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積年の壁を突破した臨場感・画質・広視域。世界一美しい「裸眼3Dディスプレイ」を実現:RealImage(リアルイメージ)

執筆者の写真: AI SATO
AI SATO
2 時間前
読了時間: 8分

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。株式会社RealImageは、3Dひと筋に研究開発を行ってきた研究者、技術者4人が立ち上げたスタートアップです。いわゆる「飛び出す映像」のイメージが強い3Dは、長い歴史を持ちながら、特殊なメガネなどを掛けなければ見ることができないという印象も強く、これまで何度もブームと衰退を繰り返してきました。長年の壁を突破した技術は、いったい何が違うのか? 裸眼で見ることができる「世界で一番美しいディスプレイ」の開発物語を伺いました。


   取材・レポート:大洞静枝(生態会事務局)、佐藤 愛(生態会事務局/ライター)

CEO小池 崇文(こいけ たかふみ) 氏略歴

1973年東京都文京区生まれ。小学生の頃からパソコンに興味を持ち、東京工業大学では物理を専攻するが、東京大学大学院では数理工学を学ぶ。博士(情報理工学)。卒業後、日立製作所システム開発研究所を経て、2013年法政大学情報科学部教授に就任。2000年頃から「裸眼3Ⅾディスプレイ」の研究開発に関わり、2023年春、3D研究の研究者・技術者たちと起業を果たす。


 CRO髙橋秀也(たかはしひでや)氏 略歴

1958年大阪府大阪市生まれ。大阪市立大学 大学院工学研究科 修了、博士(工学)。元大阪公立大学 大学院工学研究科教授。現在、大阪公立大学名誉教授、同大学大学院工学研究科 客員教授。

3D ディスプレイ(パララックスバリア方式,電子ホログラフィ,ライトフィールドディスプレイ)、網膜投影ディスプレイ(ロービジョン支援用,健常者用)、およびスマートテキスタイル(次世代消防服,生体情報センシング)の研究・開発に従事。映像情報メディア学会フェロー。


CTO濱岸五郎(はまぎしごろう)氏 

1959年大阪府豊中市生まれ。神戸大学工学部 電気工学科卒業。博士(工学、大阪市立大学)。大阪公立大学大学院工学研究科 客員教授。

三洋電機株式会社、セイコーエプソン株式会社、三星(サムスン)電子株式会社を経て、大阪公立大学 大学院工学研究科 客員教授。3D ディスプレイ、LCD 関連技術の研究開発に従事。業界団体である 3D コンソーシアムの技術部会長。ISO/IEC 等の国際標準化活動等の経験も多数。



2023年、長年3Dの研究開発に携わってきた4人で起業


生態会 大洞(以下、大洞):本日はどうぞよろしくお願いいたします。まず、RealImage設立の経緯を教えてください。


株式会社RealImage CRO髙橋秀也氏(以下、髙橋氏):創業メンバーは、それぞれ長年3Dの研究開発に携わってきました。企業で30年以上3Dを研究してきたメンバーもいますし、CG分野でベンチャーを立ち上げてきたメンバーもいます。

取材に対応いただいたCTO濱岸五郎氏(左)とCRO髙橋秀也氏(右)
取材に対応いただいたCTO濱岸五郎氏(左)とCRO髙橋秀也氏(右)

もともと3D関連のコンソーシアムや大学との共同研究などを通じてつながりがありました。CTO濱岸さんが企業(三星(サムスン)電子)を退職したあとも「まだ新しい技術の可能性がある。これを事業にできないか」という話になり、会社を立ち上げることになりました。そこで、2023年4月3日に会社を設立しました。


生態会 佐藤(以下、佐藤):まさに3Dのプロフェッショナルが集まってできた会社なのですね。3Dは以前からある技術ですが、なぜこれまで広く普及しなかったのでしょう。


髙橋氏:3D自体には長い歴史があります。裸眼3Dも以前からある技術で、基本的な原理は教科書にも載っています。ただ、従来の裸眼3Dには大きな課題がありました。きれいに3Dとして見える位置が固定されていたことです。

見る人が決められた位置から左右や前後に動いてしまうと、正しい立体映像として見えなくなる。これが普及を妨げてきた大きな要因の一つです。


株式会社RealImage  CTO濱岸五郎氏(以下、濱岸氏):また、せっかくの3D技術をもっていても撤収するメーカーも少なくありませんでした。私自身は、企業の統廃合が進む厳しい環境下にあっても、恵まれた機会のもとで3D技術の研究開発を続ける事が出来ました。韓国のメーカーの三星(サムスン)電子で開発していたこともあります。現在の製品で、ようやく納得できる3Dを実現できました。


32インチの裸眼3DディスプレイとPCで構成されるシステム
32インチの裸眼3DディスプレイとPCで構成されるシステム

見る人が疲れない「アイトラッキング」方式を導入


佐藤:RealImageは、長年の課題をどう解決したのでしょう。

裸眼3Ⅾディスプレイは、「アイトラッキング」によって見る人の目の位置を追跡できるのが最大の特長
裸眼3Ⅾディスプレイは、「アイトラッキング」によって見る人の目の位置を追跡できるのが最大の特長

                                                          髙橋氏:ディスプレイにカメラを取り付け、見る人の目の位置を追跡する「アイトラッキング」を組み合わせました。人が動けばカメラが目の位置を追い、その位置に合わせて映像をリアルタイムで計算し直します。

従来は「ここに座って見てください」というように見る位置を固定する必要がありましたが、見る人に合わせて映像側を動かすことで、前後左右に動いても3D映像を見続けられるようにしています。


大洞:実際に拝見しましたが、動いても立体感が崩れないのには驚きました。そして映像そのものが非常にきれいですね。


髙橋氏:そこも私たちの技術の大きな特徴です。裸眼3Dでは、右目と左目にそれぞれ異なる映像を見せることで立体感をつくります。このとき、本来右目に入るべき映像が左目にも見えてしまうなど、左右の映像が混ざる現象を「クロストーク」と呼びます。

クロストークが大きいと映像が二重に見えたり、立体感が損なわれたりします。私たちは、このクロストークを原理上はゼロで、実際に製品化した場合でも数パーセント以下に抑えることで、高画質で自然な立体映像を実現しています。




佐藤:つまりRealImageの技術を簡単に言うと?


