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兵庫県立大学発!広く長く安く使える、ガラス基板ペロブスカイト太陽電池:先端化学

heartheart62
14 時間前
読了時間: 8分

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は、兵庫県立大学発のスタートアップ、株式会社先端化学研究所の岡本和也氏にお話を伺いました。同社が開発するのは、耐久性とコストを重視したガラス基板型のペロブスカイト太陽電池。現在主流のシリコン型太陽電池に代わる存在を目指し、次世代エネルギーの実用化に挑む独自技術と今後の展望に迫ります。



取材・レポート:西山裕子(生態会事務局)、小林希実子(ライター)

■岡本和也(おかもと・かずや)氏 略歴


1968年兵庫県生まれ。立命館大学産業社会学部卒業後、リクルートフロムエーに入社。IT・採用コンサル、人材育成、求人広告事業を経て、2021年3S研究所取締役に就任し機能性カーボンを開発。2024年、株式会社先端化学研究所を設立し、ペロブスカイト太陽電池の開発に取り組む。


「薄くて曲がる」だけではない、ガラス基板のペロブスカイト太陽電池を目指す


生態会 西山裕子(以下、西山):今日は、よろしくお願いします。まず、先端化学研究所が開発しているペロブスカイト太陽電池について、分かりやすく教えてください。

株式会社先端化学研究所 代表取締役 岡本和也氏(以下、岡本氏): ペロブスカイト太陽電池と聞くと、多くの方が薄くて曲がるフレキシブル型を思い浮かべると思います。しかし、私たちが開発しているのはフレキシブル型ではない、ガラス基板を使ったペロブスカイト太陽電池です。


フレキシブル型は、これまで設置が難しかった場所にも取り付けられるという利点がある一方、耐久性や価格面に課題があり、現状では用途が限られています。

私たちが目指しているのは、こうした限られた用途にとどまる太陽電池ではなく、現在広く普及しているシリコン型太陽電池に代わり、さまざまな場所で使われる存在になることです。


そのためには、十分な耐久性を確保するとともに、パネルの価格や発電コストを抑えることが欠かせません。より広く普及し、将来は基幹電源の一翼を担える太陽電池へと育てていきたいと考えています。

ペロプスカイト太陽電池について説明する岡本氏(左)、生態会の西山(右)
ペロプスカイト太陽電池について説明する岡本氏(左)、生態会の西山(右)

生態会 小林(以下、小林): ガラス基板型の大きな強みは、耐久性なのでしょうか。

岡本氏: はい。JIS規格の耐久試験では、1,000時間が約10年の耐久性の目安とされています。私たちの太陽電池は2,000時間の試験をクリアしており、20年以上の耐久性が期待できます。現在普及しているシリコン型と同等以上に長く使える可能性も見えてきました。


もう一つの利点は、材料を安定して確保しやすいことです。フレキシブル型では、希少金属であるインジウムを含むITO基板が多く使われています。これに対し、私たちは一般的な導電性ガラスであるFTO基板を採用しています。

太陽電池を大規模に普及させるには、性能だけでなく、材料を安定して確保し、コストを抑えることも重要です。資源とコストの両面から、ガラス基板型が適していると判断しました。



ガラス基板型の強みについて説明する岡本氏(左)、生態会の小林(右)
ガラス基板型の強みについて説明する岡本氏(左)、生態会の小林(右)

大気中で製造できる独自技術が低コスト化を可能に


西山: 先端化学研究所ならではの技術について、もう少し詳しく教えてください。

岡本氏: 加えてペロブスカイトは水分に弱いため、通常は湿気を避けた特殊な環境で製造します。私たちの方式では、材料を多孔質にし、その細かな孔の中でペロブスカイトを結晶化させることで、水分の影響を受けにくくしています。そのため、一般の大気中でも製造できます。

さらに、スクリーン印刷を使えるため、大がかりな真空設備も必要ありません。設備投資を抑え、製造コストの低減につなげられる点も特徴です。

小林: この「カーボン」が、技術の鍵になっているのですね。


岡本氏: 私たちが開発した導電性カーボンペーストは、非常に高い導電性を持っています。一般的なものより抵抗が低く、太陽電池の電極として使えることが強みです。 この導電性カーボンペーストを電極として活用し、多層多孔質構造と組み合わせることで、大気中での製造とコスト低減につなげています。



多層多孔質カーボン電極型ペロブスカイト太陽電池を開発。次世代の再生可能エネルギーとして持続可能な社会への貢献を目指している。
多層多孔質カーボン電極型ペロブスカイト太陽電池を開発。次世代の再生可能エネルギーとして持続可能な社会への貢献を目指している。

