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「成長」と「変化」を売るローカルクリエイター集団 :スタジオMOOVEDOOR

関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家たち。今回は兵庫県三田市に拠点を置き、革新的なデザインや映像を武器にしながら、成長と変化を売るPR会社、スタジオMOVEDOORの代表兼設立者、諸富稜氏に取材をしました。


取材・レポート:垣端たくみ(生態会事務局)・田代蒼馬(学生スタッフ・写真撮影)・奥田菖斗(学生スタッフ)


諸富 稜 略歴:関西学院大学総合政策学部都市政策学科卒業、三田市学生街づくりWS元代表(地域活性化事業)、三田市知ってもらい隊元代表兼設立者(農業体験事業)、都市研究会元副代表。現在23歳であり、2018年11月、大学3回生の時に同じ大学に通う仲間と共にスタジオMOVEDOORを設立。現在は後進を育てるべく、こみんか学生拠点プロジェクト代表にも就任している。



MOVEDOORが展開する古民家で取材。学生拠点としてのオープンは2021年春を予定。

生態会事務局 垣端(以下、垣端):本日はお時間をいただきありがとうございます!早速ですが、事業概要を教えていただけますか?


スタジオMOVEDOOR 諸富さん(以下、諸富):P R・広報戦略の構築からその代行、さらには革新的なデザインや映像の制作まで幅広く活動しており、加えて学生の活動拠点づくりもしています。現在は「P Rで事業成長をデザインする」というミッションを掲げ、ただ制作物を売る制作会社ではなく、成長と変化を売るP R会社を目指しています。


垣端:現在は三田市に拠点を置き、活動されているということですが、クライアントは三田市の企業様が多いのでしょうか?


諸富:三田市のクライアントが五割、三田市外が五割です。三田市内のクライアントでも、その三分の一は行政からの仕事ですね。三田市役所や観光協会からの仕事もあります。三田市役所からは、高齢者の課や観光課や移住を促進する課など、様々な課から仕事をいただいています。


垣端:なるほど。行政から仕事をもらうというのは学生起業家としてはハードルが高かったのではないでしょうか?


諸富:本来であればハードルが高いのかもしれないです。実は私は、学生の頃から地域活動や街づくり活動に取り組んでいたので、市役所の中でも私を知っていただいている方が多かったため、既に信頼関係ができていたんです。さらに言えば、学生起業で三田市に移住して三田市に事務所を構える事例が、少なくとも私の周囲ではなかったので、目立ったことが大きな要因ですね。そのおかげで応援もしてもらえました。やはり三田市も人口流出が激しい現状にあり、大学生も東京や大阪に出て行ってしまうため、市として「どうすれば若者に三田市に残ってもらえるか」というのが課題だったようです。そういった経緯で、私みたいな存在を先駆けにしたいという思いもあり、三田市からは期待と応援も込めた依頼を受けることができたと感じますね。


垣端:三田市としては起業の促進だけでなく、移住の促進や若者に三田市に残って欲しいという思いもあったのですね。


諸富:そうです。私がここで成功することで後輩たちにとっては一歩踏み出すハードルが下がりますし、一つのロールモデルにもなれ、身近に感じることができるという期待もあると思いますね。また、私は都市政策の学科に属していたということもあり、街のことにかなり詳しいんです。都市政策の理論に加えて、映像やデザインに強みがあるという私たちに依頼することで、三田市の戦略を反映した制作物ができるという期待もあったのではないかと思います。


スタジオMOVEDOORメンバー


垣端:なるほど、都市政策の理論を持ちながら、クリエイティブ活動をするという強みの掛け算が御社の成長と事業依頼に繋がっているのですね。では、来年、再来年あたりに法人化の予定ということもあり、順調に事業が拡大しているようにお見受けするのですが、現状でどういった課題をお持ちでしょうか?


諸富:正規メンバー(法人化後、役員や正社員になるメンバー)の採用と育成が課題です。現在正規メンバーが5名で、その他アルバイトやフリーランスを含めたスタッフが15名在籍している状態です。しかし、クライアントの広報PRを、半年から一年かけて責任を持つ者は、正規メンバーである必要があると強く感じています。なぜなら、責任が重い分、情報共有も迅速かつ綿密に行う必要があるため、外部のフリーランスの方には頼めないのです。私たちは、クライアントである経営者と一対一で仕事をし、PRプランや広報戦略を提案・実行まで面倒を見ることができるのがPRプランナーであり、クリエイティブディレクターと考えています。この役割を担える正規メンバーが増えていかないと、依頼された仕事を断らざるを得なくなり、引き受けることができる仕事のキャパシティーが少なくなる。その結果、私たちが社会に与える影響も少なくなるので、大きな課題だと感じています。

 また、もう一つ課題としては、どのようにして50〜100億円事業の企業様にクライアントになっていただけるかという点です。現在のクライアントは、売上10億円以下の中小企業様が多いです。そのため私たちは、大規模な企業様とのパイプがなく、相談を受けることが少ないです。しかし、相談をいただければ成果の出る提案はできるという自信はあります。しかし、なかなかそういった企業様と会う機会も、仕事をいただく機会も少ないのが課題ですね。


垣端:そういったクライアントを持つのは、大手のPR会社等だと認識しているのですが、アライアンスを組めば仕事をいただけるかもしれませんね。大手のPR会社に御社を売り込むとすれば、どういった点を強調したいですか?


