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  • 執筆者の写真松井 知敬

生物多様性をデータ化し、生態系の維持や人類の経済活動を支援:サンリット・シードリングス株式会社

関西スタートアップレポートでご紹介している注目の起業家たち。今回は、生物多様性科学でこれからの産業を支えるサンリット・シードリングス株式会社の石川 奏太(いしかわ そうた)さんにお話を伺いました。


取材・レポート:西山 裕子(生態会事務局長)、松井 知敬(ライター)



 

石川 奏太(いしかわ そうた)氏 略歴


筑波大学大学院にてコンピューターサイエンス専攻(修士)、生物科学専攻(博士)を修了した後、筑波大研究員を経てJSPS特別研究員となる。その後、仏パスツール研/東京大学大学院生物情報科学科にてバイオインフォマティクス研究に従事し、2020年にサンリット・シードリングス株式会社CEOに就任。

 

■研究成果が社会にどう実装されていくのか見てみたい


生態会 西山(以下 西山)本日は、どうぞよろしくお願いします。まずはじめに、事業内容を教えていただけますか


サンリット・シードリングス 石川(以下、石川):生態学や情報学を駆使し、持続可能な社会の実現を目指す会社です。実は今、「産業の持続可能性」と「生態系の健全性」の両立が、政治的にも経済的にも、あるいは科学的にも大きなテーマとなりつつあるんですね。そこに対して何ができるのかを考えるのが、我々の仕事です。


西山:会社設立の経緯について教えてください。


石川:2020年の1月の設立です。創業者は​東樹宏和と申しまして、生態学の他、微生物学や情報学といったいろんな分野の知見があります。実は、生態学という学問はあまり社会実装がされていないという課題がありまして、その課題を解決し、社会に貢献することを目指してこの会社が設立されました。私自身は、研究開発部長というポジションで立ち上げに加わり、2022年初頭から代表取締役をしています。


西山:石川さんも研究者だったのですか?


石川:はい、生物を情報として見る「バイオインフォマティクス」の研究をしていました。まあ、研究は研究で面白かったんですけど、やっぱりデータを触っているだけではなく、自分の研究成果が社会にどう実装されていくのかをこの目で見てみたくて。で、会社を探していたところ、運良くというか、この会社の設立タイミングと重なったと。




■産業の持続可能性も担保しつつ、生態系も健全に保つ


石川:事業の背景となる環境問題の話をしましょう。環境問題って、ここ20〜30年、ずっと気候変動問題だったんですね。脱炭素、ようは「二酸化炭素を削減しましょう」っていうのはもう当たり前になっているじゃないですか。20〜30年かけてようやく認識が広まった。そして、今、言われているのが、生物多様性の危機です。2022年にカナダのモントリオールで開かれたCOP15では、気候変動問題と全く同じフレームワークで、「生物多様性についても国際的な目標を設定しましょう」という合意がなされました。これからは、「生物多様性を守ろう」というのが、政治的にも、あるいは経済的にも達成しなきゃいけない目標になっていく、と我々は思っています。


西山:では、生態学や情報学は、どのような形で多様性を守ることに活かされるのでしょうか?


石川:我々が持っている技術というのは、生態系を見える化する技術です。例えば、雑木林には何百万種っていう生き物がいるわけですよ。植物もいれば、昆虫もいれば、動物もいて、土の中には無数の微生物もいる。そういった生き物たちの遺伝子情報をデータ化すること自体は、一般的な技術として既に広まっています。でも、「はい、何百万種の生き物の情報です」って見せられても、「だから何?」ってなるじゃないですか。


西山:確かに、それだけではどうすればよいか分かりませんね。


石川:我々の強みは、それらの関係性を表すことができる点にあります。そうすることで、どんな生き物がどんな役割を持っているか解釈しやすくなり、土地の改変をしたり、農薬を使ったりしたときに、その生態系がどう変化するかという予測ができます。今後、さまざまな企業が、生態系にどれだけの影響を与えているかを定量的に開示しないといけなくなるでしょう。そういうところに我々の技術が活かせるんじゃないかと思っています。


