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  • 執筆者の写真Yoko Yagi

CO2削減ビジネスの最先端!バイオマスCO2吸収材から生まれるDACプラ

更新日:2023年8月9日

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は、バイオマスCO2吸収材の開発製造販売を行う 株式会社ベホマル 西原麻友子(にしはらまゆこ) 代表取締役にお話を伺いました。環境貢献したい消費者が日常生活の中で行動できる”ユビキタスCO2回収社会”とは?


取材・レポート:垣端たくみ(生態会事務局)

八木曜子(生態会ライター)



 

西原 麻友子(にしはら まゆこ)代表取締役 経歴

奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科卒業後、株式会社村田製作所入社。電子部品用電極材料の研究開発、信頼性技術開発、環境技術開発に従事。22年事業構想大学院大学に社会人入学、10月株式会社村田製作所退職。植物由来のCO2吸収材に出会い、スピード感を持って商品化するべく起業を決意する。

 

身近で手軽にCO2回収ができるDACプラを作る素材を開発


生態会 垣端(以下、垣端):本日はお時間いただきありがとうございます。まずは事業内容を教えて下さい。


西原代表取締役(以下、西原):バイオマスCO2吸収材の開発製造販売を行う株式会社ベホマルを2022年11月に創業しました。樹脂用添加剤としてプラスチック等に混ぜて用いることで、”DACプラ製品”を製造することが可能になります。


DACプラとは、Direct Air Capture-Plasticから作った造語で、常温でCO2を吸収するプラスチック製品を指します。それぞれのDACプラ製品が回収できるCO2の量は微々たるものですが、この製品が社会に普及すれば、生活や社会活動のあらゆるところでCO2を回収することができます。


私達は2050年のカーボンニュートラルをターゲットにしています。カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します。政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言していますが、すべての政策を組み合わせても必ず残るCO2排出があるため、必ず吸収・除去が必要になります。




どうやって吸収・除去をするかというと、植林とDAC(Direct Air Capture:空気中からの二酸化炭素の回収)が主に考えられています。ですが植林は時間がかかり、場所や回収量の問題などがあります。またDACは一般的に大がかりで場所が限定的です。


しかしこの二つ以外にも、もっと身近な手軽なDACもあっていいのでは?というのがそもそものアイデアの原点です。



常温でCO2吸収し、80度の熱で放出するバイオマスCO2吸収材


西原:弊社の素材を樹脂材と混ぜてプラスチック製品を作ることで、身の回りにある大量のプラスチック製品を大気中からCO2吸収する製品にできます。DACプラの機能としては、①大気中からCO2を勝手に吸収し80度の熱で放出するCO2吸脱着機能と、②CO2吸脱着で色の変化が可能と言う2点が特徴です。


このバイオマスCO2吸収材は植物由来で、生体適合性・生分解性があります。一般的に樹脂を作るときにはいろいろな添加剤をいれて造ります。製造メーカーにとってはすでにある製造工程を変えることなく、添加剤を一つ増やすだけで成形加工が可能です。樹脂に混ぜる部分は特許出願も済ませていまして、海外出願も検討中です。


CO2を吸収すると色を変化させることも可能


環境対策というと太陽光発電をいれるとか新たに設備を設置するというのが基本施策ですが、今ある設備を使って環境製品を作れることが製造者にとって喜ばしいことだと考えています。


また、使用者にとってはプラスチックを使っていても環境にやさしい製品として使うことが出来ます。


さらに、化学産業というバリューチェーンおよびサプライチェーンがしっかりできている日本の基幹産業を活かしながら、環境後進国と言われる日本から世界に発信できることがメリットです。


垣端:なるほど、御社はDACプラを作るための添加剤を開発研究販売されているメーカーという立ち位置なのですね。


西原:そうです。弊社は添加剤メーカー、いわゆる製造業です。パートナー企業としては製品製造業者や商社になりますが、彼らに材料販売し、DACプラの製造販売をしてもらうマネタイズモデルです。


現在研究開発段階で、1年以内に有償サンプルを作り、お客様の製造工程で検証し、回収装置を別のパートナー企業と試す予定です。3年以内には少量生産、5年以内には大規模量産を目指しています。また、1年以内にはVC調達していきたいです。


垣端:添加剤の価格帯はどれくらいを想定されていますか?


