レポート:中村真都 (生態会 学生ボランティア)
本イベントは、都心型オープンイノベーション拠点「Xport」主催の元、NPO法人生態会の実施するスタートアップに関する調査の紹介や、スタートアップからのプレゼン等を行いました。特に今回は、関西の強みとして大きな可能性を秘めている「大学発スタートアップ」に着目し、今後の成長戦略について考察するほか、情報交換の場としました。イベント詳細
イベント後半にはパネルディスカッションが開催され、登壇者に加えて松井謙二 氏(大阪工業大学 ロボティクス&デザインセンター長 ロボティクス&デザイン 工学部システムデザイン工学科 教授)も一緒に、討議が行われました。
本レポートは、前半と後半の二部に分かれております。
第一部「関西スタートアップレポート第6号発刊報告:大学発スタートアップ:期待と課題」 NPO法人生態会 事務局長 西山 裕子
まずは、生態会の西山裕子から今回のテーマとなる、大学発スタートアップの現状課題に関して説明しました。
大学発スタートアップの特徴と課題
まず、大学発スタートアップとはなにかを理解しておく必要があります。経済産業省の定義では5分野があります。
⼤学で達成された研究成果に基づく特許や新たな技術・ビジネス⼿法を事業化する⽬的で設⽴設立された「研究成果」
⼤学と深い関連のある「学⽣スタートアップ」
創業者の持つ技術やノウハウを事業化するために、設⽴5年以内に⼤学と共同研究等を⾏う「共同研究」
既存事業を維持・発展させるため、設⽴5年以内に⼤学から技術移転等を受ける「技術移転」
⼤学からの出資がある等その他、⼤学と深い関連がある「関連」
1の「研究成果」は、大学発スタートアップの60%近くを占めています。新技術を裏付けとし、高い成長力を秘めていると言えるでしょう。しかし研究所で実現した技術も、市場に出すには、量産化の壁などがあります。「研究シーズ事業化の困難さ」という課題もはらんでいます。
増える大学発スタートアップ
大学発スタートアップは、年々増えています。実際、経済産業省の調査でも、2020年には前年より339社増加しており、過去最高を記録しています。また、増加数という面において、京都大学発のスタートアップが、東京大学発のそれを追い抜き首位になったという事実もあります。特に関西において、大学発スタートアップは大きな存在となっていると言えるでしょう。
もうひとつの課題
ここでさらに課題となるのは「研究成果を理解し、ビジネスができる人材が不足している」ということです。研究が上手くいっていても、そこからビジネスに発展させるためには経営知識が必要であり、その分野を支える人材がいなければ、スタートアップの成長は難しい。これは前述の、「研究シーズ事業化の困難さ」にも通じる点があります。
第二部「大学発スタートアップ支援を通じた地域貢献」 京都大学イノベーションキャピタル株式会社 代表取締役社長 楠美公 氏
第二部では、楠美公さんから京都大学イノベーションキャピタル株式会社の概要と関西の大学発スタートアップのポテンシャルについて講義していただきました。
京都大学イノベーションキャピタル株式会社の概要
京都大学イノベーションキャピタル株式会社(以下、iCAPと呼称)は、国立大学法人における研究成果の実用化を目指すことを目的とし、官民イノベーションプログラムを行っています。2016年に設立された1号ファンドでは、京都大学発のスタートアップへの投資を主としましたが、2号ファンドでは他国立大学発スタートアップを視野に入れ、より大規模な投資を、行っています。
投資の特徴
iCAPは、大学と協調しているところも特徴的です。シーズ創生〜事業化検討までは京都大学が支援し、事業化が現実的になったところでiCAPが関わり、外部の事業会社や投資会社に紹介していくことで、スタートアップ企業を成長させることができます。シード・アーリーステージの企業を重視して支えるという、iCAPの基本方針に則ったものです。
関西の大学発スタートアップの可能性
また、大学発スタートアップを都道府県別に見たとき、関東が東京一極集中であるのに対し、関西では力を持つ大学が府県ごとにバランスよく分布しているのが特徴であるというお話もありました。京都大学や大阪大学など有力大学があり、関西の大学発スタートアップには、十分に成長の余地があると言えるとのことです。
今後の展望
今後の投資戦略として、1号ファンドの活動を通じて得た国立大学発スタートアップ起業創出の経験・ノウハウを他国立大学へ還元し、地域の投資家等とも連帯することで、地域貢献へ積極的に取り組む、というお話をしていただきました。
第三部のスタートアップの登壇、第四部のパネルディスカッションについては、後半でご紹介します。
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