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  • 執筆者の写真濱本智義

福祉業界の無駄をなくし、未来を明るくデザインする:Ecold

更新日:2022年9月5日

関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家たち。今回は、福祉領域でグローバル進出を目指す、 株式会社Ecold の代表取締役CEO 北村 耕太郎(きたむらこうたろう)さんと、取締役COO 中山 のぞみ(なかやま のぞみ)さんにお話をお伺いしました。


取材:垣端 たくみ(生態会事務局)、濱本 智義(学生スタッフ)

レポート:濱本智義

 

《略歴》

代表取締役CEO

北村 耕太郎(きたむらこうたろう)


広島県警察、大阪府警察を経て、外資系企業に就職。長男のリハビリのため、吹田療育園で父子通園を経験後、発達障害と犯罪・二次障害をテーマに予防研究。その後、乳幼児向け早期療育プログラムの研究開発。2018年4月、療育施設エコルドをスタート。その後、2019年4月に、株式会社 Ecoldとして法人化。マーケティング、営業戦略、法務を主に担当。



《略歴》

取締役COO

中山 のぞみ(なかやま のぞみ)


株式会社資生堂で化粧品販売、株式会社不二ビューティ(たかの友梨ビューティークリニック)で商品企画・開発と全国の店舗の商品売上管理に携わる。社会福祉法人で障がい者福祉に携わり、その後、代表取締役の北村と共に、株式会社Ecoldを創業。ICT・ロボット療育の研究開発、ロボット療育に関する技術・カリキュラム開発、クラウドサービス「Ecold LINK」の開発を主に担当。

 


■福祉業界は、未だにIT化が遅れている


実際の取材での様子

垣端(生態会 事務局長):本日はありがとうございます。まずは、事業概要について教えていただけますか。


北村(Ecold 代表取締役):主に三つの事業を展開しています。まず一つ目は、障がい児に向けた、療育施設のフランチャイズ事業です。二つ目が、ロボットを活用したICT療育プログラムの研究開発/販売事業です。そして三つ目が、福祉事業所の事務作業を、クラウドで一括管理できる、療育施設向け クラウドシステム「Ecold LINK」の開発・販売事業です。「Ecold LINK」は、今年2021年の6月に、正式にローンチした、今最も注力している事業です。


「Ecold LINK」のコンセプト

垣端:ITを活用した、福祉領域の事業をされているのですね。「Ecold LINK」について、もう少し詳しく教えていただけませんか?


北村:「Ecold LINK」は、事務作業をクラウドで一括管理できる業務改善システムです。福祉事業所の現場では、未だにほとんどの事務作業が紙で管理されています。例えば、日々のお知らせは、連絡帳を介してやり取りされていたり、施設利用状況の確認のために、利用時に親御さんの押印が必要であったりと、手間がかかる場面が多いんです。


そのような福祉業界の無駄を無くし、事業所の職員だけでなく親御さんやそのお子さまを含めた、全ての関係者が幸せに過ごせる環境を作っていくことが私たちの目標です。



濱本(生態会 学生スタッフ):福祉の現場では、まだまだIT化が進んでいないのですね。他社と比べたときの、御社の強みは何なのでしょうか?


中山(Ecold 取締役):「Ecold LINK」は他のサービスと比べて、直感的に操作できて誰でも使いやすいという特徴があります。既存のサービスはUX/UIが複雑で、そのためか、あまり普及していません。それに対して、「Ecold LINK」はUX/UIがスマートで、スマホ一台で様々な操作が可能です。


例えば、連絡帳機能だと、事業所と親御さんとの間で、いつでもどこでも簡単に情報伝達ができます。また、本人確認も指認証だけでできるようになっているので、ハンコを持ってわざわざ事業所に出向く必要もありません。このように、複雑な事務作業をスマホ一台で簡単に完結できるのです。


「Ecold LINK」の操作画面(親御さん目線)

「Ecold LINK」の操作画面(事業所目線)

■起業という選択、波乱万丈な道のり


垣端:代表取締役の北村さんは、大阪府警察に勤められていたそうですが、福祉に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?


北村:実は長男が発達障がいを抱えていて、そのリハビリのために、とある療育施設で一時期、父子通園をしていたんです。それから、発達障がいのことについて詳しく調べるようになり、その流れで、乳児向けの早期療育プログラムの研究開発などを始めるようにもなりました。そして、自分で療育施設を立ち上げたいと考えるようになり、2018年、株式会社Ecoldの前身となる、療育施設ブランド「エコルド」を設立しました。



濱本:北村さんと中山さんは、どういったきっかけで知り合ったのでしょうか?


