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ローカルフードロス×飲食テックベンチャーで社会貢献と地方創生を両立 :hakken

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家。今回は、乾燥野菜でフードロスと地域課題を解決するテックベンチャー、株式会社hakkenのCEO・竹井淳平氏にお話を伺いました。なぜフードロス問題に挑もうと思われたのか、その可能性に迫ります。


取材・レポート:垣端たくみ(生態会事務局)



CEO 竹井 淳平(たけい じゅんぺい)略歴

1984年6月1日生まれ。三井物産株式会社にて、航空機の改造、ヘリコプターの販売や経営企画を経て、資源プロジェクトで海外(ブラジル・モザンビーク)駐在。2016年 社会貢献に舵を切るために独立、企業の社会的リブランディング、廃棄野菜活用や地域開発を手がける。2019年 株式会社hakkenを設立し、よりドラスティックに社会に働きかけるサービス開発に乗り出す。

いえつながるキッチンタイム


生態会 垣端(以下、垣端):本日はお時間をいただきありがとうございます。まずは事業概要をお話しいただけますか。


株式会社hakken 竹井 淳平(以下、竹井)

「食材デリバリー + 料理教室 + オンライン飲み会」を組み合わせた、#いえつなキッチン を展開しています。現在(取材当時2021年7月)は、追加機能としてライブコマースサービス機能を開発中です。販売員がライブ配信で紹介した魅力的な食材や調味料などを、視聴者がリアルタイムで購入できる世界観を実現させます。また、地方自治体との協定にて、廃棄野菜を乾燥させて加工品として販売する事業も進めています。ローカルフードロス×飲食テックベンチャーの組み合わせてテクノロジーを絡めた社会貢献と地方創生の両立を狙っています。2021年11月には、フェニクシーインキュベーションプログラムや、宇都宮市三重県のアクセラにも採択されました。




■地球の裏側で感じた、”違和感”


垣端:フード関連事業を幅広く手がけられているのですね。創業のきっかけを教えていただけますか?


竹井:

三井物産に入社後、8年ほどサラリーマンをしていました。当時は航空機やヘリコプターを販売していたり、ブラジルやモザンビークなどで石炭ビジネスに従事していました。2014年ごろだったので、世界的にそこまでSDGsへの関心度もそこまで高くなかったのですが、個人的に違和感を感じ始めました。ビジネスとして稼げることですし、さまざまな機会を提供してくれる前職には心から感謝しています。でも長期的に考えると、泥棒みたいなことをしていると気づきました。


垣端:泥棒といいますと?


竹井:

つまり、地球が何十億年もかけて生み出してきた地球の資源を掘り起こして、二酸化炭素という悪い物質を放出しているということ。泥棒でも、石川五右衛門のように盗んだものを還元するという理念なら理解できますが、僕らは取ったものが最終的にどんな形で放出されるかまでは追わないんですよ。少しでも社会に良い影響を与えるやり方に変更しようともがいたのですが、あまりよく見えてこなくて。それで退職を考えました。


もう一つの理由としては、ブラジルの原住民の村に1週間滞在したことが大きなきっかけでした。彼らが非常に洗練されていたのを見て、既存のキャリアを進み続けることにそこまで価値がないのではと疑問を感じました。彼らは教育を一切受けずにここまできているはずなのに、礼儀正しくて考え方が洗練されていました。資本主義の優劣でいうと彼らは劣ではありますが、人間の優劣でいうとよっぽど優だなと衝撃が走りました。一方、彼らに比べて私たちは義務教育を12年受けている。大学を出て、社会人になる過程を経ているのに、自分が泥棒に見えてしまう。それで一度ルートを外れて、退職したという経緯があります。


ブラジルの原住民との交流

垣端:衝撃的な体験でしたね。退職後にすぐ起業されたのですか?


