関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は、女性の悩みを根本解決を目指し、データを基にしたパーソナライズフェムケア事業を展開する 株式会社KOKYU 代表取締役 堀 敦友さんにお話を伺いました。
取材・レポート:橋尾日登美(生態会事務局)
大橋真衣(学生スタッフ・写真撮影)
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堀 敦友氏 略歴:1981年箕面市生まれ。近畿大学経営学科在学中に起業を経験。卒業後も多種多様な事業の立ち上げに成功する連続起業家。WEB集客型の企業向け保険代理店・レディースEコマース・コスメD2C・マーケティング支援(ベトナム)PR会社・飲食店(ベトナム)2020年12月に女性のあらゆる悩みを解決する会社「株式会社KOKYU」を設立し、2021年に事業をスタートさせた。
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人生を振り返り支えてくれた母、妻がこのビジネスのきっかけ
生態会事務局 橋尾(以下、橋尾):本日はお時間をいただきありがとうございます!早速ですが、現在の事業内容を教えていただけますか?
KOKYU 堀さん(以下、堀):女性のあらゆる悩みを解決するために、100種類の商品とサービスを組み合わせる【パーソナライズフェムテック&ケア・プラットフォーム事業】を展開しています。私はこれまで、学生の頃から連続して起業をしていました。そんな中のコロナ禍で、自分の人生を見つめ直し、この事業にたどり着いたんです。今まではビジネスを主目的にしていましたが、本当は「社会を良くして死にたい」という思いに気がついたんですよね。私はこれまでの人生で、母や妻に助けてもらう事がとても多かったんです。人生でその経験から、妻や母など『女性』を幸せにする何かをしたいと考え至りました。
そんな時、美容家兼インフルエンサーである妻が、背中ニキビに悩んでいて。病院で処方された薬を使い続けていたのですが、良くなるどころか症状が悪化してしまいました。一緒にその原因を追求していく過程で、女性の美容と健康の分野に詳しくなり、課題に行き着いたのがこのビジネスを始めたきっかけです。
橋尾:身近な方の美容のお悩みがきっかけなのですね。
堀:はい。健康や美容分野は、生活サイクルや睡眠、食生活、揮発性アレルギーなど原因が多種多様で、複合的です。解決するには、一つの商品やサービスでは不可能に近い。ストレスケアやインナーケア、ボディケア、スキンケアなど、沢山の方法から根本を解決する必要があります。お医者さんはそれをまとめて、「適度な運動・睡眠を心がけ、食事のバランスを整えるように」と勧めるんですよね。このアドバイスでは不十分なことには、お医者さんや私たち患者も、商品やサービスを提供する会社も、それを購入する消費者も、諦めたり目を背けたりしています。それを解決したいと思いました。しかし、一人一人違う解決方法を要するので、途方もなく果てしないのです。しかしだからこそ、これを人生最後のビジネスで解決しようと、この会社を始めました。
根本的な問題解決をするための正しく、良いものづくり
橋尾:お話の中に共感できる点が多々ありました。商品について教えてください。
堀:美容アイテムは、有名な商品であっても人体に良くないものが使われているようなケースがあります。なので、良いものづくりをして、自信を持ってすすめられる商品開発をモットー・ベースにしています。SNSで発信を行っていることもあり、こだわりやオリジナリティなど、プロダクトにとがりを持つ必要もある。すべてを成し遂げようとするにはざっと、40億円ほどかかる、という試算も出ています。(笑)誠実に、良いものをつくり、自分達で責任を持つことは、簡単なようで結構ハードルの高い業界でもあるんですよね。
橋尾:40億円…!商品は1000種類、とありますが、全て自分たちで作られているのですか?
堀:いえ、その形を目指してはいますが、多額な費用がかかるので、今はできていないです。実現しようと思うと、やはりIPOを目指さなければ難しいのが現実です。なので、最近は自分達が信頼できる商品があれば、それを利用する形でもいいのでは、という方向に変わりつつあります。信頼できる商品とは何かについて考えつつ、自社の商品開発を進めていますね。
身体に関する問題には複合的な原因があるはずで、ただ良い原材料を使えば問題解決できるというわけではない。商品開発の難しいところです。
橋尾:症状に悩み、病院などで診てもらったとしても、必ずしも良くなる保証もないですしね。
堀:はい。問診票にて質問に答えるだけでは十分原因も探れません。信頼できるお医者さんや、長いお付き合いがあり知識レベルの高い商品販売員であれば、症状の詳細な部分まで相談できますが、そうでない場合は難しいです。一人一人に合った治療や正しさを追求するには、カウンセリングを駆使して解決策を探っていくことが重要です。パーソナライズフェムケアは、女性が活躍すればするほど広がるマーケットだと思っています。
橋尾:他のフェムテックサービスと違う点などあれば、教えていただきたいです!