北村:当時は、療育施設を運営すると同時に、他の療育施設に対してコンサルティング業務を行っていました。そのクライアントの一人が中山だったんです。


中山:はい、そうなんです笑。その当時、私は偶然にも事業所を開業するタイミングで、そのお客さんを探してたときに、保護者を集めた勉強会を北村が主催していて、そこに私も参加させていただいたんです。それが初めての出会いでした。



垣端:お二人の出会いにはそんな経緯があったんですね。株式会社として法人化を決意した理由は何なのでしょうか?


北村:率直に言うと、コンサルティング業務がつまらなくて、何か自分で面白いことをしてみたかったからなんです。特にフランチャイズ店は、決められた通りにやらなければいけないことが多くあり、そのことに対して以前から疑問を感じていました。福祉業界はポテンシャルがあるのにも関わらず、保守的な傾向にあり、新しいことを取り入れることをあまり良しとしません。そんな現場を見ていくうちに、自分がこの業界をもっと面白くしてやろうと思ったんです。



濱本:なるほど。それで中山さんに声をかけて、起業されたのですね。


中山:そうですね。私も北村と同じ気持ちを抱いていたので、福祉業界に革命を起こすべく、起業を決意しました。



写真左から(中山さん、北村さん、濱本)

垣端:経営をしていて大変だったことはありますか?


北村:大変なことだらけでした。右も左もわからず、お金も知名度もないので、創業時から経営には行き詰まっていました。また、お金は簡単に調達できるものだと思い込んでいたので、お金が集まらない現状とのギャップには長い間悩んでいましたね。


しかしながら、地道に営業を重ねたおかげでFC加盟店は徐々に増えていき、収益化に成功することができました。加えて、ロボットを活用した療育プログラムの開発研究/販売事業もうまくいき、今では弊社の主力事業になっています。現在は、本社、直営店舗社員合わせて50名が働いています。また、開業準備中の店舗を含めて全国17箇所に契約店舗があり、来年春までに契約店舗を36箇所に増やすことを目指しています。


ロボットを活用したICT療育プログラムを楽しむ、子どもたち


■福祉業界の革命児となり、未来の福祉を明るくデザインする


垣端:将来、上場したいという考えはあるのでしょうか?


北村:もちろんです。絶対上場したいです。グローバルに進出して、福祉業界の未来を作るようなリードカンパニーを目指しています。


垣端:すごい情熱ですね。理念に「未来の福祉業界をデザインする。」とありますが、具体的にはどういうことなのでしょうか?


北村:「福祉」と聞いたら、今の現状だと、暗いイメージを抱く人の方が多いと思うんです。でも、「福祉」は、子どもたちの未来を作るものであり、影響を与えられる良い仕事だと私たちは考えています。私たちが、福祉業界を明るくデザインして、そこで働く人や訪れる人に、明るい印象を持ってもらいたいと考えています。



Ecoldの療育施設に通う、子どもの笑顔



濱本:素敵な理念ですね。グローバルに展開するために、どのようなことを考えているのでしょうか?


中山:実は現在、発達の評価法の研究やそのデバイス開発を、京都大学大学院医学部医学研究科と共同で行っていたりと、研究開発にも力を入れています。


発達の評価法とは、発達がどの段階であるかを評価する方法のことなのですが、様々な論文が出ているにもかかわらず、未だに正しい評価法が確立されていません。現状、発達の評価には、専門家が必要であり、状況によってもスコアが変動するので、正確に評価するのは難しいのです。


発達障がいは早期発見がカギになります。私たちは、発達障がいの早期発見のため、誰でも簡単に評価できるような方法を見つけ出そうとしています。その評価法を確立させることができれば、世界的な発見となり、大きなビジネスチャンスも生まれます。フランチャイズ契約を結んでいる各事業所では、研究開発のための検証が、日々が行われています。


濱本:福祉業界には、課題がたくさん残っているのですね。グローバルに活躍される姿を楽しみしています。


 

取材を終えて:「Ecold LINK」は、無駄な事務業務をクラウドで一括管理できる画期的なシステムであり、新規性と成長性を感じました。お二方とも「絶対に上場させて福祉業界を変えてやる。」という強い情熱を持っていて、福祉業界の革命児になり得るポテンシャルを肌で感じました。取材中は終始笑顔が絶えず、お二方の人柄の良さがとても印象に残っています。(濱本 生態会学生スタッフ)




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