西山:リスクを定量評価できるんですね。


石川:はい。ただし、生物多様性を守るために「産業活動しちゃダメ」「人間社会はどうなってもいい」みたいなことを言うつもりは全くなくて、産業の持続可能性も担保しつつ、生態系も健全に保つことを目指しています。食料生産、環境インフラ、エネルギーなど多様な領域で、そのための具体的な手段を提供しています。


西山:例えば、どういった手段でしょう?


石川:例えば、農業で土壌が荒れたり病気が発生したりして作物が育たない場合、ケミカルなものを投入したり、費用を大量に投入して無理やり改善したりする必要は、実はありません。そんなことしなくても、地続きである隣の森林には植物の生育を助けてくれるような微生物がいるので、それを見つけて畑に導入すればいい。また、採掘をおこなう鉱山では、地崩れが起きないよう元の森林に戻す必要がありますが、我々なら、周辺の山から植物と相性のいい菌類を持ってきて、緑化にどう活用すればいいかを提案できます。


西山:なるほど、その生態系が元々持っている機能を活用しましょう、ということですね。


石川:はい。そのために我々の可視化技術があります。日本全国いろんな地域で事業をしているんですけど、地域によって生態系のネットワークが違っていて、地域ごとの生態系資本が必要になります。ちなみに、現在、全国2000以上の畑における生態系データを社内に持っています。




■環境問題や生物多様性への意識が高い企業と連携していきたい


西山:どういったところが顧客になるんでしょう?


石川:お取引先は、企業の技術開発部、あるいは新規事業開発部などです。分野としては、食品、機械、化学資材、林業、環境コンサル、建設、水質浄化、商社といったところになります。また、自治体であれば、県の農政課などです。2023年には、名古屋市が進める実証事業「Hatch Technology Nagoya」にも採択されました。


西山:資金調達は予定されていますか?


石川:次のタイミングは、2025年あたりを狙っています。今は、一緒に事業を進めてくださる企業さんを探していて、その事業の成長性込みで、次の投資をしていただけるようにしたいと考えてます。


西山:提携したい企業のイメージは、ありますか?


石川:そうですね、例えば食品会社さん。海外にも生産拠点を持っていらっしゃるところとか、森林の保全にも手を入れられているところとか。環境問題や生物多様性への意識が高くて事業規模も大きいところと協業できると、嬉しいですね。また、養殖産業はこれからすごく伸びると思っているので、そういう事業者さんとも組んでいきたいです。


西山:人事採用に関してはいかがでしょう?


石川:今、まさに求めているのが、営業ができる人、あるいは総合職ですね。スタートアップ、ベンチャーというのは、一般的な会社に比べてやることも多いですし、かつ前例のないことをやっています。また、業務の中で自分が負わなきゃいけない責任も大きい。その分、自主性や自律性を求められます。ぜひ、「わたしがこの会社を大きくしてやろう」という意欲的な方に来てほしいです。


西山:今後の事業展開が楽しみです。本日はありがとうございました。

 

取材を終えて

今まさに人類が直面している危機として、生物多様性の喪失があります。生物多様性を保持することは、食料、環境、健康、防災などの観点から、人類の存続と発展に欠かせません。代表の石川氏は、「地球温暖化という人類の課題に対しては、脱炭素の取り組みという形で社会実装までこぎつけた。生物多様性の喪失という課題に対しても、ネイチャーポジティブ(生態系を回復させる)の取り組みという形で社会実装が進むだろう」と言います。同社は、そんな地球規模の課題解決を牽引する次世代型テクノロジー企業。生物多様性科学によって産業界を支える同社の姿を、これからも追いかけていきたいと思います。(ライター 松井)


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