堀:一時的な治療ではなく、”一生涯”その人に寄り添っていくことを目指しています。現状の私たちは、商品やサービスを開発しているだけです。まだフェムテック企業ではなく、フェムケア企業なのだと考えています。今後ある程度商品やサービスが揃えば、組み合わせやお悩みに対して、AIが原因を抽出する仕組みに投資します。その時初めてフェムテック企業になることができ、今以上に他と差別化ができると考えます。
大橋:この事業における課題はありますか?
堀:外部からは、どこに可能性を感じて投資すればいいのか分かりにくい、と言われます。理念に共感していただくことが多く、売上にも驚いていただけることが多いのですが、遠回りで時間のかかる方法ではありますからね。
橋尾:投資に関するピッチなどにも出られているのですね。
堀:はい、2022年は特に多く出ていました。理念への共感は得られた反面、ビジネス目線でのアドバイスや、投資すべきポイントを抑えるべきであるという意見が多かったです。
橋尾:直近の調達はどれくらいの資金を目標にされていますか?
堀:すでに2,200万円ほどFUNDINNOで調達しています。VCとも相談し、今後も金額を区切らず活動を続ける予定です。
パーソナライズで、呼吸のように欠かせないアイテムを見つける仕組みに
大橋:資金調達後はどのような展開を考えておられますか?
堀:商品とサービスの開発に注力しようとしています。
大橋:確かに、事業内容を聞いていると先に資金を必要とするものが多いですね。フェムテックの領域にフェーズを変えられるのは、何年後くらいか目処は立っていますか?
堀:今後、商品やサービスが増え、組み合わせ提案が広がるとLTVが上がる想定です。その段階で、このビジネスのPMFが証明されたと言えると考えます。そこからテックへのフェーズ移行に向けた資金調達をする予定です。年商10億円を見込んでいます。
橋尾:昨年から売上が倍以上に伸びていることを考慮すると、10億円はそんなに遠い話ではないと思えます。目標の達成はいつ頃を目処に考えておられますか?
堀:約2年後を考えています。平均的に商品単価が高いですし、ECは伸びる時は大きく伸びます。SNSでのPRが内製化できているので、広告費をかけないで済む利点も考慮するとそのくらいかなと。
橋尾:自社にPR力があるというのは素晴らしいですね。どういった広報活動をされているのでしょうか?
堀:当社は、社員の半数以上、私以外のボードメンバーは全員インフルエンサーです。自分達の影響力を使って、商品やサービスを拡散していく形をとっています。SNSや商品を通してビジョンに共感し、社会を良くしたいという想いを持っている人が集まってくれました。
KOKYU Instagramより、商品の特長や使用方法、使用感を積極的に投稿
橋尾:素晴らしいですね。次に、サービスの中身、特にパーソナライズではどのように診断されているか、詳しく聞かせてください。
堀:はい。女性のあらゆる悩みの解決を目指しており、ボディケアとスキンケアをメインで注力しています。ボディケアは、店舗でのカウンセリングにてお悩み・状況を聞き、個別にコーディネートをします。スキンケアは、SNSのチャットやDMでお悩みを聞いています。少し属人的になってしまうのがボトルネックなのですが。
橋尾:ヒアリングを重要視されているのですね。
堀:オンラインカウンセリングを通して、というのは徹底的にしていきたいですね。カウンセリング自体は有料にせず、ハードルは下げたい。そのうえで、「お客さんに寄り添うこと」を意識しています。今は、検査キットを事前に集めており「自分を知る」ことから始めてもらっています。いまは、正しさが表に出る時代。だからこそ、追求できる考え方です。
橋尾:素晴らしいですね。良いものを使う、というより、合っているものを使う。
堀:そのためには、まずはカウンセリングの引き出しが重要です。独自のメソッドをベースにしています。
目指しているのは品数1,000点。これはそのままKPIになっています。ただこれには、ジレンマと課題も抱えている。会社の名前「KOKYU」は、呼吸のようにかけがえのないものを作ろう、という理念から来ています。こだわりの追求が止まらず商品が完成しない、なんてこともあるんですよね。成分の含有量・成分同士の作用・エビデンスなど、正しさを追求しこだわっています。
大橋:KPI達成を妨げるほどのこだわり…。すごいです。最後に今後の展望をお聞きしたいです。
堀:2022年11月末に新商品を販売開始、2022年末には公式サイトをオープンし、世界観の打ち出しを強化。2023年には「KOKYUの食プロ」というオンライン食事指導サービスをリリース予定です。店舗も拡大中で、東京と大阪にパーソナルトレーニング、スキンケアを展開しています。着実に、個々の課題に対応できる領域を徐々に広げることができています。現在はカウンセリングの仕組みやサービス・商品開発に注力していますが、ここから3,4年でテック化しスケールする事業計画です。
加えて、私が本当に望むものを整理する時間も取り、ていねいに進めていこうと考えています。
取材を終えて:あらゆる分野で起業をしてきたからこそ、社会がより良くなるビジネスをしたいと、女性のことを考えた事業を展開されていることに感心しました。一つの問題を一つの目線でのみ解決しようとするのではなく、問題の根本から多種多様な目線で「お客様に寄り添う」方法で取り組まれていることは素晴らしいと感じました。(学生スタッフ 大橋)
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