• 西山裕子

ドローン撮影とAIの画像識別技術で、森林保全の環境問題解決に挑む

更新日:6月7日

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は、京都大学の農学部森林学科の博士課程を修了し、起業の道を志した DeepForest Technologies株式会社(ディープフォレストテクノロジーズ)の代表取締役、大西信德(おおにし まさのり)さんにお話を伺いました。


取材・レポート:西山裕子(生態会 事務局)

久世尚(ライター)



 

代表取締役、大西信德氏 略歴

2017年 京都大学 農学部森林科学科 卒業

2017年 ドローンとディープラーニングを組み合わせた樹種の識別に 世界で初めて成功

2019年 熱帯雨林でのドローンでの生物多様性評価方法を研究

2019年 京大生チャレンジコンテストに採択

2021年 京都大学のインキュベーションプログラムにてソフトウェア開発

2022年 京都大学農学研究科森林科学専攻 博士後期課程 卒業

2022年 DeepForest Technologies㈱を設立

 

■AIやドローン技術を駆使して、環境問題を解決


生態会 西山(以下、西山):この度は、取材にご対応いただきありがとうございます。まずは、御社の事業概要を教えていただけますか。


京都大学にて取材

DeepForest Technologies 大西(以下、大西):当社は、「100年後も地球が生物にとって住みよい場所であること」を目指しています。そのために、森林の健全な利用・保全を目指し、ドローンによる撮影、データ処理、人工知能による樹木識別のソフトウェアを開発しています。


西山:すでに、森林の調査などは行われていると思いますが、従来の方法では、なにか問題があるのでしょうか。


大西:はい。現在の森林調査は、専門家が森林に立ち入り、1本1本の木を観察していく方法が主流です。この方法は精度が高いものの、膨大な人手と時間が必要で、大きなコストがかかります。森林調査をできる専門家が不足している、という問題もあります。さらに、人が立ち入れないような場所は調査できないため、精度が高いとはいえ、それは局所的な調査であって、全域を調査することは不可能です。


西山:なるほど。それを解決するために、御社はドローンやAIによる樹木識別を活用するわけですね。


大西:そうです。ドローンを活用することで、これまで入れなかったエリアもスピーディーに調査が行えます。また、AIを活用することで、専門家でなくても、樹木を識別することができるようになります。この結果、誰でも、簡単に低コストで森林調査ができるようにしたいと考えています。


西山:たしかに、1本1本を調べていく調査方法と比べると、かなりのコスト削減ができそうですね。ただ、ドローン撮影やAI識別では、専門家による目視の調査よりも精度が落ちそうですが、どうでしょうか。


大西:そうですね。専門家の目視による調査の精度を100%とすると、我々が目指しているドローン撮影・AI識別による精度は概ね80%です(環境や条件による)。しかし、精度が80%もあれば十分と考えています。専門家はエリアを限定したサンプリング調査なので、私たちの手法の方が、精度が80%であっても調査エリアが格段に広げられ、森林の状態を的確に把握するという目的が達成できるのです。



■森林保全への貢献度を定量化


西山:森林調査が、どのように森林保全や生物多様性の確保につながっていくのでしょうか。


大西:「REDD(Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation in Developing Countries)」をご存知でしょうか。発展途上国の森林保全によるCO2削減を先進国が経済的に支援することによって、森林伐採よりも、保全の方が経済的なインセンティブを大きくなるという取り組みです。ここで重要になってくるのが、どの程度、森林保全をできたのか、CO2を削減できたのかを、定量化することです。この定量化のために、当社が提供する低コストかつスピーディーな調査方法が貢献できるわけです。


西山:定量化することのコストや時間がかかりすぎるという問題を、大西さんは解決するわけですね。このような事業を始めるに至った、背景を教えてもらえますか。



京大スタートアップが多数入居するインキュベーションセンター

大西:森林保全などの環境問題については、中学生の頃から関心を持っていました。京都大学を選んだのも、環境問題の研究が日本で1番進んでいるからです。9年間の学生生活の中で、大学内で勉強や研究を行うだけではなく、ボルネオ島で2カ月間生活し、実地調査も行いました。色々な知識や経験が増えれば増えるほど、環境問題への関心は高まり、「私には、何ができるだろうか。」と考えるようになりました。


そんな中、AIによる樹種識別の研究についての論文を発表したところ、世界中から「この技術を実際に使いたい」という問い合わせがきました。これまでは研究者として論文を発表することをゴールとしてきましたが、企業からの問い合わせをきっかけに、自分の研究成果を、実際に環境問題の解決に活用していきたいという気持ちが強くなり、起業するに至りました。マサチューセッツ工科大学を訪れた際に、多くの研究者が研究成果を実社会のために活かすべく、起業しているのを見たことからも影響を受けていると思います。



■より多くの人たちに使ってもらうために、ソフトウェア開発に注力


西山:今後の事業展開は、どのように考えていますか。


大西:ドローンによる撮影・調査においては、受託ビジネスが主流です。たとえば、森林調査であれば、機材を用意し、人員を派遣して自社で調査・分析・報告書作成など、すべての業務を行い、委託料を受け取る方法です。私たちは、このような方式ではなく、ドローン撮影からAIによる識別までを行うソフトウェアの提供のみを行い、ソフトウェア利用料を受け取るというビジネスモデルにする予定です。


理由は、とてもシンプルで、より多くの企業や団体に、安価で使いやすい森林調査方法を提供することが、森林調査・保全、そして環境問題の解決につながると考えているからです。業務受託方式を採用するドローン調査会社が、私たちのソフトウェアを使って、効率的に、どんどん森林調査を進めてもらっても構いませんし、むしろ、私たちが目指していることの実現に一歩近づくので、とてもありがたいです。



西山:なるほど。ソフトウェアの開発・提供に注力した方が、より多くの人に使ってもらえるというわけですね。現状、何か課題はありますか。


2022年3月に博士課程を卒業したばかり。若いエネルギーにあふれる大西氏

大西:色々とありますが、最近悩んでいるのが、ドローンです。私たちのAIによる樹木識別を行うためにぴったりのドローンが、なかなか見つからない状況です。機能・価格の両面において、最適なドローンを探しています。今のところ、中国製のドローンがもっとも優れているのですが、安全保障上の理由から、日本で使用禁止となる可能性もあったり…。まぁ、どうしても良いものが無ければ、自社で開発すると思いますけど(笑)


西山:さすがです(笑) 資金調達は、どのように考えていますか。


大西:まずはソフトウェア開発に注力していく予定ですので、そのための資金を2022年中には調達した


いです。金額としては2,000万~3,000万円くらいを考えています。



西山:森林保全という社会貢献の大きい事業なので、資金調達もソフトウェア開発もぜひ頑張ってください。


大西:はい!中学生の頃から持っていた関心を持っていた環境問題に対して、10年以上も勉強や研究を重ね、調査も行い、いよいよ本気で解決に取り組み始めたところです。これからも、環境問題の解決に向けて情熱を持って挑戦し続けますので、引き続き応援してください。

 

取材を終えて:

ドローン撮影・AI識別というテクノロジーによって、環境問題の解決に取り組む事業は、社会的な意義がとても大きいと感じました。益々、注目を集めていく事業分野だと思います。


大西さんは、インタビュー中も、にこやかに対応してくれる、とてもさわかな好青年でした。業界・分野の初心者に対しても、相手の理解度を考えながら、分かりやすく言葉を使って、話そうとしてくれる姿勢が印象的でした。今後、様々なステークホルダーとの交流や、事業を展開してく中での経験を通して、経営者としても大きく成長していくと思います。(ライター 久世尚)





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