関西を拠点に活動する、ユニークな起業家に迫るこの企画。今回はホログラム株式会社代表の山地直彰さんです。
現在28歳の山地さんは、神戸電子専門学校を卒業後、CGを扱うソフトウェアエンジニアとして数年間勤務した後、フリーランスとして独立。ゲームやVRコンテンツの受託開発を手がける中で、昨年、MRグラスを始めとしたXR(AR/MR/VR)事業を手がけるホログラム株式会社の設立に関与。「まだまだ一般消費者には高額なXR体験をもっと身近に」という世界をめざして活動する山地さんの思いにクローズアップします。
取材・レポート:池田奈帆美(中小企業診断士・生態会事務局)
池田:2期目を迎えた2019年8月に社長に就任されたそうですね。
おめでとうございます。
ホログラム株式会社 山地直彰氏(以下、山地):ありがとうございます。
池田:主力商品について教えて下さい。
山地:安価で軽量なダンボール素材に独自で開発したWWMRレンズ、ハーフミラー、ミラーを組み合わせた筐体で、臨場感あふれるXR(AR/MR/VR)コンテンツが体験できるダンボール型MRグラス「だんグラ®」が主力商品です。今のMRグラスは30万以上と高額な商品が主流で一般ユーザーが手にしにくいので、安価で提供できないかと思って開発しました。ホログラムにはハードウエアもソフトウエアもどちらも開発できるエンジニアがそろっているので、レンズも筐体設計もアプリもすべて内製できる分、コストを抑えることができました。各自の得意分野を活かして作ったので開発工程も楽しかったし、納得いく製品になりました。
池田:「こういうものがあったらいいな」と思う商品を実際に生み出せるというのは、エンジニア集団ならではの強みですね。特許なども取得されているのでしょうか?
山地:はい。両サイドに静電式画面タップスイッチを2個搭載し、コンテンツのインタラクティブ性を損なわず直感的に操作しやすい設計ができたので、この組み合わせで特許と実用新案を取得しています。ただ、「知財が欲しかった」と言うより、使いやすさを実現するために色んなことを試してみた結果、世の中にない新しい設計ができたのでこれは特許も実用新案もいけるなと。
池田:ユーザーが自然に使い続けてくれるというのが、ホログラム社の大切にしている価値観なんですね。
山地:はい。「MRをもっと身近に」というのが原点なので。操作性のほかにも、「VRは酔う」という欠点もあったので、独自開発したレンズでその欠点をなくしました。両眼で覗いてもオブジェクトに焦点を合わせやすい非球面になっているのですが、これも我が社に凄腕のエンジニアがいてくれるおかげで実現しました。このレンズも特許を取っています。
池田:チームメンバーの独自性が競争優位の源泉になっているんですね。
山地:技術顧問に神戸大学の塚本昌彦教授に入っていただいたり、外部にいる優秀なエンジニアが参加したくなるようなイベントを開催したりして、関西にはMRのおもしろいコミュニティがあるよという認知を広めていけたらと思います。
池田:関西発のMRコミュニティ、いいですね。ほかにはどんなビジョンがありますか?
山地:デバイスは形になったので、これからはもっとゲームやエンタメ系のアプリを作っていきたいです。バーチャルのキャラクターを倒すようなアクション系もおもしろいし、アイドルのライブを3D撮影して自宅にいながらライブ体験できるようなエンタメ系のコンテンツも充実させていきたい。今1本だけARガールが出現するアプリはありますが、この別バージョンというか、もっとリアルと融合させたエンタメ性の高いものができたらいいなと。
あとは知育系もやりたいです。こちらも今1本だけ太陽系の観光ツアーができるアプリをリリースしていますが、こうした惑星をめぐる体験が手軽にできるのはXRならではだと思うんです。日常では難しいこともXR技術があれば、楽しみ方が無限大に広がると思います。
現在AppStoreで公開されているSolarSystemアプリ
池田: おもしろそう! キーワードは「ゲーム」「エンタメ」「知育」ですね。ゲームは頭を使うから創意工夫力が磨かれるし、エンタメは豊かな時間を過ごすために不可欠。知育は子どもが持つ無垢な好奇心を刺激することで、子どもたちの可能性を自然に伸ばすことができる。どれもとても社会的意義が大きいですね。
山地: うまくまとめていただいてありがとうございます(笑)。XRは色んな可能性を秘めています。「面白い」「楽しい」「使いやすい」にこだわったアプリを開発して、エンタメや知育に興味のある企業とコラボしながら、おもしろいことをしていきたいと思います。
池田:応援しています。頑張って下さい!!
※山地さんの取組はTHE DECKのブログでも紹介されています。
取材を終えて。池田より
いつも複数のMRグラスと共に現れる山地さん。MRフリークなのは数年前から知っていましたが、好きが高じて自分で製品を作ってしまうとは、完全に予想外でした。自分からあれこれ話すタイプではないけれど、MRグラスのことになると止まらない。本当に好きなんだな、それを仕事にできるってたまらなく幸せなんだろうなと微笑まずにいられない取材でした。これからさらに多くのMRファンのために、おもしろいアプリを開発してくれることを期待したいと思います。
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