• 大洞 静枝

大阪発のスタートアップを、世界で活躍できるグローバル企業に:間口グループ



今回は、2020年から生態会と共にスタートアップを支援するパートナー企業であり、コワーキングスペース「billage OSAKA(ビレッジ大阪) 大阪駅前第1ビル」を拠点にスタートアップ支援に熱心に取り組まれている間口グループをご紹介します。ミライ事業セグメント兼万博・IR推進室 取締役COOの川田宏行氏にお話しを伺いました。


取材・レポート:西山裕子(生態会事務局長)、垣端たくみ(生態会事務局)、大洞静枝(ライター)

 

■深圳で見た光景をヒントに「billage OSAKA 大阪駅前第1ビル」をはじめた


生態会 西山(以下、西山):ミライ事業の一環である「billage OSAKA 大阪駅前第1ビル」は、スタートアップ支援の拠点になっているそうですね。ミライ事業を立ち上げ、スタートアップ支援に至るまでの経緯を教えてください。


マグチグループ 川田氏(以下、川田):総合物流企業である間口グループは、昨年120周年を迎えることができました。グループはハーバー事業、セントラル事業、ミライ事業の3つの事業で構成されています。港湾の荷役業から始まりましたが、コンテナ船が来るようになると人手が不要になり、物流事業にシフトしてきました。現在は国内物流が7割、港湾は2割で時代に合わせて変化してきた経緯があります。2014年頃から少子高齢化が顕著になってきたので、労働集約の仕事である港湾・物流に代わる柱を立てる必要があるということでミライ事業を立ち上げました。


ミライ事業の中で、大阪発のスタートアップを育てていきたいと思うようになったのは、4年前に深圳を訪れたことがきっかけです。以前は田んぼが印象的でしたが、スタートアップが育つ場として急成長しており、エコシステムができあがっていました。日本にはスタートアップが育つ場所がないと感じ、日本で大阪発のスタートアップを育てていきたいと思うようになりました。


深圳のビジネス街と田んぼ

生態会 垣端(以下、垣端):深圳でスタートアップ支援をご覧になって驚いたことや進んでいると感じたことを教えてください。


川田:やはり環境です。深圳は町のいろいろな場所で実証実験ができます。コンビニやカラオケなど、無人施設が町中にありました。また、VCや士業の集まりなどのいろいろなビルがあり、全てその場所で解決できるように集約されていました。


大阪は今でこそ、国からスーパーシティ型国家戦略特区に指定され、実証タウンに名乗りをあげる市が出てきましたが、当時はそのような気配はありませんでした。深圳と同じような環境でスタートアップ支援を行いたいと思い、「billage OSAKA 大阪駅前第1ビル」に拠点を構えることにしました。



深圳視察時に川田氏が撮影した写真

西山:深圳と同じような環境が大阪の第1ビルで実現できそうだったのですね?


川田:深圳に少しでも近い環境を探し求めていたら、大阪駅前第1ビルに辿り着きました。郵便局、宅配コンビニ、飲食店、クリニック、士業、都道府県の事務所まで揃っています。深圳と同じような環境が自然とできていたので、スタートアップを育てることができると思いました。


オープンして2年経ち、現在の会員は約200社で、実際に入居しているのは約100社です。株式会社フツパーのように、支援した企業は巣立った後も「billage OSAKA 大阪駅前第1ビル」で籍を持ってくれています。最近は資金調達する企業も増えてきています。




■間口グループが持つリソースを全て投入し、若い芽を育てる


ライター 大洞 (以下、大洞):具体的にスタートアップをどう育てていくのでしょうか?


川田:私は事務所ではなく、「billage OSAKA 大阪駅前第1ビル」内で仕事をしています。そうすることで、いろいろな相談を受けることができるからです。我々のグループは、たくさんリソースを持っているので、例えば会社を設立するときの法務関係から就業規則、税務関係に関しては顧問団を紹介することができます。建設業であればゼネコンの紹介や、倉庫のレンタルや海外輸出の要望があれば専門人材の知恵を借りることができます。車の購入や、事務所で使う備品の割引まで、グループが持ってるリソースを全て彼らに投入しています。


若い経営者ができないことを我々が手伝うこともあります。空飛ぶクルマで話題の株式会社SkyDriveは、万博の2025年に向け、規制緩和がなかなか進まず、困っていました。そこで彼らを議員会館に連れていき、状況を説明すると、とんとん拍子に話は進んでいきました。現在、国内で初めて空飛ぶクルマの型式証明が受理され、万博に向けての規制緩和が進んでいるところです。


大洞:「billage OSAKA 大阪駅前第1ビル」に来るスタートアップは、手厚いサポートを受けられるという情報を聞いて集まってくるのでしょうか?


