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薄膜太陽電池で、エネルギーの未来を創る:エネコートテクノロジーズ

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家。今回は薄膜太陽電池の開発・生産を行うベンチャー企業、株式会社エネコートテクノロジーズ の代表取締役社長、加藤尚哉(かとうなおや)さんを取材しました。


取材・レポート:西山裕子(生態会 事務局)・石井詠子(ライター)


代表取締役社長 加藤尚哉


京都大学工学部工業化学科卒業。大和証券株式会社、Merrill Lynch & Co., Inc.にて内外資投資銀行において不動産・事業再生等多数の投資案件に従事。その後独立系PEファンドの創業メンバーとしてバイアウト投資・経営管理業務を経験。


2009年に同社を退社し、飲食業や不動産業の経営を行っているところ、大学時代の同期である京都大学若宮教授からの誘いを受け、2016年京都大学インキュベーションプログラム事業化推進責任者に着任。


2018年1月、エネコートテクノロジーズを共同設立。

■ペロブスカイト太陽電池で、世の中を変えたい



ペロブスカイト太陽電池を、触らせて頂いた様子

西山裕子(以下、西山):はじめに、事業概要を教えていただけますか?


加藤尚哉 代表取締役社長(以下、加藤):私たちエネコートテクノロジーズは、太陽電池の開発・生産を行っています。京都大学化学研究所の若宮研究室が取り組んできた、次世代太陽電池の大本命と言われる「ペロブスカイト太陽電池」の研究成果を基に、設立しました。2016年、京都大学インキュベーションプログラム第一号案件として採択され、京都iCAP、MMCファンドより資金調達を行っています。



モノづくり面では、国内メーカーと業務提携を行いながら進めています。SHARP、京都大学、兵庫県立大学と共同で、NEDO「太陽光発電主力電源化推進技術開発/研究開発項目(I)」に採択されるなど、産官学連携で事業を推進しています。


西山:御社の特徴は、どのようなものがありますか?


加藤:もともとは京都大学の若宮先生が、ペロブスカイト太陽電池の研究を行っていました。この時から、企業と連携していました。大学と民間が一緒に事業を進めていくパターンは増えつつありますが、弊社の事業を、政府が大きく応援してくれているのが特徴です。2016年にはインキュベーションプログラム(企業)第一号案件として、採択されました。このプログラムは、大学の先生や起業家を応援するプログラムです。産学官が連携してモノづくりを進められていると思います。


ペロブスカイト太陽電池の特徴

西山:若宮先生とは、どのように出会われたのですか?


加藤:実は、若宮先生とは大学の同期なのです。私は大学卒業後、投資銀行やファンドに勤務していました。京都大学、大和証券、メリルリンチ、シティグループ、独立系ファンドと仕事をしていて、2009年にリーマンショックの影響で退社しました。


その後、自分でトレードを行ったり、飲食店などを経営していました。若宮先生からお誘いを受けた時は、香川県で不動産屋を経営していました。


西山:なぜ、エネコートテクノロジーズの代表取締役に就任されたのでしょうか?


加藤:ペロブスカイト電池の将来性を非常に感じたからです。最初は、技術面で魅力を感じました。ペロブスカイト電池は、採光が取りにくい室内でも動作できます。また材質の特性上、曲面に塗布し使用することも可能です。素晴らしい技術だと思いました。


しかし、技術面のみ考えると、他の大手メーカーももちろん研究をされています。どのメーカーさんも自社の技術の独自性を打ち出して、事業開発されています。競合も多いですが、エネルギー分野のマーケット自体に成長性を感じています。


西山:ペロブスカイト太陽電池が、エネルギー分野でのニーズを獲得できるとお考えですか?

宇治ベンチャー企業育成工場内に事務所を構える

加藤:はい。そもそも現在、世界規模で環境問題が喫緊の問題となっています。この問題に対し、世界各国で2050年を目標とし、カーボンニュートラルに向けた動きが活発になっています。


日本も諸外国と同様に、環境問題に対する施策がスタートしています。その一つに、カーボンニュートラル社会に不可欠となる次世代のイノベーションを促進するため、NEDOによるクリーンイノベーション基金がスタートしました。この募集事業に、ペロブスカイト太陽電池も含まれています。クリーンなエネルギーとして、期待されているのです。


西山:これまで豊富な経験をお持ちですね。スタートアップ企業の代表へ就任することに対して、ハードルはありませんでしたか?


