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起業家教育インタビュー:近畿大学(2022年7月取材)

生態会では、四半期に一度「関西スタートアップレポート」を発刊しており、関西の起業環境の可視化とその発展に寄与するべく活動しております。2022年7月末に発刊した第11号レポートでは「大学発スタートアップ」について特集しました。記事の執筆に際し、関西で今勢いのある大学の一つである、近畿大学の起業家育成プログラムについて取材しました。新型コロナウイルス感染症が流行する前の取材からはや3年。前回の取材後の変化・もふまえて取材した内容を公開いたします。


取材にご協力いただいたのは、経営戦略本部 起業・関連会社支援室 室長の松本牧子様(写真右上)、主任の寺本大修様(右下)、長岡幸子様(中央下)、清水岳斗様(左下)です。



取材:生態会 事務局 垣端たくみ(中央上)

レポート:生態会学生ボランティア 大橋真衣(左上)


 

起業支援プラットフォーム「KINCUBA」始動


生態会 事務局 垣端(以下、垣端):本日は誠にありがとうございます。早速ですが、前回の取材後の変化と、現在の起業家育成に関する取り組みについてお聞かせいただけますか。


起業・関連会社支援室 寺本大修様(以下、寺本):本学では、研究者には医学から芸術まで幅広い分野の研究成果を事業化する支援を担当部署で行い、学生には実学教育の一環として2017年から学生ベンチャーを創出するための各種起業家育成プログラムを実施してきました。3年前の取材では、主に学生ベンチャーの育成の仕組み作りであるOKonomiと呼ばれるプロジェクトについて取り上げていただきました(前回取材記事はこちら)。


現在は、学生および研究者の起業支援を一元化し強化するために、2021年9月に起業・関連会社支援室を新設し、2022年4月に近畿大学発ベンチャー起業支援プログラム「KINCUBA」(キンキュバ KINDAI INCUBATIONの略称)を始動しました。まずは2025年までに近畿大学発ベンチャーを100社創出することを目指します。

KINCUBA説明会の様子

垣端:学生だけでなく、研究者のベンチャー支援にも注力されるのですね。研究者はどのような支援を受けられるのでしょうか。


寺本:起業に対する意識調査を行い、起業を促進するための課題を把握し、ヒアリングを中心に徹底的な伴走支援を行います。すでに大学を代表する研究ベンチャーはありますが、それに追随する研究成果の事業化を促進するための対策が必要と感じています。


KINCUBAが目指すもの


垣端:学生はどういった支援を受けられるのでしょうか。


KINCUBAでの支援プログラム

寺本:学生に関しては、基本的にOKonomiの仕組みを踏襲していく形で学生のレベルに合わせて、3段階のプログラムを提供しています。


①起業準備層:専門家の個別メンタリングによる、事業化に向けた伴走支援

②起業予備層:起業のための実践トレーニングの場を提供

③起業憧れ層:起業が誰にとっても選択肢になることを認識


学生向け起業家育成プログラムの内容


あくまで、起業は「選択肢」の一つ


寺本:社会では、起業までのプロセスや経営戦略を学んだ学生が求められるようになってきました。本学には文系理系を問わず起業を志望する意欲的な学生が存在し、在学中に起業家精神を学ぶことは社会に出ても役立つスキルと捉えています。学生自身が企業から選ばれる人材に成長し「就職」することや、研究を継続する「進学」と同様に、「起業」は学生の選択肢のひとつと考えています。


また、学生と研究者のトータル的な支援としては、ベンチャーの立ち上げ後の支援が難しいことから、近畿大学のすぐ近くに、“拠点”を新設します


垣端:なるほど。その拠点では登記は可能でしょうか。


寺本:はい、可能です。



垣端:素晴らしいですね。私が学生時代に起業した時、最初の売り上げがない時期に事務所を借りることに苦労しました。なのでその最初の支援は学生起業家にとってとても心強いものになるでしょうね!


