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  • 執筆者の写真Yoko Yagi

バーチャル空間オフィスで台湾と日本から世界へ!テレワーク課題を解決:Swise

関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家たち。今回は、テレワークにおける、組織のコミュニケーション、勤務状況、評価を行えるバーチャル空間「SWise(スワイズ)」の開発運営を行うSWise株式会社 邱 世偉(キュウ シーウェイ)CEOにお話を伺いました。




    取材・レポート:垣端たくみ(生態会事務局)、八木曜子(生態会ライター)

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邱 世偉(キュウ シーウェイ)CEO 略歴

1992年生、台湾出身。大学時代に台湾で日本人観光客向けのガイドとして日本語を覚え、2016年に日本へ渡航。大阪でエンジニアとして広告代理店やインバウンド事業などを複数社経験。2019年個人事業主として独立(現在は株式会社ALION に法人化)。2022年に経営管理ビザを取得、SWise株式会社を日本で設立。


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生態会 垣端(以下、垣端):本日はお時間いただきありがとうございます。いつもはリアル対面で取材するのですが、本日はSWiseを体験させていただきながら、オンラインで取材させていただきます。まずはSWiseの事業内容を教えてください。


邱 世偉CEO(以下、邱):弊社は事業内容が3つあります。

1つ目がオフショア開発事業です。日本のスタートアップや大企業の新規事業などに上流工程からシステム開発設計、納品、運用などすべてに台湾エンジニアを活用頂いています。


2つ目は日本47都道府県のお土産の食べ物をサブスクとして台湾に越境ECとして販売しているサービスがあります。毎月3500円位の金額で、10-12種類のパッケージを組み合わせて販売しています。


そして3つ目の事業はメイン事業のバーチャルオフィスのSWiseです。グローバルにまたがるような組織運営をしている場合、雑談や会話などをこのスペース上で取り戻すことができます。SaaSとして販売していて、台湾と日本の両方で販売しています。


垣端:台湾と日本をつなぐことを中心に3事業運営されているんですね。メイン事業のSWiseを開発された背景を教えてください。


邱:そうなんです。このSWiseを開発した背景ですが、2019年に台湾で創業したのですが、日本に戻ったタイミングでコロナによりダメージを受けてしまいました。台湾で1-2名の社員を採用したものの、一回もリアルで会ったことがないことで、管理上の問題がとても大きくなりました。


まず、緊急のときでも連絡がすぐ取れない。テキストメッセージを送る、返信を待つ、また返す...という流れです。次にテキストベースでやっても話が通じないので、zoomを開くことにも時間がかかります。また、開発系エンジニアはロジックの話をするのですが、すぐ話が出来ないともったいないのと、リモートワークは勤務状況の把握もしにくい、というのが問題でした。


そのタイミングで、海外のバーチャルオフィスのサービスを見つけたのですが、改善点などがあったので自社サービスとして開発を始めたというのが経緯です。現在、人数は業務委託含めると20人前後です。台湾が12名、日本が8名くらいで進めています。



テレワークにはコミュニケーションツールが必須


垣端:ありがとうございます。現在のSWiseの導入企業数は何社くらいですか?またはどんな業種の企業が多いのですか?


邱:今は112社くらいが使っています。台湾2-3割、日本が7-8割くらいです。特徴としては台湾と日本の両方でテレワークを採用する会社かつ、いわゆるグローバル組織があるイメージですかね。大手製薬会社さんも使っていただいているのですが、社内では日本チームとベトナムチームと中国チームがある状況で、うちのサービスがマッチしているので使っていただいています。


弊社のサービスを投入する一番の理由は日本においてIT人材が48万人不足しているという状況があります。スタートアップが資金調達してもプロダクト開発したくてもIT人材が探せないので、海外の人材を取り込むのですが、テレワークの精度を挙げないと海外人材の管理コストとコミュニケーションコストが発生してしまいます。


つまり、うちのサービスを導入するお客さんで多いのは、テレワークやハイブリッドワークをしているか、多拠点、海外のメンバーも常に入る、という状況の方が多いですね。


垣端:今は日本と台湾の企業さんが導入されているのが多いのですね。今後は他の国にも展開される予定ですか?


