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  • 執筆者の写真濱本智義

8月イベントレポート:「令和のダイバーシティ経営とは〜”個性”を"価値”に変えるために今できること〜」



2020年8月26日(水)にオンラインにて、生態会イベント「令和のダイバーシティ経営とは〜”個性”を"価値”に変えるために今できること〜」が開催されました。



近年、社会のニーズは多様化し、企業間の競争はより激しくなりました。企業は様々なニーズに応えるために、多様な視点を取り入れる必要があります。これまで働き方改革や女性活躍推進法などの制定で、その労働環境は少しずつ改善されてきました。しかし、「障がい者」や「LGBTQ」などの人材が能力を最大限に発揮できる労働環境はまだまだ整っていません。そしてこの令和時代、より本質的かつ先進的なダイバーシティ経営が求められることでしょう。


そのような背景から今回、「令和のダイバーシティー経営」を「障がい者」と「LGBTQ」の切り口から考えていくイベントを企画させていただきました。


レポート:濱本智義(生態会 学生ボランティア)

 

第一部は、株式会社ミライロ代表の垣内氏に登壇いただきました。垣内氏は、生まれつき骨が弱く折れやすい病気のため、幼少期から車いすに乗って過ごされていました。障害を価値に変え、社会を革新するため、20歳で起業。現在では、バリアフリーの企画提案やユニバーサルマナーの研修を行なっており、2016年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 アドバイザーに就任されました。


登壇は、障がい者の歴史の話から幕が上がり、現代社会に戻ります。



社会貢献からビジネスへ




社会貢献という文脈だけでなく、ビジネスという観点から環境が整っていったというお話は大変興味深かったです。継続的に価値を届けるためには、社会性だけでなく経済性も必要だということを改めて実感させられました。



ハードも、ハートも世界に誇れる日本に



日本は、世界基準でみれば環境の整っている国ではあるのですが、社会にはまだまだ多くのバリアが存在しています。それは環境を含め大きく三つのバリアに分かれます。①環境のバリア②意識のバリア③情報のバリアです。①環境のバリアと③情報のバリアはすぐに解決できなくとも、②意識のバリアは明日から変えることができます。多くの人は障がい者と接する時間が少ないことから正しい知識や正しい理解が進んでいません。しかし、環境はなかなか変えれなくても、その意識を変えることはできるはずです。ハードは変えられなくても、ハートは今から変えられるんです。



私たちの意識・行動・姿勢を変えることが何よりも大切だということが、その言葉に集約されていますね。心に響きました。



そして、講演後、参加者から「起業して辛かったことと嬉しかったことは何ですか。」という質問がありました。


株式会社ミライロは、オリンピック・パラリンピックが決まるまで5年間赤字だったそうです。その5年間は、ホテルや結婚式場に社長自ら足を運んだりと、ひたすら泥臭く飛び込み営業をしていたそうです。辛い時期だったけれども、あのとき頑張れたから今があるとおっしゃっていました。


また、嬉しかったこととして、一度退職した社員がまた戻ってきたことを挙げていました。社員は一番の財産であり、社員と共に仕事をできることが一番の幸せだと答えていました。



以上で第一部は終わりです。


終始圧巻でした。先日受けた学校の授業よりも10倍面白かったです笑。

 

第二部は、株式会社マイユニの共同代表の一人であるわたくし濱本が登壇させていただきました。



入学半年後に休学し、19歳で起業




まずは、学生起業家として会社を設立した経緯について話しました。簡潔に説明すると、私自身LGBTQ当事者であり、自分らしく生きられなかった過去から「誰もがありのままで過ごせる社会」を実現するために、今年2020年4月1日に起業しました。現在は、当事者コミュニティの運営を中心に、企業に対して研修やコンサルティングを行う準備を進めています。



