物撮りから5秒でモデル画像へ。ECアパレルの常識を変える、「MODAAI」
- 鎌田 麟太郎
- 2 時間前
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関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は、「ECプラットフォーマーの成長をAIで加速し、消費者と事業者がより良くつながる世界を創る」をミッションに掲げ、ECアパレル特化型・AI画像生成サービス「MODAAI」を運営する、株式会社ANTIQUA AIの代表取締役 フッサム ワファ 氏に話を伺いました。
取材・レポート:大洞静枝(生態会事務局)、鎌田麟太郎(ライター)

フッサム ワファ 氏 略歴
1999年サウジアラビア リヤド生まれ。10歳のとき、ゲームをきっかけにプログラミングへの興味に目覚める。現地で高校卒業後、医者家系でありながらエンジニアの道を志し単身来日。アラビア語と最も系統が異なる言語・文化圏として日本を選ぶ。日本語学校を経て、情報系専門学校で基本情報技術者資格を取得。その後、SESなど複数企業に勤務しエンジニア経験を積む。独立し、2025年より現職。
言語学的に最も遠い国、日本へ
生態会 大洞(以下、大洞):本日はよろしくお願いします!フッサムさんはアラビアご出身とのことですが、日本に来られた経緯について教えていただけますか?
フッサム ワファ代表(以下、フッサム氏):18歳のとき、高校卒業後に留学という形で日本に来ました。日本を選んだ理由は、当時通っていたインターナショナルスクールの先生に相談したことがきっかけでした。みんなそれぞれ違う国に留学していく中で、自分は「今いる場所とまったく違う環境に行きたい」と伝えたところ、数日後に「言語学的に見て、アラビア語から最も遠い言語の一つが日本語だ」と教えてもらったんです。文化も言葉も全く違う場所だからこそ、あえてそこを選びました。
鎌田(生態会ライター):全く異なる場所だからこそというところに、起業家の片鱗が見えますね。

フッサム氏:もう一つの理由は、当時からAIに関心があったことです。ソフトバンクの孫さんがペッパー君を開発していた時期で、そこまで本気でAIに向き合っている国は他にあまりなかった。私自身も、AIにゲームを攻略させる動画に夢中になっていた一人で、そうした情報の発信源として日本の存在がずっと頭の中にありました。
大洞:ソフトバンクの存在も大きかったのですね。それにしても流暢な日本語で驚きです!それでは、ANTIQUA AIの事業概要を教えていただけますか?
フッサム氏::ANTIQUA AIは、アパレルEC事業者様向けに、商品の物撮り画像からリアルなモデル着用画像を生成するAIサービス「MODAAI」を提供しています。事業者様にしていただくことはシンプルで、洋服を平置きした状態やハンガーにかけた状態で撮影した、いわゆる「物撮り」画像をアップロードしていただくのみ。それだけで、まるでモデルが実際にその服を着用しているかのようなリアルな画像を生成することができます。
大洞:画像生成AIというと、大手も参入している領域です。その中でどのように差別化されているのでしょうか。
フッサム氏:おっしゃる通り、画像生成という機能自体は、いわゆる汎用の生成AIでも一定のクオリティで出せるようになってきています。ただ、汎用モデルに服の写真を読み込ませると、素材感や柄、シワの寄り方といった細部が微妙に変わってしまうことがあります。私たちはその点にこだわって、服の生地感やシワの入り方をできる限りそのまま保持したまま、モデルが着用した状態に変換する技術に特化しています。
もう一つこだわっているのが、モデル側のリアリティです。AIが生成する人物は、見る人に「AIっぽさ」を感じさせてしまいがちです。ただ、実際の人間には、多少のクマがあったり、ほくろがあったり、左右で微妙に非対称だったりする。私たちは、そうした人間らしい要素をあえて組み合わせて再現することで、パッと見ただけでは実写と見分けがつかないレベルのナチュラルさを目指しています。
モデルを雇えない会社にも、服を魅力的に見せる権利を
大洞:サービスが目指す先には、企業規模による「見せ方の格差」を解消したいという思いがあるそうですね。

