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  • Yoko Yagi

エクソソームDDS技術で難病を治療最先端技術の研究成果の上市を目指す:プロジェニサイトジャパン

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は、アメリカ・セントラルフロリダ大学医学部の菅谷公伸教授が研究するバイオテクノロジー技術の社会実装を目指す、株式会社プロジェニサイトジャパン徐綾共同代表取締役にお話を伺いました。


取材・レポート:西山裕子(生態会事務局長)

八木曜子(生態会ライター)



 

徐綾(Neung Suh)氏 略歴


メディアプロテクション技術の開発展開を行うITベンチャーにて、プロジェクトリーダーとして国際マーケティング及び新商品開発を担当。その後、大手事業会社にて新規事業開発に従事。家族の駐在同行で米国滞在中に、アメリカ・セントラルフロリダ大学医学部の菅谷公伸教授が研究するバイオテクノロジーを知り、感銘を受け、それらの技術の社会実装を目指しプロジェニサイトジャパンをスタートさせる。2020年1月、プロジェニサイトジャパン設立。

 

家族の難病から、菅谷先生の研究にたどり着く


生態会 八木(以下、八木):本日はお時間いただきありがとうございます。まずは徐さんのご経歴と、プロジェニサイトジャパン設立の経緯を教えてください。


プロジェニサイトジャパン徐代表取締役(以下、徐):はい。以前はITベンチャーのプロジェクトリーダーとして、働いていました。その後大手事業会社にて新規事業開発に従事した後、家族の駐在に同行してアメリカのフロリダに2年ほど住んでいました。


滞在中に、セントラルフロリダ州立大学(UCF)で教鞭を取られている菅谷公伸先生に出会いました。この大学は元々はNASAと技術連携をする為に創設されたテック系大学で、工学系やバイオテックなどの先端技術の開発が非常に進んでおります。生徒数が全米二位の、大きな総合大学です。14年前に医学部が創設され、菅谷先生は開設当初から教鞭を取られていています。


実は私のこどもがダウンシンドローム症候群で発達障害を抱えているため、発達障害を軽減する薬はないかと世界中の論文を読んで探していました。そんな中、アルツハイマーに関する現地のニュース番組に出ていた菅谷先生が、「アルツハイマーは僕の開発した薬で治る」と仰っていたため、気になって菅谷先生にお会いしに行ったというのが会社設立の経緯です。


生態会 八木(以下、八木):テレビ番組きっかけに、実際に訪問されたのですか。すごい行動力ですね。


徐:検索して先生にメールを送って、訪問しました。ダウンシンドローム症候群のこどもたちのなかには、30歳くらいになると急激退行症というアルツハイマー症状が起こることが報告されています。こどものためにもどういったものか聞きたかったのです。


先生にお話を聞き、いろいろな事を学びました。私はこどものためにもこの薬をどうしても市販させたいと願い、先生は長年の研究成果を社会で役立てたいと強く思っていました。そこで、私が日本に戻った後、2020年1月にプロジェニサイトジャパンを日本で共同設立することにしました。


生態会 八木(以下、八木):そういった経緯から、日本でやっていらっしゃるのですね。事業を立ち上げる上で、どういった流れがありましたか?


徐:設立はしたのですが、先生はアカデミア出身、私は事業開発というバックグラウンドで創薬の経験がないため、勢いよく始めたもののなかなか形にならなくて苦戦しました。


そんな中、神戸医療産業都市推進機構の支援のもと、ピッチコンテストに出場したり、補助金の情報をいただいたりしながら、事業を少しずつですが軌道にのせることができました。


もともとはアルツハイマー薬の市販を目指しスタートしたのですが、現在は他の技術も同時に開発しています。アルツハイマーの薬のプロジェクトは長期に捉え、短期で芽が出そうな技術、次世代小型PCR機器や次世代毛髪再生薬、エクソソームDDSなどを同時に動かしながら進めています。経営戦略として長期で低分子化合物の開発を行いつつ、ユニークな技術や社会的価値の高い技術を並行して開発しています。


アルツハイマーの経口薬は特許部分でいま引っかかっていて、新しい化合物の開発を準備しています。アメリカの補助金の申請を行っており、諦めず開発に向かって進んでいます。


資金調達は、現状していません。共同開発金や助成金やライセンスフィーで地盤を固めながら、自力で開発をめざしつつ3期目を迎えています。



■DNAを効率的にエクソソームへ取り込ませる、ベクターの開発で新しい治療を


八木:プロジェクトを同時に、いくつも走らせてらっしゃるのですね。特に注力されているものは、どの技術でしょうか?


