養父市から宇宙を目指す!気球による広域監視で獣害・防災など課題解決:BE SPACIES
- 森令子

- 4 分前
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関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は、BE SPACIES株式会社の代表取締役CEO 谷垣 槙氏に話を伺いました。同社は、先端技術で社会課題解決に取り組む宇宙産業スタートアップです。
取材・レポート:西山 裕子(生態会事務局)、森令子(ライター)

谷垣 槙(たにがき しん)氏 略歴
2002年、兵庫県生まれ。ゼロ高等学院卒業。既存の教育への違和感から、全日制普通高校を1年終了後、堀江貴文氏主催の通信制高校・ゼロ高等学院に1期生として編入。在学中に“高校生鮨職人”として活動し、様々な経験を重ねる。卒業後、堀江氏の関わる「なつのロケット団」やスペースXに刺激を受け、同世代の仲間とロケットエンジンを自主開発。宇宙産業への熱意を追求すべく 2023年に会社設立。
気球とIoTを活用した、低コスト&長期間稼動の「空のインフラ」開発
生態会 西山(以下、西山):本日はありがとうございます。事業概要を教えてください。
BE SPACIES株式会社 谷垣 槙氏(以下、谷垣氏):私たちは、宇宙開発から地上のソリューション開発まで、先端技術で社会課題解決に取り組む宇宙産業スタートアップです。

現在は、気球による広域監視システムの構築に注力しています。気球にIoTデバイスやエッジAIカメラを搭載した、”気球リモートセンシング”プラットフォームを開発し、獣害対策や防災など社会課題を解決する「空のインフラ」構築を目指しています。
空からの監視には、人工衛星からドローンまで様々な既存システムがあり、それぞれ特徴があります。例えば、ドローンはピンポイントの監視が得意ですが、バッテリーの制約があり、通常、数十分から数時間と短時間の稼働です。人工衛星は広範囲をカバーしますが、コストが非常に高く、またリアルタイムの監視には不向きです。
気球には、低コストで定点観測が可能な特徴があります。さらに、有線による給電や通信を行えば、安定して長期間稼動ができます。私たちは、気球ならではの強みを活かせる領域で、実証実験を進めています。
気球を活用したプラットフォームの実証実験の様子。株式会社GOCCO.との共同開発で進めている。GOCCO.はゴム気球打ち上げによる実験及び撮影事業を展開している。
獣害対策、水産業、幅広い分野で実証実験が進行
生態会 森(以下、森):どのような実証実験が進んでいるのですか?