邱:そうですね。今は日本と台湾で一定の売上を立てることに集中しています。それから他国を検討しています。



取材は実際にSWiseにログインしながら行った



垣端:なるほど、ありがとうございます。次はSWiseの機能面をお伺いしたいのですが、今の翻訳システムはChatGPTを活用されていて、先程のように音声対話を行うだけで、画面上でリアルタイムに音声翻訳字幕が出てくるような形でコミュニケーションできるのですね。


邱:はい。翻訳ができるのでコミュニケーションのサポートになります。


垣端:なるほど。このバーチャルオフィスサービスだと競合もいると思いますが、御社の強みや他のツールとの違いはどこですか?


邱:そうですね。SWiseだとzoomやGoogle Meetなどと異なり、空間の可視化によってリアルなコミュニケーションができます。テレワークは日常会話の雑談を失いましたが、ここに毎日8時間いることでなにかあったらSWiseの中で移動するだけですぐ会話できます。そしてアバター同士が会話していることが見えるように、会社の状況がテレワークでも把握できます。


誰と誰がよく会話している、よく動いているなどの状況が見えることで、新しい話題にも出てきやすくなります。人間が人間らしくすることが大切で、生産性に特化すると退職率が上がります。


そもそも私達は人が仕事を選ぶのか、3つの要素があると考えています。

ひとつ目は生活、従業員の給料ですね。ふたつ目は、仕事のやりがいとか勉強できるかとか、やる価値や挑戦価値があるかどうか。三つ目は企業文化です。数年前まではやっていなかったオンライン会議をいまはやっているように、3-4年後には毎日出社することも苦痛になると想定しています。


日本はどんどんIT人材不足になるので、海外との連携が重要になるのでテレワークが重要になる。しかし今のままのやり方だとやりがいや価値があるけど、社内の人とあまり会話していない。人間関係がわからない。そうすると先程の3つの中のやりがいと企業文化を失ってしまいます。だからうちのサービスは、コミュニケーション活性化をメインに提供しています。


台湾での経験から日本と台湾の架け橋をめざす



垣端:コミュニケーション活性化というのは確かに他のテレワークツールとは違いますね。ちょっとワクワクするというのもユニークで興味深いです。改めて創業のきっかけを教えてください。


邱:はい。私は出身は台湾で2016年5月に始めて日本に来ました。台湾在住時、夜間の大学に通っていて、空き時間にフリーランスエンジニアの仕事や、JTBでツアーガイドのアルバイトをしていました。そのガイド活動を通じて、初めて関わった海外の方々は日本人でした。英語は小学校の時に学んでいましたが、最も勉強し、実際に外国人との会話に使用した外国語は日本語でした。現地観光では、遊びを織り交ぜたツアーガイドを提供することで、多くの日本人と仲良くなることができました。


日本人をツアーガイドしていて、「台湾が大好きです」、「台湾、ありがとうございます」と、東日本大震災の台湾の対応に非常に感謝されることがたくさんありました。


私は台湾に生まれましたが、国際的には国とは認められていません。そんな状況の中、「台湾大好き、台湾最高」と言ってもらえることに対して、非常に感動を覚えました。これをきっかけに、東日本大震災のときに何もしていなかったことに対して、エンジニアということもあり、ITを用いて日本と台湾の架け橋を作りたいと思いました。


実は23歳の時に、大学の友達に誘われて共同創業しています。台湾から日本の代理購入のマッチングサービスを考えていて、当時台湾で約3000万円の資金を調達しました。初期メンバーの一人として参加しましたが、数ヶ月後には退社を決意しました。退社の理由は、事業の共同経営がうまく進行せず、日々小さな意見の対立が絶えなかったからです。些細なことでも、毎日のように喧嘩が起こっていました。まだサービスを始めていないにも関わらず、このような些細な争いが続くことに対する不満から、9ヶ月ほどで私は辞める決断をしました。


そんな経験をしたからこそ、自分で企業を主導する強い意志が芽生え、24歳の時にワーキングホリデービザを取得し、日本の大阪に来ることにしました。


垣端:台湾で一度起業された上で来日されたんですね。日本で起業することのご苦労などはありましたか?


