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「高齢のおひとりさま」問題を解決!弁護士が運営する信頼の身元保証サービス

  • 執筆者の写真: 敦志 中野
    敦志 中野
  • 7月31日
  • 読了時間: 9分

更新日:8月8日

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は、頼る身内がいない高齢者や障がい者に向けた身元保証サービスを運営する株式会社あかり保証の代表取締役・清水勇希さんにお話を伺いました。

取材・レポート:

西山裕子(生態会事務局)、中野敦志(ライター)、櫛部未久(学生ボランティア)

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清水勇希(しみずゆうき)氏 略歴

1995年京都府宇治市生まれ。 立命館大学法学部を首席で卒業後、司法試験に合格。北浜法律事務所を経て、2022年10月にリット法律事務所を開設。弁護士として、介護法務、医療法務、不動産法務等に注力。2024年7月「身元保証業界を変えたい」「身寄りのない高齢者・障がい者の方に、信頼かつ安心のあるサービスを提供し、一番頼りになる存在となりたい」と思い、株式会社あかり保証を創業。 代表取締役に就任。医誠会国際総合病院の倫理審査委員会の外部委員、株式会社エアトリの社外監査役など、医療・介護分野に注力している。


■高齢社会にとって必要な身元保証事業の意味と意義


生態会 西山 裕子 氏(以下、西山):本日はありがとうございます。まずはじめに、会社設立に至る経緯についてお聞かせください。


「あかり保証」清水 勇希 氏(以下、清水):はい。大阪の北浜法律事務所で3年ほど働いてから独立し、2023年10月にリット法律事務所を開設しました。主に、医療介護の法務を専門にやっており、その関係で老人ホームからある人を紹介されました。その人から言われたのが「先生、わたしの保証人になって」でした。

よくよく話を聞いてみると、「老人ホームに入所するのに保証人が必要だ」と言われたんだけど、家族がいないから、代わりに保証人になってほしい、ということでした。それがきっかけで、身元保証サービス事業について色々と調べました。


身元保証サービス事業は、家族がいない、あるいは家族はいるが頼ることができない高齢者や、障がい者の方に向けて、家族の代わりに生活を支えるサービスです。

現在一人暮らしの高齢者は約800万人、2050年には1,000万人を超えると推計されています。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」
国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」

本来なら家族が担ってきた役割、何かあった時には保証人になり、病気の時は病院に付き添い入院の手続きをしたり、緊急時には駆けつける、亡くなった後には葬儀手続きをする、また亡くなった後には相続や遺産の処分、などを家族の代わりに行う、言わば家族代行サービス事業です。

すでに現時点でもニーズがあり、近年急増しています。また、これからも求められる事業であり、高齢化社会の大きな課題を解決することができる、意味や意義のある事業だと思い、創業しました。


西山:身元保証事業を始めるには、資格が必要なのでしょうか?


清水:それが不要なんです。誰でも始められます。西山さんも始めようと思えば始められます(笑)。おまけに法規制もなく、監督官庁もない。現状は、やり放題な側面があります。10年前には全国で33社しかなかったのが、現在400社超えています。この10年間で10倍以上の伸びです。中には、いい加減な契約をさせておいて、お客様の財産に手をつけるなどの金銭トラブルも頻発しています。

2016年には「公益財団法人日本ライフ協会」が、お客様の財産からお預かりしている約2億7000万円を勝手に流用し、2000人もの顧客を抱え倒産した「日本ライフ協会事件」が有名です。


西山:それはひどいですね。不信感が募りますね。


清水:そうなんですよ。だから我々は、業界の健全な発達を目指した、全国規模の業界団体を設立させるための準備委員会に2025年2月、全国6社の中の1社として参画しました。業界団体は2025年の11月頃に設立予定です。これによって、業界の信頼を確立しようとしています。


■「信頼と連携」が自社の強み


西山:「あかり保証」が他社と違う点は何でしょうか?


清水:身元保証事業は、単に身元を保証するだけでなく、お客様の財産管理を行い、死後は葬儀手続きや、財産の処分を行わないといけません。これは、法的な手続きに則って行う必要性があります。そういう点で、弁護士が母体というのは強みです。また、健康状態によっては入院や、施設への入居などの支援も重要になってきます。お客様のことを一番よく知っている、ケアマネージャーや看護師、社会福祉士など専門家の方々とともに事業をサービスしています。

このように「あかり保証」は「信頼と連携」を大切にしています。協力いただく事業者様とも、強いアライアンスを組んで進めていきます。

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西山:お客様が負担する金額について教えてください。


清水:現在では、他社よりも安価で提供しています。相場は100万円から300万円と言われる中、「あかり保証」では88万円でお受けします。なぜ、安価で提供できるかといいますと、弁護士事務所が母体であることの強みです。他社では、弁護士への外注費用が必要ですが、「あかり保証」では不要です。

中には死後、お客様の財産は自社にすべて寄付させる、という契約を行っている事業者もあります。「あかり保証」では、生前の意思を反映した有効活用ということを、約束して実行させていただきます。死後に財産をいただくということは絶対にあり得ません。


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■弁護士になったきっかけは母が見てもらった占い


西山:清水さんは大学在学中に、弁護士資格を取得されたということですが、いつから弁護士を目指されたのですか?


