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  • seitaikai

アナログな製造現場にITを掛け合わせて生産性向上に貢献:Mountain Gorilla

関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家。今回は株式会社 Mountain Gorillaの井口一輝さんをご紹介します。


代表の井口氏は、大学院で電子システム情報工学を専攻後、デンソーテクノ(株)に電気系のエンジニアとして入社。9年間の勤務を経て35歳で同社設立。当初は受託開発やエンジニア派遣などを行っていたが、手書きの帳票をなくす業務改善システムカカナイがヒット。日本の屋台骨である中小製造業がアナログという問題に対し、大規模開発が不要なIT商品なら必ず喜んでもらえるというビジョンから生まれ、導入企業は短期間で100社を超えた。2020年8月に第三者割当増資等を行い、サービス拡大に向けて体制を整えている。

取材:池田奈帆美(中小企業診断士・事務局)


 

生態会 池田(以下、池田)Mountain Gorillaさんと言えば、ITモノづくりというイメージが定着していますが、そもそも、導入しやすいコストで、オーダーメイド開発を手がけようと思われたのは、何がきっかけだったのでしょうか?


株式会社Mountain Gorilla 井口氏(以下、井口):日本の製造業のほとんどは、中小・零細規模です。生産方法も、材料の管理方法も、日報一つとっても、会社によってやり方は完全に異なる。だからこそ自社のやり方に合ったシステムが必要なはずなのに、いざオーダーメイドで開発するとなると、膨大な費用がかかり、中小・零細規模ではコスト負担が難しい。で、結局システム導入を諦めてアナログでやり続けるという現場を沢山見てきました。日本の屋台骨がこんな非効率なことをしていてはもったいない、と。


池田:確かに、製造現場に行くと「これも手書きっ!?」と驚くことがあります。スクラッチ開発に着手したとしても、本当は何に困っているかをエンジニアが十分に聞き取れず、一方の製造現場もうまく要望を伝えられず、結局使いにくいシステムになってしまうという不幸も聞いたことがあります。


井口:新卒で入ったデンソーテクノでは、製造ラインのすぐ隣で設計開発をやっていたので、現場がどんなことに困っているか、よく分かるんです。でも、独立してすぐのころは、製造現場の“あるある”が当たり前過ぎて、その課題を解決できる商品開発をすればいいんだという考えには至らなかった。色んな受託案件や人材派遣をこなす内に、自分たちの強みは、製造現場のお困りごとが的確に分かることだ、と気づきました。それで、現場が使いやすい業務改善システムを作ってみようと生まれたのがカカナイでした。


池田:オーダーメイドで、初期費用不要の月額料金2万円からという導入しやすいコスト体系で、めちゃくちゃ使いやすいシステム、という3つのキーワードを聞いたら、私も手書きの帳票を使い続けている製造現場に勧めてみたくなりました。


井口:あるようでなかった領域に挑戦できるのはスタートアップならではです。それに何より、僕自身が楽しんで働きたかったんです。最初は「ITとか難しいことは分からないよ」とか「手書きでいいのに」と不満げだった現場の人たちが、「システムが入ってめちゃくちゃラクになったよ」と喜んでくれたら、こんなに嬉しいことはなくて。

直感で分かる操作性、ニーズに細かく応える開発スタイルが評判となり、中小・零細から大企業まで導入されている

池田:短期間で急成長されましたが、今後の展望などを教えて下さい。


井口:2人で始めた会社は、現在26人にまで増えましたが、あと2年で今の約2倍に増やしたいと考えています。「ITモノづくりのおもしろさを体感しながら、社会課題を解決する」というのがMountain Gorillaのコンセプトなので、ここに共感してくれるスタッフを募り、もっと活動の領域を広げていきたいと考えています。


池田:社会課題というと、具体的にどんなことでしょうか?


井口:今興味があるのは、地方創生です。私が和歌山の出身なので、和歌山の工場とタイアップして生産性向上の実証実験を行うとか、行政とタイアップして高校生のエンジニア育成を行うというプロジェクトを考えています。地方で優秀なエンジニアが育てば、たとえば農業のIoT化なども進むだろうし、その地域ならではの魅力を活かした新たなビジネスも生まれるはずです。


池田:前々からエンジニアはどこでも働けるのが強みでしたが、コロナによってますますエンジニアの地方移住が加速しそうですよね。


井口:会社としても、地方出身のスタッフが実家に帰った後も雇用を継続できる環境を整えておきたいですし、地方の行政や企業とITモノづくりというコンセプトでタイアップしていけたら、また面白いことができそうだと思っています。


池田:「楽しい」「ワクワク」というのが井口さんが大切にしている価値観のように感じましたが、合ってますか?

井口:社会課題を解決しつつ、楽しく働ける会社でありたいというのが方針です。今年入社した新卒社員も、コロナで大変ですが一生懸命頑張ってくれています。会社として、雇用は絶対に守っていきたい。そのためには適切な段階での資金調達や、組織づくりなども必要になってくると思いますが、それでもやっぱり「楽しい」ということは大事にしていきたいです。


池田:とてもステキなビジョンだと思います。地方を巻き込んだ新しい取り組みにも注目しています!


 

取材を終えて池田より

ご自身が大企業のエンジニアとして働いた経験から、「疲弊しがちなエンジニアが楽しく働ける環境を作りたい」という志を持ち続ける井口さん。自由でのびのびとした雰囲気が奏功し、新しく入社したスタッフが、食品製造現場向けに開発したシステムを幼稚園の検食に転用して提案するなど、新たなアイデアも現場からどんどん生まれています。「ワクワクするところに人は集まる」という普遍の真理を実感したインタビューでした。



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