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執筆者の写真Seitaikai

小麦胚芽由来のたんぱく質合成技術で、試薬を安全・低コストに提供。バイオベンチャー、NUProtein

関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家。今回は、神戸のバイオベンチャーNUProtein株式会社 代表の南賢尚(みなみ まさたか)さんです。2020年2月4日、生態会はこの取材で、南さんが投資を希望されていることを知りました。そこでエンジェル投資家の会員組織、KEIRETSU FORUMを紹介したところ、なんと3月には株式会社CWホールディングスから資金調達!事業の将来性を評価され、スピード決定となったようです。


取材:西山裕子(生態会事務局)

 
パナソニックのCVCとして、活躍していた南さん

生態会西山(以下、西山):南さんは元々パナソニック出身で、CVCのご経験もあるそうですね。この事業をされるようになった経緯を、お聞きしても良いでしょうか?


NU Protein 代表南賢尚さん(以下、南):はい、私はパナソニックにハードのエンジニアとして入社し、コンピューターも、ソフトウェアも作っていました。最後の方はDVD、SDカード、Blue Rayなどの開発に従事し、著作権保護にも関わりました。シリコンバレーにも2回駐在し、1回目はアメリカのベンチャーと共同開発をしましたね。当時、オラクル出身のトム・シーベルと一緒にワークステーション用のソフトを作っていました。トムはそれをサイベースというデータベースの会社に売却し、それを基にシーベルシステムを作り、最終的に6,000億円でオラクルに売却しました。


2回目は2003年ごろパナソニックのCVC(Corporate venture capital)として滞在し、活発に投資活動をしました。生態会のファウンダー、樺澤さんと一緒に過ごしたことも。2013年パナソニック退職後は、名古屋大学に呼ばれて研究を進めることにしました。同時に、名古屋商科大学でMBAを取得し、名古屋大学経済学部の博士課程にも進みました。大学で多くの研究者を支援する中で、NUProteinの技術を知りました。当初社長をする予定だった人が辞めると聞き、無くなるにはもったいない技術だと思ったので、自分が代表を務めることにしました。2016年、55歳の年に起業です。


西山:大企業でスケールの大きなプロジェクトを豊富に経験されていたのですね。スタートアップの立場になって、いかがでしょうか?


南:ここまで苦労するとは、思いませんでした(笑)。自分が投資する側だったので、すぐお金は集まるだろうと考えていたのですが・・・目利きはできるつもりでしたが、実際にビジネスをすると、なかなか大変です。資金を得ようと活動もしていますが、バイオ系はBurn Rateが高い(=資金を使うスピードが速い)ので、ビジネスモデルをよく知らないと理解できないですね。今は、補助金を活用しつつ資金調達に励んでいます。


西山:NUProteinの事業について、教えてください。

たんぱく質合成キット

南: 小麦胚芽由来の、たんぱく質合成キットを提供しています。iPS細胞(人工多能性幹細胞)の生成に必要な「培地」で、使用されます。iPS細胞とはそのままだとずっとiPSですが、成長因子という特殊なたんぱく質を加えることにより神経細胞などになります。そのたんぱく質を大量に作るには、動物の細胞に遺伝子を打ち込んで生成する方法が、現在は主流です。管理が大変で10日程かかり、1グラム当たり材料費が数千万円と大変高価です。 しかし当社は小麦胚芽に含まれる酵素や細胞小器官を使って、1日でたんぱく質を合成できます。小麦胚芽の抽出方法には、独自の技術を持っています。シンプルなプロセスで、たんぱく質製造にかかるコストも、1グラム当たり約60万円ほどと安価です。



今後は、研究から工業化まで進める予定です。たんぱく質合成用試薬の販売を始めていますが、市場規模は世界で1,810億円あります。今後、成長因子の販売(市場規模4,600億円)、たんぱく質合成原料の販売なども構想しています。海外で非常に注目されている代替肉などは、140兆円にも上る大きなマーケットです。


西山:スケールの大きな話で、ワクワクしますね!南さんは、ここ神戸インキュベーションオフィスで事業を進めているのですか?


南:はい、本社登記をしています。ここは、神戸産業医療都市として研究機関が300社以上集まっておりバイオクラスターとしては、日本最大級と言われています。当社の実際のラボは、徳島にあります。


我々の製品は、保管と輸送が必要です。日本で5万円で作れても、輸送に13万円かかるので、海外生産の方がコストが安くなります。将来は海外に同じようなラボを作って、たんぱく質を安く提供したいです。いわゆる、松下幸之助さんの「水道哲学」のバイオ版という感じですね。


 
数多くの受賞歴

取材を終えて:事業経験豊富な南さんも、一から事業を作るスタートアップは苦労が多いというのは印象的でした。しかし、この面談をきっかけに資金調達が進んだと聞いて、生態会としても大変うれしいです。大きな市場に挑戦する、バイオベンチャーの挑戦は、心躍るものでした。


後日、南さんから『無細胞タンパク質合成試薬キット』が、「第32回中小企業優秀新技術・新製品賞(主催:りそな中小企業振興財団・日刊工業新聞社)の優秀賞を受賞したと連絡をいただきました。

賞金100万円!おめでとうございます。























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