関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家たち。今回は、位置や地形情報といったデータを、ドローンを用いて収集する事業を行うDroNext株式会社の代表取締役 Asa Quesenberry(クエセンベリー・エイサ)氏に取材しました。
取材・レポート:西山裕子(生態会 事務局)・田代蒼馬(生態会学生ボランティア)
Asa Quesenberry 代表取締役 略歴
1994年生まれ。Arizona State Universityに在学中、都市計画を学び、ドローンを用いた都市マップの作成等を行う。大学卒業後、バンクーバーの企業にてドローン事業に関わる。旅行も兼ねておよそ6ヶ月滞在した日本で、ドローン業界がアメリカと比較して遅れていることに気づき、2020年にDroNext株式会社を創業。
■幅広い活用が可能な、ドローン事業
生態会 田代(以下、田代):本日はお時間をいただき、ありがとうございます。ではまず初めに、DroNext株式会社の事業概要を教えていただけますか。
株式会社DroNext Asa(以下、Asa):水中ドローンと空中ドローンを用い、位置や地形情報といったデータを撮影して収集しています。それらのデータを、シンガポールのAI企業等へ提供し、分析しています。
水陸両ドローンを扱う企業は国内でも珍しく、水中ドローン事業は、養殖や港湾、洋上風力発電の設備点検において劇的なコスト削減をもたらすことができます。
また、神戸市や生駒市のハザードマップ作成も行なっています。
生態会 西山(以下、西山):それらの事業の中で、御社の強みは何でしょうか。
Asa:強みは3つあります。
1つ目は、空中と水中、両環境に対応したドローンを使用している点です。
空中ドローンに関しては既に力を入れている企業が多い現状ですが、水中ドローンに関してはまだまだプレイヤーが多くありません。
日本は島国ということもあり、今後その需要は高まっていくと考えています。
2つ目は、シンガポールのBrain Pool Tech社と連携し、AIを用いたソリューションを提供できる点です。
そして3つ目は、国際基準で洗練されたドローン操縦士のネットワークを、全国に抱えている点です。
水陸両環境下で、AIと高い技術を持った操縦士によるドローンによって、顧客に合わせてカスタマイズされたソリューションを提供できるのが、我々の強みであると言えます。
田代:クライアント企業は、外国企業が多いのでしょうか。
Asa:はい、最初は9割がそうでした。
ですが、神戸市や生駒市と事業を行うなど確かな実績を積み、それと同時に日本でのネットワークも広げてきたことで、今では日本企業と外国企業の割合がおよそ1:1となっています。
■関西を創業地として選んだ理由
田代:外国人が日本でビジネスを始める場合、東京を選ぶ人が多いと思います。御社が、関西で創業した理由を教えていただけますでしょうか。
Asa:大きく3つの理由が挙げられます。
1つ目が、アクセスが良いこと。
京都・大阪・神戸といった都市間の距離が近く、電車ですぐに移動することができます。
また関西国際空港が近く、東京・福岡にも同じ時間で行くことができるのは我々にとって大きな利点です。
2つ目が、競合企業が少ないこと。
東京には海外向けに事業を行なっている企業がたくさんありますが、関西にはまだまだ少ないのが現状です。
3つ目が、成長市場であること。
2019年には大阪でラグビーW杯が開催され、2025年には大阪・関西万博が開催されます。東京の市場が大きいというのは確かですが、今後は大阪や福岡の市場がより伸びていくのではないかと個人的には感じています。
また、それぞれの都市に異なる特徴があり、土地的な面白さを感じられることも大きな魅力ですね。また、関西の人々は自分たちに誇りを持っているように感じます。そして、それをお互いに尊敬するような風土が根付いていて、私自身そういった雰囲気を非常に気に入っています。
■今後の展望
西山:出資を受ける意欲はありますでしょうか?
Asa:はい。日本のビジネス・マネジメントに精通していて、フルタイムで働いてくれる方を採用できればと考えています。
現在に至るまで、多くの日本人の方に、契約時や人の繋がりを増やすといった点で、助けてもらっています。よりビジネスを加速させるために、採用を進めていきたいと考えています。
水面下で進めている大きなプロジェクトもいくつかありますので、是非一緒に事業の拡大に協力してくれる方を募集しています。
田代:今後の展望を聞かせてください。
Asa:日本のドローン業界のリーダーとして、業界全体を牽引していきたいという思いがあります。
アメリカではドローン産業は約20年前から存在し、それと比べると日本はまだまだ遅れていますが、近い将来この国でもドローン産業自体が盛んになってくると思います。
そこで、私たちの会社では、エネルギー分野におけるドローン活用に注目しています。
その一つの例が、風力発電。日本のオフショア(岸から沖へ向かって吹く風)からは、世界でも1位2位を争う発電量が見込めます。
特にエネルギー分野では、設備点検等にドローンを使用することで、何百万、何十億といった大きな金額を節約することができます。映像にドローンを使用しても劇的な違いはありませんが、この分野においてはコスト削減にドローンが大きく寄与することが明らかです。
また、今後はドローンスクールの事業など、消費者に向けたサービスも展開していく予定です。現在日本ではライセンスの種類が多く、誰でも簡単にそれらを取得できるため、ドローンがどう作用するかというメカニズムなど、深い知識を持たずに操縦する人が非常に多いのが現状で
来年、ドローン操縦に関する公認ライセンスを政府が発行する動きがあり、日本のドローン業界のルールがある程度整備されることが予想されます。
そういった業界全体の課題にも取り組みながら、サービスを提供する範囲も広げていく予定です。ドローンの利用にはたくさんのアイデアがあり、利用方法は一つではありません。
田代:今後の事業展開が、非常に楽しみです。貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
取材を終えて
水陸両方に対応したドローン事業を行い、またAIを用いて顧客の課題解決に努めているDroNextの事業は非常に革新的だと思いました。
VISAの取得や銀行口座の開設など、外国人として日本でビジネスを始める苦悩を味わいながらも、「日本のドローン業界を牽引するリーダーになりたい」という力強い言葉を聞き、その強い信念を感じずにはいられませんでした。
コロナもビジネスを新たな方向に展開していく良い機会として捉え、イベントやウェビナーなどにも積極的に参加し、日本でビジネスの基盤を着実に構築してきたAsa氏。
海外の会社との提携やスクール事業への参入など、グローバルで多角的な展開を見せるDroNextの今後の動きには、注目していきたいと思います。(生態会 田代)
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