西原:サンプル価格はキロ数万円程度の予定ですが、量産したらスケートメリット出してもう少し安くなります。樹脂のペレットや材料はキロ数百円ぐらいだと思うので、最初は高付加価値品から入れると考えています。



目指すゴールはユビキタスCO2回収社会


西原:私達の最終的なゴールはユビキタスCO2回収社会(九州大学藤川教授が提唱)というわれているもので、ありとあらゆるところ、ありとあらゆる人がDACプラを通じて資源と一緒にCO2を集めて主体的に環境貢献する社会をめざしています。



ライター八木(以下八木):興味深い構想ですね。あらゆる人がDACプラを通じてCO2を集められる世界がユビキタスCO2回収社会なのですね。常温でCO2を回収して80度で放出する循環のイメージを具体的にお話してもらえますか?


西原:はい。例えばいま家庭などで熱風が出てるけれども何も使っていないもの、例えば食器乾燥機があります。その熱を利用して換気がてらCO2を回収するような形にすると、エネルギーをあたえることなくCO2が出せます。


DACプラを使って家庭で採取できるCO2自体の量は多くないので、家庭で植物を育てる程度のイメージです。例えば自分の家でコーヒーを飲んだ時にCO2を集めて、それを野菜に吸ってもらって、その野菜を食べようというサイズ感の資源循環をイメージしています。大きいCO2回収は大企業がしていますから、いち消費者としてはチリツモでやるイメージです。


また、80度の熱は企業の中では装置やサーバーなどからたくさん出ている温度帯なんです。使われず放置されている熱源をうまく使うと、わざわざ器具を使わずにCO2を回収することができると考えています。


更に大きい循環としては、将来的には自治体専用のゴミ袋などに添加剤が入ってくると、ゴミ焼却する時の熱で回収することも想定できます。プラスチックのリサイクルではリサイクル工場で溶かす際の熱でCO2が回収できます。


こういった形で大中小のいろんな循環ができることで、ぐるぐる資源循環のサイクル、二酸化炭素と資源が一緒に回るという社会ができるとイメージしています。


垣端:DACプラでどれくらいCO2が回収できるのですか?


西原:プラスチックは世界で年間4億トン使っています。これが10年経つと12億トンになると言われています。


そのうちの0.1%の40万トンくらいがこの添加材入りに変わると計算すると、1日1回CO2を回収すると計算すると、杉の木500万本が年間に吸収する量に匹敵します。


日本だけだと800万トンなので、40万トンは5%程度です。例えば毎週使っているゴミ袋をこれに変えるみたいな形で達成できちゃうかもというイメージです。塵も積もれば大きな効果となります。


ハブとなる装置があると毎日回収できます。携帯を毎日充電するように、夜のうちにCO2を回収して、昼間のうちに光合成するような感じだと面白いですよね。




プラスチックに混ぜることで耐水性を強化


垣端:大変面白いですね。そもそものきっかけとしてはどこから着想を得たのですか??


西原:私は大学院を卒業後、大手電子部品メーカーで15年研究職として働いていました。機能性材料を混ぜて機能発現させる開発と解析が専門です。樹脂と粉を混ぜることで環境系の新規事業を考えたくて文献を調べているうちに、このバイオマスCO2吸収材の粉を見つけました。ただこの粉は使い物にならなくて、誰も見向きもしませんでした。


また、プラスチック二着目したのは、毎日のゴミ出しをするときに「このゴミなんかもうちょっと役立たないのかな」と思ったレベルからの発想ですね。いま脱プラの中で悪者にされているのがプラスチックですが、それでもなくならないプラスチックがもうちょっと役立つならWIN-WINなんじゃないかと。


このアイデアが思いついた時に、同じことをしている人がいないか調べたのですが、いなかったんですね。なので自分で始めようと決めました。


八木:この素材はありふれたものなのですか?


西原:原料は元々じゃがいもやとうもろこしなどのでんぷんからできているものです。CO2吸収剤も見た目は白いパウダーです。身近に触れるものなので危険なものを使いたくなかったんですよね。


CO2吸収材としてはいろんな競合があるのですが、バイオマスCO2吸収材は吸収能力が低いことや、耐久性もなく、装置にいれるものには全く不向きなんです。


この素材は知名度が低く、機能として水に大変弱いです。CO2吸収製品を扱っているメーカーさんは素材をプラントの回収装置に使いたいのでコストと耐久性と性能がとても大事です。


そういったメーカーさんにとっては、非バイオマス系素材でもっと優秀なものがたくさんあるから、わざわざこの素材を使わなくていいという判断となっているのだと思います。私達はその弱点をプラスチックに混ぜることで耐水性を強化しています。


