top of page
  • 執筆者の写真和田 翔

幼保業界に革新を! AIとマインドフルネス、相反するテーマで切り開く



関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は、子どもの「笑顔」に注目した感情可視化AIや、保育業務支援AIの開発、子ども向けのマインドフルネスプログラムを提供するMightyNeo株式会社で、代表取締役CEOを務める鈴木 貴之さんに話を伺いました。

取材・レポート:垣端たくみ(生態会事務局)

和田 翔   (ライター)

 

鈴木 貴之(すずき たかゆき)さん 略歴

大学卒業後に勤めたインテリジェンス社の上司から影響を受け、起業への思いが芽生える。飲食店経営などを経て、WeWorkで御堂筋フロンティアの立ち上げなどに参画。母校である関西学院大学で経営学修士(MBA)を取得後、蓄積した経験値と高校のバスケ部時代に実感したメンタルの重要性がつながり、現在の起業へと至る。

 

起業の背景に、高校バスケの原体験が


生態会事務局 垣端(以下、垣端):本日はお時間をいただき、ありがとうございます。まずは鈴木さんがMightyNeoの事業を興したきっかけから教えていただけますか?

MightyNeo株式会社 代表取締役 CEO 鈴木貴之さん
MightyNeo株式会社 代表取締役 CEO 鈴木貴之さん

鈴木 貴之さん(以下、鈴木):振り返ってみると、いろいろな点と点がつながり線となって、起業へとつながりました。まず、新卒で勤めたインテリジェンス社で先輩だった中野さん(現 i-plug 代表の中野氏)の影響があります。彼の行動を近くで見た経験は、自分が起業する際の参考になりました。


ライター和田(以下、和田):鈴木さんの経歴を拝見すると、その後いろいろな業界を経験していますよね。



鈴木:はい、起業するにあたって、まずは自分が好きな音楽と酒に関わる仕事をやろうと、飲食店の立ち上げに挑戦しました。ただ、体を壊すほど働き過ぎてしまい、よく考えた末に他の業界で経験を積むことに決めました。


社長秘書をしたり、大ファンのAppleで販売員を勤めたり、いろいろな経験をしました。その後、ご縁があって2019年からWeWorkで働くことになりました。


和田:当時のWeWorkでは、どんな仕事に携わったんですか?


鈴木:御堂筋フロンティア(大阪市北区)の立ち上げなどに参画しました。ただ、仕事を通じてスタートアップや行政の方々と話しているうちに、自分の知識不足を痛感することが増え、働きながら母校の関西学院大学でMBAを取得しようと決めました。そして、大学院で勉強をしているうちに、独立したい思いがだんだん強まっていき、MightyNeoの起業へと至ります。


和田:MightyNeoの事業はメンタルヘルスに関する領域ですよね。この領域は未経験からのスタートだったんですか?


鈴木:実は、メンタルヘルスに関する事業をやりたい気持ちはずっと持っていたんです。そもそものきっかけは、学生時代にバスケットボールに打ち込む中で、スポーツメンタルの重要性を実感する経験をしたことでした。


高校生のころはバスケの強豪校で部活動に打ち込んでいて、そのときにスポーツメンタルの分野で非常に有名な専門家に指導を受ける機会がありました。結果、部の成績は向上して全国大会への出場を果たし、「メンタルの影響ってすごいな」と感じたんです。


和田:大きな成功体験をしたわけですね。MightyNeoは保育業界に向けたメンタルヘルスの事業を掲げていますが、なぜ保育業界を選んだのでしょうか?


鈴木:大学院で論文を読みあさっていると、子ども向けのメンタルヘルスに関する領域は、欧米諸国では当たり前となっていた一方で、日本では未成熟な領域だとわかったんです。そこで、子どもでも取り組めるマインドフルネスプログラムを作ろうと考えました。


子ども向けマインドフルネスの様子1
(画像提供:MightyNeo)

和田:幼いうちからメンタルヘルスケアプログラムをやることに、どんなメリットがあるのでしょうか?


鈴木:幼少期はストレスの悪影響を受けやすい時期ですが、マインドフルネスを身につけることによって、集中力や思考力を高めるだけでなく、自己を認識する力や感情をコントロールする力も養えると考えています。


個人的な意見ですが、優れた起業家や、いわゆる仕事ができる人って、オンオフの切り替えが上手だとか、やるべき目標に対して凄まじい集中力を発揮できるとか、そういう力が備わっていると思うんです。他方、大人になってからそんな能力を身につけるのは難しい面もあるのではないでしょうか。


未来ある子どもたちの健やかな成長に


和田:子ども向けのマインドフルネスプログラムで、どんなことを教えているんですか?


鈴木:「楽しむ」ことをキーワードにしていて、大人がやる瞑想とは違って遊んでいるように見えるかもしれません。


例えば、マインドフルネスのポイントの一つに「腹式呼吸」がありますが、実際は上手にできない子どもが多いんです。そういう場合は、まずは絵本を使って「うどんを食べるときはどうする?」と問いかけて、「吸う」動作を真似してもらいます。その後、ロウソクの絵を見せて吹き消す動きをやってもらえば、すぐ「吐く」動きができるようになるんです。


そんな具合に、日常的な動作を真似してもらうとか、動物の動きに見立てるとか、興味関心を持ってもらいながら簡単に取り組めるように工夫しています。


子ども向けマインドフルネスの様子1
(画像提供:MightyNeo)

和田:プログラムの実施中に大人しくできない子どももいると思うのですが、実際の現場ではいかがでしょうか?


