top of page

連続起業家の5度目の挑戦!新たな規格で、グローバル半導体市場に挑む

  • 執筆者の写真: 鎌田 麟太郎
    鎌田 麟太郎
  • 9 時間前
  • 読了時間: 8分

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は、独自アーキテクチャ「CGLA」で仮想通貨マイニング市場からAI半導体への参入を目指す、奈良先端科学技術大学院大学発スタートアップ、株式会社LENZOの共同創業者・代表取締役で連続起業家の藤原健真さんにお話を伺いました。


取材・レポート:西山裕子(生態会事務局)、鎌田麟太郎(ライター)


藤原健真(ふじわら けんしん)氏 略歴

1976年滋賀県生まれ。カリフォルニア州立大学コンピューター科学学部卒業。ソニーにてPS2/PS3のCPU/GPU開発に従事する。その後、電子看板や動画共有サイト、シェアリング・エコノミー関連など4社を連続で起業し、そのうち3社を事業売却などでエグジットさせる。ベンチャーキャピタリストとして活動中に奈良先端科学技術大学院大学(以下、奈良先端大)先端科学技術研究科の中島康彦教授と出会い、2024年12月に共同創業。


生態会事務局 西山・ライター 鎌田(以下、西山・鎌田):本日はよろしくお願いします。まずは、株式会社LENZOの事業内容について教えていただけますか?


株式会社LENZO 藤原健真氏(以下、藤原氏): はい。当社は、独自技術による高効率半導体を開発する、奈良先端大発のスタートアップです。創業者はプレイステーション2・3 の開発に携わった私と、富士通でスーパーコンピューターの半導体設計に携わった経験を持つ中島康彦 (奈良先端大教授)の2名です。


西山:お二人とも、半導体設計のプロフェッショナルなんですね。その独自技術について、詳しく教えていただけますか?


藤原氏:はい。当社の技術の核となるのが、「CGLA」と呼ばれる独自アーキテクチャです。従来のCPUやGPUは、いわゆるノイマン型アーキテクチャ(プログラムとデータを同じメモリに格納して順次読み込んで処理する、現代のコンピュータの基礎設計)を採用してきました。しかしこの構造では、メモリと演算装置の間でデータを頻繁に往復させる必要があり、そのやり取り自体が大きな負荷となります。その結果、処理速度の低下や消費電力の増大といったボトルネックが生じます。


さらに問題なのが、回路を書き換える際のルーティング計算が非常に複雑だということです。これに対して当社のCGLAは多様なアルゴリズムに柔軟に対応できる設計であり、AIに固執しない汎用性を持ちます。加えて、GPUと比べて大幅に消費電力を抑えられる高い電力効率を誇っています。


同社のコア技術「CGLA」汎用性と高い電力効率を誇る。
同社のコア技術「CGLA」汎用性と高い電力効率を誇る。

西山 : 藤原さんがLENZOを起業されたきっかけを、教えていただけますでしょうか。


藤原氏 : 中島先生の技術内容に強く惹かれ、これは日本が持つ本当に優れた技術で、絶対に事業化すべきだと直感したからです。


当時、私は代表を務めていた会社を退任し、その後ベンチャーキャピタリストとして活動していました。そんな時、中島先生の半導体技術のプレゼンを聞く機会がありました。私は一人の投資家として先生の話を聞いていましたが、先生の技術にあまりに感銘を受け、話を聞いた翌日には、すぐに先生の大学研究室を訪問していました(笑)


当初の計画では、外部から資金を注入して、経営に長けた人材を招聘、カンパニーフォーメーション(法人格の取得)を進める予定でした。しかし、半導体とスタートアップ両方の経験を持つ人材がなかなか見つからなかった。


そこで私が、「それであれば、私自身が経営を担うという形はいかがでしょうか」と提案したんです。


西山:資金だけでなく、ヒト・モノ・カネ全てを提供されたんですね!?


藤原氏 : 私自身、技術的な理解もありました。そしてなにより過去4回の起業家としてのバックグラウンドがあったからこそ、投資家の立場を離れて自ら飛び込む決断ができました。



9歳からプログラミンを始め、渡米、そして4度の起業。


西山:藤原さんのバックグラウンドについて、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?プログラミングを始めたのはいつ頃だったんですか?


藤原氏:9歳の時です。当時から本当にプログラミングが好きで、ずっとコードを書いていました。


西山: 9歳というとかなり早いですね。そこから日本の大学ではなく、海外の大学に進学されたと伺いましたが。


藤原氏: そうなんです。高校生の頃には、正直日本の大学に違和感を覚えていたんです。自分が学びたい技術的なことと、日本の大学で教えられていることのギャップというか。それで高校卒業後、すぐに海外の大学に進学することを決めました。学生時代にはすでにプレイステーションの開発キットを使って試作品を作ったりしていました。早くからものづくりの現場に身を置きたかったんです。座学だけじゃなくて、実際に手を動かして何かを作る、その現場感が欲しかった。


取材を受ける藤原さん(右)と生態会西山(左)
取材を受ける藤原さん(右)と生態会西山(左)

起業が「当たり前」だった学生時代


西山: 藤原さんはLENZOを起業される前に、複数回の起業をご経験されていますね。海外で学生生活を送られたことが、連続起業家としてのキャリアに影響していますか?