研究者の起業に関する課題を調査する上で、研究内容をビジネス化する経営人材が不足している点が挙げられます。近畿大学ではどうでしょうか。


寺本:はい。研究者の大多数は研究に専念したいので、実際に経営していく人材をアサインしていくことは必要不可欠だと考えます。KINCUBAの取り組みに関するアンケートの中でも、起業してみたいという教員の声があったので、さらに支援を強化していきたいです。


研究者向けベンチャー創出に向けた取り組み

垣端:KINCUBAのプレスリリースでも「2025年までに100社の企業を輩出する」ことを目標に掲げておられますが、100社の内訳などはあるのでしょうか。


寺本学生ベンチャーが中心になるとは思いますが、研究ベンチャーの立ち上げにも力を入れていこうと考えています。近畿大学発ベンチャーを100社創出することは近畿大学のブランディングにも繋がるため、将来的に起業を志望する学生の入学が増えるとともに、研究者にも選択してもらえる大学になることを目指しています。


2025年までのスケジュール(予定)

「起業に強い近畿大学」へ


垣端:そもそも、近畿大学で起業支援を推進するようになった背景はどのようなものでしょうか。


寺本:偏差値では測れない価値をもった人材を育成することを目的にスタートしました。起業を学ぶ中での様々な経験を通して、起業家マインドを持った学生を社会に輩出したいと考えています。


垣端:この3年間、OKonomiの活動を経て既にそういった学生が集まってきているという感触はありますか。


寺本:少しずつ感じてきています。入学広報として価値があるところまできているとは言えませんが、OKonomiの存在を知って入学したという学生もいることから、大学選びの選択肢になっていると感じました。


また、KINCUBAでは1、2年生のうちから起業家マインドを持ってもらい、在学中に企業に挑戦できる期間が長くなるようにしています。大学入学直後に実際に起業をする環境に身を置き、うまくいけば継続し、うまくいかないのならば“早く畳む”ことにも教育価値を置きます。


挑戦してみることに価値があるので、3年生までに起業し、この経験値を元に次の進路(就職・起業・進路)に進むことが大切だと考えます。先ほどの“拠点”ができれば、学生の挑戦を見守り、つまずけば畳むことに躊躇させないように後押しすることが教育価値であるとも考えます。


垣端:学生起業の行く末として、”畳む”という選択肢を早めに知れることは学生にとって良いですね。やってみて分かることや自分の身の丈を実感することは学生にとっての財産です。最近ではどのような学生起業家が近畿大学から輩出されているのでしょうか。


寺本:大学のアセットを使う学生企業も増えていくのではないかと感じます。大学の財産を使っていく事業にも期待が高まっています。


大学のアセットをうまく活用して事業を展開している学生起業家がいます。

一例ではありますが、現在、奈良市でラーメン店「すするか、すすらんか。」を経営する、近畿大学農学部4年生 西奈槻さんがあげられます。彼の率いる学生グループが、近畿大学の学生が飲食店の起業を体験する機会を創出する、学生飲食店起業支援プロジェクトKINDAI Ramen Ventureプロジェクトを活用して、2021年10月からラーメン店「近大をすすらんか。」を立ち上げました。こちらは、現在も東大阪キャンパス内に実店舗を構え、日々活動しています。

近大内にある「すするか、すすらんか。」の店舗

垣端:近大発のスタートアップが続々と輩出されるのがイメージできます。最後に、近畿大学の起業家支援体制の未来像やビジョンについて教えてください。


寺本“挑戦できる環境”を示したいです。必ずしも、起業=かっこいいこととして捉えなくても、KINDAI Ramen Ventureプロジェクトなどの近畿大学らしさを大切に、学生が挑戦することを肯定して、肯定された人たちがまた次の挑戦者を応援するといった近畿大学のエコシステム・循環を生み出せれば良いですね。


垣端:本日はありがとうございました!