• 田代蒼馬

天然ゴムから作るカーボンニュートラル燃料で、地球規模の課題に挑戦する:Innovare

関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家たち。 今回は、天然ゴムの実の有用成分から、カーボンニュートラル燃料を創出する Innovare株式会社の代表取締役 川谷光隆氏 に取材しました。


取材・レポート:西山裕子(生態会事務局長)・田代蒼馬(生態会学生ボランティア)

 


川谷光隆 代表取締役 略歴


大分県出身。 1982年生まれ。

立命館大学大学院理工学研究科 卒業 2008年~2016年三菱重工業㈱にて、発電プラントエンジニアとして従事。 2016年~2020年三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱ にて、戦略コンサルタントや、環境・エネルギー分野の国際協力に従事。

2020年 Innovare株式会社設立



■Innovare、その事業概要


生態会 田代(以下、田代):本日はお時間をいただき、ありがとうございます。ではまず初めに、Innovare株式会社の事業概要を教えていただけますか。


Innovare株式会社 川谷氏(以下、川谷): 私たちは、東南アジア地域の天然ゴムの実の有用成分から、独自の技術によりカーボンニュートラル燃料であるバイオディーゼル燃料や高品質グリセリンを創出する、サーキュラーエコノミー事業を行う会社です。

プランテーション農家から天然ゴムを買い取って燃料を創出し、販売しています。

加えて、政府間・自治体間での国際協力支援や、日本企業の海外公共セクターへの進出支援などといったパブリックセクター支援事業も行なっています。


独自技術により、高純度なグリセリンを生成することが可能だ。

西山: 「カーボンニュートラル」という言葉に関して、石油を燃やさない...というイメージがあるのですが。

貴社の創出するバイオディーゼル燃料というと、最終的に燃やすので、果たして炭素が排出されないのか、気になります。


川谷: 実際に、炭素は排出されます。


ですが、バイオマス由来なので、空気中の二酸化炭素が木によって吸収され、その分の二酸化炭素が排出されるという点で、結果的に空気中に排出される二酸化炭素は0ということになります。


全体として二酸化炭素の排出が0になるという考え方「カーボンニュートラル」

田代: カーボンニュートラル燃料は環境にやさしいことは非常に良く理解できたのですが、消費者はそれらをどれほど気にしているのでしょうか。


川谷: 一般の消費者は、気にしていない人が多いのではないかと思います。

ただ、社会的課題の解決を考慮する「エシカル消費者」の方は、燃料が環境にやさしいかどうかという点に非常に注目しています。


また、企業として考えると、企業の気候変動への取り組みや影響などの財務情報を開示するTCFDが必要なので、注視しなくてはならない状況になっていると言えます。



田代:どういった理由で、現在の事業をされているのでしょうか。


川谷:大きく2つの理由があります。


1つ目が、地球規模の課題である地球温暖化と気候変動の対策へ貢献することです。 我々のサービスは、カーボンニュートラル燃料であるバイオディーゼル燃料や高品質グリセリンを創出します。

化石燃料の使用量削減に貢献し、地球温暖化、気候変動の対策に貢献します。


2つ目が、現地のプランテーション農家の方の収益化に貢献することです。

インドネシアやタイ、マレーシアを中心としたプランテーション農家の方は個人や中小企業が多く、天然ゴム市況の悪化によって、廃業に追い込まれる農家が多いのが現状です。

樹枝は天然ゴム製品の原料として世界中で使用される一方で、自然発生する実はその利用用途が無く、市場価値がありません。


それらを利用し、廃棄を減らしながらも環境にやさしいエネルギーを創出し、現地プランテーション農家の収益化にも貢献するのが、我々のソリューションです。


「現地のプランテーション農家の収益化に貢献したい」力強くお話をされる川谷氏。

■創業の経緯


田代:創業に踏み切った経緯を、教えていただけますでしょうか。


川谷:これまで、国内外の原⼦⼒発電所や海外⽕⼒発電所の発電プラントエンジニアをやっている時や、環境省などが実施する国際協⼒業務のために海外出張をしている中で、限られた時間の中でもっと効果を最⼤化したいという思いや、実施する事業や導⼊する技術に関して、⽇本側と現地側との考え⽅に関するギャップなどを感じていました。


もっと現地に出て、現地の方とよりインタラクティブな活動をしたい、と思ったのが大きいですね。


そして、大阪府立大学の前田教授から、天然ゴムから高品質グリセリンを創出する独自技術を聞き、非常におもしろいと感じていました。

またインドネシアの島嶼部やミャンマーの中央地域などで、エネルギーアクセスに制限がある地域を⾒ていたので、そういった地域で上記の技術が使えるのではないかと考え、事業化に踏み切りました。


西山: 学生時代はどういったことを勉強されてたのでしょうか。


川谷: 大学では、エンジンや材料の研究をしていました。

当時から、後世に残る、ものづくりがしたいと思っていました。


実際に見せていただいた、天然ゴムの実。

■事業の独自性、今後の展望


田代:貴社の事業の強みとして、どういった点が挙げられますでしょうか。


川谷: 独自技術により、低コストで⾼純度のバイオディーゼル燃料やグリセリンを創出できる点が、強みだと考えています。

従来の方法だと、不純物が多く、温度をかけたり薬品を混ぜるなど、生成に時間がかかってしまいます。


田代:天然ゴムからカーボンニュートラル燃料を創出している他社はいるのでしょうか。


川谷: バイオディーゼル燃料を製造している企業は多数いますが、天然ゴムを原料とする事業者は、私が知る限りでは、聞いたことがないです。

インドやイギリスの⼤学では、研究の題材として扱われているケースもありますが、

サプライチェーンがネックとなって、ビジネスの現場ではあまり使⽤されていないというのが現状です。


大手企業からすると、規模感が小さく、参入が難しい分野になると思うので、スタートアップが入る余地が十分にあると思っています。

グローバル展開を見据えるInnovare。

田代:今後の展望を教えていただけますでしょうか。


川谷:製品化を見据えた、バイオディーゼル燃料やグリセリンの開発をおこなっていきたいです。


プロダクトの試作品を作り、ユーザーのニーズをヒアリングし、製品化に向けて動いていきます。


田代:熱量のこもったお話を聞かせていただき、ありがとうございました。今後のInnovareがどう事業を展開されるのか、楽しみです。

 

取材を終えて


資源として利用されることのない天然ゴムの成分を使って、カーボンニュートラル燃料を創出しているInnovare。天然ゴム市況が悪化し、廃業の危機にあるプランテーション農家の方に還元し、そして地球温暖化、気候変動といった地球規模の課題に取り組む姿勢が非常に印象的でした。 ベトナムをはじめとしたグローバルなネットワークを保有しているのもInnovareの大きな特徴で、天然ゴムのサプライチェーン構築に加え、国を超えた活躍からも目が離せません。 研究のフェーズを経て、製品化を進める当社の動きに注目していきたいと思います。 (学生ボランティア田代)