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在宅でも世界の風景を楽しめるスマートウィンドウを開発・製造・販売:アトモフ

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家。今回は、アトモフ株式会社

代表取締役、姜 京日(かん きょうひ)さんです。


取材・レポート:西山裕子(生態会事務局長)




代表取締役:姜 京日 略歴


1979年、東京生まれ。

青山学院大学にて機械工学学士、南カリフォルニア大学 (USC) でコンピュータサイエンスの修士取得。

NHN JapanでUser Interface Technology 室を率い、任天堂にてゲーム機器のオンライン関連UIの開発を行う。



生態会事務局 西山(以下、西山)世界初の窓型スマートディスプレイ、Atmoph Windowを開発・製造・販売しておられるということで、今日は楽しみに参りました。コロナの巣ごもり需要で、ビジネスが伸びていると聞きましたが、いかがでしょうか。


株式会社アトモフ さん(以下、姜):はい、2020年の4月にAtmoph Window 2を販売したのですが、月間販売台数は初代の10倍以上、500台前後売れています。今は、在宅勤務が増え、海外旅行もできない時期です。僕たちの製品は、デジタルで満足するというものではなく、地図や位置情報が出るなど旅行気分を味わえるので好評です。エクスペディアなど旅行会社とも提携していて、飛行機のチケットも取れます。世界中で3000本風景を撮影していて、豊富なコンテンツがあります。


始まりはロスアンジェルスの部屋

西山:この事業を始めた、きっかけをお知らせください。


:元々僕はロボットの研究者になりたくて、大学卒業後、2005年にアメリカの大学院に留学しました。子どもの頃から、アトムやガンダムなどが好きで、自分で作れたら面白いなあと思って。カリフォルニア州のロスアンジェルスの大学で、2年半過ごしました。青い空が魅力の場所なのに、当時住んでいた部屋の窓からは、隣のビルの壁しか見えなくて。慣れない英語や研究で疲れが溜まっていたのですが、ふと、窓の景観が悪いのがストレスかなと気づきました。そこから試行錯誤が始まったのです。テレビに沖縄の環境DVDを接続したり、当時発売されたiPodTouchで風景を写したのですが、どれもソリューションにならず、風景が写る窓を作ったらいいんじゃないかなと考えました。


帰国後は、フリーランスのエンジニアを経て、NHN Japanで4年ほど勤め、2013年に任天堂が人材募集をしていたので入りました。任天堂は独創性があると思いましたし、個人的にも京都が好きだったので。


この間も、働きながら、窓のアイデアは考えて、試していました。2014年に4Kのカメラが普及し高品質な風景が撮影できるようになり、ディスプレイも薄くなり、小型の基盤など、いろいろな技術が登場しました。今なら作れるかなと思い、決断しました。


起業の決意から、製品化までの苦労

西山:任天堂にはどれくらい、いらっしゃったのですか?

姜:1年ほどです。そこで優秀な研究者の中野に出会い、共同で創業しました。


西山:このアイデアを任天堂でやろうとは、思わなかったのですか?

姜:1ミリも考えませんでした(笑)。自分のアイデアだし、任天堂はゲーム機しか作らないので。


西山:起業するとき、ご家族からの反対はなかったのですか?

姜:少しありましたが・・・「おじいちゃんになった時、後悔したくない」「今しかできない、1年やってダメなら解散する」と、半年くらい妻に説得を続けました。「そこまで言うならやってみたら?」と、一緒にすることになりました。妻はデザイナーです。うちの事業において、デザインはとても重要なのですが、シンプルで使いやすいと評判です。


京都のアトモフ本社

西山:京都で創業したのは、なぜですか?

姜:僕も中野も東京出身ですが、当時は京都に住んでいました。二家族が引っ越すのも大変なので、そのまま創業しました。任天堂や京セラも京都にいながら世界的な企業としてやっているし、大丈夫だろうと。僕達の事業は個人の購入が9割で、残りが法人です。コロナで、個人の割合は伸びています。法人は、カフェやレストラン、病院、研究施設など。機密漏洩を防ぐために窓のない施設は結構あるのですが、研究者が鬱になってしまう。そんなところでも使われています。


日本の販売が7割であとは海外。今後、海外の比率が増えていくのを考えても、東京か京都かは、関係ない。むしろ京都のブランド力は海外で高い。確証というよりは仮定でしたが、6年間、京都で何とかやっています。


VCに断られても、別の方法を探して

西山:モノづくりは、資金が必要ですが、どのように集められたのですか。

姜:VC(ベンチャーキャピタル)に3社ほど当たったのですが、「そんなものが欲しいのはあなただけだ」と言われて、ダメでした。そこで、アメリカで始まったキックスターターというクラウドファンディングを使いました。2016年頃ですね。そこと、日本のMakuakeで合計3,000万円くらい集めました。その実績をもとにVCから1億円調達して、初代のAtmoph Window ができました。その後、Atmoph Window 2の製品化のために、またクラウドファンディングで1億円調達し、VCからも出資を得て2020年4月に出荷を開始しました。コロナでしばらく物流が止まったのですが、今は、どんどん出しています。フレームは愛知のカリモク家具で、中は深センで作っています。


西山:モノづくりは、サプライチェーンが大変ですよね。

姜:そうです。製品の物流と配送の物流が遅れました。コロナだからこそ、早く欲しいというお客様の要望もあって、せっかく注文が来ているのにと、大変でした。


西山:ウォルト ・ディズニー・ジャパン株式会社とのライセンス契約も、昨年9月に発表されましたね。

姜:4年がかりの交渉でしたが、ディズニーのファンタジーの世界での風景を、自分の部屋で見ることができることができる様になりました。




西山:今後、組みたい会社はありますか?

姜:住宅メーカーや、インテリアデザイナー、建築家などと組めたらよいですね。


西山:これからの展望を教えてください。

姜:最近、僕たちの製品を「絶対欲しい」という声をいただくようになりました。新婚旅行はフランスの予定だったが行けなくなったので、窓から風景を見たいとか。給付金で買ったりとか。今後は、生活の中に自然と存在するものになりたいです。ドラえもんやSF映画に出てくるように、世界の風景がバンバン切り替わったり、孫と話せたりできるようにしたいですね。  

取材を終えて:ベンチャーキャピタルに受け入れられなくても、自らの信念に基づき起業された勇気と思いには感心しました。一方で、期限を決めて事業計画を練り、当時はまだ利用者も少なかったクラウドファンディングで資金を集めるなど、戦略的に動かれています。


生態会の取材の後、人気ビジネス雑誌「日経ビジネス」の記者さんが有望なスタートアップを探しているというので、姜さんをご紹介しました。ユニークな事業とその成長性に注目され、市場を創るフロントランナーとして掲載されました。記事はこちら


コロナで家の環境を整えたいというニーズは増えています。また、海外旅行が大きく制限されている現在、世界中の風景が窓から見えるのは、とても魅力的ですね。(生態会 西山)




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