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  • 執筆者の写真hinanana626

農業から始まる新しい未来を六次産業で創る:日本農業株式会社

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家。今回は、農業から始まる新しい未来を六次産業で創る日本農業株式会社の代表取締役 大西千晶(おおにしちあき)さんにお話を伺いました。

取材:垣端たくみ(生態会事務局)、大野陽菜(学生スタッフ)

レポート:大野陽菜

 

代表取締役 大西千晶

1990年生まれ。学生時代、現在の経済のあり方の危機感と未来への憂いからボランティア活動をしていた中で、18歳の時に農業に出会い可能性を感じ、2010年神戸大学在学中、20歳で農業の分野で起業。





 

■里山の可能性


生態会 垣端(以下、垣端):本日はよろしくお願いいたします。まずはさっそく、事業概要について教えていただけますか?


取材の様子(左:大西氏、右:大野)※撮影:垣端

日本農業 代表取締役 大西氏(以下、大西):京都と大阪にある自社農園と10箇所の提携農家にて野菜を生産し、自社で加工・販売まで行う六次産業を行っています。農家直営のスープ店「たんとスープ」や農薬不使用野菜100%使用コールドプレスジュース「FARMACY JUICE」などを展開し、自然とのバランスが取れた新しい経済のあり方を提案し、就農者を増やすことに挑戦しています。

「たんとスープ」のイメージ画像

大野(生態会 学生スタッフ):起業することになったきっかけはなんですか?


大西:今の経済のあり方で大丈夫なのか、という未来への“憂い”を学生時代に感じていて、ボランティア活動をしていた中で農業に出会い、これだと思って農業にのめり込んだことがきっかけです。農業からだったら、今の経済の発展だけじゃない新しい価値の創出ができる、環境問題、貧困問題、日本こそ発信できる何かが農業にはあるという可能性と魅力を感じ、20歳で農業の分野で起業しました。


大野:確かに、今のままの経済発展を続けると限界があるように感じます。大西さんの考える、農業の可能性・新しい経済のあり方とはなんですか?


大西:一番は、自然とのバランスの取れた経済のあり方を現状の食糧システムを続けていると、土に詰まっている豊富な微生物が死んでしまい、持続可能な経済活動は不可能になってしまいます。日本の里山とは、日本ならではの形であり、多様な生物も生息する恵まれた環境です。そして、それは本当に未来に残していける財産だと考えています。人も地球も健康的に、そんな食のあり方、豊かさを提供する、“足るを知る”経済を目指しながらやっています。


垣端:“足るを知る”という考え方には、私もすごく共感します。収入が増えたらその分、消費も増え、どんどん上に行く原理に違和感を感じています。



■六次産業で就農者を増やす


大野:では、農業においての課題はなんですか?


大西:黒字化することが難しく、当時は本当に困りました。今の流通のシステムではどうしても産地のブランド化された野菜しか流通に乗らないことや、実際に野菜を卸すということをしても、必ずこの時期にこれだけという規格が安定しないことなど、沢山の壁がありました。その中で、なぜ農業就業者が増えないのか、課題が色々と見えてきました。


大野:どのようにその壁を突破されたのですか?


大西:やっぱり農業で畑を耕す事だけでなく、それを経済のなかに浸透させ、まずは農家が成り立つシステムを作ることが必要だと感じました。そのためには、農家が直接消費者に出口を持つということをやっていかなければならないと気付いて、生産卸販売だけでなく、自ら加工して、店舗を持ち、消費者に直接届けるという六次産業にシフトしました。


この切り口にしたことによって、なかなか農業一本で勝負すると業界的に大変だったところが、店舗で利益が出るビジネスモデルの構築ができました。また、普通のスープ専門店と比べて“農家直営”という点は強みになり、お歳暮・カタログなどもすぐに完売するほどのブランディングができ、消費者に出口を持つことで可能性が広がりました。

また、店舗がきっかけで農業に興味を持ってくれる方もいて、スープ屋さんが消費者と関わるドアとなり、農業体験として農地に連れてきたり、研修生を育てたりという活動に繋げています。


この時の六次産業にシフトするという決断は、方向性としては間違ってなかったと思います。今後もそうやって出口を作り続けていくことで、畑と農業就農者を増やしていきたいです。


大野:実際、どのくらいの就農者が増えたのですか?


大西:弊社で、研修から就農した方は6人います。一見少ないように思いますが、国目標数も何十人とかでとても少ないので、6人という数字は多い方なんです。

また、専業農家ももちろん必要ですが、最近では半農半X(農業と他の仕事”X"と掛け合わせた働き方)などが広がってきています。特に、関西では企業に勤めながら、ちょっと行けば里山、という地形で半農半Xが実現しやすい地域です。給料が右肩上がりはありえない、会社も週休4日制を導入し始めた現代社会において、労働の飽和状態に向かい苦しむよりかは、やはりその視点においても、新しい働き方、生き方、里山の価値を見直していくべきだと思います。



日本農業が手がけている農地


垣端:最後に、今後の展望を教えてください。


大西:目標は、就農者を1万人に増やすことです。それは専業農家だけじゃなくて、期間限定農家でもいいと思っています。そのために必要なスープ屋さんは100店舗と見込んでいます。まずはたんとスープとしてのブランディングを成功させながら、野菜の価値、里山の価値に広げていき、就農者がどんどん増えていくという仕組み作りをしていきたいです。


店舗は協業店舗も大歓迎です!たんとスープを広げることで、里山資本主義を達成するというビジョンに共感してくださる企業様とお付き合いしたいと考えています。


六次産業で就農者が増える仕組み化をすることで、リッチではなくウェルスな豊かさを生み出し、キラリと光る未来を農業で実現させていきたいです。


 


取材を終えて:学生の頃から未来への課題感を抱き続け、ここまで事業を拡大し、実現に近づいている大西社長に憧れ、尊敬しています。自分たちの目先の利益を追い求める経済開発ではなく、日本の里山で、私たちになくてはならない食と自然環境、そして経済のあり方という根本から世界を良くし、次世代に豊かな環境を残していくというビジョンには、私も自然が大好きで守っていきたい想いから起業を志したので、大変共感し考え方がより深まりました。スープもジュースも美味しいだけでなく、産地直送で安心安全かつ農家さんの温かみも感じられ、嬉しい気持ちになりました!

(学生スタッフ:大野)

 





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