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  • 執筆者の写真Seitaikai

“日本企業の海外事業部”として中国市場への進出をサポート:BEST LIFE

更新日:2020年11月11日

関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家。今回は、中国市場の進出を考えている日本企業に対して商品設計やマーケティング戦略のサポートを行なっているBEST LIFE株式会社 代表、趙 成娟(ちょう せいけん)さんにお話を伺いました。


取材:森令子(生態会事務局)、濱本智義(学生スタッフ)

レポート:濱本智義

BESTLIFE 代表取締役 趙 成娟さん

代表取締役:趙 成娟 略歴

北京大学卒業後、中国の貿易会社や食品会社で10年ほど勤務。その後、同志社大学大学院ビジネス研究科で日本語とビジネスを学ぶ。大学院卒業後、製薬会社ファイン株式会社に入社し、そこで中国人の健康食品に対するニーズを発見する。それと同時に、自身が日中を繋ぐ役割を担えると確信し、 “日本の中小企業の海外事業部”として中国進出を目指す企業を支援するために 2019年5月28日に起業。2020年現在、来日6年目。

 

生態会事務局 森(以下、森):事業概要を教えていただけますか? BEST LIFE 趙さん(以下、趙):中国市場に進出したいと考えている日本企業に対して、共同で商品開発をしたりマーケティング戦略を練ったりと、様々な面でサポートを行なっています。さらに、自社ブランド商品を、製薬会社と健康食品を共同開発、中国で販売しており、非常に好評です。近いうちに、日本でも販売開始できるよう商品開発を急いでいます。


:中国で一番人気の商品は何ですか?


:私たちの自社ブランド製品として、現在、人気が高いのは「はだおもいコラーゲンドリンク」という商品です。日本製の高品質で安全な健康食品として、美容に敏感な30代女性を中心に大変好評で、2020年5月発売で計220,000本が売れ、現在はほぼ完売です。価格は、1ケース8,000円(1本約800円)です。



生態会 学生スタッフ 濱本(以下、濱本):設立してすぐヒット商品が出来たとは、すごいですね。学生の僕にとって「ドリンク1本800円」というのは正直高く感じるのですが、なぜ高単価にも関わらず、こんなにたくさん売れているのでしょうか?


:日本製品への信頼というのはもちろんですが、実は、中国では健康食品は高級品として扱われているのです。健康食品はもともとアメリカが発祥で、そのあと日本で普及していきました。日本でも数十年前の市場開拓期は、カプセルや錠剤の健康食品は薬だと思われていました。対して中国では、最近になってようやく以前の日本のように健康食品が徐々に浸透しはじめており、実際に健康食品を医薬品と勘違いされている中国人の方も、まだまだ多いのです。現時点でも、中国では健康食品は贅沢品であり、市場が求めているのも、質の高い高級品なのです。


私たちは、安全で高品質という日本製品のイメージだけでなく、”高級品の方が欲しい”という中国の消費者にあわせて、製品の品質だけでなく、パッケージなどの細かい部分にもこだわって時間をかけて作りました。また、中国で実際に店を回ったり、顧客からの意見を直接聞いてどんなものが売れるのか念入りに調査をしました。その結果、中国人に受け入れられる商品を作り上げることができ、人気になったんだと思います。


:なるほど、そのような背景があったのですね。実際に商品の販売を始めたのは5月あたりとのことですが、新型コロナの影響はありましたか?


:「はだおもいコラーゲンドリンク」の好調な売れ行きのように、結果的には良い影響もありましたが、初めはとても混乱しました。新型コロナが蔓延し始めた2月ごろ、中国への輸送が全てストップしてしまい、その時に契約していた商品の計画も同時に止まってしまったんです。これからどうなるのか本当に不安でした。


しかし、諦めずに、日本国内でできることを考え、新しい商品を計画したりと試行錯誤した結果、完成したのが「はだおもいコラーゲンドリンク」でした。5月あたりには中国への輸送が再開し、それと同時に販売を開始しました。そして、ありがたいことに、新型コロナの影響で中国の健康意識が前よりも高まったということもあり、「はだおもいコラーゲンドリンク」はヒット商品になりました。現在、中国では健康商品ブームになっています。まだ未開拓の市場でもあるので、今が非常に狙い時だと思っています。


:中国市場に進出したいと考えている日本企業は多いと思いますが、中国に進出するにあたって実際にどういった課題がありますか?


:やはり一番の課題は法律だと思います。中国の法律は、毎日のように変わっていきます。特に健康食品は医薬品との区別が難しく、法律や貿易に関する知識が必要になってきます。私はもともと中国の貿易会社で働いていたことがあるので、その経験と知見を活かして提案をさせて頂いています。


また注意しておきたい点として、日本で人気な商品が必ずしも海外で人気になる訳ではないということです。その国の市場に合った商品設計や、マーケティング戦略が必要不可欠です。


例えば、日中の大きな違いとして、商品寿命が挙げられます。日本人は気に入ったら長く同じ商品を使い続ける傾向にありますが、中国人は常に新しいものを求める傾向があり、中国での商品寿命は1年程度です。そのため、常に新商品を発売し続けなければならず、その度にその市場に合った商品設計やマーケティング戦略が必要になってくるのです。


濱本:趙さんだからできることですね。起業しようと思ったきっかけは、何ですか?



:日本の医薬品会社に勤めていたころ、中国に進出したいけどどうしたらいいのかわからないという日本企業をたくさん見てきました。中国での健康食品に対するニーズは非常に高いのにも関わらず、法律や貿易に関する知識不足などが理由で進出できていないという企業がほとんどだったんです。


先述した通り、私は日中両国で実務経験があり、貿易会社や医薬品会社に勤めていたので、業界経験や業界理解、法律と貿易に関する知識があります。このような経歴を持つ人は非常に少なく、自分なら、日本企業と中国を繋ぐ架け橋になれるのではないかと思ったんです。そして何より、私は日本の文化が好きです。特に日本の「美と健康」を世界に広めたいです。そのようなきっかけや思いから、起業を決意しました。


:これからの展望を教えてください。



日本の中小企業の"海外事業部"として、日本の「美と健康」を世界に広めていきたいと考えています。中国市場に合った商品設計とマーケティング戦略を強みに、現在すでに複数の日本企業と共同で新たに15品程の自社ブランド製品を計画しています。コラーゲンドリンクも、来年にはデザインや味などを変更し、新商品として発売する予定です。

 

生態会からのコメント:中国の健康食品市場は未開拓市場で、コロナ禍の今、非常に注目されており安全・高品質な日本製品は大人気とのことですが、両国の文化やビジネスを理解する趙さんが企画した製品だからこそ、設立直後にヒット商品を生み出せたのだと思います。また、中国と日本の商習慣や消費者の好みの違いなど、趙さんが教えてくれた様々な事例はとてもおもしろく、巨大な中国市場に無限の可能性を感じました。(学生ボランティア 濱本)




取材・レポート:西山裕子(生態会事務局長)・濱本智義(学生ボランティア)

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