谷垣氏: 岐阜県飛騨市では、GOCCO.とともに、クマやサルなど野生動物の侵入を検知するための実証実験をしています。山林と市街地、その間の境界エリアで、動物と人間の生活圏を分ける「空間的ゾーニング」による獣害の軽減を実現しようと、気球を軸とした検知システムで、動物の動きを連続的かつ高精度に捉える仕組みを開発中です。
低コストで運用できることも重視しています。例えば、既存の動物用GPSデバイスは1個何十万円もしますが、私たちのシステムでは、自社開発の基盤と市販デバイスを組み合わせ、数万円程度でデバイスを提供できる予定です。現在は、デバイスの試作を重ね、データ取得テストを行っています。
西山:獣害対策以外には、どのようなニーズがありますか?
谷垣氏:非常に多くの可能性があります。特に、赤潮監視など水産業への応用、地震の被災地などを上空から確認する臨時インフラとしての活用など、一次産業と防災の分野で、全国の自治体や事業者と連携して、実証実験を進めています。
養父市から宇宙へ!自らロケットエンジン開発に挑む圧倒的行動力
西山:今日の取材は、兵庫県養父市のシェアオフィスでお話を伺っています。活動拠点に養父市を選ばれたのには理由があるのでしょうか。
谷垣氏:はい。2024年9月に、共同開発パートナーの株式会社GOCCO.と共に、養父市と連携協定を締結しました。当社のミッションである宇宙開発を見据え、気球をはじめとする空の技術を活用した実証実験を行う拠点として、養父市内に実証フィールドを設置しました。養父市は国家戦略特区に指定されており、新しい挑戦を前向きに応援してくれる自治体です。宇宙産業を軸に、地方に根付いた新しい産業を創出し、地域活性化につなげていくことを目指しています。
古民家をリニューアルしたシェアオフィスが本社
西山:宇宙開発とは、壮大なミッションですね!なぜ、宇宙開発スタートアップを起業したのですか?
谷垣氏:私は、小学校の頃から既存の学校教育に違和感を持っていました。地元の高校に進学しても、高一から「受験だ、就職だ」と言われ「このままでどうなるんだろう、全然おもしろくないし、なんか違う」と強く思っていました。その頃、堀江貴文さん主宰の通信制「ゼロ高等学院(ゼロ高)」の開校を知り、全日制普通高校で一年終了後、ゼロ高1期生として編入したのです。座学より行動を重んじるゼロ高で、在学中から”高校生鮨職人”として活動するなど、本当にいろんな経験をしました。堀江さんをはじめ、凄い大人の方々とも出会いました。
宇宙への興味のきっかけは、やはり堀江さんです。堀江さんたちの活動をベースにした「なつのロケット団」という小説を読み、自分たちでロケットを作るという活動に強く刺激を受けました。さらに、イーロン・マスクのSpaceXのミッションでもある“人類を多惑星種族にする”というアイデアにも、強烈な感銘を受けました。
「僕たちもロケットをつくりたい」と思い立ち、ハイブリッドロケットの研究をしていた同世代の大学生など、7人ほどの仲間とロケットエンジンを自主開発しました。東大阪の工場にも協力してもらい、1年半ほどかけてロケットエンジンは完成したんです。でも、燃焼実験には、大きな資金が必要ですし、個人では許可がおりず断念しました。そこで初めて、「会社を作ろう!宇宙に行くんだ!ロケットやるんだ!」と、2023年に会社を設立しました。私は「振り返る前に動くタイプ」なので(笑)。

社名に込めた「希望」「宇宙」「多惑星種族」への思い
西山:ユニークなご経歴と、圧倒的な行動力に驚きました。社名にも特別な思いを込められているそうですね。
谷垣氏:社名の「BE SPACIES」は造語です。ラテン語で「希望」を意味するSpes(スペス)と、宇宙(Space)、種族(Species)といった言葉を掛け合わせました。「人類が多惑星種族になるために貢献したい」「未来に対してネガティブにならず、ワクワクできる社会を創りたい」という思いを込めています。
水道も高速道路も、先人がインフラを整えてくれたおかげで今の生活があります。私たちは、宇宙をテーマに技術開発しながら、日常のインフラにも価値を提供し、社会に貢献していきたいと考えています。
地球での課題解決の先に、宇宙へ行く未来がある
西山:最後に、今後の展望や目指す未来について教えてください。
谷垣氏:やりたいことは尽きません。例えば、気球の観測データとAI、ロボットを組み合わせたビジネスなども構想しています。海外でのスマート農業にも興味があります。20代の私が40代になる頃には、国家やお金の概念も変わっているかもしれません。地方の道路などインフラが維持できなくなる未来も見据え、誰もがワクワクできる新しい社会基盤を創りたいです。
私たちが今、地球上で取り組んでいる技術開発は、そのまま火星や金星の探査へ持っていくことができます。「人類を多惑星種族にする」というビジョンに向かい、まずは、目の前の課題に全力で取り組み、最終的には全ての技術を宇宙へ繋げたいです。早く、宇宙に、そして惑星に行ってみたいです!
西山:本日はありがとうございました。
【生態会のコメント】 「当初の計画は“ロケットつくろう!”だった。宇宙に行くんだという思いだけで会社を作った」と圧倒的な熱量で語ってくれた谷垣氏。宇宙産業には莫大な資金が必要という現実に直面しても、全く怯むことなく、遥かなビジョンの実現を目指し、まずは気球を活用した社会課題の解決で、着実に事業の成長を図っています。地元に近い養父市との連携や、志を同じにするディープテック企業・エンジニアとの共同開発など、仲間を増やしつつ宇宙への情熱を燃やし、火星や金星へと続く長い道のりを進んでいる谷垣氏の挑戦を、心から応援しています!(スタッフ 森令子)
















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