• 田代蒼馬

イベントレポート:スタートアップが企業と契約する際の注意事項とは!?資金調達済みスタートアップによるぶっちゃけ話

2021年11月9日(火)に、生態会主催、「スタートアップが企業と契約する際の注意事項とは!?資金調達済みスタートアップによるぶっちゃけ話」が開催されました。(オンライン・オフライン両開催)。イベント内容をご紹介させていただきます。


                 レポート:田代蒼馬 (生態会 学生ボランティア)

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今回のゲストは、ライトタッチテクノロジー株式会社(以下、LTT社)・代表取締役 山川孝一氏と、栄光綜合法律事務所・弁護士の森田 豪先生の2名です。



LTT社は、先端レーザー技術を駆使し、世界初の採血が不要な血糖値センサーを開発するスタートアップです。2021年7月にもシリーズA資金調達ラウンドを実行し、2017年の創業以来の調達総額は補助金等を含めて約3億円にのぼります。弁護士先生の助言を得ることで、大型の調達をスムーズに完了できたそうです。


また、栄光綜合法律事務所・弁護士の森田 豪先生は、これまで10社のスタートアップの資金調達契約の支援をされてきました。その過程で、スタートアップが資金調達の予備知識を得て、先々のストーリーを想定できていれば、回避可能なトラブルも複数あったと語ってくださいました。



そんなお二人を迎え、以下の目次でトークセッションを開催しました。


▼目次

前半: 資金調達編

1: 株式発行の予備知識

2: デット、エクイティそれぞれの利点とは

3: シリーズA実行時の検討事項


後半: 契約編

1: 秘密保持契約(NDA)の注意点

2: 何を契約するか?(業務委託や共同研究において)

3: 知財の帰属

4: 代金回収条件


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前半: 資金調達編



1: 株式発行の予備知識(森田先生)

”自社のストーリーに合わせた、適切な調達方法を”


エクイティをデットと比較すると、「返済義務がないものの、経営者の持株割合が低下する」など、一長一短があります。また、「VCに投資回収のための”EXIT”を用意しなくてはならない(IPO・M&Aなど)」、「シリーズAの条件がシリーズB以降にも影響してしまう」など、考えるべき点は多いです。


そういった様々な条件がある中で、経営者は何を軸に判断すれば良いのか。その1つが、自社のストーリーです。


「○年後にはこんな世界を創る」。そういった事業計画が決まっていれば、自ずと必要な資金が決まり、資本政策がより具体的なものになってきます。




2: デット、エクイティそれぞれの利点とは(山川氏)

”助成金のスキームをうまく活用する”


LTT社における、他のスタートアップとは一風変わった方法で資金を調達することが多いと言います。その方法が、助成金による資金調達


助成金を活用することで、事業に必要な資金をシェア低下を回避しながら調達することができます。


特にLTT社は、試作機を作るのに必要な資金を助成金によってまかない、それを企業や投資家へアピールすることで、さらなる事業機会・投資機会の増加に繋がりました。


ただ、一定以上事業がスケールした場合に振り込まれる助成金も多く、支払いまでの期間を融資で繋いだりと、キャッシュフローには気をつけなくてはなりません。”助成金 ベンチャー”と検索し、助成金を探すこともよくあります。




3: シリーズA実行時の検討事項(森田先生・山川氏)

”企業のストーリーを描き、適切なタイミングで弁護士に相談を”


シリーズA実行時には、投資家/ 1株あたりの評価額/ 調達総額/ ストックオプション...と、考えることが多岐に渡ります。その際、資本政策と事業計画を一体として捉え、資金調達を検討することが大切です。


LTT社の場合、研究開発→仮説・検証→量産化をにらんだ開発→臨床研究→厚生労働省への認可→IPO...といった企業が歩むストーリーがありました。


売り上げ計画に対して異論を唱えてくるVCもいましたが、明確なストーリーを描いていたためはっきりと「NO」と伝え、結果的にぶれのない資金調達を行うことができました。


また、遅くともタームシート(大まかな契約条件が記載された書類)確定前には弁護士に相談しましょう。

LTT社の場合は、スタートアップの資金調達に詳しい森田先生に相談することで、的確なアドバイスをもらえました。



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後半: 契約編



1: 秘密保持契約(NDA)の注意点

”NDAの内容を、取引先に応じて変更する必要もある”


企業間の秘密保持に関する契約であるNDA。LTT社の場合、事業提携の検討の際には技術面での説明が自然と多くなるため、情報の開示には非常に敏感になっています。


ある一定の情報を提示し、事業提携の可能性があると判断した場合にのみ、条件をより細かく定めたNDAを結び、次の打ち合わせに臨みます。


ただ、NDAを結んだ後に正式な契約に至る確率は10%にも満たず、「NDA止まり」になることも十分に想定しておく必要があります。


また、「今後は同業者と提携をしない」など、思わぬ契約によって別案件での事業展開が阻害される可能性もありますので、弁護士に相談することが大切です。



2: 何を契約するか?(業務委託や共同研究において)

”業務内容を明確化し、受託制作の透明化を”


受託制作において、受注者はだらだらと作業されることを防ぎ、発注者は頼んだ業務をしっかりと遂行してもらうことが必要です。


検収 / 代金支払 / 成果の帰属等、受注業務において考慮する点は数多く存在します。業務内容を明確に定めて、双方がスムースに進行できるような契約を結ぶことが大切です。




3: 知財の帰属

”誰の知財か?その所有元を明確に”


「知財はお金を払った発注者のものだ」と考えている企業が多いですが、そうではありません。自社帰属 / 相手帰属 / 共有特許等、契約時にしっかりと決定する必要があります。


スタートアップ企業が、知財を共有にしてしまったために、成長が阻害されてしまった例も少なくありません。


LTT社では、助成金やVCからの出資で得た資金を元に基本知財を開発し、それを確立した段階で他社との事業提携を本格化しました。そうすることで、知財を守ることに成功し、その後の事業展開もスムーズに進みました。



4: 代金回収条件

”曖昧にしてはいけない、代金支払”


支払期日や検収条件を明確に定めていないことで、思わぬトラブルに発展するケースもあります。


受注者は、契約内容がはっきりしないまま作業させられることもあるので、下請法を指摘して、交渉することも大切です。


発注先がVCの投資を受けて資本金が膨らんだ企業の場合など、下請法が効かないケースもありますので、受注者は「常に守られているわけではない」という意識を持つ必要があります。




【イベントを終えて】


契約に際して、弁護士など専門家に依頼することの重要性を感じました。NDAの内容の確認や、自社知財の保護など、各フェーズで結ぶ契約に気をつけるべき点があり、個人で調べながら各業務を行っていては、思わぬ失敗に繋がりかねないと学びました。


イベント中、山川氏が「森田先生には法律や資金調達に関して頻繁に相談しているが、よく間違いを指摘され、怒られる」と語っていたのがとても印象的でした。僕自身も起業することに関心がありますが、特に初期のフェーズにおいては、弁護士の方に相談するのは資金的に難しいのではないかと考えていました。ですが、今回のイベントを通して、契約を結ぶ際に検討すべき事項が多くあることはもちろん、その落とし穴も同時に多く存在することを学んだので、事業の企画・推進と同程度に、法律面も十分に意識していければと思います。

(学生ボランティア 田代)


 

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