清水:高校生の時、ある日、突然母から「あんたのこと占いでみてもらったら、弁護士になるといいよって言われたよ」と聞かされ、少し気になって調べてみたら、面白いな、いいなぁと感じて、大学は法学部の道を歩みました。


大学在学中は、ずっと勉強していました。朝9時から夜10時までずっと図書館に居て、知らない学生からも「図書館の番人」と呼ばれていました。サークルも法律討論サークル「法友会」というものに入って、活動していました。大学生時代は法律一色でしたね。


西山:何としても在学中に資格を取得しようと思ったのはなぜですか?


清水:わたしは立命館宇治中学の出身で、中高大とラグビーを10年間やっていて、体力には自信があったのと、それまでに受験の経験をしたことがなく、浪人生というものが耐えられないと思ったので、全力投球で駆け抜けました。勉強したおかげで、なんとか取ることができましたし、大学も首席で卒業しました。


■強みを発揮して事業を立ち上げる


西山:素晴らしいパワーですね。そして卒業後は法律事務所に就職されたんですね。どうでしたか?


清水:大学時代は「立命の神童」と言われたのですが、北浜法律事務所に就職したら、先輩には京大、阪大、東大出身のものすごいエリートの方々が在籍されていて、自分の力では太刀打ちできないなと感じました。


そんな時、自分の強みって何だろうと考えました。「すぐやる、すぐ会う」という行動力と好奇心だと思いました。大阪弁護士会の講演会で、弁護士ドットコムを設立した、元榮太一郎先生のクラウドサインの話を聞き、かっこいいなぁという思いが芽生え、自分でも独立してやってみたいなという気持ちになり、東京まで会いに行きました。それから半年くらいで、リット法律事務所で独立しました。


その後、前述のご相談があり、2023年4月に身元保証サービスのことを知り、「一般社団法人ともしび」という団体を設立しました。「信頼と連携」を掲げ、弁護士では充足できない部分を、信頼のできる事業者様と組みたいと思い、金融機関に相談しに行きましたが、門前払いでした。そこで、出資をしてもらい、仲間になってもらうことが重要ではないか、と思うに至りました。その思いが結実したのが、2024年7月にスタートアップカンファレンスに参加したことです。起業家の熱気を感じ、ビジネスとしての可能性に確信を得て、1週間後には「あかり保証」を起業しました。


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西山:すごく早い決断ですね。ちなみに現在、身元保証サービスを利用している人はどんな方ですか?


清水:高齢者の一人暮らし、あるいはご夫婦の方で、身内が遠方である方が多く、他には将来のためにということで、40代や50代の方からも申し込みがあります。これは、5080問題というのがあって、80代の親の面倒を見てるんだけど、50代の自分に何かあった時のために、と契約していただいている方などがおられます。

また、毒親問題というものもあり、縁を切りたいのでお金を払ってあとはお願いするというケースもあります。


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櫛部:契約時、申込者が認知症であるかどうかの判断はどうされているのですか?


清水:はい、我々はそこは何度も契約者の方とお会いして、認知症の判断をしています。もし、契約者が認知症と判断した場合には、国の後見制度の利用でお願いしています。


中野:生活保護受給者の方でも契約できるとありますが、支払はできるのでしょうか?


清水:はい、実際は支払いについて厳しい面もあります。現時点では50代60代で健康状態に問題なければ、という感じですが、我々の事業としてもまだまだ多くを対応できる体力がないというのが正直なところです。しかし、生活困窮者の方は本当に大変で、現時点ではケアマネージャーさんや、介護現場の方が無償で対応しています。介護にかかわる人の負担を軽減したい、という思いも強いので、早く事業を軌道に乗せなければと思っています。


西山:現時点での競合や、将来予測される脅威はありますか?


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清水:関西圏で、弁護士事務所が事業としてやっているのは、唯一「あかり保証」だけです。財産を託すのに、弁護士は一日の長があると考えています。

現時点で専業の身元保証会社は50社から100社ほどありますが、そのほかは、ほとんどが不動産業、葬儀業の副業や関連会社としての運営が多く、信託銀行も財産保全という文脈で進出されていますが、契約者様の死後、自社で財産を預かってしまうと利益相反になるために間に業者が入っています。また、弁護士事務所が非営利団体として運営しているところはありますが、事業会社である「あかり保証」とは全く違うと考えています。


西山:今後はどういう展開を考えていらっしゃいますか?


清水:私自身が営業マンとして、アライアンスの拡大を図っています。信頼できる事業者様との取り組みを進めているところです。

それに加え、拠点の拡大と認知向上が必要な課題だと思っています。関西での足固めと同時に、東京での拠点展開を考えています。そのうえで、身元保証サービス事業自体の認知向上が必要です。そのための資金調達を進めていこうと思います。


西山 中野 櫛部:本日はありがとうございました。


取材を終えて

高齢化社会の課題解決に向けて、身元保証サービスだけでなく、家族代行サービスという言葉に、途方もなく可能性を感じました。信頼のおける事業会社とアライアンスを組むことで、もっともっと、サポートできる範囲が広がり、高齢者の孤立という社会課題の解決につながるのではないかと期待しています。(ライター 中野敦志)

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