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混雑回避で顧客満足アップ!株式会社海岸線

関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家達。今回は、株式会社海岸線 代表、上田 太久治(うえだ たくじ)さんを紹介します。


1974年大阪生まれ。近畿大学法学部卒。広告代理店勤務、1度目の起業で、ファッションビル研究所を約2年間経営(東京〜大阪間の百貨店・商業ビルなど1000軒の混雑を現場を周って集計しレポート発行)、その後、旅行代理店のIT担当を経て、2017年に株式会社海岸線を創業。

取材:森令子(事務局)


生態会 森:自社開発のIoTシステム「ラッシュリサーチ」で事業拡大を狙っているとのことですね。まずは、事業概要を教えてください。


株式会社海岸線 上田氏(以下 上田):現在の事業は二つです。一つは、創業からの情報共有システム開発です。工事の進捗を報告する現場写真や、ボルトの錆など改修必要な施設写真、各種資料など現場の情報を本部とリアルタイムで共有するシステムを自社で開発しており、顧客は鉄道関連会社、メンテナンス会社、住宅設備会社などです。

 もう一つは自社プロダクト「ラッシュリサーチ」を軸としたIoT開発事業です。「ラッシュリサーチ」は混雑度を知らせるWEB監視システムで、施設の混雑具合をリアルタイムにWEBやデジタルサイネージに表示できます。元々は、温泉や食事会場など時間帯で混雑度が異なる施設を想定したシステムです。事前に混み具合が把握できれば「今は食事は混んでいるから、先にお風呂へ行こう」とお客様自身でよりよい体験を選択でき、施設側にとっても効率良い運営・人員配置が可能となりますよね。「ラッシュリサーチ」を正式導入している宮崎にある国内屈指のリゾート「フェニックス・シーガイア・リゾート」からは「複数あるレストランの混雑度が偏る」という長年の課題を解決できたと、高く評価いただいております。



 さらに、現在、新型コロナウィルス感染拡大防止のため”混雑回避”が非常に重要になっています。当社の「ラッシュリサーチ」は、様々な施設での「3密」対策、お客様の「安全に外出したい」というニーズに応える「IoT混雑回避ソリューション」として有効です。実際に、フェニックス・シーガイア・リゾートでも「ラッシュリサーチ」の導入を拡大し、レストラン以外の施設でも「どこが混んでいるか」をお客様にリアルタイムでお知らせする取り組みが行われる予定です。


「ラッシュリサーチ」を導入しているフェニックス・シーガイア・リゾート

森:「ラッシュリサーチ」の特徴を教えてください。


上田:まずは、出入り人数を非カメラによるセンシングでカウントする仕組みです。出入り口に設置し、入場者と退場者数をリアルタイムにカウントする、つまり、入場100人・退場50人なら中には50人、キャパシティから混雑度がわかりますよね。非カメラによるセンシングは、カメラより精度は低いですがなにより低コスト、電源コンセントがあれば導入でき、操作も容易です。カメラとAIで認識する大手企業の混雑度監視システムはコストも高く、設置工事なども必要ですし、カメラはプライバシーへの配慮が必要な温泉などの施設では敬遠されますので。

 ほかにも、スタッフの経験を元に、手動で混雑度予測を反映できたり、館内での緊急告知に活用できるなど柔軟性の高いシステムになっています。現在は、さらに精度をあげるべく、大手ハードウェアメーカーと共同で改良試作を行っています。




森:「ラッシュリサーチ」は、上田さんご自身で開発されたプロダクトだそうですね。開発経緯を教えてください。


上田:2017年に起業し、システム開発事業を手掛けていましたが、他社との差別化が課題でした。そこで、ものづくり未経験ながらIoTの勉強を重ね、2018年秋に「ラッシュリサーチ」の試作を開始しました。前職の旅行会社時代、休みのたびに、色々な温泉旅館に行きましたが、「よい温泉・よい食事・よいサービス」を台無しにするのは”混雑”だといつも感じていました。それを解決するIoTプロダクトを作るというのがアイデアです。温泉旅館のような小規模でIT知識のない事業者でも導入できる低コストでシンプルなサービスを実現しようと思いました。といっても、大阪・日本橋の電気街で部品を買うところから始め、店員さんに初歩的な質問をして笑われたり教えてもらったりしながら、とにかく”必死こいて”作りました(笑)。

 2018年12月末、完成した試作品をもって、東京ビッグサイトでのレジャー関連の展示会で、知り合いの会社の展示スペースの一角を貸りてひたすら営業したんです。僕が思いの丈を一生懸命話したところ、興味をもってくれたのが、現在、正式採用してくれているフェニックス・シーガイア・リゾートのご担当者でした。あの出会いには、今思い出しても感謝・感動しますね。



森:大阪・南港のコワーキングスペース「TEQS(テックス)」の支援が非常に力になったとのことですが、それについてもぜひ教えてください。


上田:テックスは、大阪・南港にある、大阪市が設置する先端技術を活用したビジネスのサポート拠点です。起業前から入居し南港の海を見ながら創業したので、社名も「海岸線」にしたんです。テックス入居者は、月10回ほど開催されるセミナーが無料になるのでどんどん受講し、そこで得たIoTなど最先端の知識を元にプロダクトを開発しました。担当者からも、ビジネスの進め方や会社立ち上げの時期など、いろいろなアドバイスをいただきました。

「ラッシュリサーチ」実証実験の時は、不具合修正など24時間体制で対応したのですが、テックスは24時間オフィス利用可能でシャワーもあり本当に助かりました(笑)。

*現在は同ビル内の「ODPインキュベーションオフィス」に移転


森:新型コロナの影響下で、集客施設はしばらく厳しい状況が続くと予想されます。今後の展開はどのようにお考えですか?


上田:どんな企業でも感染拡大防止策は必須であり、「安全にショッピングしたい」「できるだけ空いている時に運動したい」と思っているお客様に安心してもらうことも大切です。「ラッシュリサーチ」は小規模〜大規模施設まで対応する「IoT混雑回避ソリューション」になれると思っています。宿泊施設だけでなく、商業施設・テーマパーク・スポーツクラブ・飲食店など様々な使用シーンを想定し、積極的に販売していきたいです。

将来的には、マーケティングツールや、運営効率化ツールとしての展開、データ蓄積による需要予測など様々な可能性を、顧客の皆様と一緒につくっていきたいですね。


取材を終えて 森より:パッションと人情味にあふれる上田氏、行動力・突破力ある起業家です。経験豊富なキャリアのなかで見つけた課題をIoTプロダクトとして具現化する開発力と、初の展示会での機会を逃さず、超有名リゾート・シーガイアでの実証実験、そして正式採用を実現した営業手腕も見事!観光業界は苦境に立たされていますが、新たな一手にも期待したいです。



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