LGBTハラスメントが刑罰の対象に


日本では、11人に1人がLGBT当事者であると言われていて、左利きと同じ割合で存在しています。日本人口にして約1000万人。大阪の人口よりも多いのです。みんな隠しているだけで、あなたの周りにも存在しています。そんなLGBT当事者は、日常生活の中で様々な課題を抱えています。その課題の一つに労働環境が挙げられます。働いている当事者のうち83.7%が「自社の制度が整っていない」と回答している調査があります。そして、特に大きな問題が「アウティング」です。「アウティング」とは、自分の知らないところで当事者であることを第三者に暴露されることを意味します。職場で上司にアウティングをされ精神疾患になり会社を退職した人や、中にはアウティングがきっかけで自ら命を絶った人もいます。それほど当事者にとっては重大な問題なのです。


そして近年、「アウティング」は他人事では済まされない状況になりました。実は、今年の2020年6月1日にLGBTハラスメント、通称「SOGIハラスメント」の防止が「パワハラ防止法」のなかに追加されたのです。つまり、アウティングなどのLGBTに対するハラスメントを防止することが、法律で義務化されたのです。また、2020年4月には中小企業も対象になってきます。このように法整備によりLGBT施策の必要性がますます高まっています。約230社を対象にしたある経団連の調査では、90%以上の企業が施策を行う必要性を感じていると答えています。


では、企業は具体的にどのような取り組みをしたら良いのでしょうか?




LGBT施策の事例と個人が意識できること


いわゆるLGBTフレンドリー企業で行なっている施策をいくつか事例として紹介しました。よくあるのは、性別による差別の撤廃をポリシーとして掲げたり、相談窓口を設置したり、定期的な社内研修を実施するというような取り組みです。また、同性パートナーがいる社員に対しても、家族手当がでたり育児休暇がとれたりと異性愛者同様の福利厚生を認めている企業や、性転換手術を行うための休暇を導入している企業もあります。


では、個人としてできることは何があるのでしょうか?


イベントでは「明日からできる3つの心がけ」を紹介しました。①異性愛を前提とする会話をしない(彼女彼氏いるの?と聞くのではなく恋人いるの?と言い換えてみましょう。)②価値観を押し付けない(「もっと女らしくしろよ」「お前は男らしくないな」という風に価値観を押し付けるのはやめましょう。)③カミングアウトされた時にはいつも通りに接する(当事者だからといって特別扱いしてほしいわけではないのでいつも通り接してあげてください。)


このような心がけを一人一人が意識するだけで、自分らしく働ける環境が少しずつ実現されていきます。今日からぜひ意識してみましょう。 以上で第二部は終わりです。





残りの時間は、事業アイデアの壁打ちをしたり質疑応答を行なったりして、障がい者やLGBTなどのダイバーシティについてより理解を深めていただきました。


また、今回のイベントはオンライン開催ということもあり、関東から早稲田大学の学生さんも参加してくださいました。ご自身が考えた車椅子バスケに関するビジネスアイデアを発表してくださいました。普段は関西出身の参加者が多いことが生態会イベントの特徴ですが、オンラインならではの、関西以外の広がりがありました。



誰もが自分らしく幸せに暮らせる社会へ


このイベントを通して、経済性の重要さを改めて強く感じました。私の会社は啓発活動のようなものが多いので「NPO/NGOでいいんじゃない?」とよく言われます。確かにLGBT関連の団体はそのような団体が多く存在しており、各団体が社会的に意義のある素晴らしい活動をされています。しかし、逆に言えば、株式会社という形態をとっている団体が少ないからこそ意義があるんだと思います。「障がい者」は経済性の観点から環境整備が一気に進みました。「LGBT」も社会性だけでなく経済性の観点が加われば、誰もがありのままで過ごせる社会の実現により近くはずです。今は自分自身、大口を叩けるほどの実力もありませんし、弊社もまだまだ小さな会社ではあるのですが、いつかは社会に大きなインパクトを与えるような大きな会社にしていきたいです。


「LGBT」はジェンダーの問題だけではなく、多様な価値観認め合うといったダイバーシティ全体の話です。「LGBT」然り「障がい者」然り、誰もが自分らしく働ける環境が整えば、それに伴って経済も活気づきそれぞれが幸せで豊かな生活を送ることができると私は信じています。また、そのような社会を実現するためには一人一人の意識が必要になってきます。多様性が受け入れられ誰もが自分らしく幸せに暮らせる社会を共に作っていきましょう。

 

生態会では、今後も毎月、スタートアップに役立つセミナーを開催していきます。

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