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  • 執筆者の写真Seitaikai

起業家教育インタビュー:関西学院大学

更新日:2020年2月25日

レポート:垣端たくみ(生態会 学生社員)


関西の大学ではどのような起業家教育が行われているかを調査する企画。今回は、2019年7月24日に関西学院大学さんに伺いました。


インタビューにご協力いただいたのは、

関西学院大学国際学部ベンチャービジネス研究会の顧問・木本圭一国際学部教授・社会連携コーディネーター(左)

研究推進社会連携機構事務部 本荘雅章次長(右)

研究推進社会連携機構 社会連携センター 佐野芳枝マネージャー(中央)です。



木本圭一さん(左)佐野芳枝さん(中央)本荘雅章さん(右)


生態会(垣端)以下垣端と示す:本日はお時間を割いていただき、誠にありがとうございます!早速ですが、貴学の起業家教育の目的をお伺いできますでしょうか?

関学(木本教授)以下木本と示す:関西学院大学での起業家教育の目的は、大きく二つあります。一つが、起業家マインドの醸成のためです。学生が企業に就職する場合でも起業家マインドが必要だと考えています。もう一つは、起業マインドが既にあり、起業したいが、方法がわからない学生を支援するためです。


関学(本荘次長)以下本荘と示す:本学では、創立150周年となる2039年に向けて、「Kwansei Grand Challenge 2039」として超長期ビジョン・長期戦略を掲げて取り組んでいます。そして長期戦略テーマ「『質の高い就労』の実現」のための施策の一つとしてアントレプレナー養成を位置づけ、2019年度から本格的に取り組んでいます。


木本(関学):一方で、本学ではOBのIPO社長が10名を越えています。このような大学は全国でも少ないと思います。本学での起業家教育の取り組みにも大きな支援をしてくれており、今年度も7名が教壇に立ってくださっています。また、ビジコン審査やメンター的な役割もしてくださっています。この方々が起業されたのは大学によるアントレプレナー教育の結果ではないですが、理念、自由な学風、スクールモットーなどに影響を受けてのことだと思われ、このような実績が身近に既にあるのが本学の特徴です。「KGビジネスプランコンテスト」は14年前から、同法人の高校・中学校や継続校、提携校の中高大が連携して行なっている長期的取り組みですが、IPO社長の支援でここ数年、実際に起業する学生の動きが加速してきた感じです。


垣端(生態会):IPO社長たちのサポートが豊富なんですね。IPO社長をたくさん見ているということは、学生はIPOを目指していますか?


木本(関学):ここ数年の学生を見ていると、スケールを目指していると感じます。少なくとも社会連携センターに相談に来る学生はそのようです。


関学(佐野さん)以下佐野示す:IPO社長のみなさんから「大きく育てないと社会に貢献できない」ということを伝えている影響もあると思います。ピッチやプレゼンの審査コメントでもスケールを意識させる内容が多いです。


垣端(生態会):学生起業する人も多いですか?


木本(関学):多いですね。OBは「学生時代に起業することはメリットになることが多い。失敗しても経験になる」とコメントする人もいらっしゃいます。特に、低学年起業は、路線変更して就職することもできます。3年生で始めると「遅かったな」という感じもします。関西学院千里国際中等部の時に起業した鳥枝樹里亜さんは典型的な例かと。IPO社長の存在で起業への動きが加速し、最近では2017年卒で、学生のうちに事業をバイアウトした例などもあり、事例を学生が身近に感じられるようになっています。それが本当にありがたいです。大学教員と職員だけでは、ここまで加速はできないと思います。関学のIPO社長同士で交流が盛んな理由としては、本学のフェローも務めていただいている岡本社長(ライク株式会社が、社長グループとコンタクトを密にとってくれているからだと思います。


垣端(生態会):大学が関与する事業としては一番注力していることは何ですか?


木本(関学):「KWANSEI GAKUIN STARTUP ACADEMY」という、学生が起業経験を積む、有償の特別講座です。2017年が1期生で、元気な起業家がいます。8月から3期目がスタートします。あえて有償でやっており、単位が取れる授業でもないです。一方、一番裾野の広い起業家教育としてのアプローチが、IPO社長の講座&ビジネスプラン作成です。これだけは正課授業で単位になり、今年度は約170名が受講しています。2~3名1グループでプランをまとめます。私と佐野さんがハンズオンでサポートし、40アイデアにフィードバックします。うち半分がビジネスプランコンテストに応募してくる感じです。そこから、アカデミー、起業家と上がっていくルートが根付くと良いと考えています。

垣端(生態会):関学の起業家の特徴はありますか?