諸富:やはり、トータルプロデュース力ですね。私たちはWEBやSNS、YouTubeの広告といった効果測定可能なものにリソースを割くようにしているので、テレビCM等の単発の制作物に、WEB等の効果測定可能なクリエイティブを組み合わせることで、テレビCM等の効果を最大限に発揮するトータルプロデュースが可能です。大手PR会社様が、予算的に依頼を受けることができなかった中小企業様からのお仕事を、私たちが代わりに引き受けるという流れを作り出すことができれば光栄ですね。



スタジオMOVEDOORが手がけた制作物の一例


田代:「成長」と「変化」を売るという言葉が非常に印象的だったのですが、効果測定の結果をどのようにクライアントに提示しているのでしょうか?


諸富:単発の再生回数やインプレッションだけでなく、サイトの流入数がどう変化したのか、その流入数の中の顧客の滞在時間など、サイトに追加したコンテンツのおかげでこのような成果が出たというストーリーを見せるようにしていますね。ただ動画を制作するだけであれば、「再生回数が伸びましたね」で終わりますが、それがWEBサイトと繋がってどう売り上げにつながったかというストーリーで成果をみせることを重要視していますね。単発の動画制作などは価格破壊が起きている状況なので、お客様の目的に沿ったPRの入り口から出口までをしっかりと提案して、効果測定ができることが私たちの強みです。


スタジオMOVEDOORが手がけた企業動画の一例


垣端:なるほど、マーケティングや分析力も御社の強みといえそうですね。今回のコロナは御社にどのような影響をもたらしましたか?


諸富:そうですね、少し顰蹙(ひんしゅく)を買うかもしれませんが、弊社にとってはチャンスとなり、クライアントも増えました、要因はいくつかあります。一つ目は、私たちを面白く魅せるストーリーを作れたということです。私たちのメンバーが今年の3月に卒業して、事業を専念しようと思った矢先のコロナショック。最初は絶望な状態でした。私はその状況をFacebookで公開しました。自分の気持ちを詳細に描写することは恥ずかしくもあり、情けないなと思いましたが、結果的に様々な方からコメントと仕事をいただきました。このストーリーは本当に貴重で、何千万円払っても手に入れることができない実体験ですし、この価値に早期に気づくことができたことが大きな要因ですね。二つ目は、動画を含むクリエイティブの必要性が社会的に向上したことです。本来動画を作る予定がなかった企業や組織が、オンラインで新規顧客を獲得するという流れができました。その結果、やはり広報とPRに重きを置く企業が増え、必然的に依頼も増えました。


実際の諸富氏のFacebook投稿の一部。数多くのいいねと応援コメントが寄せられた。

Facebook投稿の全文はこちら



垣端:ピンチをチャンスに変えたわけですね、すばらしいです。諸富さんは10年先以降のビジョンはまだ描けていないとおしゃっていたと思いますが、10年以内のビジョンとしてはをどのようにお考えですか?


諸富:ここ2年ぐらいは、とにかく広報PRに特化して事業成長していきたいと思います。規模の大きいクライアントを持ち、より大きな成果を上げたいです。それを達成することができれば、次は独自サービスを作って、世の中に広めていくというチャレンジをしたいな考えています。5年〜10年スパンの勝負になると思います。そこからが私たちの第二章となりますね。どんなサービスを作るかによって、今の会社のミッションをガラッと変えることもあります。会社を買収することもあり得ます。つまり、私たちで新しいサービスを作り出し、拡大させていくか、私たちのノウハウで既存企業の業績を伸ばすかのどちらかですね。自分たちでサービスを運営して、拡大させることをとにかくやりたいです。

取材を終えて:お話を聞いて、自社の強みと弱みを理性的に分析し、ただの制作会社ではとどまらないというスケールの大きさを感じました。地域密着型の事業成果に裏付けされた確かな実力は諸富さんが描くビジョンのようにさらに加速していくことでしょう。コロナ禍という絶望から復活の一途を辿るスタジオMOVEDOORの今後に期待が高まります。(学生スタッフ 奥田)




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