関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家たち。今回は、最終面接で落ちた就活生を他社に推薦できるプラットフォームサービスを提供している、株式会社ABABAの代表取締役 久保 駿貴(くぼ しゅんき)氏に取材しました。
取材・レポート:垣端 拓海(生態会 事務局)・近藤 協汰(生態会学生ボランティア)・奥田 菖斗(生態会学生ボランティア)
久保 駿貴 代表取締役 略歴:岡山大学理学部4年。 「最終面接までの頑張りが評価され、オファーが届く新卒採用のサービス」 株式会社ABABAを創業。 株式会社ABABAは全てをノーコードで開発しているスタートアップ。自身も開発に携わった。
生態会 垣端(以下、垣端):本日はお時間を割いていただきありがとうございます!まず初めに、株式会社ABABAの事業内容を教えていただけますか。
株式会社ABABA 久保(以下、久保):ABABAの事業内容を大まかに言えば、企業の人事担当者が、自社の最終採用面接で落とした学生を他社に推薦できるプラットフォームです。
学生の登録方法としては、1)企業の人事担当による推薦、2)学生側の自己申告という2種類があります。登録の初期費用は必要なく、収益源は自社プール内学生を採用した際の成果報酬となります。
このサービスの特徴は、「最終面接まで残った人材」のみが登録されていることです。
現在登録いただいている企業は、IT企業が中心になっています。また、自分が岡山大学出身だということもあり、岡山の企業も登録されています。
人事の方にとっては、自分がイチオシだと感じ送り出した人物が、より上位の面接で落とされてしまうことが多々あります。そして、その子達にもメールを1つ送って終わりというシステムだったんです。しかし、これでは人事の方々にも心労が募ってしまう。
ABABAは、落ちてしまった学生を後押しできる唯一のサービスだと、企業ユーザーもおっしゃっています。人事のストレスという、意外な所にペインがあったのだな、という感じですね。
垣端:人事の方も、送り出した学生が落とされると、責任を感じてしまいますよね。そこを解消できているのは、本当に素晴らしいサービスだと思います。
久保:ありがとうございます!
垣端:岡山の企業が登録されているのは、地道にアポをとったからですか?
久保:どちらかというと、ピッチコンテストの影響が大きいですね。岡山には「岡山イノベーションコンテスト」という大規模のピッチイベントがあるのですが、そこでグランプリ(大賞)を受賞することができ、それがきっかけとなって、岡山の様々な企業からアプローチをいただくようになりました。こちらから営業するのは、東京のITベンチャーが中心ですね。
垣端:登録企業も、わずか4ヶ月で80社と、どんどん伸びていますね。現在もこの数から増加しているんですか?
久保:そうですね、嬉しいことにどんどん伸びています。このペースを維持して、2021年3月には100社、そして3年後には400社を目標に据えています。
垣端:学生サイドからも、登録はありますか?
久保:ABABAのメンバーに大規模な学生団体を運営している人物もおり、そこから登録が増えています。また、Twitterで、「最終面接で落ちた」とTweetしている学生にDMを送り、その経由でも登録いただいています。
企業を増やせば増やすほど人材プールが充実するビジネスモデルなので、登録企業を増やすことは大前提なのですが、学生の登録も欲しいと思っています。そのため、大学のキャリアセンターや学生団体・部活動などとアンバサダー契約を結び、ネットワークを網のように広げていく予定です。
垣端:ピッチといえば、立命館大学のピッチコンテスト「総長PITCH THE FINAL 2020」にも参加し、総長賞・オーディエンス賞のダブル受賞をされていますよね。実は何の因果か、私たち取材者3人も立命館大学出身・学生なんです。
久保:そうだったんですね!現在は資金獲得のために、ピッチイベントがあれば出るといった状況なんですよ。「総長PITCH THE FINAL 2020」は、メンバーに立命館大学の学生がいるので、出させていただきました。
垣端:事業コンセプトがシンプルで素晴らしいですもんね。受賞するのもわかります。このピッチイベントでの受賞から、反響などはありましたか?
