top of page

関西大学発!DNAで機能性タンパク質をつなぐ次世代創薬に挑む:株式会社Dincula

heartheart62
19 時間前
読了時間: 6分

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は、株式会社Dinculaの代表取締役・松浦 裕氏に話を伺いました。同社はDNAを「遺伝情報」ではなく有機素材として活用し、創薬や再生医療につながる技術開発に挑むスタートアップ。研究者としての知見と事業開発の経験を併せ持つ松浦氏に、Dinculaの技術の特徴や事業化への道のり、今後の展望を伺いました。


■松浦 裕(まつうら ゆたか)氏 氏略歴


1969年熊本県生まれ。京都大学理学部卒業後、東京大学・北海道大学大学院で植物遺伝子を研究。一般企業勤務を経て公認会計士となり、監査法人で法定監査やIPO支援に従事。バイオベンチャーを中心に多数のIPOを支援し、支援先のうち約4社が上場。クリングルファーマでは取締役経営管理部長として財務・管理部門を統括し、同社の株式上場を実現した。

取材・レポート:大洞静枝(生態会事務局)、小林希実子(ライター)


物質をつなぐ素材として創薬へ



生態会 大洞(以下、大洞)まず、Dinculaが取り組んでいる事業について、教えてください。

株式会社Dincula 松浦 裕氏(以下、松浦氏):私たちは、DNAを遺伝情報としてではなく、物質同士をつなぐ有機素材として活用する研究開発を行っています。コンセプトは、「DNAでいろいろなものをつなげて、より良いものをつくる」ことです。

現在、中心に進めているのが創薬です。例えば、DNAを使って、がん細胞を認識する抗体と抗がん剤をつなぐことができれば、抗体が目印となって抗がん剤をがん細胞へ届けることができます。抗体と、免疫を活性化する別の抗体を組み合わせるといった応用も考えられます。

大洞:物質同士をつなぐ材料として、なぜDNAなのでしょうか。

松浦氏:現在は、 ペプチドなどを使って物質同士をつなぐ方法がありますが、 ペプチドには 「作ってみないと、どのような形になるか予測しにくい」という難しさがあります。その点、DNAは二重らせんという構造をとるため、構造を予測しやすく、また、体内に自然に存在しているため免疫刺激や毒性のリスクも低いとされています。


もう一つ大きいのが、 DNAの塩基が決まった相手と結びつく性質です。この性質を利用すれば、狙ったもの同士を1対1でつなぎやすくなります。


たとえば、抗体を「荷札」 抗がん剤を「荷物」に例えるとわかりやすいですね。 荷札に書かれた届け先へ荷物を運ぶように、抗体を目印に薬を届ける。その “荷札と荷物”をDNAで正確につなぐ技術を開発しています。

生態会大洞(左)とDincula代表の松浦氏(右)
生態会大洞(左)とDincula代表の松浦氏(右)

研究者と経営人材が出会い、検査薬から創薬へ方向転換


生態会 小林(以下、小林):松浦さんは研究者としてのキャリアから、公認会計士、そしてバイオベンチャーの経営へと進まれてこられました。Dinculaの設立には、どのような経緯があったのでしょうか。

松浦氏:大学院では植物遺伝子を研究していましたが、自分は研究者には向いていないと感じ、その後、公認会計士の道に進みました。会計士として主に携わってきたのがIPO支援です。バイオベンチャーではCFOも務め、株式上場にも関わりました。

その後、いくつかの会社を経験する中で、「それなら自分で会社をつくった方がいい」と考えるようになりました。そんな中で、共同研究者である関西大学の葛谷明紀先生と出会い、2024年6月にDinculaを設立しました。葛谷先生がDNA材料科学や構造設計などの研究を担い、私は経営を担当しています。