木本(関学):スマートで素直、吸収力があることですかね。その場の反応ということだけでなく、すぐに行動できるレスポンス力です。また、アドバイスしてもらえる愛嬌がある、結局は支援してもらえる「おじさんキラー」が有利かなと(笑)。 実家が商売をしている例も多いです。頭良くても、小生意気なのはよくないですね(笑)。 とうとうと持論を語るのは、動けていない学生だったりします。天才プログラマーならそれでも良いかもしれませんが。学生ピッチの時も審査員は、「素直さや質疑応答の態度なども見ている」とおっしゃっています。


佐野(関学):関学の学生起業家で有名なのは、「KWANSEI GAKUIN STARTUP ACADEMY」1期生の北森聖士さん(商学部)、関西学院高等部在学中に起業した長安成暉さん(商学部)、在学中に上場企業にバイアウトしその後も学生社長を務めた留田紫雲さん(国際学部卒)ですかね。


垣端(生態会):事務所など物理的なサポートはありますか?


木本(関学):大学としてはないです。アカデミーを有償にしているのと同じ理念ですが、起業するレベルの学生たちは、そんな支援はいらないし、欲しいと言っている学生もいないです。OBにつなぐと、メンターなどで助けてくれる人がいるからだと思います。(先の長安さんはライク株式会社から出資を受けている。


垣端(生態会):他大学では、教員や職員の異動で、起業家教育が減速したりもするが、そこはどうですか?


木本(関学):14年前に私がビジネスコンテストを立ち上げて以来、社会連携センターを主導しています。10数年間はアイデアコンテスト的にやっていました。ここ数年は、リアルに事業を起こせるレベルになりました。次はVCピッチを、大阪と東京でやるなども考えています。本学の組織でVC的なこともできるかもしれないです。専任職員としては、社会連携センター本荘さん、対外的には佐野さんと、チームがしっかりしています。


垣端(生態会):関学の起業家教育を受けたいから入学してくる生徒はいますか?


木本(関学):中高でビジネスプランをやっているので、大学で継続したいという思いを持っている生徒はいると思います。中高大一貫校の特徴として取り組んでいます。IPO社長が関わり始めて4年目ですから、そろそろ影響を受けた生徒が入学してくる頃です。


垣端(生態会):今の課題は何ですか?


木本(関学):1つは文理が離れていることかと思います。三田市には主に理系学部、西宮市には文系学部があり、直通バスで1時間ですが、この1時間が遠い(笑)。 触媒的な交わりがどうしても少ないです。ただ、神戸三田キャンパスの学部に在籍する学生がHult Prize(ハルトプライズ 学生のノーベル賞)の運営を担っていますし、西宮上ケ原キャンパスにアカデミーを受けにきて、それを持って帰ってくれるといいと思っています。


本荘(関学):大学として、理系学生へのアントレプレナー教育にも取り組み始めています。理系のシーズを起業に結びつけることを目指したい。もう一つは場所ですね。法人登記するオフィスなどではなく、「溜まり場」としての場所が必要だと考えています。


垣端(生態会):今後の展開はどうお考えですか?


木本(関学):2039年に向けてIPO社長100人輩出が目標です。学部生は、低学年の時に事業を起こして、色々な道を選べるようにアントレプレナーシップを身につけて卒業してほしい。また、一貫校の強みとして、中高とさらに連携を深めていきます。この取材を通して気づきましたが、実際に起業が成功しているのは、連携中高出身者が多いようです。鳥枝さんは関西学院千里国際ですし、バイアウトの留田さんは関西学院高等部です。国際学部のベンチャービジネス研究会学生20人中10名ぐらいが実際の起業希望を持っていますが、多くが高等部か啓明学院か帝塚山学院の出身者です。スケールとなるとアイデアが重要ですから、若い頃から鍛えた方が良いアイデアが出ます。ライク株式会社の岡本社長はビジネスプランコンテストの審査でいつも、「アイデアは中学校の方がいい」とおっしゃっています。総合大学として、中高大の連携は継続してやっていくべきことだと考えています。


垣端(生態会):ご協力いただきありがとうございました!



以上



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