邱:たくさんありますね。例えば家賃ですね。台湾では初期費用がないんです。僕は18万円だけもって来日したのですが、大阪の物の家賃が4万2500円だったので3ヶ月はいけるかなと考えていたら、お店で初期費用が必要だって始めて知りました(笑)


また、関西弁も苦労しました。台湾にいたときはみんながゆっくり喋ってくれていたからわかったのですが、日本で仕事すると早くて困りました。食べるものにも困っていろんな肉体労働のアルバイトを3-4ヶ月続けたのですが、アルバイトやって夜の時間に自分の事業をするのは無理ということがわかり、日本の会社にエンジニアとして転職しようと動きました。110社くらいに履歴書を送って、面接28社目くらい3ヶ月かかってで受かりました。


そこから日本の会社に入り、朝7時から夜7時までその会社の仕事、その19時以降が私のやろうとしていた国際代理購入のマッチングプラットフォームの仕事、という毎日を続けました。この国際代理購入サービスを2年間続けましたが、手数料のサービスなので売上が厳しく、資金不足の問題もあり撤退することにしました。


その後転職して2018年に別の会社に入りました。会社の文化や組織、経営者の姿勢などを色々学ばせていただいたのち、2019年に退職しました。その後、自分でキャッシュを回せる事業としてオフショア開発を始めて、台湾の会社を作り、現在Presidentとして共同創業しているIvan(蔡佑杰)に入社してもらいました。


もう一つの難しさは、日本で外国人が創業しようとすると、経営管理ビザじゃないと会社作ることが出来ないのです。経営管理ビザは資本金500万か、2人の日本人を採用することが条件です。


そもそも日本で働いている外国人の在留カードは就労ビザで、在留期間が1年間しかアリません。この条件だと日本で500万借りるのは難しいです。じゃあ台湾で借りようとすると台湾側で収入がないから借りられません。よって、キャッシュを回すという点からいったん個人事業主人してやっていました。ですが個人事業主だと法人契約を望むお客様がいたので、知り合いの日本人の社長に会社名義を貸してもらいました。


こういった流れから、資本金30万で作れる台湾で先に法人を作り、2021年12月に経営管理ビザが取れたので、ALION株式会社を日本で立ち上げ開発事業を始めました。


オフショア開発はあくまでキャッシュエンジンで、株式会社01STARTの芝先 恵介さんと一緒にインバウンド観光客向けのオンライン免税カウンターやお土産配達システムを作りました。しかしタイミングが悪く、コロナで観光客が入れず、アウトバウンドに切り替えて、お土産のサブスク事業にピボットしました。事業はタイミングがすごく重要だなと思います。


垣端:海外国籍の方が日本で起業されるのはそんなに大変なんですね…。これだけ苦しい時期を乗り越えられていますが、日本を辞めて台湾に戻ろうかと思ったことはありませんでしたか?


邱:めちゃくちゃありました。エンジニアとしては月収200万くらい稼げましたしいただいていましたし、そんなに物欲があるほうではないですし。ただ、自分の原点を考えると、台湾への応援の言葉、台湾は世界から国と扱ってもらえないのですが、日本人からいただいた台湾は国だよという言葉にエネルギーを貰って踏みとどまりました。もっと面白いチャレンジできる人生がいいなと思っています。SWiseが日本と台湾の架け橋になると、恩返しになるのじゃないかと思っています。


垣端:台湾の方がこれほど思いを持って事業をしていただいていることに僕自身嬉しく感じています。ありがとうございます。最後に今後の展開をお伺いさせてください。


邱:グローバル組織のインフラとして、働き方改革を提供しようと考えています。

そしてIT人材不足に対して、アジアの人材を提供します。シンガポールやマレーシアなどの人材を提供する、つまり人材事業も踏まえて会社組織をグローバル組織に切り替えることを今後の展開として考えています。


垣端:熱い想いをたくさん聞かせていただきこちらも嬉しくなりました。本日はお時間いただきありがとうございました!


 

取材を終えて:

今回の取材はSWiseにログインしながら行いましたがゲーム世界に来たようでウキウキして雑談したくなったのが印象的でした。SWise自体とても軽く、Zoomを立ち上げながら問題なく使えました。また、キュウCEOの起業ストーリーでは、台湾での最初の起業の挫折、言語の壁やビザ問題やインバウンド事業からのピボットなど、何度も困難に直面しながらも、日本と台湾の架け橋となることへの情熱で踏ん張ってきた姿勢に思わず胸が熱くなりました。日本のIT人材不足の解決策でもある海外人材採用にも役立つサービスとして注目しています。(ライター八木))








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