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  • 執筆者の写真森令子

世界初!経口がん免疫療法薬開発を目指す神戸大学発 創薬スタートアップ:イムノロック


記事タイトルと白川氏画像

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は、株式会社イムノロックの代表取締役CEO 白川 利朗氏に話を伺いました。ビフィズス菌の特性を利用した新規経口ワクチンプラットフォーム技術を有し、世界初のがん免疫療法確立を目指す、神戸大学発の創薬スタートアップです。

取材・レポート:西山裕子(生態会事務局長)

森令子(ライター)

 

白川 利朗(しらかわ としろう)氏 略歴

1967年兵庫県生まれ。神戸大学医学部医学科 卒業。1992年、神戸大学腎泌尿器科学分野入局。1996-98年、バージニア大学泌尿器科で癌遺伝子治療薬 開発研究。2001年、神戸大学大学院医学研究科腎泌尿科学分野助手。2005年、同大学医学部医学医療国際交流センター 助教授。 2003-2006年、前立腺癌の遺伝子治療臨床研究実施。2015年、同大学院保健学研究科国際保健学分野 教授。2016年、同大学院科学技術イノベーション研究科先端医療学分野 教授。


経口がん治療ワクチンを世界で初めて開発、特許取得


生態会事務局長 西山(以下、西山):本日はありがとうございます。まずは、イムノロックの事業について教えてください。


イムノロック白川 利朗氏(以下、白川氏):私たちは、経口ワクチンプラットフォームの開発を目指す神戸大学発の創薬スタートアップです。現在は、世界初の”飲むがん免疫療法薬”として期待されている経口がん治療ワクチンB440と、新型コロナウイルス予防ワクチンBCOV332の研究開発に取り組んでいます。

神戸大学医学部で、白川氏にお話を伺いました


注射中心の従来のワクチンと比べると、口から摂取する経口ワクチンは注射器が不要で痛みがなく、自宅で自分で服用でき、副反応が弱いなど、患者への負担が少ない期待の技術です。実用化すればワクチン接種のパラダイムシフトとなりえます。しかし、どのようにして抗原タンパクを腸管免疫系へデリバリーするかが経口ワクチンの長年の課題でした。


私は1990年代後半から、バイオ医薬品の研究開発に取り組んでおり、腸管免疫系への抗原デリバリーシステムとしてビフィズス菌を用いた経口ワクチンプラットフォームを世界で初めて開発しました。この研究をもとにした創薬をスピードアップするため、イムノロックを設立しました。

神戸大学での私たちの研究により「経口腫瘍ワクチン」をはじめ関連特許を4件(日本 米国 EU 中国など)有しています。その内、”飲むがん免疫療法薬”として重要な経口腫瘍ワクチン関連の特許2件は、大阪大学との共同研究によるもので、知財としても神戸大と大阪大(比率80:20)の共同出願となっています。


ライター 森令子(以下、森):経口がん治療ワクチンB440について、臨床試験が進行中とお聞きしました。詳しく教えてください。


がん患者を対象にフェーズ1臨床試験を実施


白川氏:B440は、がん免疫の主役であるキラーT細胞を強力に誘導し、がん免疫療法薬である免疫チェックポイント阻害剤との併用で相乗効果があることが、実験動物による前臨床試験で確認できました。2023年1月から、がん患者を対象としたフェーズ1の臨床試験を、神戸大学、広島大学、浜松医科大学で実施しています。


がん免疫療法は、手術、放射線、化学(抗がん剤)に次ぐ、“第4のがん治療法”です。2018年にノーベル医学・生理学賞を受賞された本庶佑先生が切り拓かれたのが、免疫チェックポイント阻害剤によるがん治療で、この分野の薬が実用化されたことにより、がん免疫療法は近年、急速に普及しています。


イムノロックの技術は、様々ながん種に対するがん免疫療法での活用に加え、がん以外の感染症領域などでの創薬も期待できます。


マウス膀胱癌モデルで、B440単剤および免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)併用での効果を確認


幸運にも”すごい技術”に出会えた研究者の使命として、早期の創薬を目指す


西山:研究者、教育者、医者と大変ご多忙だと思います。なぜ起業を決意されたのですか?


