2022年2月24日(木)にXport様と共催でイベント「【速報】2021年関西スタートアップ資金調達分析、2022年の動向は?」が開催されました。(オンライン・オフライン両開催)イベント内容をご紹介させていただきます。
レポート:西村 和成
(生態会 ボランティア)
【オープニング】Xport、NPO法人生態会の紹介
オープニングセッション前半では、今回のセミナーにて会場をご提供いただきました、Xportの土居氏から「都心型オープンイノベーション拠点:Xport」のご紹介いただきました。
Xportとは・・・大阪商工会議所と大阪工業大学が、2018年より共同で運営するオープンイノベーション拠点です。多様な交流機会を通じた新規事業・新ビジネスの創出と、産学連携による企業の課題解決を目指します。
オープニングセッション後半では、NPO法人生態会 事務局の垣端より生態会の活動についてご紹介しました。
生態会とは・・・2018年設立のNPO法人です。「関西の起業エコシステムを可視化し、コミュニティの発展に寄与する」をビジョンとして掲げています。実際のアクションとして、スタートアップ企業、大手企業、大学、行政のそれぞれが抱えている課題/問題意識を俯瞰的に把握しながら、各ステークホルダーに対して適切な情報発信を行っております。(スタートアップレポートの発刊、ブログ記事の掲載、商談・マッチング会の開催、セミナー・イベントの開催等)
「2021年の関西スタートアップ資金調達動向」
西山裕子(NPO法人生態会 事務局長)
生態会 事務局長の西山より、「2021年関西スタートアップ資金調達分析と2022年の動向」についてご報告しました。
・2021年の新規上場企業数の増加
2021年のIPO社数は、前年の93社から32社増加し、2007年の121社以来14年ぶりに100社を上回り、全国で125社の上場、関西では15社のIPO・上場がありました。
理由は以下の3点です。
理由①:コロナウイルスの影響により、2020年(オリンピック開催年)に上場しようとしていた企業の上場取り下げなどの反動が考えられるため。
理由②:日経平均が3万795円という高値を31年ぶりに記録し、新しい会社への投資に対するマインドとマネーが回ってきたため。
理由③:東京証券取引所の市場再編成による、上場基準の変更による駆け込みでの上場があったため。
・2021年、スタートアップの資金調達状況
調達社数は前年比30%増、調達金額は中央値で前年比27%増となりました。
・2022年の動向について
今後も資金調達の勢いは続き、特に関西においては大阪万博開催に向けて世界にアピールができるスタートアップを探す流れが活発になり、優れたビジネスモデルがあれば資金調達が可能とのことです。
ただ、日本においてはまだまだシード期のスタートアップに対して、投資が少ないため、国を上げての支援が必要です。生態会がインタビューした、岡隆宏氏(一般社団法人スタートアップ支援協会 代表理事)は語っていました。
「日米と比較した、関西の動きと独自性」
アレン・マイナー(生態会理事長、サンブリッジグループCEO)
生態会理事長のアレン・マイナーより、日米を比較した関西の動きと独自性についてお話しました。
・キーワードは「It's never too late to Innovate.」
世の中の課題はすべて解決されきっているわけではなく、Google/Salesforceの成功例にも通ずる、「日本の職人マインド・改善の意識」こそがInnovationに繋がることを学びました。
また、関西エリアでの今後のビジネスで期待できる分野として、「食」と「健康」が挙げられるとのことです。
スタートアップ登壇「大阪が誇るレーザー核融合技術で、脱炭素社会の実現を」
株式会社EX-Fusion 松尾一輝 氏
株式会社EX-Fusion・Founder & CEO 松尾一輝氏をお招きし、株式会社EX-Fusionでの取り組みについて、お話しいただきました。
レーザー核融合の専門的なお話をメインに、レーザー核融合分野での資金調達状況、日本だからこその勝ち筋(レーザー核融合分野では日本の方が民間企業の参入障壁が低い)についてのお話は、非常に興味深いものがありました。
パネルディスカッション
登壇者に加え、松井謙二 先生(Xport 副会長/大阪工業大学 ロボティクス&デザインセンター長 ロボティクス&デザイン 工学部システムデザイン工学科 教授)が参加
本日の登壇者に加え、松井先生にもご参加いただき、本日の内容を振り返り・意見の交換が実施されました。内容を一部抜粋し、下記に掲載します。
松井先生:アレンさんの話から、実際に高齢者×農園・食事・食料の分野のビジネスが今後広がっていくのではと期待しています。
松尾さんの話からは、最近の日本でもムーンショット型の研究開発が内閣府の方から立ち上がっており、エネルギーの話がその中にも沢山入ってくるので、今日の松尾さんの話は更に課題の中心となっていくのではと期待しています。
アレン・マイナー:松尾さんの話を聞いて、レーザーフュージョンの物理的な難しさはあるが、何とかブレークスルーをすることができれば、エネルギー問題にも大きなブレークスルーになります。
東芝さんなどの大手企業や、いろんな大学の研究者達が追いかけているが、このような発明は組織で作るのではなく、iPS細胞を偶然発見した山中先生のように、「1億人に1人の天才」によって発見されることがある。松尾氏がその1人であるといいなと思い、お話を聞いていました。
松尾氏:私自身もまだ、「どの手法がエネルギー問題を解決する」とは言えないですが、沢山手法がある中で、レーザーという立ち位置のまま産業応用も視野に入れて取り組んでいることが大きいです。
資金調達の面ではまだまだアメリカには負ける感じはするけれど、鏡のコーティングや研磨などの小さな職人的技術のパッケージがレーザー核融合になるので、資金面だけでは解決できない小さなブレークスルーを積み重ねていくことが日本ベンチャーの勝ち筋に繋がっていくと考えています。
西山:松尾さんに質問ですが、創業間もない頃に資金1億円を得られたのはどのような活動をして実現されたのでしょうか?
松尾氏:実は、アメリカにいて職もあった時に、投資家の方から「こういうファンドができるかもしれないが、興味ありますか?」とお声がけをいただき、自分自身としても「やってみたい」という思いが強かったため、お声がけをいただいた2日後に退職して起業をしました。
少し前から決まっていたこともありますが、核融合に対する機運が高まったことが非常に大きいと思います。
クロージング
最後に:セミナーを振り返って このセミナーを通して、関西のスタートアップに関する資金調達状況及び注目企業などの動向を知ることができ、関西スタートアップの『今とこれから』の全体感を掴むことができる有意義な内容だったと感じています。
また、本日の登壇でアレン氏と松尾氏が語ったお話は市場的観点で見ると両極の事例であり、非常に興味深いものでした。
「世の中にある未だ満たされないニッチなニーズを掴み、サービスを提供する」
「レーザー核融合技術という様々な産業の基盤となる技術を提供する」
これら遠くに感じる2つのビジネスの間には改善と継続の繰り返しが成功の鍵を握ることが共通として考えられるのではないでしょうか。
生態会では、今後もスタートアップに役立つセミナーを開催していきます。
セミナー情報は「生態会 Peatixページ」で公開しています。
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