加藤:特に無い、と言うと語弊がありますが、この事業の責任者になることの方が魅力が大きいと感じました。

スタートアップ企業の一番の魅力は、世の中を変えることができることだと思っています。

既存の太陽電池を変えられる。よりよい世の中を創ることができる。若宮先生からお話を頂きた時に、古い言い方ですが、ここで引き受けなければ男が廃ると思い、代表取締役に就任しました。



■商品企画段階から、メーカーと一緒に開発を進めていく



技術開発のご苦労を、語ってくださいました

西山:実際、事業をスタートしてどうですか?


加藤:事業開始後、3年。インキュベーションプログラム採択から5年経ちました。現在は、量産技術確立フェーズに到達しました。2022年~2023年の目標は、量産フェーズで10億円単位の資金調達を行うことです。


今の心境は、「死の谷」の手前までは来れたな、という気持ちです。ここからが正念場だと思っています。量産技術を確立するまで、モノづくりの新規事業家の大変さを痛感しています。モノづくり業界はやはり事業の成功率が低いためか、投資家は見向きもされなかったですね。厳しい現実です。


モノづくりの方も、予定通りとはいかなかったです。技術も見ながら経営も行われている経営者の方は、純粋に尊敬します。弊社の場合、技術面は若宮、財務関係は私と、分担していますがそれでも大変でしたね。


石井詠子(以下、石井):私自身、メーカーでの技術開発の経験があるため、量産技術を確立するまで苦労されたかと思います。技術開発での成果や、苦労した点を詳しく聞かせて頂けますか?


加藤:はい。最近の実用例ですと、防災用テントの外に設置しました。曇りや雨など、採光が取りにくい環境でもスマホの充電を行うなど動作の確認ができています。


ペロブスカイト太陽電池では採光度が低い室内でも動作する



私たちの開発の特徴は、商品化の企画を進めるフェーズが早いことです。現在では、国内時計メーカーと、NEDOプロジェクトとはシャープさんと連携して行いました。商品企画段階から一緒に開発を進めていくスタイルです。ペロブスカイト太陽電池の技術の魅力もあり、共同開発を行いたいとおっしゃるメーカーさんの引き合いは多いです。


西山:組織はどのような体制ですか?


加藤:現在、社員は21名です。そのうち18名が開発を行っています。若宮先生自身も、引き続き弊社の研究開発にコミットしてもらっています。今後はNEDOグリーンイノベーション基金事業へ応募を予定しています。このため、企画・開発・営業人員の増員を検討しています。


ペロブスカイト太陽電池の開発のようす

■日本でモノづくりの製品化を軌道に乗せたい


西山:今後は会社として、どのようなことをやっていきたいとお考えですか?


加藤:数年単位の話ですと、シリーズBラウンドを2021年度中(2022年3月まで)に完了させる予定です。冒頭に述べましたがグリーンイノベーション基金での資金調達もトライ中です。その先は2025年上場を目指しています。


西山:野望や夢などはありますか?


加藤:私の夢ですが、なんとか日本でモノづくりの製品化を軌道に乗せたいですね。

太陽電池に限らず、モノづくりの技術自体、日本人が発明するが製品化は海外勢というパターンが非常に多いです。再生エネルギーの本丸、欧州勢に事業化が先駆けられています。

政府が支援していますが日本勢は出遅れています。せっかく日本人が発明した技術なので、ぜひ世に出すところまで日本人としてやりたいですね。


西山:本日は貴重なお話をお聞かせくださり、ありがとうございました!


取材を終えて

ペロブスカイト太陽電池の技術は高い発電効率・軽量・柔軟性が高い・製造コストが安いという特徴があり持続可能な世界を目指す上で非常に有望な技術です。技術の独自性だけではなく技術をオープンにし、商品企画の初期段階から他メーカーと協力し製品開発を行うとのこと。製品化までのスピードが速さが魅力と感じました。大学時代の同期である若宮教授からお誘いを受けた際に、事業の可能性・成長性を強く感じたとおっしゃっていた加藤代表取締役。「国内で研究成果は発表されるが、事業化を行うのは国外メーカー」という現在の状況を変えようと挑戦されている代表の熱い想いを感じました。 (生態会ライター石井)






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