設立当初は、まず検査薬の開発を考えていました。しかし、VCやベンチャー経営者などにヒアリングを重ねると、コロナ禍を経て検査薬の研究開発がかなり進んでおり、価格や性能の面で高い競争力が求められることがわかってきました。そこで事業の方向性を見直し、現在は創薬分野の研究開発を中心に進めています。

小林:研究だけを進めるのではなく、事業として成立するかどうかも早い段階から見極めているのですね。


松浦氏:最初に考えていた検査薬についても、会社を設立した後にVCやベンチャー経営者などに話を聞きました。その結果、事業化は難しいと判断して方向転換しました。これまでIPO支援やバイオベンチャーの経営に携わってきた経験もあるので、そうしたつながりを生かしながら、事業の可能性を探っています。

 

DNAを活用した新素材開発のイメージ。DNAの特性を生かし、化粧品や医療、電子材料など幅広い分野への応用が期待されている。
DNAを活用した新素材開発のイメージ。DNAの特性を生かし、化粧品や医療、電子材料など幅広い分野への応用が期待されている。

再生医療や動物実験代替への可能性


大洞:創薬以外にも、DNAを活用した研究を進めているのでしょうか。

松浦氏:再生医療への応用を想定した、DNAを利用した細胞接着剤の技術も開発しています。光を当てた部分だけに細胞を接着できる技術です。たとえば、最初に赤い細胞を入れて光を当てると赤い細胞の層ができる。その上に緑の細胞を入れて光を当てると緑の層、さらに青い細胞を重ねると、3層の細胞層をつくることができます。異なる種類の細胞を狙った位置に層状に配置できるのが特徴です。

大洞:それは、どのような分野で活用できそうですか。

松浦氏:たとえば、人の皮膚に近い細胞モデルをつくることができれば、化粧品などが肌に与える影響を、より人に近い状態で確かめられます。こうした技術は、動物実験を減らすことが求められる中で、その代替となる試験方法としての活用が期待されています。さらに将来的には、再生医療への応用も見据えています。


事業モデルと展開戦略として、技術展開による早期収益化と、自社パイプラインによる事業価値拡大を段階的に進めている。
事業モデルと展開戦略として、技術展開による早期収益化と、自社パイプラインによる事業価値拡大を段階的に進めている。

データを積み上げ、次のステージを目指す

小林:現在、研究開発はどの段階まで進んでいますか。

松浦氏:まだ初期段階です。ただ、海外企業との共同研究も進めており、私たちが担当する最初の研究がひと区切りを迎えつつあります。今は、とにかくデータを積み上げることが大切です。製薬会社やVCからも、「データが出たら声をかけてほしい」と言っていただいています。

大洞:今後、どのように事業を広げていく予定でしょうか。

松浦氏:まずは、製薬会社などに技術を提供するプラットフォーム型の事業を考えています。そこで実績と資金力をつけ、将来的には自社の医薬品パイプラインも開発していきたいと思っています。

医薬品は、研究から実用化まで長い時間がかかる世界です。試験管の中で得られるデータ、動物実験のデータ、人で得られるデータでは、それぞれ重みが違います。一つひとつ研究成果を積み上げながら、資金調達や製薬会社との提携につなげていきたいですね。

大洞:DNAを情報ではなく素材として使うことで、創薬から再生医療まで、新しい可能性が広がっていくのですね。今後の研究の進展を楽しみにしています。本日はありがとうございました。

向かって右が株式会社Dinculaの松浦 裕氏。

左は生態会事務局 大洞


生態会のコメント


DNAを、遺伝情報ではなく物質同士をつなぐ有機材料として活用する。そのユニークな発想に、大きな可能性を感じました。研究者としての知見に加え、IPO支援やバイオベンチャーのCFO経験を持つ松浦代表の存在も心強いポイントです。研究成果が製薬会社との連携や資金調達へとつながり、Dinculaの技術が社会で生かされていく日を、楽しみにしています。                           (ライター 小林希実子)




コメント


bottom of page