鈴木:最初は関心を示さない子どもも、徐々に興味を持ってくれるようになります。実際にトライアルを始めてわかったんですが、子どもたちは自分たちがやりたいタイミングで自然と始めます。ですから、大人たちが「静かにしなさい」と諭すよりも、「やりたかったらやっていいよ」というスタイルにして、インストラクターが実演しています。おそらくみなさんが想像する以上に、ものすごく集中して取り組んでいると思いますよ。


保育現場のDX化で環境改善も


和田:子ども向けのプログラム以外にも、取り組んでいることがあると伺いました。


鈴木:マインドフルネス事業のピボット的な位置づけでもあるんですが、子どもたちが笑顔で過ごせる保育環境というのは、やはり保育士さんにとって働きやすい環境であることが大切です。そうした考えから、保育現場の業務支援AIを開発しています。


例を挙げると、「保育日誌、指導案の作成自動化」があります。保育現場では、報告業務がめちゃくちゃ多いんですよ。しかも、経験やスキルによって報告内容もバラバラです。その結果、休憩時間が短くなったり休憩できなくなったりします。それに、スキルの共有や学び直しがなかなか進まない現状も課題だと感じています。


そこで、「スキルの可視化を取り入れるといいんじゃないか」と考えました。各人のスキルや専門知識を可視化することで、お互いの強みや弱みが分かるし、助け合いや学び合いがしやすくなるはずです。そんな要素を入れた保育業務改善AIを提供すべく、開発をしています。6月下旬からPoCを行うので、今から楽しみです。


和田:それらの報告業務が自動化できると、保育現場はどう変わるんでしょうか?


鈴木:報告作業を簡略化することで、子どもたちに向き合う時間を増やせると考えています。世間でも知られているように、保育の現場は多忙を極めていて、子どもと向き合う以外の業務を行うために「ノンコンタクトタイム」を作ろうという動きがあります。


ただ、子どもの人格形成や今後の成長のためには、幼少期に多くの大人と関わることがとても重要だと思いますから、子どもと触れ合う時間をなるべく確保できるように、現場の業務効率化に貢献したいと考えています。


AIによる表情解析のイメージ画像1
(画像提供:MightyNeo)

激動のAI分野で、何を目指すのか?


垣端:MightyNeoはAIを使った「笑顔の可視化」にも取り組んでいますよね。


鈴木:子どもたちの笑顔を正確に捉えられれば、子どもたちの感情を把握することにつながり、保育の質を向上させることができると考えています。具体的には、子どもたちの表情を定点カメラで撮影して、分析したデータを先生たちへとフィードバックする、という流れで取り組み始めました。


この領域に取り組み始めたのは、特に日本では子どもの表情や行動に関するデータ量が圧倒的に不足していることが背景にあります。だからこそ、この領域のデータを収集する価値は高いと考えています。

AIによる表情解析のイメージ画像2
(画像提供:MightyNeo)

和田:メンタルヘルスの領域以外で、分析データの活用は想定していますか?


鈴木:データ活用は考えています。例えば、図鑑やパズル、絵本などを置いてある状況で、子どもがどれを選んだか、どんな表情だったか、どんな行動をとるのか、そうしたデータを取得するとします。


そうしたデータを長期的に追っていけば、子どもの成長とのつながりも見えてくるでしょうし、製品開発などの分野にも応用できるでしょう。なにより、子ども一人一人の強みを発見して、それを伸ばしてあげる個別最適化のプランづくりにも役立つと考えています。


和田:子どもの感情を分析するAIは、自社で開発しているんですか?


鈴木:AIの開発にはオープンソースを活用しています。本当に大切なのは機械学習で利用する教師データですから、その作成とデータ収集に力を注ぎたいと考えています。


垣端:最後に、今後の方針について教えてください。


鈴木:まずは業務改善AIのサービスローンチ、マインドフルネスのプログラムをしっかりと広め、アカウント先を拡大する考えです。とはいえ、ChatGPTの出現のように市場はとてつもないスピードで進んでいますから、プログラムのリーチだけでなく、保育業界をDX化して労働環境を改善することにも並行して注力したいと考えています。


垣端:本日はどうもありがとうございました!

 

取材を終えて

自分の身に照らして「もし、子どものころにこんなマインドフルネスプログラムがあれば」と想像してみると、興味はつきません。他方、世間に目を向けると、「子どもの可能性は無限大」との共通認識がありながら、保育士の労働環境などが要因で子どもの発達に全力を注げない場合も多いでしょう。MightyNeoのサービスは保育現場の課題に向き合いつつ、子どもの笑顔を最優先に考えたもの。今後どう広がるのか要注目です。(ライター和田翔)


Comments


bottom of page