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高齢化社会の課題を解決する医療DX、日本初!3D義歯を歯科MaaSで提供:オーガイホールディングス

  • 執筆者の写真: AI SATO
    AI SATO
  • 4 時間前
  • 読了時間: 9分

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。2025年設立のオーガイホールディングス株式会社は、デジタルデンチャー(義歯)の開発・製作と、移動型歯科医療「歯科MaaS(Mobility as a Service)」という新たな医療モデルに挑戦するスタートアップです。クラウドシステムやDX事業で成長したIT企業が、なぜ歯科医療の世界へ挑むのか。野田真一CEOの父親への愛情と事業への熱い思いをご紹介します。


      取材・レポート:垣端たくみ(生態会事務局)、佐藤 愛(生態会事務局)



野田真一(のだしんいち)氏略歴

1984年大阪府堺市出身。歯科技工士だった父親と同じ道を志すも限界を感じ、IT分野へ転身。23歳でクラウドシステム開発会社「フィールトラスト」創業。以降IT起業家として、医療福祉分野でのICT実装を推進。父親の介護を機に再び歯科技工の世界に戻り、2025年5月デジタル義歯専門ラボ「デンスマイル」を創設して、オーガイホールディングス株式会社を設立。1年後の2026年7月、資本金を2900万円から8,010万円に増資。



父と同じ歯科技工士をめざすも、独力でITの道へ


生態会 垣端(以下、垣端):まず、オーガイホールディングス設立までの経緯を教えてください。


代表取締役兼CEO野田真一氏(以下、野田氏):私はもともと歯科技工士を目指し、大阪の専門学校へ進学しました。父が歯科技工士だったこともあり、「一芸を身につけたい」という思いから同じ道を選びました。授業料も自分で稼ぎ、夜間や土日もアルバイトを続けながら学校に通っていました。


ところが、入学して間もなく、この業界では学生が就職後まもなく約7割が途中で辞めてしまうほど厳しい世界だと知りました。在学中は歯科技工所でもアルバイトをしていましたが、ある日、社長から「君ほど努力できるなら、別の世界で挑戦したほうがいい」と声を掛けられました。その言葉が人生の大きな転機になりました。学年トップの成績でしたが、1年で中退する決断をしたんです(笑)。


垣端:1年で、しかもトップの成績で中退、決断がカッコいいですね。そこからIT業界に進まれたのですか。


野田氏:ちょうど20歳で結婚し、子どもも生まれました。生活のため家電量販店などで働く中でパソコンに興味を持ち、独学で修理技術を身につけました。修理したパソコンをインターネットで販売するようになったことが、IT事業を始めるきっかけです。

中古パソコン販売やシステム開発を経て、2009年にフィールトラストを創業しました。その後、現在もCTOを務めてくれている仲間と出会い、サーバー事業へ進出。データセンターも開設し、売上は1億円から2億円へと成長しました。


生態会 佐藤(以下、佐藤):独学でIT会社を始めて、キーマンと出会われて、その次へと展開されてきたと。


野田氏:そうですね(笑)。本格的にクラウド事業へ進出したのは2018年です。新型コロナウイルスの流行によりリモートワークが急速に普及し、その流れを追い風に売上も約3億円近くまで成長しました。


その少し前、経営が厳しくなったある会社の社員や事業を引き継ぐご縁がありました。その事業の取引先の一つに、モンゴルを支店にもつ歯科技工所があったんです。クラウド技術を活用し、日本とモンゴルがリアルタイムでシームレスにつながり、歯科技工データをやり取りしている様子を目の当たりにしました。その瞬間、「この技術は歯科技工にも生かせる」と確信したんです。同時に、「もう一度、歯科技工の世界に挑戦してみないか」と背中を押されたような気持ちになりました。


そんなとき、経済産業省の「事業再構築補助金」を知り、クラウドを活用したデジタルデンチャー(デジタル義歯)の事業で申請しました。2022年3月に採択されましたが、採択された事業を実現するためには13カ月という限られた期間で、自社ビルを建設し、デジタルデンチャーのラボとオフィスを整備しなければなりませんでした。