藤原氏: そうなんです。ドットコムバブル期の米国で大学生活を送った経験が、今の自分に大きな影響を与えています。起業に対する考え方が根本的に違ったんです。日本だと当時、起業って特別なことで、「すごい人がやること」みたいな空気があったじゃないですか。でも海外、特にあの時期のシリコンバレー周辺では、起業は当たり前のことだったんです。


ライター鎌田:「当たり前」というのは?


藤原氏: つまり、いいアイデアがあったら会社を作る。技術があったら事業化する。それが特別なことでも、勇気がいることでもなく、ごく自然な選択肢の一つとして存在していたんです。周りの学生も起業していましたし、教授も起業していた。そういう環境で学生生活を送ったことが、私を連続起業家たらしめているんだと思います。だから私にとって、いい技術に出会ったら会社を作る、というのはごく自然な発想なんです。今回のLENZOもそう。中島先生の技術を見て、「これは事業化すべきだ」と思ったら、翌日には研究室を訪問していた。それが普通の行動なんですよね、私にとっては。



NVIDIAに挑むための二段階戦略


西山:なぜ御社はAI市場ではなく、あえてマイニング市場から参入するという戦略を選ばれたのでしょうか?



データセンター用の2023年AI半導体のシェアはエヌビディアが圧倒する。                              四捨五入の関係で合計は100%にならない。(英)オムディアをもとに筆者作成。
データセンター用の2023年AI半導体のシェアはエヌビディアが圧倒する。                              四捨五入の関係で合計は100%にならない。(英)オムディアをもとに筆者作成。

藤原氏:電力効率が高いAI半導体を実現しても、すでに規格化されたNVIDIA製品には対抗できないからです。だからこそ、まず仮想通貨マイニング市場に参入します。なぜなら、この市場ではハードウェア性能がすべてを決定するからです。マイニング事業で獲得したキャッシュを、長期的な目標であるAI半導体の開発とソフトウェアエコシステムの構築に再投資します。これによって、将来的にエヌビディアに対抗できる基盤を確立していく。これが当社の戦略です。



西山:現在は開発段階だと思いますが、サービス提供の開始時期はいつ頃を見込んでいますか?


藤原氏: 2027年の初頭からサービス提供を開始する予定です。

スケジュールとしては、来年2026年の1年間で半導体の製造とハードウェアの開発を行います。具体的には、TSMCで半導体チップを製造し、そのチップを搭載したハードウェア機器を組み上げるのに約1年を要する見込みです。


藤原さん(右)と生態会西山(左)
藤原さん(右)と生態会西山(左)

 

関西で起業する意義は、トレンドからの距離感


西山:これまで長く東京を拠点に起業されていた中で、関西を選ばれた背景についてぜひお聞かせください。


藤原氏:正直に言うと、疲れちゃったんです(笑)。東京にいると、情報が多すぎる。振り返ってみると、東京でやってたことって、どこかでやられたことの焼き直しだった。「シリコンバレーでこれが流行ってるから、次は日本でも来るだろう」とか、「あの会社がライドシェア始めたから、うちもやろう」みたいな。それにある時期にふと気づいて、(私が滋賀県出身なので)関西に帰ってきてちゃんと地に足をつけた事業をやりたいなと思い、今に至るという感じです。


西山 : 非常にコアになるような気がしますね。拙速に進めるのではなく、時間をかけて熟考し、本当に革新的なものづくりに挑戦できるのですね。


藤原氏 : あと、やはり東京とのいい距離感っていうのはすごく大事だと思います。メインストリームと距離を置くことが、イノベーションの一つのキーです。メインストリームはメインストリームでいいんです。でもあれもトレンドでしかない。乗っかった瞬間に、もう終わり。だからトレンドはトレンドとして認識しつつも、自分は我が道を行く。物理的に離れてる方が、本当にいいんです。


一同:本日はありがとうございました。


取材を終えて

今回は多数メディアにご出演されている株式会社LENZOの藤原さんにお話を伺いました。

過去のソニーでの開発経験から培われた良い技術を見出す審美眼、米国での学生経験から身についた起業への即断力と行動力、そして複数回の起業経験を通じて学んだ中島教授との明確な役割分担。その経歴すべてがまるでLENZOを起業するためにあったかのように感じます。生成AIの登場でどんなジャイアントキリングも起こりうる時代。関西発の次世代半導体スタートアップ、LENZOの挑戦に注目です。 (学生ライター 鎌田麟太郎)






コメント


bottom of page