川田: SNSで「このようなことを助けてもらった」という情報が広がって、相談に乗ってくださいと、人が人を連れてくる状況です。


垣端:急成長するスタートアップには何か特徴がありますか?


川田:例えば、前述のフツパーは2年前、「billage OSAKA 大阪駅前第1ビル」に2人で来ました。あるとき仲間が増え、会議室を使って打ち合わせを始め、お客さんを連れてくるようになりました。そのスピード感には目を見張るものがありました。やはり、スピード感があるところは急成長するように感じます。


今、グローバル企業になってもらうための仕掛けとして、大阪万博のバーチャル会場への出展をすすめています。リアル会場は2025年からですが、バーチャル会場は2023年の11月から始まります。バーチャル会場は海外からもが見ることができるので、大きなチャンスになります。2025年を過ぎる頃には大阪発のグローバル企業が現れているかもしれません。


「billage OSAKA 大阪駅前第1ビル」発のスタートアップは大阪府の大阪起業家グローイングアップ事業のコンテストでも2年連続優勝しており、年々成長を感じています。




■資金調達よりも、持続的なビジネスモデルをつくることが大切


垣端:今スタートアップに一番必要なのはどのようなサポートでしょうか?


川田:弁理士のサポートです。例えばビジネスのアイデアをピッチコンテストなどで公にしてしまったら、特許がとれません。それを知らずに失敗した人が何人もいます。権利にまつわる情報を提供してあげることも必要です。


また、VCから出資を受けることよりも、先に長期的なビジネスモデルをつくってあげることが大切です。若い起業家が多いので、いきなり大金を持たせるのではなく、まずはお金のかからない範囲で何がどれだけできるかを考えます。起業した後に継続できることが一番大事なので、しっかりとお客さんの声を聞き、ビジネスモデルをつくって欲しいです。マネタイズすれば自然とVCはついてきます。


先日、沖縄に行った際に、現地でスタートアップが育たないという相談を受けました。一番の原因は、エンジニアが少ないということでした。エンジニアにアプリを外注することで100万円単位の費用が発生し、スタートアップがつぶれてしまうのです。「billage OSAKA 大阪駅前第1ビル」ではノーコードのセミナーを定期的に開いています。自分たちに必要なものは自作するようにしています。コストも削減でき、アイデアをすぐに形にできます。このような環境も必要です。


■スタートアップ支援を通じて、社会に利益を還元する


西山:川田さんは、会社の事業を伸ばしてあげることを長期的に考えていらっしゃるのが素晴らしいなと感じます。「billage OSAKA 大阪駅前第1ビル」はスタートアップを共に支援するパートナーであり、2年前から生態会の関西スタートアップレポートを購読いただいております。生態会が何かお役に立てることはありますか?


川田:生態会を始め、多くのリソースを持っている企業とつながりをつくっていきたいと思っています。スタートアップ支援のためにリソースを増やしたいと思っているからです。スタートアップが困っているとの相談が生態会に来れば、こちらにも聞いてほしいですね。今後は、事業体に関わらず、いろいろな関わりをつくっていきたいです。願いは、大阪発のスタートアップから、世界で活躍できるグローバル企業を生むことです。



写真:関西スタートアップレポートの特典であるマッチング会に参加されているマグチグループ川田様


西山:スタートアップ支援を行うことで間口グループにはどういう影響があるのでしょうか?


川田: 今は、困っているスタートアップを助けてあげたいという気持ちだけで動いています。「billage OSAKA 大阪駅前第1ビル」の不動産事業は10カ月間で黒字化し、それ以降もずっと黒字計上できているのでそれで充分です。今後については、例えば、空飛ぶクルマであれば離発着場を大阪港につくるなど、そういった形で協業していくことも考えられます。


グループとしては、人の生活に欠かせないエッセンシャルワーカーとしてコロナ禍でも必要とされていたので、利益を社会に還元していきたいという思いもあります。これからの日本を支えていく企業も現れると思っていますし、内閣府が提唱している2050年のムーンショット目標のような場でも活躍できる企業が出てきて欲しいと願っています。


西山:生態会も似たような活動をしています。NPO法人なので、寄付金や法人会員を集めながらスタートアップの相談に乗ったりサポートしたりしています。マグチグループのリソースを活用してスタートアップのサポートに集中できるのはうらやましい限りですが、ひとえに川田さんが今まで培ってこられた信頼や地位があるからこそだと思います。素晴らしいお話をありがとうございました。






閲覧数:212回0件のコメント