髙橋氏:大きくは、「裸眼」「高画質」「広い視域」です。

メガネをかけなくても立体に見える。そして高精細で、見る人が動いても3D映像を見続けることができる。この3点が特徴です。



多様なサイズにあわせて設計でき、2Dにも対応


大洞:ディスプレイには特殊な装置が必要なのでしょうか。


12.9インチタブレット型裸眼3Ⅾディスプレイ
12.9インチタブレット型裸眼3Ⅾディスプレイ

濱岸氏:ディスプレイの表面に、いわゆる特殊なメガネの役目をする「パララックスバリア」と呼ばれるフィルムを貼っています。細かなスリットによって左右の目に異なる映像を届ける仕組みです。

他の方式ではレンズを使うものもありますが、私たちの方式はフィルムなので、量産すれば低コスト化できます。また、さまざまなサイズのディスプレイに合わせて設計できる自由度もあります。


大洞:フィルムを貼ったまま、普通の2D画面としても使えるのですか。


濱岸氏:はい。そこも特徴です。3D表示のためのフィルムを貼ったままでも、通常の2D画面を見ることができます。従来方式の中には、3D用のレンズやフィルターによって2D表示の文字などが読みにくくなるものもありますが、私たちの方式では2Dと3Dを同じディスプレイで使うことができます。


佐藤:先ほどiPad Proでも見せていただきました。大型の専用装置だけではないのですね。


濱岸氏:はい。現在は計算能力などの関係からiPad Proに対応しています。ディスプレイの大きさや用途に合わせて設計できるので、タブレットのような比較的小さな画面でも裸眼3Dを実現できます。現在43インチディスプレイを開発中です。


「グランフロント大阪」北館3階のThe Lab.にてデモ機を一般公開中。ディスプレイに手を伸ばすと自分と握手するような錯覚が
「グランフロント大阪」北館3階のThe Lab.にてデモ機を一般公開中。ディスプレイに手を伸ばすと自分と握手するような錯覚が

医療・教育・エンタメ・遠隔操作などの用途に期待


佐藤:どのような分野での活用を想定していますか。


髙橋氏:これまで国公立大学、私立大学、大手ゼネコン、スタートアップ企業、特殊法人 研究部門、ビッグテック 研究開発部門、電機メーカー、遊技機関連メーカー、医院などに販売してきました。

今後、拡大したい販路の一つは医療や教育分野です。たとえば医療教育では、人体や臓器などを立体で見ることで、平面画像だけでは把握しにくい位置関係を理解しやすくなります。また、遠隔操作などにも応用できます。人が直接入りにくい建設現場などで、現場の状況を立体的に把握しながら、離れた場所から重機を操作するといった用途も考えられます。


大洞:「3Dでなければならない用途」を見つけることも重要になりそうですね。


濱岸氏:そうですね。3Dだから何でもいい、というわけではありません。これまで3Dが大きな市場として定着しなかった理由の一つも、「3Dでなければならない用途」、コンテンツが十分に見つかっていなかったことにあります。

だからこそ、医療や教育、遠隔操作、ゲーム、アートなど、立体で見ること自体に意味がある分野で活用していきたいと考えています。


手術や検査など、医療分野での実装も期待される
手術や検査など、医療分野での実装も期待される

佐藤:特許についてはいかがでしょう。


濱岸氏:現在、RealImageが保有するもの4件と大阪公立大学が保有するものを合わせ、基本技術に関する特許を確保しています。大学との共同研究から生まれた技術もあり、そうした研究成果を事業として社会に実装していくことも私たちの役割だと考えています。


大洞:最後に、RealImageが目指すものを教えてください。


髙橋氏:3Dは長い歴史を持つ技術ですが、まだ十分に活用されているとは言えません。

私たちは、長年3Dに携わってきた経験と、新しいアイトラッキングやリアルタイム処理の技術を組み合わせることで、これまでの裸眼3Dの課題を解決しようとしています。

「きれいに見える」だけではなく、実際に社会の中で役に立つ3Dをつくっていきたいですね。


大洞、佐藤:「世界一美しく疲れない3Ⅾ」が広く社会に普及することを期待しています。本日はありがとうございました。


CTO濱岸五郎氏(左)と生態会事務局・佐藤(中央)とCRO髙橋秀也氏(右)
CTO濱岸五郎氏(左)と生態会事務局・佐藤(中央)とCRO髙橋秀也氏(右)

取材を終えて

2000年ごろパソコンでゲームを楽しんでいたCEO小池氏をはじめ、創業メンバーはいずれも3D業界で長く研究開発に携わってきた方々ばかり。取材に対応くださったCRO髙橋氏、CTO濱岸氏は、場を変えながらもこの道ひと筋を究めて、研究者魂、エンジニア魂を感じる取材でした。小池氏がCEOになられた理由を尋ねると、「彼が一番若いから(笑)」とのこと。同社は若い研究者・技術者はもちろん、市場開拓にチャレンジする若者を求めているそうです。ゲームがeスポーツに転じた現代、疲れない裸眼3Dが見せてくれるのは、さて、どんな景色(コンテンツ)でしょうか。(生態会事務局・佐藤 愛)












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