土地探しから始まり、この社屋を建設し、約4,000万円の補助金を活用して事業を立ち上げることができました。この土地もなかなか譲っていただけず、朝晩足を運び続けて、ようやく取得できたものです。


新しく土地を探して社屋を建てた「デンスマイルラボ」でインタビューに対応してくださった野田CEO。2009年に起業したIT会社も経営
新しく土地を探して社屋を建てた「デンスマイルラボ」でインタビューに対応してくださった野田CEO。2009年に起業したIT会社も経営

土地探しからスタートした歯科技工業界のDX


垣端:IT企業として成功されていたにもかかわらず、再び歯科技工の業界へ戻ろうと決断されたんですね?


野田氏:業界を離れてからも、技工士不足や高齢化の話は耳に入っていました。IT企業と

して多くの業界のDXに携わる中で、「歯科技工だけが取り残されている」とも感じたんで

す。でも一番大きい理由は、父が歯科技工士だったこと。そして歯科技工士にもかかわら

ず、父は長年入れ歯を使わず、歯が無いために不自由な食生活を送り、健康を損ねていま

した。そんな父を介護しながら、「ITの力で、この業界を変えられるのではないか」と思

うようになりました。


2022年に採択いただいた経産省の補助金を活用し、最新の3Dプリンターやデジタル設備

を導入しました。目指したのは、単なるデジタル化ではありません。小規模な歯科技工所

でも最先端設備を活用できる環境をつくり、技工士が本来持つ技術を次世代へつないでい

くことです。


垣端:そこからデジタル義歯「CLOUD FIT」が誕生するんですね。



野田氏:そうです。土地探しから始めて「デンスマイルラボ」を立ち上げました。3DプリンターやCAD/CAMなどのデジタル設備を導入。「入れ歯のデジタル製作」に特化したラボを目指しました。「まだ早い」「需要がない」と反対の声も少なくありませんでした。それでも私は、この流れは必ず来ると確信していました。


佐藤:かなり大きな投資だったんですか。


野田氏:はい。ここにある設備だけでも数千万円規模になります。でも、歯科技工士の技術とデジタル技術を融合すれば、品質も効率も大きく変わります。デジタルは職人の技術を奪うものではありません。むしろ、熟練した技工士の経験や知識を、より高い精度で形にするための道具なんです。

「デンスマイルラボ」には3DプリンターやCAD/CAMなどのデジタル設備がズラリ並ぶ


垣端:再び戻った業界はどうでしたか。


野田:実は、創業時から一切営業しないと決めていました。歯科技工業界は価格競争が激しく、「仕事をください」とお願いするほど価格が下がってしまう構造があります。だから私は、技術力や取り組みを発信し、「お願いする」のではなく「お願いされる会社」になろうと考えました。SNSやホームページで情報発信を続けて、実績を積み重ねることで、口コミや紹介から依頼が広がっていきました。


オーガイホールディングスの歯科医療DX(イメージ図)
オーガイホールディングスの歯科医療DX(イメージ図)


“入れ歯難民“を無くそうと、日本初の歯科MaaSを着想


佐藤:その後、「歯科MaaS」という構想に結びついたのは?


野田:能登半島地震が大きな転機でした。被災地では入れ歯を失った方が多くいましたが、こちらから「手伝わせてください」と申し出ても、「今は来ても何もできません」と断られてしまいました。


そのとき、「患者さんが来られないなら、歯科医療のほうから行けばいい」と考えたんです。そこで出会ったのが「医療MaaS」という考え方でした。移動診療車に口腔内スキャナーや3Dプリンターを搭載し、遠隔地の歯科技工士とリアルタイムでデータを共有する。現地で設計・製作・装着までを行える仕組みです。