カーボンの共同研究から始まった大学発ベンチャー


小林: ところで岡本さんは、どのような経緯でこの技術と出会い、起業されたのでしょうか。

岡本氏: もともと私は、兵庫県立大学の伊藤省吾先生と石油由来のカーボンブラックに代わる、植物由来原料のカーボン開発に取り組んでいました。そのなかで、伊藤先生がカーボンを電極に使ったペロブスカイト太陽電池を研究し、成果を上げていることを知ったのです。 これは次世代の太陽電池として期待される技術ですし、私自身もカーボンの開発に携わっていたので、「何かお手伝いさせてください」と申し出ました。最初は少額の投資で関われればと思っていたのですが、伊藤先生から「社長をしてください」と言われまして…。伊藤先生は大学教授ですから、私が経営を担い、二人で本格的な事業化に取り組むことになりました。

西山: 研究を大学の中だけで終わらせず、会社を設立した理由を教えてください。

岡本氏: 研究成果を社会に届けるためです。どれほど優れた技術でも、研究だけで終わり、実際に使われなければ社会の役には立ちません。伊藤先生の研究成果を製品として届けられる見通しが立ったことが、起業の決め手になりました。

今後、自社で事業化するのか、企業との共同開発やM&Aを選ぶのかは、まだ決めていません。形にこだわらず、この技術を社会へ届けるために最もよい方法を選びたいと考えています。

本格的に事業化に取り組む岡本氏(左)と、兵庫県立大学の伊藤省吾先生(右)。
本格的に事業化に取り組む岡本氏(左)と、兵庫県立大学の伊藤省吾先生(右)。

長寿命とその先の循環まで考える太陽電池へ

小林: 太陽電池の廃棄問題にも強い関心をお持ちですね。

岡本氏: 安くてクリーンなエネルギーを届けることに加えて、将来のごみ問題も解決したいと考えています。現在のシリコン型太陽電池は、リサイクルに高い費用がかかり、撤去や再資源化に費用がかかれば、不法投棄や放置につながる可能性もあります。

太陽電池を広く普及させるなら、設置するときだけでなく、使い終えた後まで考えなければなりません。私たちは20年、30年先を見据え、効率よくリサイクルするための薬剤や工程について、今から企業と共同で研究していきたいと考えています。


西山: 現在、開発はどの段階まで進んでいますか。

岡本氏: まだ研究開発中ですが、これから実証実験を始める段階に入っています。実証用のモジュールに使うパネルは、ある程度できていますが、手作業で製造しているため、品質にばらつきがあります。まずは発電効率の良いセルを選び、モジュールを組み上げて実証につなげます。

起業後は、人材、設備、資金など、事業に必要なものを一から整えなければならず、苦労の連続でした。一方、近年はスタートアップへの支援制度も充実しており、さまざまな組織の力を借りながら、一歩ずつ事業を進めています。



次世代エネルギーが支える、持続可能な社会のイメージ
次世代エネルギーが支える、持続可能な社会のイメージ

太陽光と水素をつなぎ必要なときに使えるエネルギーへ


西山: 実用化後は、どのような場所で使われるのでしょうか。

岡本氏: まず狙うのは、現在設置されているシリコン型太陽電池の置き換えです。住宅や工場、メガソーラーなど、すでに設置場所があるため、新たに山を切り開く必要がありません。寿命を迎えたパネルの交換需要に応えていきます。

さらに、ペロブスカイト太陽電池には、垂直に設置した場合でも発電しやすいという特徴があるので、将来は建物の壁面や窓ガラスへの展開も視野に入れています。 小林: 製品は自社で製造・販売する計画ですか。

岡本氏: 基本的には、太陽電池そのものを販売する事業を考えています。ただし、量産段階では、大手企業にOEMで製造してもらう方がコストを抑えられる可能性があります。実用化に向けて、製造を担う企業や、リサイクル方法を共に開発する企業、自治体など、幅広い連携を進めたいと考えています。

現在はシード期にあり、研究開発人材の採用に向けた資金調達も進めています。フォロー投資に関心を示す投資家はいますが、今、最も必要としているのは、リード投資家となるベンチャーキャピタルです。 小林: 公式サイトでは、水素燃料電池の開発も掲げておられますが、ペロブスカイト太陽電池とは、どのようにつながるのでしょうか。 岡本氏: 太陽電池が電気をつくることができるのは、太陽の光がある時間です。昼間につくった電気で水を電気分解し、水素として蓄える。その水素を使い、必要なときに燃料電池で再び電気をつくる。将来は、こうしたエネルギーの循環を実現したいと考えています。 西山: 太陽の光を電気に変えるだけでなく、つくった電気を水素につなぎ、必要なときに再び電気として使う。先端化学研究所が描く未来がよく分かりました。本日はありがとうございました。



生態会のコメント


ペロブスカイト太陽電池というと、「薄くて曲がる」特徴に目が向きがちですが、岡本代表が見据えていたのは、その先にある大きな未来でした。長く使え、つくりやすく、使い終えた後まで考える。その一貫した発想に、研究を社会の力に変えようとする強い意志を感じました。先端化学研究所が描く新しいエネルギーの循環が、これからの社会をどう変えていくのか、楽しみです。   (ライター 小林希実子)




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