フッサム氏:もともとモデルを雇う予算がない小規模な事業者さんは、物撮りのままの写真を商品ページに掲載せざるを得ないケースが多くありました。同じくらい良い服を作っていても、大企業のようにきれいに見せることができない。私たちのサービスは、その差を技術の力で埋めることを目指しています。企業の規模に関わらず、自分たちが作った服を魅力的に見せる権利は、本来すべての事業者にあるはずだと思っています。
大洞:アパレル業界全体として、AI活用によってどのような変化が起きているとお考えですか。
フッサム氏:世の中に流通するコンテンツのうち、AIが生成する割合はこれからますます大きくなっていきます。2030年頃には、インターネット上のデータの7割以上がAIによって作られたものになるという見方もあります。アパレル業界においても、これまでは、広告素材を大量に作ること自体に多くのコストと時間がかかっていました。しかし今は、AIを活用すれば少ない費用で数多くのバリエーションを試せるようになっています。お金の流れが、広告の素材制作やマーケティングから、製品開発や品質の向上にシフトしていく。それに伴って、EC事業者に求められる人の仕事の中身もより付加価値の高いものに変わっていくと感じています。
大洞:AI導入の効果は、実際にどのように表れていますか。
フッサム氏:企業によって異なりますが、経費削減や売上向上といった形で効果が出ています。実際に、ある企業ではAIを導入した初年度だけで約800万円の経費削減につながりました。特に、これまでモデル撮影にかかっていたコストを大幅に抑えられたことが大きな要因です。モデルを積極的に起用していた企業ほど、コスト削減の効果は大きくなります。
AI時代、光る起業家の価値

鎌田:開発への関心は、いつ頃から芽生えたのでしょうか。
フッサム氏: 10歳の頃からゲーム制作や遊びの延長のような開発を続けていました。その時は、まだ「製品」と呼べるようなものではありませんでしたが、面白いと思ったことにひたすら没頭する日々でした。今でも、ラジオ番組を自動生成するAIを作ったり、そういう遊び心は、今もずっと変わっていない気がします。
大洞:ワファさんご自身の起業家観について伺えますか。
フッサム氏: 私は、経営者だからといって特別すごいとは思っていません。社員として頑張っている人と、経営者との間に優劣があるわけではないんです。ただ経営者は、自分なりの考えを持ち、少し人とは違う視点で物事を見ている人たちだと思います。
私自身は、他社のビジョンを実現するというより、自分自身のビジョンをずっと持ち続けてきました。生成AIが登場した頃からずっとやりたかったのは、AIの力を正しく使いこなし、それをビジネスにすることです。世の中に増えているAI企業の多くは、実際にはAIのポテンシャルを十分に引き出せていません。社内システムなどにありきたりな形で導入するだけにとどまっているケースが多く、日本全体としても活用が遅れていると感じます。アパレル業界などにニッチな分野でAIを活用した挑戦をする人が、特に関西ではまだまだ少ないと感じているので、もっと増えていってほしいと思っています。
鎌田:AIがどれだけ進化しても、「おもろい」を追い求める心だけは代替できないのかもしれませんね。
「作る・見せる・売る」を再発明する

鎌田:今後5年での御社のビジョンを教えてください。
フッサム氏:ANTIQUA AIとしては、EC業界における「作る・見せる・売る」という一連の流れを再発明したいと考えています。事業者の皆さんが、より創造的な仕事、つまり服そのものをつくること、製品をより良くすることに時間とお金を使っていただけるようにしたいです。それによって、企業の規模に関係なく、良い製品を作る人たちが、その魅力を正しく世の中に届けられる、そうした世界をつくっていきたいと思っています。
今後は、顧客対応AIや需要予測AIといったサービスも展開していく予定です。ですが、業界のインフラ周りは、紙やExcelなど、現場によって環境がばらばらです。業務を自動化するには、それぞれの現場や既存システム、場合によっては他社のシステムとも連携する必要があります。最先端のAI技術はあっても、それを支えるインフラが追いついていない。このギャップをどう埋めていくかが、今後の大きなテーマだと考えています。
大洞:ANTIQUA AIの技術で、アパレル業界が進化していく姿を楽しみにしています。本日はどうも、ありがとうございました!
生態会のコメント
AIの出現により「人間は必要なのだろうか」との心境に至る人も多いです。私も同じで、同社への取材でも結局結論は同じだろうと、半ば覚悟して臨んだ取材でした。しかし、今回はむしろ「人間のさらなる可能性」を感じさせる取材となりました。ワファさんの話す流暢な浪花弁が印象的で、社長となった今も、根底にあるのは、10歳でプログラミングを始めたときと変わらない、「おもろい」を追求する姿勢です。個人の本当にやりたいことは押さえ込まれがちだった、起業の世界。しかし、AIの登場によって、人はより自由に、自分の創造性に基づいて起業ができる時代になりました。ワファさんは将来、ニッチな分野に特化したAIで、大手を超えたいと語ります。彼のつくるAIは、きっと彼のように、浪花節の効いた、人間味あふれるものになるのでしょう。(ライター 鎌田麟太郎)




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