徐:エクソソームDDS(ドラッグデリバリーシステム)の技術です。これは神戸市及び神戸医療産業都市の補助事業である、令和3年度神戸ライフサイエンスギャップファンドに採択されています。ライセンス先を探しているので、試薬会社や製薬会社などの共同開発先を見つけたい案件です。


エクソソームとは細胞から分泌される直径50-150 nm(ナノメートル:10億分の1メートル)の顆粒状の小さい小胞体で、その中に核酸(マイクロRNA、メッセンジャーRNA、DNAなど)やタンパク質などが詰まっていて、細胞間を移動しています。このエクソソームを薬物の伝達システムに使おうと開発しています。


エクソソームの中に、タンパク質やRNAの代わりにDNAを入れられるという仕組みを作っています。これができると、エクソソームを使って核酸医薬のデリバリーができるようになり、また、その分野の研究を加速させることができます。


エクソソームをDDSに使うことは、まだ承認されていない最先端な技術ですが、もともと生体が作ったものだから毒性が低く、修飾をすることで標的伝達がしやすいので、より効率的に核酸医薬をデリバリーできます。この技術の活用により、今までに実現できなかった様な治療が可能になります。


こちらのテーマは世界中で研究されていますが、まだ承認例がありませんエクソソームに効率的にDNAを入れる方法を世界で初めて神戸で開発できました。こちらでアイデアを出して、神戸で研究者を雇って開発し、会社で特許を出願しています。


八木:こんなに画期的な研究が少人数でできるものなのですか。アカデミアのシーズ技術開発と製薬会社の市販薬の開発には大きな開きがあるのですね。


徐:そうなのです。勿論ものにもよりますが、シーズ技術の開発と実際薬を上市するまでの開発には、費用も期間も大きな開きがあります。ただ、菅谷先生はこの道35年という経験とそこから培われたノウハウがあり、先生が持つ知見や研究内容等は製薬会社から高い関心を持っていただいてます。


特にエクソソームなどはまだ日本の製薬会社での研究はあまり進んでいないのです。菅谷先生はエクソソーム研究の第一人者で、著作出版や米国で大きなグラントも取られています。日本では珍しいこういった技術を企業さんと一緒に開発し、市販まで持っていこうと動いています。





■神戸市と神戸市医療産業都市推進機構のサポートで立ち上がりが進む


八木:創薬の世界は、日々新しくなっているのですね。徐さんはバイオの知識をもともとお持ちだったのですか?


徐:実は私自身はダンサーを目指し海外留学やダンス教室を開いたような経歴で、創薬の経験はありません。その後IT企業や事業会社で新規事業をするなどのバックグラウンドなので、バイオや創薬の知識がないのでその点は苦労しました。


西山:それでは立ち上げの際には、相当な難しさがあったのではないでしょうか?神戸市で起業するメリットは有りましたか?


徐:神戸市及び神戸医療産業都市推進機構のサポートを、多数いただけました。最初にフロリダにいるときにJETROに相談したところ、神戸市の医療産業都市で起業するのがいいとアドバイスを頂きました。


神戸市は助成金が充実していることもありましたし、何よりも大きな製薬会社やバイオ、医療関係の会社が集約していて、イベントなどの開催も多くあり横繋がりができやすかったです。また、神戸医療産業都市推進機構のコーディネーターの方が丁寧にサポートしてくださったことで、立ち上がりがうまくいきました。



(出典元:kobecitychannel



八木:先生はずっとアメリカにいらっしゃるのですよね?遠隔でも開発はうまくいくものなのですか?


徐:コロナ前はよくいらっしゃっていましたが、コロナになり訪日が難しくなりました。ビジネス部分はzoomなどの遠隔でも可能ですが、実験や開発部分等直接訪問したほうがいい部分は少し難しかったですね。


しかし共同開発先の企業の方々のおかげでなんとか回っています。私自身も子どもが小さく働く母親なので、遠隔が可能なのは助かります。


菅谷先生自身に強い思い入れがあり、このプロジェニジャパンにかなりコミットされています。基本的には事業のアイデアは私が担当し、技術的アイデアは菅谷先生で相談して練っています。菅谷先生は肩書としては医学部生物医学科の教授ですが、UCF工学部とも連携し核酸抽出の必要がない小型PCR機器を開発されるなどと多数の引き出しがあるのが面白いです。


八木:従業員は2名ですか?採用意欲などもあれば教えてください。


徐:実務は2名ですね。研究開発実務は菅谷先生がアメリカのラボで行っており、事業開発の実務担当は私です。この先はインターンなども入れたいですね。日本では東京に社外取締役が1名、アメリカに3名です。採用としては事業開発を私と一緒に行ってくれる方が入ってくれれば嬉しいです。


八木:貴重なお時間をいただきありがとうございました!



 

取材を終えて

バイオやエンジニアリングの難しさを噛み砕いて説明してくださり、徐さんの明るくポジティブに挑戦する人柄や行動力に勇気づけられる取材でした。お子さんの生育や日々の生活から生まれるひらめきを先生と相談しながら前向きにアイデアの種にしていく様子に、こうやってスタートアップのアイデアが生まれるのかと、未来を具体化する様子に圧倒されました。これからも注目まちがいありません。

(ライター 八木)



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