久保:そうですね、とても反響は大きかったです。イベント後、NHKさんに取材をしていただいたり、日本経済新聞さんにも掲載されました。また、大学のキャリアセンターに連絡をいただくなど、今後の事業展開に繋がっています。
垣端:それはすごいですね。また、株式会社リブセンスのYouTube動画にも出演していましたよね。これはどういった経緯だったんですか?
久保:リブセンスさんはABABAのビジョンに共感してくださっていて、それがきっかけで出演のオファーをいただくことになりました。今はとにかく認知を拡大していこうという段階なので、こういった露出の全てがプラスに働いています。
友人の面接不合格という体験から、ABABAが生まれる
垣端:ABABAを立ち上げたきっかけは何ですか?
久保:2020年の6月ごろに、昔からの友人がある企業に就職したいと常日頃から言っていて、最終面接まで進むことができたのですが、そこで不採用となってしまったんです。
面接前までは、一生を捧げたいとまで言っていた友人が、面接が不合格だったことで、ひどく落ち込んでしまいました。ショックのあまり「この企業の商品は一生買わない」と言いだすほどで。
自分は彼の変化を間近で見ていて、たった一週間で人の人生・考え方が変わるのかと感じました。そして、その原体験から、就職活動に存在している問題点に気づきました。最終面接に到達するということは、その学生の資質は高いはずなのに、何も評価されずに1から面接を繰り返す羽目になる。これはおかしい、と感じABABAの着想に至りました。
垣端:課題点を見つける段階から、実際にサービスをプロデュースする段階まで至ったのは、それだけの強い思いがあったということですよね。
久保:そうですね。自分の立ち上げたサービスはABABAで3つ目になるのですが、昨年1年間はインバウンド向けのマッチングサービスを運営していて、コロナが事業に直撃してしまって。事業を立ち上げるということは昔から好きだったので、仲間と一緒に、友人の困りごとがあれば、それを事業化できないかとずっと考え続けていました。
垣端:周囲の人々を助けるために、サービスを立ち上げるというモチベーションなんですね!
僕が就活生だったら、ABABAのサービスを利用したかったです!僕の友人も最終面接で落ちたことで半年間うつ状態になってしまい、本当にこのサービスがあれば、と思います。
久保:「就活うつ」というワードを目にすることが増えたり、就活が原因で何百人と自殺していることもあり、就職活動は社会問題の一つと捉えています。現在の内定率69%と、リーマンショックに匹敵するほどの冷えこみですし、来年以降もこの状況から落ち込むことが予想されます。この状況を踏まえると、ABABAは社会に必要なサービスなんです。
近藤:確かに必要なサービスですね。ABABAが3度目のサービス立ち上げとのことですが、昔から起業を志していたんですか?
久保:特段、起業したいという思いは持っていませんでした。ただ、昔から好奇心が強く、何かに挑戦するという意志はありました。1度目の起業は、自身の困りごとが解決するようなサービスを作ろう、という経緯です。そこから、自分がやりたいことを続けていたら今の状態になった、という感じですね。
近藤:始めの事業立ち上げも、自身のペインを解決するスタイルだったんですね!本当に、起業アイデアが一貫していますね。課題が自身や周囲にある分、ニーズも把握しやすく、とても素晴らしいと思います。
垣端:最後に、今後のビジョンを教えてください。
久保:ビジョンとしては、「就活落ちたらABABA」という合言葉を当たり前にしていきたいですね。そして、最終面接まで必死に頑張ってきた学生の過程が、きちんと報われるようなサービスにしたいと思っています。
垣端:御社のビジョン達成を、生態会でもサポートできればと思います。本日はありがとうございました!
取材を終えて:取材を通し、学生、企業、社会にとってプラスな事業であることに感銘しました。優秀な就活生にとってはもちろんマストですし、人事部サイドは採用の効率化・強化につながり、学生と企業の効率的なマッチングが促進されれば、社会の生産性も高まる。本当に、様々なピッチで結果を残し、登録企業を続々と獲得できている理由の一つだと思います。
さらに、そんなサービスが「自身の周りの人々」から生まれたことも、素晴らしいですね。「良いプロダクトは自身が欲しいものだ」とはよく言いますが、ABABAはその最たる例だと感じます。
私も、就職活動を始める際には、ABABAを利用しようと思います。本当に良いサービス!(生態会 近藤)
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