竹井

メディアやPR系のお仕事を友人や関係者から受託してフリーランスの仕事をしていた時期があるのですが、それが自分にとってすごく良い経験になりました。2019年ごろに、1人だけだと社会に与えるインパクトが小さいなと気づき、hakkenを設立しました。


hakkenは、何か特別なことをする訳ではなくて、世の中で矛盾していることをテクノロジーで紐解いていくという方針でスタートしました。最初に、飲食店の整理券アプリを作って、世の中の行列や待ち時間という無意味なものをなくそうと思ったら、コロナが来て、行列が瞬く間に消えました(笑)。コロナは災害ではなく、史上最強のコンペティター(競合)でした(笑)。


コロナの勢いと社会的インパクトは凄まじかったので、ゆっくりやっていっても負けるだけだと思い、オンライン料理教室を始めました。コロナによって様々な価値が変化する可能性はあったのですが、食に関しては人間たる以上あまり変化しないので、大枠でいうとフードとか食に会社を置いておくのが正解かなと思いました。


そこからオンライン料理教室だけでなく、他の食の分野にも進出していこうという話になり、で乾燥野菜に辿り着きました。乾燥野菜は、最初は仕事ではなく趣味で展開していました。「乾燥させたら長持ちするよなー」というノリだったのですが、意外とビジネスにできると気づき、昨年の後半あたりから仕組みを作り始めて、乾燥野菜ビジネスを手がけるようになりました。乾燥野菜技術でフードロス問題を解決できると思っています


(左・中央:乾燥させた野菜、右:hakken社が導入する乾燥機)



■矛盾した連鎖に、楔を打ちたい

熊本県高森町とフードロス削減の提携協定を締結

垣端元々は趣味で乾燥させるところが今のビジネスに繋がったんですね。フードロス問題を解決しようと思ったきっかけはなんですか?


竹井

やっぱり強烈な原体験は、ブラジルの先住民と過ごしたことです。それ以上に、自分で勝手に問題視していたことですね。まずはフードロスの数が異常。それにも関わらず、貧困層が増えていることもまた異常です。また、アマゾンの森林は今も伐採され続けています。伐採の理由は自然発火とかではなく、プランテーション(大規模農園)を作るという理由なんですね。食料は余り続けているのに、人類は更なる食料を求めて木を切り倒し続けている。それだけでも異常なのに、伐採するために原住民が守っている土地に入って、先住民が威嚇すると、簡単に射殺します。これが報道されていないのもおかしい。我々の身の回りのもの全てが異常事態に思えてくるんですね。世界は矛盾で満ちあふれているのに、皆全く変わらない毎日を送っているのがおかしい。確実に自分たちは良いことをしていない気がすると思うんですよ。だから社会を良くするためというよりも、これらの問題をどこからか少しずつ紐解きたいという気持ちがあります。それを私が今一番興味のあること、出来ることからでいうと、一旦捨てる野菜を使ってみようと思い立ちました。特別フードロスだけやりたいって訳ではなく、今話した気持ち悪い連鎖に楔を打ちたいという思いが強いです。


垣端:非常に気持ち悪い連鎖ですね…。現在も進めておられる #いえつなキッチン の事業とフードロスの事業は並行して進める予定なのですか?


竹井

先輩や投資家からは「一個のサービスに特化しましょう」と言われるのですが、短絡的にいうとどっちもやりたいですし、社会課題を解決するにしても、テクノロジーに触れていない人が出来ることは限られているんですよね。幸運なことに、私たちはテクノロジーに触れながら社会課題に挑めるメンバーがいて、知識もあります。セオリーからは外れているのですが、テクノロジーと社会課題解決の両方を追いかけるのが僕らの精神衛生上一番良い形なのかなと思っています。同時に、リソースが分散してしまうっていう状態をどう整理していくかという課題は、常に自分の中に存在しています。

hakkenを支えるメンバー

垣端:今年は複数のアクセラにも採択され、来年にはさらに飛躍しそうですね!応援しております!

取材を終えて

オンライン取材に対応いただいた竹井氏

一つ一つの言葉に重みがある竹井氏。前職での原体験や世の中への違和感が、同氏を突き動かすガソリンである強く感じました。乾燥野菜の加工品ビジネスにおいても、既に自治体との連携を活発に行っており、着実に実績をあげられています。一つの事業に一点突破すべきというスタートアップ界での常識を覆しながら、力強く邁進されている姿に刺激をいただきました。ローカルフードロス×飲食テックベンチャーという異色のスタートアップの今後に、目が離せません。(スタッフ 垣端)



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