垣端:なるほど、他のメーカーさんから見捨てられていた素材であったのと、プラスチックに混ぜることで弱点を克服できたのですね。


西原:そうです。添加剤とは基本的には伸縮性を良くするとか、燃えにくくするとかのために樹脂の機能を伸ばす方向で添加するものです。樹脂メーカーさんはバイオプラスチックを開発されているので、あえて樹脂に機能を付与することはしていませんでした。対策の間が空いてたので繋いじゃえ!ということで生まれました。イノベーションの結合のイメージですね。競合の参入障壁があるうちにスケールメリット出してやろうと考えています。




垣端:この素材の取り扱いは簡単ですか?


西原:普通に一般の添加剤として使えるので、この点もメリットが大きいです。樹脂メーカーさんは中小企業さんが多いので、環境対策をやりたいけどやれないのが実状です。そこに対して添加剤を一つ増やして製造するだけなら負担の割合は小さいはずです。


対して大手メーカーさんはお金が高くてもいいから、他の企業ができないことをしたい、ブランド力を上げるための環境対策をやりたいと考えています。DACプラなら自社独自の製品展開が出来ることが多少コストかかってもいいからオリジナルなものが作れるというのがメリットです。


垣端:なるほどですね。回収装置はどのように準備されるのですか?


西原:いわゆるDACの大規模回収装置はいろんなメーカーさんが最近開発しています。ガス会社や電力会社さんがプラントや発電所から出たCO2を燃料添加するっていうのを研究されています。そういったところと協業していきたいと思っています。


また、協業先と一緒に小さなサイズ感のものを開発する事も想定しています。家庭では例えば食器乾燥機に換気扇でホースを繋いでCO2をダクトで野菜などを育ててアクアポニックス(生産性と環境配慮の両立ができる持続可能な農業)のようなものとつなげると、陸海空全部揃った小さい地球の資源循環を体感できるといった、ディスプレイを作りたいですね。


あとは造花サブスクみたいなものも考えています。小型の植物工場などもコラボできるかもしれませんね。


アクアポニックスに食器乾燥機を繋いでCOも循環させる


民間型研究開発スタートアップとして進む


八木:大変おもしろい構想でワクワクしますね。しかしなぜ前職の会社ではなく起業を選ばれたのですか?


西原:元々は前の会社でやろうと考えて動いていたのですが、材料売をしていない会社だったということもあり、スピード感を求めて起業しました。滋賀県の創業支援金という助成金をもらえるということになり、県内で創業することが条件で自宅も滋賀なのでそのまま滋賀で起業しました。


垣端:滋賀といえば立命館の山末先生と共同研究をされていますね。BKCインキュベーターにラボを構えていらっしゃいますが、開発拠点ということですか?


西原:そうです。立命館大学理工学部機械工学科の山末教授とライフサイクルアセスメントの計算および量産装置の知見をお借りして共同研究をしています。山末先生と共同研究をするきっかけは、立命館大学の技術シーズ集から先生のことを知り、22年11月末くらいに滋賀県創業支援プラザの方に繋げていただき、打合せをした当日に共同研究をやりましょうと即決いただきました。起業して半年くらいは自宅の一室に実験スペースで研究をしていました。立命館大学BKCインキュベータのラボに入ったのが今年の6月からです。開発して樹脂を混ぜたりとかもラボスケールでできるようにしようと思っています。


ラボの様子

垣端:いまは何が課題ですか?


西原:今の課題としては人材ですね。樹脂と材料と機械系の研究職の方や営業の方が入ってもらえると嬉しいですね。いま現在は事業構想大学のメンバーがサポートしてくれています。アカデミアじゃない研究開発型スタートアップという形で元メーカーマンをどんどん入れていきたいですね。やってることが昔ながらの製造業の得意分野なので、シニア層がイメージです。


八木:大きな可能性を感じて大変応援したいと思いました。本日はお時間いただきありがとうございました。


 

取材を終えて

”地球を救う勇者になろう”というビジョンを元に、気候変動対策を消費者ひとりひとりの身近なサイズにするというコンセプトが斬新でした。小さな取り組みが積み重なることで、環境問題に対する市民の意識が高まることも期待されます。プラスチックという悪者になりがちな製品が環境製品に変わる仕組みはまるで魔法のよう。西原さんのポジティブかつ好奇心旺盛なお人柄も魅力的で、今後も目が離せません。(ライター八木)


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