白川氏:研究者としての道が定まったのは、私が29歳の時、留学先の米国ヴァージニア大学で、まだ黎明期だった遺伝子治療の世界最先端の研究に触れたのがきっかけです。そこでの研究で、がんで悩むたくさんの患者さんの命を救えるかもしれないという大きな希望を持ちました。30年に及ぶ研究のなかで、研究というのは運に左右されるものだということを体験してきました。私は、幸運にも“すごい技術”に出会うことができたのです。


イムノロックを創業したのは、この”すごい技術”を1日でも早く患者さんにお届けしたいという思いからです。そのために、今は日々必死に動いています。創薬をスピードアップすることが何より大切なので、自社でやりきることにこだわらず、早期に製薬会社と協業するのも選択肢の一つだと考えています。


阪大・神戸大・神戸信用金庫のVCからシードBの資金調達

AMEDの資金も2017年以降、継続的に獲得


森:資金調達については、どのような状況ですか?


白川氏:2023年7月に以下のVC3社から1億400万円を調達しました。

  • 大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社(OUVC2号投資事業有限責任組合)

  • 株式会社神戸大学キャピタル(KUC1号投資事業有限責任組合)

  • フューチャーベンチャーキャピタル株式会社(こうべしんきんステップアップ投資事業有限責任組合)

創薬には、多額の資金が必要です。研究開発は、2017年以降、AMED(日本医療研究開発機構)から、資金(橋渡し研究戦略的推進プログラムシーズB)を獲得して進めてきました。実施中のフェーズ1臨床試験に必要な研究開発資金(シーズC、2022年から3年間)もAMEDから獲得しています。2025年にはフェーズ2臨床試験を開始予定です。それに向けて、2024年末までにシリーズA、10億円規模の資金調達を実現したいと考えています。

  

研究開発はもちろん、知財戦略、資金調達など事業に不可欠な多岐にわたる実務において、神戸大学のベンチャー支援機能など、様々なチームに手厚い支援を受けています。また、神戸大学に関連した医療機関や企業、大阪大学や京都大学など関西のアカデミアとも様々な形で協業しており、大学発ベンチャーだからこその規模とスピード感で、創薬が実現できています。


創業チームには、スタートアップ支援のプロフェッショナルや、バイオ医薬品の研究者など優秀な人材に恵まれており、経営面でもしっかりサポートしてもらっています。


学生のためにも大学発スタートアップとしてM&A、IPOを目指す


西山:“オール関西”ともいえるチームで有望な技術の実用化を目指していることに、感銘を受けました!今後の事業展開はどのように考えていますか?




白川氏:2025年からフェーズ2臨床試験を実施、終了時点の2026〜2027年には、製薬企業への導出やM&A、IPOによるExitを目指しています


私は、神戸大学大学院 科学技術イノベーション研究科で副研究科長を務めています。この研究科では、アントレプレナーシップを兼ね備えた理系人材の養成を目指しています。指導教授である私自身が起業家として成功することで、学生達にも「やってみよう」と思ってもらいたいですね。


西山:創薬の早期実現に期待しています。本日は、どうもありがとうございました。


写真左:白川氏、写真右:南 政貴氏(イムノロック 臨床開発部長)

 

取材を終えて

神戸大学をはじめ、大阪大学や京都大学、製薬会社との共同研究で着実に研究開発を進め、今は、起業家として経営チームをまとめ、大学や支援機関からのサポートを取り付けている様子に、白川氏の人間力を感じました。穏やかなお話ぶりで、最先端の研究について、わかりやすく解説くださり、大変勉強になる取材でした!

(ライター 森 令子)

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