これまで何度も通院が必要だった入れ歯づくりを、大幅に短縮できる可能性があります。

災害時だけでなく、過疎地域や高齢者施設、通院が困難な方々にも歯科医療を届けられると考えています。


キャンピングカーを改良した歯科MaaS「O-Gai」を自ら運転して出動することも多い野田社長。3台で展開。
キャンピングカーを改良した歯科MaaS「O-Gai」を自ら運転して出動することも多い野田社長。3台で展開。
口腔内スキャナー、3Dプリンターなどの機器を搭載した歯科MaaS「O-Gai」
口腔内スキャナー、3Dプリンターなどの機器を搭載した歯科MaaS「O-Gai」

「生きることは、食べること」を支えることが

歯科技工の価値


佐藤:いろいろな社会問題の解決をめざす会社のキャッチコピーは「生きることは、食べること」。とても印象的です。


野田氏:この言葉には、父との思い出が込められています。歯科技工士だったのに、自分自身は長年、満足な入れ歯を使わずに生活した父。私たちがデジタル技術で新しい入れ歯(デジタルデンチャー)を製作したところ、好きだったイカやタコをおいしそうに食べる姿を見ることができた。私は「再建医療」って言ってるんですが、失ったものを義歯で取り戻して食べられるようになることは、栄養だけではありません。笑顔が戻り、家族と同じ食卓を囲めるようになる。私は、それこそが歯科技工の本当の価値だと思っています。


佐藤:2~3時間のうちに、患者にフィットする義歯が出来上がるシステムというのは、歯科技工界の革命ですね。


野田氏:製作スピード、義歯の軽さ、自然な装着感はもちろん、医療費も従来よりも低く抑えられます。従来の「入れ歯(義歯)」の概念を超えた「次世代型オーラルデバイス」と位置付けています。


オーガイホールディングスは「Oral +General+ AI」を意味する造語ですが、医者であり、作家でもあった森鴎外をイメージして会社名にしました。人の面でも恵まれていて、副社長 兼 CMO(メディカル)長縄先生は歯科医としてのキャリアもすごいんですが、アーティストでもある。ドイツにいる専門学校時代の同級生の歯科技工士にもメンバーに加わってもらいました。


いま、私たちは「入れ歯難民」を支援するプロジェクトを推進し、2026年8月30日までクラウドファンディングを行っています。 


「入れ歯難民」を支援するプロジェクトのクラウドファンディング実施中(2026年8月30日まで)。上記バナーをクリックするとサイトへ
「入れ歯難民」を支援するプロジェクトのクラウドファンディング実施中(2026年8月30日まで)。上記バナーをクリックするとサイトへ

医療関係者とのネットワークづくりを進めながら、「歯科MaaS」の普及に取り組み、誰もが必要な歯科医療へアクセスできる社会を目指しています食べる喜びを取り戻し、その人らしい人生を支えること。それが使命です。


垣端:創業から1年で資本金も増資されたそうですが、今後の目標は?


野田氏:私自身も新たに出資しましたが、役員やスタッフが出資してくれました。6年後には、売上高50億円を達成して、上場を目指しています。

垣端、佐藤:素晴らしいスピードですね。IPOを楽しみにしています。本日はありがとうございました。

「デンスマイルラボ」にて。野田社長(中央)、生態会事務局 垣端(右)、佐藤(左)
「デンスマイルラボ」にて。野田社長(中央)、生態会事務局 垣端(右)、佐藤(左)


取材を終えて

スタートアップ企業の代表で、「歯科技工士専門学校」中退という経歴を持つ人はレアなはず。しかも成績トップでの退学に誰もが驚いたという。その後23歳でIT会社を創業し、コロナが追い風となり「クラウド事業」を拡大させ成功を収める。そんな野田CEOを再び「歯科技工」の世界へと戻らせたのは、多くの歯を無くし、満足に食事がとれなかった父親の存在だった。歯科業界を革新的に変える3D義歯と医療MaaSを結びつけたことが、父親の健康を取り戻し、社会問題を解決するきっかけになったそうだ。独力で学び、チャンスを見極め、実現するバイタリティ。これぞ起業家ならではの底力なのだろう。ちなみに、「デジタルデンチャー」の第1号はお父上に贈られたそうです。(生態会事務局・佐藤愛)










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