「ああしたい、こうしたい」という意見を持つこと。正解不正解よりも、自分が何をしたいのかのほうが大切だというのがあって、「ミライ式」をつくりました。


松井:創業はいつですか?


西尾:2019年です。今の会社って実は2社目で、それ以前に株式会社言楽舎という会社を立ち上げています。僕、家があまり裕福じゃないんですね。世帯年収300万円ぐらいしかない家で、大学入学以降の学費も生活費も全部自分で払っていました。そういう状況に加えて、親父が休職することになり、家計も支えないといけなくなってしまったんです。バイトでどうこうなる範囲ではなくなり、始めたのが最初の会社です。


松井:そちらは、どのような事業を?


西尾:大学受験塾の運営です。現論会」と言って、今、全国に50校ぐらいあります。映像授業と参考書を使ったコーチング塾で、スタディサプリの講師だった人と共同創業しましたその後、松尾研でAI研究を始めることになるんですが、「松尾研の技術を社会実装するスタートアップをつくろう!」という流れがあり、そこでできたのがTricoLogicです。創業当初は、AIサービスの開発などを手掛けていたんですが、「AI時代に合った教育を届ける」というところに行き着き、2023年に「ミライ式」を立ち上げました。そのタイミングで大阪に移転し、今に至ります。


松井:「ミライ式」は、現在、何校あるんでしょう?


西尾:今のところ、大阪4校とオンライン校で計5校です。


松井:4校とも大阪にあるのは、何か意図があるんですか?


西尾:いわゆるドミナント戦略ですね。いきなり広い範囲で大資本とやり合ってしまったらまず勝てないので、まずはどこかの県でシェアをとろうと。で、なるべく資本の投下効率がいいところということで、大阪を選びました。大阪の教育基盤ってすごく潤沢で、たとえば「大阪市習い事・塾代助成事業」といって、学習塾、家庭教師、文化・スポーツ教室などの費用を一定金額補助してくれる制度もあるんです。それを使えば、「ミライ式」に月2,000円で通わせることができます。




■「ミライ式」を起点として、子どもたちを地域とつなげていきたい


垣端:今後の展開は、どのように考えていますか?


西尾:まずは、大阪を中心に「ミライ式」を増やしていきます。そして、「ミライ式」を起点として、子どもたちを地域とつなげていきたいと考えています。子どもたちの学習データが蓄積されれば、AIが一人ひとりの能力や特性を認識し、いろんなレコメンド情報を送ることができます。たとえば、「得意を伸ばすのにこの本がいいよ」だったり、「水泳に適性があるよ」だったり。前者なら、図書館の蔵書を検索して、「この図書館にある」という情報と一緒に送ればいいですし、後者なら、スイミングスクールの無料体験と一緒に送ればいい。こうやって地域との接点をつくることで、地域の資産を活用しながら子どもたちの教育をしていきたいと思っています。


垣端:地域との連携を深めて、学びの枠を広げていくということですね。


西尾:はい、そうです。残念ながら、小学4年生になったから塾以外の習い事をやめないといけない、というのをよく聞きます。勉強が忙しすぎるから、と。「ミライ式」の場合、受験する子でも週2回で突破を目指したりするので、やめなくてもいいんです子どもたちには、いろんなことに興味を持ってほしいし、多くの経験を積んでほしいという想いがあります。勉強だけしていても仕方ないですし、受験のためだけの勉強もしてほしくないんですよね。もっと世界を広げてあげられれば、と思います


松井:もう、一般的な塾の概念を越えていますよね。


西尾:我々は、学習塾をしたいというより、教育インフラをつくりたいんですよね「ミライ式」があることでいろんなきっかけが生まれ、結果、子どもたちの可能性が広がり、地域も活性化する。そんな風になりたいと思っています。

垣端:その発想って、どういうところから来ているんですか?


西尾その地域の教育リテラシーが高いことって、実はとても大切で、教育がうまくいく要因のひとつだと言われているんですよ。地域の人たちがみんなで協力して教育するとうまくいくと言っている論文は、結構あって。それを実現しようと思っています。


垣端:最後に、読者へのメッセージをお願いできますか。


西尾:AI時代にフィットした学びを届けているので、ぜひ、体験してみてください。無料体験も用意しています。また、地域の提携先は常時募集しているので、興味のあるかたはぜひお声かけいただけるとありがたいです。


垣端 松井:本日はありがとうございました。


取材を終えて

「教育 × AI」というと、タブレットを使った個別最適化や、AIを活用した学習効率化に話が行きがちだが、「ミライ式」は学習内容そのものをAI時代にフィットさせる。AIの進化により、わたしたちの仕事や生活はすでに変化し始めている。であれば、子どもたちへの教育内容も見直す必要があるだろう。従来の「学習塾」という形を崩していく「ミライ式」。既成概念の刷新。まさに、スタートアップが果たす使命だと思う。(ライター 松井知敬)


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